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借金にも時効があり、一般的な借金の場合、その時効は5年です。(場合によっては10年のこともあります)
一方、もし特定調停を申し立てた場合には、その時効がいくら迫っていても期間がリセットされ、特定調停が調うことで10年に延長されます。
特定調停とは、簡易裁判所の仲介のもと、利息の軽減など、返済条件の緩和などを債権者と債務者が話し合いをした上で合意を目指す制度です。
特定調停を行うことで、支払いの負担を軽減することが見込めます。しかし、前述した通り特定調停をすることで時効が大幅に延びることになりますので、時期によっては特定調停をするか否か慎重に検討する必要があるのです。
この記事では、特定調停の概要や時効について解説しますので、参考にしてください。
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目次 ▼
1章 特定調停とは?|任意整理との違い
特定調停とは、簡易裁判所の仲介のもと、利息の軽減など、返済条件の緩和などを債権者と債務者が話し合いをした上で合意を目指す制度です。
支払いが困難になった債務者(借金をしている人)が、簡易裁判所に申し立てます。
あくまで簡易裁判所が中立な立場で間に入り、債権者と債務者の話し合いをサポートするだけです。そのため、裁判のように必ず決着がつくわけではありません。
債権者によっては、特定調停に応じないところもあります。
1−1 特定調停と任意整理の違い
特定調停と似た手続きとして「任意整理」があります。
「債権者と交渉をして、返済条件について合意を目指す」という意味ではどちらも同じです。しかし、厳密にはあらゆる点で違いがあります。
具体的には以下の表のとおりです。
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特定調停 | 任意整理 | |
---|---|---|
成功率 | 中 自身で行わなければいけないため、任意整理より成功率は低い。そもそも特定調停に応じない債権者もいる。 | 高 専門家が間に入ることが一般的なため、成功率が高い。特定調停よりも債権者が応じやすい。 |
交渉をする人 | 原則として、本人が行う (司法書士や弁護士が代理人になることも可能) | 原則として、司法書士や弁護士などが代理人として行う |
費用 | 1社につき2,000円程度 2社目以降、切手代256円程度が加算 +専門家への依頼費用(※依頼する場合) | 専門家への依頼費用がかかる |
遅延損害金の加算 | 調停成立まで加算される可能性が高い | 和解成立まで加算される可能性が高い(債権者によって異なる) |
取り立てについて | 申立後にストップ | 専門家に依頼後すぐにストップ |
過払い金 | 過払い金の請求は行われない | 交渉時に過払い金の請求が可能 |
債務名義 | 調停成立時に作成した調停調書が債務名義となり、支払いが遅れた場合直ちに財産が差し押さえられる可能性が高い | 交渉成立後、万が一支払いが遅れてもただちに差し押さえとはならない |
それぞれ詳しく解説します。
1−1−1 特定調停と任意整理で、減らせる金額は変わらない
特定調停でも任意整理でも、将来に発生する利息をカットし、3〜5年で返済することになります。
どちらの手段であっても、最終的に減額する金額はほとんど変わりません。
1−1−2 交渉をする人
特定調停では、申立て人本人が債権者と交渉するのが一般的です。もちろん、代理人として司法書士や弁護士に依頼することはできます。(司法書士の場合、1社あたりの債務額が140万円未満の場合に限る)
とはいえ、特定調停の最大のメリットは、専門家に依頼する必要性がなく、費用が安価で済むということです。
そのため、特定調停で専門家に依頼する方はほとんどいません。
- 「1社あたり140万円未満」は元金のみ!
