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- 清算価値とは
- 清算価値に計上される財産
- 清算価値が高額になるケース
清算価値とは、自己破産において手元に残しても良いとされている財産以外の財産を換価処分(売却)したと仮定して算出した価値のことを言い、自己破産や個人再生の手続きをする上で使われる用語です。
例えば、自己破産で手元に残してもよいとされている20万円を超える現金や、車、保険の積み立てなどがある場合には、それが清算価値に計上されます。
個人再生の場合、裁判所での手続きが終わった後には各社への返済が始まります。この返済について、総額いくらを返済すれば良いのかを決定する基準の一つが清算価値です。
大雑把に言えば個人再生すると「借金の総額の5分の1」と「清算価値」を比較して多い方の金額を返済する、ということになります。
このように、個人再生の手続きをする上で重要な用語となりますので、この記事では個人再生における清算価値について解説します。
ぜひ、参考にしてください。
目次 ▼
1章 清算価値とは
清算価値とは、大まかには「手持ち財産の総額」と捉えてもらえれば十分です。財産の種類は問いません。現金・預貯金はもちろん、自動車、不動産、退職金、保険の解約返戻金などが含まれます。
もう少し厳密に言うと、清算価値とは「自己破産において最低限手元に残して良いとされる財産(自由財産※)以外の財産を換価処分(売却)したと仮定し、算出される価値」のことを言います。
個人再生の場合、手続きをしたあと返済をしなければいけない弁済額は清算価値を超える額でなければいけないとされており、これを「清算価値保証の原則」と呼びます。
清算価値保障原則は難しい概念なので、ここで細かく説明することは避けますが、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
なお、自己破産とは異なり、個人再生では清算価値に含まれる財産であっても、没収されることはなく手元に残すことが可能です。
自由財産とは、自己破産の手続きをしても手元に残る、破産者に保証されている財産です。
自由財産は差し押さえが禁止されており、換価処分されることはありません。
主に自由財産に該当するものは、以下のとおりです。
なお細かい計算方法は裁判所によって変わる可能性があります。
- 自由財産
- ・99万円以下の現金・生活に欠かせない、家具家電、衣類、寝具、台所用品、畳、建具など
・手取りの給料の4分の3
・破産開始決定後に支給される給与など
・破産開始決定後に贈与される財産
・確定給付企業年金や確定拠出年金による退職金 など
1−1 個人再生で清算価値保証基準が採用されるケース
個人再生で弁済額を決定する方法は、以下の3つです。
- ①最低弁済基準・・・借金額ベースの基準(債務額に応じて算出)
- ②清算価値保障基準・・・財産額ベースの基準(所有している財産額に応じて算出)
- ③可処分所得基準・・・収入ベースの基準(収入によって算出)
申立てをする人の所有する財産が最低弁済基準よりも多い場合には、「清算価値保証基準」が採用されます。(小規模個人再生を選択した場合に限る)
最低弁済額とは、最低限支払わなければいけないと法律で定められているもので、借金額に応じて以下のように変動します。
借金総額 | 最低弁済額 |
0〜100万円 | 借金総額全額 |
100万円超 500万円以下 | 100万円 |
500万円超 1,500万円以下 | 借金総額の5分の1 |
1,500万円超 3,000万円以下 | 300万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 | 借金総額の10分の1 |
例えば、借金額が200万円の場合は、最低弁済額は100万円です。所有する財産の清算価値が200万円であれば、清算価値が最低弁済額を超えるため、「清算価値保証基準」が採用されます。
清算価値に計上される財産については、次章で解説します。
2章 清算価値に計上される財産
ここでは、清算価値に計上される財産について解説します。
繰り返しますが、個人再生では清算価値に計上されたからと言って、その財産が没収されるわけではありませんので安心してください。
個人再生の場合の清算価値は、返済額決定のための単なる基準のひとつにすぎません。
清算価値に計上される財産は以下のとおりです。
- 99万円未満の現金
- 預貯金
- 保険解約返戻金
- 自動車
- 不動産
- 退職金
- 家財道具
- その他、差押えを禁止されている財産
どの財産がどの程度計上されるかは、各家庭裁判所によって判断が異なります。
例えば、東京地裁の場合20万円以上の財産(現金を除く)が計上されますが、大阪地裁では20万円未満でも計上されます。
また、これらの他にも、法律上の特殊な考慮によって財産計上されるものもあります。
計上される財産の詳細については、地域の司法書士や弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
3章 清算価値が高額になるケース
清算価値保証基準が採用された場合、清算価値が高額になると手続き後の弁済額も高額となってしまいます。
せっかく個人再生をしても、弁済額が高額になれば、それを原則3年で返済しなければいけなくなるため、月々の返済額が手続き前よりも大きくなってしまうこともあるのです。そうなると、個人再生をした意義も弱まります。
