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- 借用書・借金の契約が無効になる場合とは
- 借用書がなくても借金の契約は無効にならない理由
- 借金の契約が無効になっても返済しないといけないルール
- 借金の自力返済が難しい場合の解決方法
借用書や借金の契約が、無効になる場合があるのをご存知でしょうか。一般的に、契約は双方の合意があれば成立しますが、特定の条件下では無効とされるケースがあります。
未成年者や成年被後見人との契約、公序良俗に反する契約、錯誤や詐欺・強迫による契約、自分の名義を無断で使用された場合など、これらのケースでは契約が無効となる可能性が高いです。
さらに、借金の契約が無効となった場合でも、一部の例外を除いて、借主は原状回復義務として借金を返済しなければなりません。
契約が無効である理由や状況によって返済義務の範囲が異なり、一部返還や返還不要のケースも存在します。今回の記事では、借金の契約が無効になるケースや、原状回復義務の例外、借金の返済が難しい場合の対処方法などについて詳しく見ていきましょう。
目次 ▼
1章 借用書・借金の契約が無効になる場合
借用書や借金の契約が無効になる場合は、法的に重要な問題です。無効となる理由には、未成年者や成年被後見人との契約、公序良俗に違反する契約、錯誤による契約、詐欺や強迫による契約、自分の名義を勝手に使用された場合などがあります。
これらの状況では、契約は法的に保護されず、履行が求められません。この章では、これらのケースについて詳しく見ていきましょう。また、無効とされた場合の対処法についても触れておきます。
1-1 未成年者や成年被後見人と契約を結んだ場合
未成年者や成年被後見人と契約を結んだ場合、その契約は無効になる可能性があります。未成年者とは法律上18歳未満の人を指し、成年被後見人とは、精神的な障害により判断能力を欠くとして家庭裁判所により成年後見制度の適用を受けた人です。
これらの人たちは法律上、契約を結ぶ能力に制限があり、そのために結ばれた契約は取り消せます。未成年者が契約を結ぶ場合、原則として親権者や法定代理人の同意が必要です。
同意がない場合、未成年者は契約を取り消せます。成年被後見人の場合も同様で、契約は取り消せます。
これらの保護措置は、判断能力が不十分な人々を不当な契約から守るために設けられたものです。なお、あくまでも取り消されるまでは有効なので、注意が必要です。
1-2 公序良俗に違反している場合
契約が公序良俗に違反している場合、その契約は無効となります。公序良俗とは、社会の一般的な道徳や公共の秩序を意味し、これに反する契約は法的に保護されません。
たとえば、違法な行為を前提とした契約や、社会通念に反する不正な利益を得るための契約などが該当します。これらの契約は、公序良俗違反で無効とされ、履行を求められません。
公序良俗違反の具体例を挙げると、賭博に関連する契約や、違法な商品やサービスの提供を目的とした契約、闇金からの借入などです。
公序良俗違反による無効の契約は、原状回復も求めることができない事があります。また、これらの契約は、法的に無効とされるだけでなく、刑事罰の対象となる場合もあります。
なお、公序良俗に違反する闇金で借金するリスクや、悪質な取り立てに遭ったときの対処法について、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひそちらも、参考にご覧ください。
1-3 錯誤による契約が行われた場合
錯誤による契約とは、契約の一方または双方が重大な誤解をした状態で結ばれた契約を指しています。たとえば、契約内容や対象物についての誤解、契約相手の身元に関する誤解などです。
このような場合、契約が無効になるケースがあります。民法第95条では、意思表示に重要な錯誤がある場合、その意思表示は無効とされています。ただし、契約の主要な内容に関する錯誤が存在する場合にかぎられた措置です。
また、錯誤を理由に契約を無効とするには、錯誤の重大性や契約当事者の善意の有無なども考慮されます。たとえば、単なる勘違いや小さなミスではなく、契約全体の根幹に関わる重大な誤解であるかが重要です。
1-4 詐欺や強迫による契約が行われた場合
詐欺や強迫による契約は、契約当事者が不正な手段を用いて契約を結ばせた場合に取り消せます。詐欺は、相手を欺いて契約を結ばせる行為であり、たとえば、商品の品質や価値について虚偽の説明などです。
強迫は、相手に対して恐怖を与え、契約を強制的に結ばせる行為です。被害者が詐欺や強迫の事実を証明できれば、契約を無効とできます。
詐欺や強迫による契約の取り消しは、被害者の意思を尊重するために設けられた法律上の保護措置です。なお、こちらも取り消されるまでは有効なので、注意が必要です。
1-5 自分の名義を家族などに勝手に使用された場合
自分の名義を家族などに勝手に使用された場合、その契約は無効となる可能性があります。名義を無断で使用されるのは、本人の意思に反して契約が結ばれるという意味です。
このような場合、名義を使用された本人は、その事実を証明すれば、契約を無効にできます。たとえば、家族が本人の許可なく借金をするために名義を使用した場合、その契約は取り消せます。
名義の無断使用は、契約の信頼性を著しく損なう行為です。これに対しては、契約の成立過程を詳細に調査し、無断使用の証拠を集める必要があります。
名義を無断で使用されたことが明らかになれば契約は無効となり、本人に返済義務は生じません。名義の不正使用を防ぐためには、個人情報や名義の管理を徹底し、不審な動きがあれば直ちに対応しましょう。
なお、自分名義で勝手に借金を作られた場合の対処法については、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
2章 【注意】借用書がなくても借金の契約は無効にならない
前章で挙げたケースに該当しないかぎり、借用書がない、あるいは不備があっても借金の契約自体は無効になりません。
なぜなら借用書の有無は、契約の成立に影響しないからです。借用書はあくまで契約内容を証明するための書面です。法的に借金の契約が成立するためには、借用書の有無に関係なく、双方の合意と金銭の受け渡しです。
つまり、口頭での契約であっても、当事者同士が借金の条件について合意していれば、その契約は有効です。たとえば、貸主と借主の間で借金の取り決めが口頭で行われ、その内容が明確であれば、借用書がなくても契約は有効と見なされます。
重要なのは、借金の条件について当事者間で明確に合意があるかどうかです。ただし、証拠が不十分な場合には、契約内容の証明が困難になる場合があるのも否めません。
また、借用書がない場合には、後々のトラブルを避けるために注意が必要です。借金の返済を巡る争いが起こった場合、借用書があると契約内容を証明しやすくなるのも事実です。
借用書が存在しない場合は、メールやメッセージのやり取り、第三者の証言などで契約の成立を証明しなければなりません。したがって、借金の契約を結ぶ際には、できるだけ書面で記録を残す姿勢が不可欠です。
なお、借用書の書き方や注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
3章 借金の契約が無効になっても返済しないといけない?