- 司法書士が対応できる基準が「1社あたり140万円未満」とされているため、「借金自体は30万円なのに、利息や遅延損害金で返済しなければいけない額が百数十万になっている」といったケースでは、司法書士に依頼できないと思われる方もいるでしょう。
しかし、「1社あたり140万円未満」というのは元金の話ですので、利息や遅延損害金によって返済総額が膨れ上がっていても、元金が140万円未満であれば司法書士で対応が可能です。
なお、一般の方が消費者金融から140万以上の借金をすることは困難であるため、殆どの場合、元金は140万円未満でしょう。
もし、催告通知などを見てご自身で判断できない場合は、司法書士にご相談ください。その場で判断いたします。
1−1−3 費用
特定調停にかかる費用は、500円の収入印紙代と1,500円程度の切手代のみで、1社のみなら2,000円程度で済みます。また、2社目以降は265円程度の切手代が加算されるだけです。
特定調停の大きなメリットは、費用が安価なことにあります。
1−1−4 遅延損害金の加算
特定調停の場合、申立てから調停の成立までの期間も遅延損害金が発生し、加算されるのが一般的です。
一方、任意整理の場合、債権者によっては和解成立までの遅延損害金を免除してもらえることがあります。
1−1−5 取り立てについて
特定調停の場合、申立てをした時点で債権者からの取り立てがストップします。
任意整理の場合は、専門家に依頼をした時点で取り立てが停止します。
1−1−6 過払い金
特定調停の場合、過払い金については言及しないため、請求することはできません。もし、過払い金が発生していた場合には、別途請求する必要があります。
任意整理の場合、専門家が事前に過払い金の有無を確認し、発生していた場合には交渉時に一緒に請求をしてくれます。
1−1−7 債務名義
特定調停が成立した際に作成される調停調書は債務名義となります。債務名義とは、強制執行として財産を差し押さえる際に必要な文書です。
そのため、万が一調停成立後に支払いが遅れた場合直ちに財産が差し押さえられる可能性があります。
一方、任意整理の場合には交渉が成立しても、調停調書のような債務名義は発行されません。
そのため、任意整理後に支払いが滞っても、債権者は支払督促など債務名義を取得するための然るべき手続きが必要ですので、直ちに財産が差し押さえられることはないでしょう。
2章 特定調停には時効を10年にリセットする効果がある
特定調停にて合意がなされた借金の時効は、調停成立から10年です。
消費者金融やクレジットカード会社からの借金の時効は、債権者から裁判上の請求を受けない限り、ほとんどが借金の時効は最後に返済期日から5年とされていますが、例え特定調停前の時効が5年であっても、調停が成立すれば時効はリセットされ10年となります。
そのため、すでに時効が迫っているようなケースでは、特定調停を慎重に検討すべきでしょう。
2−1 特定調停の時効を待つのはかなり難しい
特定調停で合意に至った借金を返済せず、時効を待つのは非常に難しいでしょう。
以下ではその理由について解説します。
2−1−1 特定調停が調うと時効が10年にリセットされる
特定調停で合意を得た債務は、消滅までの時効期間が5年から10年に延長されます。したがって、調停成立後に支払いを滞り、期限の利益を喪失した時から10年経たないと時効にはなりません。
期限の利益とは、返済期日までにお金を返済すればよいという権利です。これにより、分割払いの債務については、期日までの間支払いをしなくても問題ないとされています。
しかし、返済期日を守らず遅れてしまうと、この期限の利益を喪失してしまい、一括請求を受けることになります。
特定調停で成立した債務については、この期限の利益を喪失した時点で時効がリセットされるため、時効の成立は難しいでしょう。
2−1−2 債権者が債務名義を持っているため迅速に差押えがなされる
特定調停の成立される調停調書は、債務名義に該当します。債務名義とは、強制執行として財産を差し押さえる際に必要な文書です。
一般的な借金において、債権者は債務名義を持っていないため、裁判を起こしたり、支払督促をしたりと、債務名義を取得するための手続きをしなければ差押えができません。
一方、特定調停で成立した債権には債務名義が最初からありますので、債務者が万が一調停成立後に支払いが遅れた場合直ちに財産が差し押さえられる可能性があります。
そのため、時効が成立する前に差押えが行われる可能性が非常に高いでしょう。
3章 時効を成立させるためには援用する必要がある
借金の時効は、期間が経過したからといって勝手に成立するわけではありません。
時効の援用として、消滅時効を利用することを債権者に通知する必要があります。
3−1 時効の援用の方法
時効の援用は、「時効の援用通知書」を作成して、債権者に送付することで行います。
時効の援用通知書は後々の証拠とするために内容証明郵便を利用するのが一般的です。
時効の援用通知書には、以下の内容を記載します。
- 時効を援用する日付
- 差出人の情報
- 債権を特定する情報
- 消滅時効を援用する旨
作成する際は、手書きで作成しても、PCで作成しても問題ありませんが、可能であればPCで作成するのが望ましいです。
3−2 時効援用の注意点
時効援用をする際には以下の2点を
援用通知書は自身で作成することもできますが、専門家のアドバイスなしに時効を援用してしまうと、書面に誤りがあったときに、この機会を逃すまいと債権者が時効をストップするための手続きを取る可能性があります。
また、自身では時効を迎えていると思っていても、実際には迎えていないこともあるでしょう。そのような場合には、もう少しで時効を迎えられたのに誤ったタイミングで援用通知書を送ったことで債権者が動き出してしまうこともあります。
さらに、時効援用通知が債務の承認に該当して、時効の期間がリセットされてしまう可能性があることにも注意が必要でしょう。
そのため、時効の援用をする際には、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
4章 まとめ
特定調停で債権者と和解した場合、特定調停前の時効が例え残り数ヶ月であっても、その債権に対する時効は10年にリセットされます。
そのため、特定調停は慎重に検討するべきです。
また、特定調停は自身で対応するのが一般的ですので、難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
特定調停よりも任意整理を専門家に任せたほうが良いケースもあります。
そもそも特定調停すべきか、他に解決策はないかを知るためにも一度専門家に相談することをおすすめいたします。
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時効の援用に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。
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