名義貸しをすると詐欺罪に該当する可能性あり!罪の重さと罰則を解説

司法書士市川有美

監修者:グリーン司法書士法人   市川有美
【所属】大阪司法書士会 登録番号大阪第4555号 【保有資格】司法書士

借金返済の知識

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「スマホの契約ができないからって、代わりに契約の代理を友人に頼まれたけれど大丈夫かな」

「もっとお金を借りたいからと兄弟に自分の名義で借入を頼まれてしまった」

自分の名義を他人に貸す「名義貸し」を他人から頼まれた経験がある方は少なくないでしょう。

しかし、名義貸しは詐欺罪に該当し、犯罪となる可能性がある危険な行為です。大きなトラブルに巻き込まれる可能性があるため、絶対にやってはいけません。

この記事では、名義貸しの危険性とデメリットを解説します。名義貸しを考えているは、名義貸しによってどのような罪に該当するのか確認しましょう。

1章 名義貸しとは自分の名義を他人に貸すこと

名義貸しとは、自分の名義(名前)を他人に貸すことです。具体的には、本来であれば他人が契約すべきものを、自分が契約するかのように装って契約をする行為が挙げられます。

契約上の名義人は名義を貸した人で、実際に使用するのは違う人など、なんらかの事情で利用者が契約できない場合に名義貸しをして契約するケースが多いです。

1-1 名義貸しをするケースがある理由は?

そもそも、なぜ名義貸しをしなければいけない状況なのかを解説します。

考えられるケースは、利用者が契約するときに都合が悪い場合に名義貸しをする場合です。

例えば、利用者が多額の借金をしているにも関わらず、さらに借入を増やしたくなっても、ある一定の金額分までキャッシングをしたら利用限度額に達してしまい借入ができなくなってしまいます。

このままでは追加で借入ができなくなるため、自分の代わりに名義貸しをして借入してもらうといったケースが考えられるでしょう。

自分の名義では、利用限度額に達してしまったので借入ができませんが、他の人であれば借入ができるため追加で借入ができるといった行為が挙げられます。

2章 名義貸しをすると詐欺罪に該当する可能性あり!

名義貸しは、他人を装って契約を結ぶため、詐欺罪に該当する可能性があります。

詐欺罪は、刑法の第246条でも下記のように定められています。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

引用:刑法 法令検索

名義を借りた人も貸した人も詐欺罪に該当する可能性があるので絶対にやってはいけません。

2-1 家族であっても違法なので注意

名義貸しは、家族であっても違法なので注意が必要です。

ただし、高齢の親に携帯電話や賃貸アパートの契約をしてあげるなど、名義を貸さなければいけない事情があるケースは、契約時に携帯会社や不動産会社に伝えて了承を得れば問題になりにくいでしょう。

ブラックリスト入りしている兄弟が審査落ちするからと、自分の名義を貸してカード契約するなど、相手を騙して契約するケースは詐欺罪に該当します。

ただし、実際に使用する本人が携帯電話や賃貸料を滞納した場合、名義人が代わりに支払いしなければいけません。名義貸しはリスクしかないので、やめておきましょう。

3章 【ケース別】名義貸しをすることによる罪の重さは?

名義貸しは例外を除いて、全て違法となります。

名義貸しを頼まれるシチュエーションは、金銭関係の契約や賃貸住宅の契約、携帯電話の契約などさまざまですが、いずれも重い罰が科せられるので危険です。

では、ケース別にどのような罪に該当するのか解説します。

3-1 金銭関係で名義貸しをするケース

友人に「ブラックリスト入りして、これ以上キャッシングできないから名義を使わせて欲しい」と頼み込まれたので、自分の名義を貸してキャッシングさせてあげた。

よくある例としては、お金をこれ以上借入できずに別名義で借りたり、ローンやクレジットカードを契約したりと金銭関係で名義を貸すシチュエーションです。

本人では審査が通らない場合に、第三者に依頼して審査を通すケースが想定されるでしょう。

金銭関係で名義貸しをすると、騙して審査を通したことになるため「詐欺罪」の「幇助犯(ほうじょはん)」に問われる可能性があります。

幇助犯とは、犯罪の実行を手助けしたことに対する罪のことです。つまり、名義を貸した人も罪に問われるので注意しましょう。

3-2 犯罪目的で名義貸しをするケース

SNSで高収入の募集があったので、お金欲しさに使っていない銀行口座を売った。

最近よくあるケースが、SNSやネットの掲示板で、使っていない銀行口座やキャッシュカードを売ってお金にする手口です。

当然、口座を売買したり名義貸しは違法になるため、やってはいけません。犯罪による収益の移転防止による「犯罪収益移転防止法」によって、買った側はもちろん売った側も「犯罪収益移転防止法違反」や「詐欺罪」に該当します。

犯罪収益移転防止法違反に該当すると、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に科せられるだけではなく口座凍結されるため、今後口座が使えなくなる恐れがあります。

