自己破産によって制限される職種は?仕事の影響と再就職について

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産
自己破産によって制限される職種は?仕事の影響と再就職について

この記事は約 14 分で読めます。

「自己破産をしたいけれど、仕事ができなくなるかと思うと怖くてできない…」

今後仕事ができない可能性を考えると、自己破産を決断できない方もいるかと思います。
結論から言うと、ほとんどのケースでは自己破産の手続きが終わると、以前と同じように働くことができるのでご安心ください。

しかし、自己破産は全ての借金を免除することができるため、効力が高すぎることから手続き中は仕事内容によって職種が制限される可能性があります。
現在、自己破産により制限されてしまう職種で働いている人は、自己破産以外の債務整理も検討してみるのも良いでしょう。
この記事では、自己破産によって制限される職種を紹介いたします。

自己破産の手続きでの仕事の影響と、その後の再就職についても解説するので、自己破産に踏み切れないという方はご参考にしてください。

1章 【一覧】自己破産によって制限される職種

自己破産は、裁判所に破産の申し立てを行い、破産手続開始が決定すると破産者になります。

破産者になると、職業や資格によっては法律で制限が設けられます。

制限がかかると、多くの資格の登録ができなくなるほか、登録が取り消されてしまいます。

登録が取り消されると「登録に基づいて行っていた職種では働けない」という扱いになります。

自己破産によって制限される職種の具体例は以下の通りです。

一覧に、自分の職種がないか、またはこれから就こうと考えている職種がないか確認しましょう。

また、こちらはあくまで例になるので、正確に職種制限がかかるかどうかは専門家に確認する必要があります。

職種具体例
よくある職種・弁護士
・税理士
・司法書士
・保険の外交員
・警備員
士業・弁護士
・弁理士
・税理士
・公認会計士
・司法書士
・行政書士
・社会保険労務士
・土地家屋調査士
・通関士
民法上の資格・後見人
・後見監督人
・保佐人
・保佐監督人
・補助人
・補助監督人
・遺言執行者
役員・取締役・監査役・清算人など・理事以外の日本銀行
・信用協同組合または信用協同組合連合会
・商工組合中央金庫
・農林中央金庫
・組合員の貯金または定期積金の受入れ、もしくは組合員の共済に関する事業を行う漁業協同組合
・組合員の貯金または定期積金の受入れ、もしくは組合員の共済に関する施設に係る事業を行う農業協同組合及び農業協同組合連合会
・保険会社
・特定目的会社
・金融商品館員制法人、自主規制法人
・銀行等保有株式取得機構
・特定非営利活動法人
・商工会議所、役員商工会、商工連合会
・地方公共団体情報システム機構
・地方公共団体金融機構
・地方公務員災害補償機構
・地方公務員災害補償基金
・共済事業を行う消費生活協同組合または消費生活協同組合連合会
・地方公営企業
・更生保護法人
・清算無尽会社の清算人
・原子力規制委員会、委員中央更生保護審査会
委員会の委員長・公安審査委員会
・公正取引委員会
・公害等調整委員会
・再就職等監視委員会
・国家公務員倫理審査会
・中小企業再生支援協議会
・国会等移転審議会
・公害健康被害補償不服審査会
・労働保険審査会
・社会保険審査会
・調達価格等算定委員会
・国地方係争処理委員会
・原子力損害賠償支援機構の運営委員会
・日本ユネスコ国内委員会の委員
・農水産業協同組合貯金保険機構の運営委員会
・預金保険機構の運営委員会
・国家公安委員会
・教育委員会
・紛争調整委員会
・地方競馬全国協会運営委員会
・日本中央競馬会経営委員会
・土地鑑定委員会
・収用委員会の委員、予備委員
・運輸安全委員会
・都道府県公害審査会
・土地利用審査会
・開発審査会
・建設工事紛争審査会
・建築審査会の委員
その他・司法修習生
・固定資産評価員
・公証人
・国家公務員
・証券外務員
・警備員
・警備業
・探偵業
・有料職業紹介事業における職業紹介責任者
・派遣元責任者
・交通事故相談員
・陪審員
・保護者
・海事補佐人
・船員等に関する調停員
・犯罪被害者等給付金申請補助員
・地方自治区の区長
・動物取扱責任者
・インターネット異性紹介事業者
・風俗営業の営業所の管理者

