任意整理で和解できない場合はどうする?和解できないケースと対処法

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

任意整理

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 この記事を読んでわかること
  • 任意整理の概要
  • 任意整理で和解できない8つのケースの内容
  • 任意整理で和解できない場合の対処法

借金問題の解決の手段として広く利用されている「任意整理」は、交渉によって借金を減額し、返済条件を緩和する手続です。とはいえ、すべてのケースで和解が成立するわけではありません。

特に安定収入がない場合やすでに訴訟に発展しているケースなどは、和解が難しいとされています。今回の記事では任意整理がうまくいかなかった場合にどうすればよいのか、その具体的な対策を見ていきましょう。

1章 任意整理とは

任意整理とは債務整理方法のひとつで、借金の返済が難しい場合に債権者と直接交渉して返済条件の見直しを図る法的手続です。裁判所を介さず、将来利息のカットと返済期間の延長を交渉し、返済の負担を軽減できます。

また、特定の借入先のみを任意で選んで手続が行える点が特徴です。たとえば、住宅ローンや自動車ローンを避けて、生活基盤を維持しつつ、借金を返せます。

債務整理のなかで、任意整理は家族や職場にもっともバレにくい方法です。連帯保証人がついている借金を避けて、そのひとに迷惑をかけないようにもできるでしょう。任意整理を行うと、基本的には元金のみを3〜5年で返済できます。

ただし信用情報には事故情報として登録され、完済までの期間を含めて8〜10年間は新たな借入やクレジットカードの利用が制限されるので注意が必要です。メリットとデメリットを理解したうえで判断する必要があります。  

なお、任意整理の手続は司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。法律のプロが交渉を代行してくれるため、債権者とのやり取りに不安がある方も安心して進められます。

任意整理を検討しておられるみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。借金問題のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。

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2章 任意整理で和解できない8つのケース

任意整理は借金問題を抱える方にとって、負担を減らすための方法として広く利用されている手段です。しかし、条件次第では和解が難しい場合もあります。

この章では任意整理で和解できない、次に挙げる8つのケースについて見ていきましょう。

  • 安定した収入がないなど原資が足りない
  • 過去に一度も借金を返済していない・借入期間が短い
  • 債権者が交渉に応じてくれない
  • 債権者がすでに訴訟を起こしている
  • 過去に任意整理をしている
  • 自分で任意整理の交渉・手続をしている
  • 任意整理・借金問題にくわしくない司法書士・弁護士に依頼している
  • 65歳を超えると短い回数でしか和解できない場合がある

2-1 安定した収入がないなど原資が足りない

任意整理を行うには、和解後も確実に返済を続けられる原資となる、財産や安定した収入が必要です。もし厳しい債権者がいれば、そこに多くの原資を振り分けないと和解ができません。結局、ほかの債権者に割り振るお金が足りなくなります。

また、そもそも借金が膨れ上がる過程では、借りることを前提として返せていた自覚に乏しいケースが多いです。たとえば、月に5万円返済しているけれど、内訳は利息が2万円で元金が3万円という場合があります。

5万円を返済し、戻った枠の3万円を借り直して生活しているのにもかかわらず、5万円は返せると誤信しているケースです。実質的には、2万円しか返済の原資がないということになります。

このように借金を借金によって返すのは、自転車操業です。

このあたりの矛盾は借金問題に慣れた司法書士などの専門家であれば、瞬時に判断できるでしょう。よって、依頼したものの和解に至らないというケースは基本的にはないと考えて差し支えありません。

なお、自転車操業とはどのような状態なのかや、抜け出す方法と返済できない場合の対処法について、以下の記事でくわしく解説しています。そちらもぜひ、参考にご覧ください。

任意整理を検討しておられるみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。借金問題のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。

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2-2 過去に一度も借金を返済していない・借入期間が短い

借金をした後、一度も返済を行っていない場合、債権者は任意整理に応じないことが多いです。これは、返済意思がないと判断されるためで、交渉自体が難航する原因になります。

また、借入から短期間での任意整理の申し出も、債権者からは不信を抱かれることが少なくありません。特に、借入後半年未満や、返済実績がほとんどない場合は注意が必要です。

債権者にとって、ある程度の返済実績は任意整理の交渉材料のひとつとされています。したがって、一定の返済履歴を作ることが、任意整理を進める上でのポイントになります。

短期間での任意整理の申し出は急場しのぎと見なされ、債権者からの信頼を得るのが難しいです。特に初期の返済を怠った場合は、和解交渉が難航しやすくなります。返済計画を立てた上で、一定期間の返済を実行するのが賢明です。