もし騙されて銀行口座が売られてしまった場合は、すぐに弁護士や警察に相談しましょう。

3-3 会社の取締役として名義貸しをするケース

独立した友人に「会社の取締役のふりをしてくれ」とお願いされて、名前だけ貸して友人の取締役として会社のホームページに掲載した。

名義貸しをして会社の取締役になること自体は、何か罪に問われることはありません。

しかし、取締役などの会社役員になると、当然ながら取締役の責任が発生します。例えば、会社や従業員への責任や株主への責任など、何か損害や過失があった場合は取締役として責任を取らなくてはいけません。

もし、従業員が不祥事を起こした場合は、取締役である自分が損害賠償請求をされるケースも考えられます。いくら「名義を貸しているだけ」と主張しても、取締役である以上は責任を取らなければいけない可能性があるため注意しましょう。

3-4 賃貸住宅の契約で名義貸しをするケース

姉が多重債務で賃貸契約ができないため、自分の名義で賃貸契約をしてあげた。

入居する本人が審査が通らないからなどの理由で、賃貸物件の契約者として名義を貸す場合、詐欺(利得)罪に該当する可能性があります。

賃貸契約の審査は、入居者の支払い能力や金銭的な信用を確認するためのものなので、違う人物が名義貸しをした場合、正確な情報を知ることができません。

本来審査落ちする人物が間違って入居することで、入居後に家賃の未納や夜逃げなどのトラブルに発展する可能性もあるため、名義貸しは賃貸会社や大家にとっても大変迷惑なものです。

詐欺罪は、名義貸しをした人が科せられるため、犯罪者にならないためにも絶対に名義貸しはやめましょう。

3-5 許認可や資格のために名義貸しをするケース

息子が資格試験に合格できなかったので、親である自分の名義を使って開業届を出した。

不動産業や弁護士、医者など、事業によっては特定の資格や業法上の許認可が必須です。

本来であれば、資格を持っていないと仕事ができない職に就いているので、各業を規制する法律に罰則がある場合には、犯罪に該当する可能性があります。

このシチュエーションは、従事する予定の人物が何らかのアクシデントで資格を取得できず、予定通り仕事に就けなかった場合、業者や親族に名義貸しを依頼するケースが考えられるでしょう。

例えば、医師の資格がない助手に執刀させた場合は医師法違反に該当するため、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられます。

ほかにも、弁護士でない人物が弁護士の業務をした場合は、弁護士法に反するため、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられるなど、職業によって罰則が定められているので注意しましょう。

3-6 携帯の契約のために名義貸しをするケース

友人が「課金のしすぎで親にスマホを没収された」と困っていたので、自分が名義貸しをしてスマホを契約してあげた。

契約者とは違う人物に譲渡するために、携帯電話を契約する行為は「携帯電話不正利用防止法」に該当し、2年以下の懲役、300万円以下の罰金が科せられます。

名義貸しをして譲渡された携帯電話は、犯罪に使われるケースも多く、犯罪行為に加担する可能性もゼロではありません。

実際に、山梨県甲府市の消費生活センター大阪府豊中市の公式サイトでは闇バイトとして携帯電話を複数台購入し、謝礼金を受け取った事件や相談が取り上げられているなど全国でも問題となっています。

信頼できる友人や身内のためだからと思って契約すると、思わぬ事件に巻き込まれる恐れもあるので、絶対にやめましょう。

4章 名義貸しをしたらどんなデメリットがある?

どのようなケースであれ、名義貸しをしたら詐欺罪などの犯罪に該当します。名義貸しをするのも、名義を借りるのも大きなリスクが伴うでしょう。

名義貸しは、自分が犯罪者になるだけではなく、さまざまなデメリットがあります。

ここからは、名義貸しをしたときのデメリットを見ていきましょう。

4-1 犯罪行為に使われる可能性がある

携帯の契約や口座の売買など、名義貸しをすることによって犯罪行為に使われる可能性があります。

例えば、自分名義の口座や携帯電話が振込詐欺に使われたり、薬物などの犯罪に資金の移動に使われたりと知らない間に犯罪行為に加担している恐れも考えられるでしょう。

「本当に知らなかった」と否定しても、結果的に詐欺に加担したと見なされて「幇助犯」に問われるケースもあるため、自分の人生を大きく変えることになりかねません。

4-2 損害賠償金を払う可能性がある

名義貸しが発覚した場合、携帯会社や金融機関から契約違反と見なされて、損害賠償金請求を払う可能性があります。

もし名義を貸した相手が、犯罪行為に使ったり損害を与えた場合、名義貸しをした人も同じく責任を追及されてしまうでしょう。

また、会社の取締役として名義を貸していたケースも注意が必要です。もし従業員が不祥事を起こした場合、取締役として責任を取るために損害賠償金請求を払わなければいけないかもしれません。