ただし、あくまで一時的なものであって、手続きが完了すると今まで通り働くことが可能なのでご安心ください。

職業制限を受けるのは債務整理の中でも自己破産のみ
手続き中に職業制限を受けるのは債務整理の中でも、自己破産の手続きのみです。
任意整理や個人再生は自己破産と異なり職業の制限を受けないため、士業や役員の人でもそのまま仕事を続けられます。

そのため、自己破産による職種の制限の影響を受けたくない場合は、任意整理や個人再生を選択することも検討しましょう。
任意整理や個人再生については、本記事の6章で詳しく解説しています

2章 破産手続開始決定から免責決定まで制限される資格

多くの職種が自己破産によって制限されますが、資格も破産の手続き開始から自己破産の許可が降りる(免責決定)まで多くの資格が制限されます。

どのような資格の登録や許認可が取り消されるのかを一覧で見ていきましょう。

資格具体例
登録・免許・不動産鑑定士
・宅地建物取引主任者
・中小企業診断士
・商品先物取引業者
・金融商品取引業者
・貸金業務取扱主任者
・マンション管理業務主任者
・監査法人の特定社員
・登録住宅性能評価機関
・マンション管理業者
・構造設計一級建築士講習、設備設計一級建築士講習の講習機関
・建築事務所
・不動産鑑定業
・測量業者
・サービス付き高齢者向け住宅事業
・金商品取引業
・金融商品仲介業者
・商品先物取引仲介業者
・貸金業
・特定保険募集人
・信託契約代理業
・第一種フロン類回収業
・引取業者
・旅行業
・ホテルの登録
・製造たばこの特定販売業
・塩製造業者
・第一種動物取扱業
・中央競馬の馬主
・中央競馬の調教師、騎手
・宅地建物取引業
・酒類の製造、販売
許可・鉄道事業
・銀行等代理業
・一般建設業
・一般廃棄物処理業
・一般廃棄物処理施設
・産業廃棄物処理業
・産業廃棄物処理施設
・解体業、粉砕業
・質屋営業
・古物商及び古物市場主
・風俗営業
・有料職業紹介事業
・一般労働派遣事業
・港湾労働者派遣事業
・船員派遣事業
・建設業務労働者就業機会確保事業
・二種病原体等の所持
・脊髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業
・第一種特定商品市場類似施設開設
・製造たばこの小売販売業
認定・認証・認定情報提供機関
・自動車運転代行業
・民間紛争解決手続業務