そのため、以下のような清算価値が高額になってしまうケースでは、借金額・返済額と手続き後の弁済額を鑑みて検討する必要があります。
実際、多くの専門家はこれらの事情を総合的に判断して最適な債務整理手法を選択しているのです。
- 所有している財産が多い
- 持家がある(アンダーローンの場合/住宅ローンを完済している場合)
- 高額な生命保険返戻金がある
- 高額な退職金を受け取る見込みがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3−1 所有している財産が多い
単純に所有している財産が多い場合、その分清算価値が高額になります。
もし、借金額が500万円で清算価値が450万円の場合、個人再生の手続き後450万円を原則3年で返済しなければいけません。
仮に月に10万円返済しているところ、個人再生の手続き後450万円を3年で返済するとなると月に12万5,000円ずつ返済することとなります。
利息がなく、個人再生で減額もしているため、最終的な返済総額は大幅に減りますが、月々の負担が大きくなってしまうこと可能性があることは理解しておきましょう。
3−2 家がある
家を所有いる場合、以下の2つのケースでは清算価値が高額になる可能性があります。
3−2−1 アンダーローンの場合
住宅ローンが残っている場合の不動産の価値は、不動産自体の査定額と住宅ローンの残額の差で計算します。
住宅ローンが残っており、かつ、住宅ローンの残債よりも家の査定額が高い(アンダーローン)場合、家の査定額とローンの残債の差額がプラスとなり、これが清算価値に計上されます。
例えば、ローンの残りが1,000万円で、家の査定額が2,000万円の場合、差額である1,000万円が清算価値に計上されます。
つまり、個人再生の手続き後の弁済額が1,000万円を超えることなるのです。
ローンと査定額の差額が100万円程度なら返済できる範囲ですが、差額が高額になると弁済額も高額になり、返済が難しくなる可能性があります。
なお、住宅ローンの残りのほうが高額の場合、住宅ローンをそのままに、その他の借金を減額できる「住宅資金特別条項」を利用することができます。
3−2−2 住宅ローンを完済している場合
住宅ローンを完済している場合、家の査定額がそのまま清算価値に計上されます。
ローンを完済する頃には、家の価値は下がっているかもしれませんが、土地の価値は年数が経過しても、余程のことがない限りそれほど下がりません。
マンションならばまだ良いですが、一戸建てで敷地を含めた家の査定額が数百~数千万円に及ぶような場合には、清算価値が高額になる可能性があります。
家を残したまま借金を減らしたいけれど、清算価値が高く、個人再生の効果が見込めないような場合には、任意整理も検討しましょう。
任意整理では、債権者と交渉することで利息をカットし、返済額を減額します。
住宅ローンが残っている場合でも、住宅ローン以外の借金のみを任意整理すれば家を残すことが可能です。
3−2 高額な生命保険返戻金がある
生命保険を契約しており、個人再生の手続きをする時点で生命保険返戻金がある場合、生命保険も清算価値に計上されます。
契約期間や契約内容によっては、生命保険返戻金が高額になることもあるでしょう。
返戻金のせいで清算価値が高額になり、現実的な借金の減額率が小さくなってしまっては元も子もありません。
もし、生命保険返戻金が借金額と変わらないか、または借金額を超えるような場合には、生命保険を解約し、借金を返済することも検討しましょう。
ただし既に専門家に手続きを依頼済みである場合は、独断で行動する前に専門家に相談してください。
3−4 高額な退職金を受け取る見込みがある
退職金も、清算価値の計上対象です。
どの程度計上されるかは、退職金を受け取るタイミングによって異なります。
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退職金を受け取るタイミング | 清算価値に計上する割合 |
①退職予定がなく、受取日が未定の場合 | 現時点での退職金見込額の8分の1 |
②退職金を受け取る日が決まっているがまだ受け取っていない場合 | 退職金の4分の1 |
③すでに退職金を受け取っている場合 | 全額(現金・預貯金として扱われる) |
まだ退職金を受け取っていない場合には、計上されるのは8分の1または4分の1ですが、退職金の金額によっては清算価値が高額になることもあるでしょう。
4章 個人再生はグリーン司法書士法人にご相談ください
個人再生は、所有している財産によっては清算価値を基準に弁済額を決定します。
財産が高額な場合、手続き後の返済額が大きくなってしまうケースもあるので、注意が必要です。
司法書士などの専門家に相談すれば、自身が個人再生をした場合にどのように弁済額が決定されるのか、弁済額がどの程度になるのか教えてもらうことができます。
グリーン司法書士法人では、これまで数多くの個人再生に関する依頼を対応した実績がございます。
清算価値についても、分かりやすく丁寧に解説させていただきます。
初回のご相談は無料です。オンライン相談も承っておりますので、
- 個人再生が可能か
- 個人再生をした場合の返済額はどの程度になるのか
- どのように手続きが進むのか
など、気になることがれば、お気軽にご相談ください。
個人再生に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。
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