名義を貸してしまったばかりに、多額の損害賠償を背負わないためにも絶対に名義貸しはやめましょう。

4-3 借金を肩代わりする可能性がある

身内だからと携帯電話や賃貸の契約をしてあげたものの、実際に使用している相手が支払いをせずに滞納した場合、名義貸しをした人が借金を肩代わりするリスクが考えられます。

名義貸しによって、本来なら審査に通過しない家賃の賃貸契約をしたものの、案の定家賃を滞納してしまった場合は、名義貸しをした人に支払い義務があるので代わりに支払わなくてはいけません。

もちろん、契約携帯会社や賃貸会社の了承を得て、高齢者や未成年の家族のために契約した場合も支払いを滞納したら名義貸しをした人が支払う必要があります。

万が一の場合は、名義貸しをした人が払わなければいけないので注意しましょう。

5章 名義貸しをしてお金を請求された場合の対処法

名義貸しは、家族であろうとしないに越したことはありません。

もし、つい名義貸しをしてしまってお金を請求された場合は、何らかの対処をする必要があるため、覚えておきましょう。

ここからは、名義貸しをしてお金を請求された場合の対処法を解説します。

5-1 名義を借りた本人に払ってもらう

名義を借りた人が家賃やスマホ代の滞納をした場合、名義を借りた本人に払ってもらうのがよいでしょう。

しかし、本来であれば、自力では審査に通らないものを騙して審査に通しているのだから、途中で払えなくなる可能性は十分に考えられます。

今回は支払えたとしても、今後も同じようなことが起こる恐れがあるので注意しましょう。

5-2 自力で返済する

名義を貸してしまった以上は、自分の責任なので自力で返済するのも一つの方法です。今後、二度と名義貸しをしないための勉強代だと思って支払うのもよいでしょう。

ただし、キャッシング目的で名義を貸してしまった場合は、名義を借りた人がまた調子に乗ってキャッシングを繰り返す恐れもあります。

今後の予防のためにも、貸付自粛の登録を信用情報機関に依頼するのがおすすめです。

信用情報機関とは、キャッシングや後払い制度などの信用取引をする金融業が登録している機関で、審査時に信用情報を確認する際に使われます。

貸付自粛の登録をすることによって、これ以上貸付できないので安心です。

5-3 債権者と話し合う

キャッシングやクレジットカードなどで多額の借金を背負ってしまった場合は、債権者に相談しましょう。

名義を借りた人は、そもそも自分では審査に通らないため、支払い能力がない場合が多いです。つまり、名義を借りた人に請求しても返済できないため、債権者は名義人に支払い請求するしかありません。

そうはいっても、金額によっては一括で払えない可能性も高いかと思います。その場合は、債権者に分割払いを認めてもらえないか交渉してみましょう。

5-4 弁護士に相談する

思わぬ犯罪に加担してしまったり、脅されて名義貸しをしてしまった場合は弁護士に相談しましょう。

犯罪行為に巻き込まれてしまった以上は、自分の力だけでは対応できないことがほとんどです。弁護士にいきさつを説明して指示をもらいましょう。

6章 名義貸しによるお金が払えない場合は債務整理を検討しよう

もし名義貸しで多額の借金を背負ってしまった場合は、債務整理を検討しましょう。

債務整理では、大きく分けて3つの手続きをして借金問題を解決できます。

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債務整理の種類手続きの方法こんな人におすすめ
任意整理利息や手数料など元金以外の支払いをカットする手続き返済が長期化して利息が膨らんでしまった人
名義貸しの借金だけを解決したい人
個人再生借金そのものを大幅にカットして完済を目指す手続き支払い能力がある程度ある人
失いたくない財産がある人
自己破産借金自体を免除して支払い義務をなくす手続き完済の目処が立たず返済不能に陥った人

ただし、自己破産は非常に効力が強い手続きのため、違法行為と分かって名義貸しに加担した場合は認められない可能性があります。破産できるかどうかは、自己判断では難しいため、専門家とよく相談して判断しましょう。

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6-1 ただし損害賠償請求は債務整理ができないので注意

注意点として、損害賠償請求は債務整理ができないので注意が必要です。

損害賠償請求は、悪意によって加えた不法行為のため債務整理で減額するのは認められません。自分が断っていれば犯罪行為に巻き込まれたり、取締役として責任を取ったりすることはなかったはずです。

違法と分かっていながら加担した以上は、損害賠償請求は絶対に支払わなければいけません。

7章 名義貸しは違法!頼まれても絶対に断ろう

この記事を通して、名義貸しがどれほど危険なのか分かっていただけたかと思います。

もし、どうしてもとお願いされた場合は、名義貸しのデメリットと罪の重さを説明して断らなければいけません。

自分や周りの大切な人の人生を狂わせないためにも、名義貸しをするのも借りるのも絶対にやめましょう。

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