資格が制限されるということは、仕事も一時期できなくなるということなので、資格が必要な職業の方は注意しましょう。

また、以下のような職種は、破産手続開始決定があったことを都道府県知事などに報告する義務があるため、破産管財人が破産者に代わって廃業届が提出されます。

  • 一般建設業
  • 廃棄物処理業
  • 質屋営業
  • 風俗営業
  • 有料職業紹介事業
  • 鉄道事業

廃業届が提出されると、免許や許可が取り消されてしまうので注意しましょう。

2-1 契約上で制限されるケース

ここまで、破産手続き中に一時的に資格が使えなくなる職業や資格を紹介していきました。

しかし、中には法律上の制限はない場合でも、契約上の制限がかけられる場合があるので注意が必要です。

具体的には、請負で働いている方などが該当します。

請負で働いている場合は、請負の契約上で「自己破産をした場合は契約を継続しない」などの契約が巻かれていてサインしていた場合は、取引ができなくなるケースもあります。

法律上の職種制限は、自己破産が終われば解除されますが、契約上の制限がある場合は再契約しなければ契約が終わってしまう可能性があります。

請負先によっては、自己破産した場合に仕事を失ってしまう場合があるのでご注意ください。

2-2 罷免事由や解任事由になる職業

中には、自己破産の手続きを行うことで罷免事由や解任事由になる職業もあります。

例として、以下のような職業が挙げられます。

  • 会社役員(取締役、執行役、監査役など)
  • 団体理事(商工会議所、信用金庫、日本銀行など)
  • 公正取引委員会や教育委員会、国家公安委員会の委員

会社役員の場合、委任契約といって自己破産によって解除されることが規定されています。

そのため、役職を退任する必要がありますが、再度選任されれば役員に復帰できるケースもあります。

2-3 再申請すれば再び免許・許可を取得できる

免許や許可が取り消しになるといっても、剥奪されて今後一切の仕事ができなくなるわけではないのでご安心ください。

免責許可が決定した後に再申請することで免許や許可を取得することができます。

ただし、破産手続き中は免許や許可を取り消しされるため、仕事ができない期間はあります。無免許で仕事をするわけにはいかないので、会社に必ず報告しなくてはいけません。

3章 自己破産で職業制限を受ける期間

自己破産申立から免責決定までの期間目安

ここまで、自己破産の影響を受ける職種や資格を紹介しましたが、共通して言えるのは職種の制限を受けている仕事については、破産手続開始決定から免責許可決定確定(復権)まで仕事ができないということです。

→基本的に財産を売却して分配する間は財産を取り扱えない

→自分の財産と取り扱い財産を混在する可能性があるものはやめるようにする

一部、罷免事由や解任事由になる職業もありますが、ほとんどの場合は自己破産の手続きの間のみです。

ただし、自己破産申立から免責決定までの期間は数ヶ月程度あるのですぐに復職できるわけではありません。

一部例外として会社の取締役などはすぐに復帰が可能な場合もあります。

破産開始決定の効果として、破産者が受任している委任関係の終了があります。そのため、委任関係が終了するために退任する場合は再選されるとすぐに復帰することができます。

以下は、自己破産の手続開始決定から免責決定までにかかる目安です。

同時廃止約2ヶ月
管財事件約2~3ヶ月

この期間はあくまで目安であって、複雑なケースの場合は半年以上かかることもあります。

同時廃止と管財事件の違いは、以下の記事をご参考にしてください。

4章 自己破産後に再就職することは可能

自己破産手続中に制限される職種に就いている人は、自己破産の手続き中は仕事が制限されることもあり、職場のメンバーにバレてしまう可能性は非常に高いです。

自己破産の手続き中でも、休職をしたり資格が不要なポジションで仕事をすることは可能ですが、復職したものの何となく居づらくなって自主退職をしてしまう方も珍しくありません。

もし自己破産が原因で退職した場合でも、資格や免許を再申請することで同じ職種に再就職が可能です。

一から職場を変えて、心機一転スタートしたいという方でも安心してくださいね。

4-1 自己破産の経験があっても資格の取得は可能

また、自己破産の経験がある方で、これから自己破産の制限がある資格や免許を取得したい場合も取得が可能です。

自己破産の手続き中でも資格の取得自体はいつでもできるので、例え試験が手続き中にあって合格したとしても資格が剥奪されることはありません。

あくまでも資格を使っての業務ができないだけなのを覚えておきましょう。

5章 自己破産による職種制限があると誤解されがちな職業・資格

ここからは、自己破産の手続きによって職種制限がかかると誤解されがちな職業や資格をご紹介します。

以下の職種は、自己破産をしても資格や免許が停止されることなく、手続き中でも仕事ができるのでご安心ください。

  • 医師
  • 看護師
  • 薬剤師
  • 介護福祉士
  • 作業療法士
  • 助産師
  • 保健師
  • 保育士
  • 警察官
  • 自衛官
  • 消防士