借金の契約が無効とされた場合でも、受け取ったお金を返済する必要があります。これは原状回復義務にもとづくもので、契約が無効であっても借主は受け取った利益を返さなければなりません。
具体的な返還の義務は、契約が無効とされた理由や状況によって異なります。契約が無効である旨が判明した場合、通常は借主が全額を返還する義務があります。
制限行為能力者である未成年者や成年被後見人が契約を結んだ場合、彼らには「現存利益」の範囲内での返還が認められます。現存利益とは、実際に手元に残っている利益です。
この特例は、彼らの判断能力の不足を考慮し、過度な負担を避けるために設けられています。
一方で、公序良俗に反する契約、極めて違法性の高い契約については、不法原因給付とされ、返還義務が生じない場合もあります。これは、違法な目的で交わされた契約にもとづく給付が法的に保護されないためです。
なお、返還が必要な場合には、貸主が原状回復を請求した時点から法定利率による遅延損害金が発生します。それにより、返還が遅れると借主に追加の負担が生じます。
4章 借金の返済が難しい場合は債務整理について相談しよう
借金の返済が難しい場合、債務整理の検討が有効です。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産などの方法があります。
任意整理は、裁判所を介さずに債権者と交渉し、返済条件を見直す手続です。個人再生は、裁判所を通じて借金の一部を免除し、残りを計画的に返済する方法です。自己破産は、すべての借金を免除する手続で、経済的な再出発を図る手段となります。
債務整理を行うには、まず司法書士や弁護士への相談が推奨されます。彼らは法律の専門家であり、債務整理が必要かどうか、またどの方法が最適かを判断してくれます。
借用書や借金の契約が有効か無効かについても、専門家が適切に判断します。専門家の助けを借りれば、最適な解決策を見つけられ、無理のない返済計画を立てられるでしょう。
さらに、債務整理を行えば、借金の返済負担を軽減するだけでなく、差押えなどの法的手続を回避できます。司法書士や弁護士は、債権者との交渉や裁判所への提出書類の作成を代行してくれるため、手続がスムーズに進むでしょう。
また、債務整理の手続を行えば、取り立てはストップします。加えて、一定期間借金の返済が猶予される場合もあります。それにより、借金返済のプレッシャーから解放され、生活の再建を図れます。
債務整理を依頼すると、専門家が代理人となり、債権者からの督促を止められます。債務整理の主な種類ごとの特徴やメリット、デメリットについては、以下の表にわかりやすくまとめてあります。
債務整理の種類 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
特徴 | 裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法 | 裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法 | 裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法 |
メリット | ・手続が比較的簡単で費用が安い ・裁判所への申立て記録が残らない ・家族や勤務先に知られない | ・借金を大幅に減額できる ・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる ・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い | ・借金が全て免除される ・新しい生活をスタートできる |
デメリット | ・減額できる金額は債権者との交渉次第 ・将来、再び借金問題に陥る可能性がある | ・裁判所への申立て記録が残る | ・裁判所への申立て記録が残る ・官報に永久に掲載される ・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない ・一定期間、就業制限を受ける |
適したケース | ・債務額が大きくなく、将来的に返済できる見込みがある場合 ・任意整理の詳細・解決事例はコチラ ↓ 借金をなくせる任意整理とは?メリット・デメリットや向いている人 任意整理の経験談・解決事例 | ・一定収入はあるが債務額が大きく、任意整理では難しい場合 ・個人再生の詳細・解決事例はコチラ ↓ 小規模個人再生とは|給与所得者再生との違いやメリット・デメリット 個人再生の経験談・解決事例 | ・債務額が非常に大きく、他の方法では返済が難しい場合 ・自己破産の詳細・解決事例はコチラ ↓ 自己破産とは?メリット・デメリットや手続きの流れを徹底解説 自己破産の経験談・解決事例 |
債務整理の種類と生活への影響に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
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まとめ
契約は双方の合意があれば成立しますが、特定の条件下では無効とされます。未成年者や成年被後見人との契約、公序良俗に反する契約、錯誤や詐欺・強迫による契約など、特定の条件下では契約が無効となるでしょう。
また、契約が無効となった場合でも、原状回復義務として借金の返済が必要です。これには全額返還、一部返還、返還不要のケースがあり、それぞれの状況に応じた対処が求められます。
借金の返済が難しい場合には、債務整理の手続を検討することが重要です。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産などの方法があり、司法書士や弁護士に相談すれば、最適な方法を選択できます。
専門家の助言を受けることで、法的手続をスムーズに進め、差押えや遅延損害金のリスクを軽減できます。ここでご紹介した情報を参考に、適切な対応によって借金問題を解決し、経済的な再建を目指しましょう。
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