士業の多くが職業制限があることから「士」や「師」がつく職種には制限があると誤解されやすいです。

また、公務員もなんとなく制限を受けそうというイメージから誤解されていますが、特殊な公務員でなければ制限されることはありません。

ほかにも、特に誤解されやすい代表的な職種でいうと、看護師や公務員、警察官などが挙げられますが、自己破産の手続きをしても問題ありません。

もし借金が膨らみすぎて、支払いができないと感じたらご相談ください。

5-1 自己破産をしても解雇理由にしてはならない

自己破産後は、クレジットカードを作ったりローンが組めなかったりと様々な制限があるため、ふとした会話の中でバレてしまうリスクも0ではありません。

しかし、会社から借金をしていたり周りに言いふらさない限りは、バレるかどうかはあまり心配する必要がないでしょう。

もし、万が一バレても自己破産が理由で解雇の理由にしてはいけないため、クビを言い渡されることはないのでご安心ください。

ただし「周りに噂が広まって居づらい…」「上司から心配されて腫れ物に触るかのような扱いに…」など、解雇は無くとも自分が居心地が悪くなる可能性はあります。

6章 他の債務整理なら職種の制限はない

自己破産をしたことが周りにバレてしまったり、仕事を制限しなくてはいかなくなったりと、働きながらの自己破産はデメリットも多いです。

借金苦から解放される一方で、職種によってはなかなか自己破産を決断するには勇気がいりますよね。

もし、少しでも経済的余力があるのであれば、他の債務整理を検討してみてはいかがでしょうか。

自己破産以外にも、債務整理は任意整理と個人再生があります。どちらの手続きも職種の制限がないため、借金問題を仕事に影響なく解決したい方は必見です。

6-1 任意整理

任意整理は、借金の利息や遅延損害金など元金以外をカットする手続きです。

借入先の金融機関と司法書士や弁護士などの専門家の間で交渉していくため、裁判所を通す必要がなく債務整理の中でも最も手軽な方法といえます。

ただし、他の債務整理と同じくクレジットカードやローンの新規契約やスマートフォンなどの分割払いができなくなるので注意しましょう。

6-2 個人再生

個人再生は、借金を5分の1〜10分の1に減額することができる手続きです。

原則3年程度で完済する必要があるため、支払い能力があることが前提となりますが、正社員として安定した職に就いている方であれば現実的な方法といえるのではないでしょうか。

また、家や車などの財産を失わずに手続きができるので、財産を手放さずに債務整理をしたい方にもおすすめです。

7章 自己破産をする場合職種によっては制限されるので注意

この記事では、自己破産によって制限される職種と仕事の影響について解説いたしました。

自己破産は、支払い能力がない方しか免責許可が降りないと思っている方も多いですが、正社員として働いている場合でも自己破産の対象だと見なされれば手続きをすることができます。

ただし、職種によっては破産手続開始から一時的に仕事ができなくなる可能性があるので注意が必要です。

通常の仕事ができないとなると周りにバレてしまう可能性も高くなるため、まずは本当に自己破産が一番の選択肢なのかどうか、専門家に相談するのがおすすめです。

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よくあるご質問

自己破産したら就けなくなる仕事は?
自己破産によって制限がかかる仕事は、主に下記の通りです。
・弁護士や税理士などの士業
・後見人や後見監督人
・役員・取締役・監査役・清算人など
・委員会の委員長
・国家公務員
・証券外務員
など
自己破産の職業制限については詳しくはコチラ
自己破産の職業制限の期間はいつからいつまで?
自己破産の職業制限は、破産手続開始決定から免責許可決定確定(復権)です。
すなわち、自己破産によって免責が決定し手続きが完了すれば制限はなくなります。
自己破産の職業制限について詳しくはコチラ
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