このような状況では、任意整理に応じてくれる可能性が低いため、別の手続を検討する必要があります。早めに専門家に相談し、適切な債務整理方法を選択することで、債権者との交渉がスムーズに進む可能性が高まるでしょう。

なお、借金の返済を滞納しそうな場合に、支払いを待ってもらう方法はあるのかや、滞納するリスクなどについては、以下の記事で解説しています。そちらもぜひ、参考にご覧ください。

2-3 債権者が交渉に応じてくれない

任意整理は債権者と合意の上でこそ成立する手続であり、債権者が交渉に応じない場合も少なくありません。金融機関の方針や業績悪化の影響で、交渉を受け付けないケースも見られます。

また、金融機関によっては、任意整理に応じない方針を明示している場合もあります。債権者が交渉に応じない理由のひとつは、過去の支払い状況です。

特に長期の滞納歴がある場合や、ほかの金融機関への任意整理実績がある場合、信頼性が低下して交渉が難しくなります。このようなケースでは、専門家のサポートを受ける姿勢が重要です。

また、個人での任意整理交渉は、債権者が応じない場合が多く、司法書士などの専門家を代理人に立てての交渉が推奨されます。もし任意整理が難しい場合、ほかの債務整理手段を検討するのも選択肢です。

2-4 債権者がすでに訴訟を起こしている

債権者がすでに訴訟を提起している場合、任意整理の交渉は難航する可能性があります。訴訟手続が進行中であっても和解交渉は可能ですが、債権者が裁判を通じて強制的な回収を目指している場合、任意整理に応じる意向が低いといえるでしょう。

債権者は法的手段を通じて債権回収を進めるため、任意整理による和解は困難となります。特に、債権者がすでに判決を取得し、強制執行手続に移行している場合、任意整理の余地はさらに狭まるでしょう。

また、給与の4分の1を差し押さえられるので、専門家に支払う報酬をも準備できません。その場合は法テラスを利用した破産や再生しか解決策はなくなります。

なお、給与の差押えは個人再生の申立てで解除されるかどうかや、強制執行停止までの流れについて、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

2-5 過去に任意整理をしている

過去に任意整理を行った経験がある場合、再度の任意整理は難しくなります。とりわけ、前回の任意整理から間もない期間で再度の申し出を行うと、債権者から返済能力や意思に疑問を持たれるでしょう。

また、過去の任意整理で和解条件を遵守できなかった場合、債権者の信頼を損ね、再度の交渉はきわめて困難です。さらに、複数回の任意整理を行うと信用情報に大きい影響を与えます。

過去の任意整理経験がある場合、再度の債務整理を検討する際には、専門家に相談し、最適な解決策を見つけることが重要です。個人再生や自己破産など、ほかの債務整理手段を検討することも視野に入れるべきです。

2-6 自分で任意整理の交渉・手続をしている

任意整理の交渉や手続を自分でする場合、専門的な知識や経験が不足しているため、債権者に足元を見られる可能性があります。その結果、返済条件が債務者にとって不利になりがちです。

また、債権者は専門家を介さない交渉では、強硬な姿勢を示す傾向があります。さらに、手続の進行や必要書類の準備などの煩雑な作業が多く、個人で対応するには限界があるのです。

手続の遅延やミスが発生すると、交渉自体が破綻するリスクも高まります。専門家のサポートを受ければ、これらのリスクを軽減できるでしょう。

2-7 任意整理・借金問題にくわしくない司法書士・弁護士に依頼している

司法書士や弁護士は幅広い法律分野で業務を行っており、すべての専門家が債務整理に精通しているわけではありません。任意整理を依頼する場合、債務整理にくわしい専門家を選ばないと不利な条件で和解が成立する可能性があります。

特に債務整理経験の浅い専門家では、債権者との交渉において力不足が懸念されるでしょう。債務整理に不慣れな専門家に依頼すると、任意整理がスムーズに進まないことがあります。

経験不足から交渉が不十分になり、返済条件が厳しくなることや手続が遅延するリスクが高まりかねません。また、最新の法改正や判例にくわしくない場合、適切な返済計画を提案できない場合があります。

専門知識が不足していると、個人再生や自己破産といった、ほかの債務整理方法も適切にアドバイスできず、最善の解決策が選ばれない懸念もあります。そのため、依頼する際には専門家の債務整理に関する実績や得意分野の事前確認が大切です。

任意整理を検討しておられるみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。借金問題のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。

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2-8 65歳を超えると短い回数でしか和解できない場合がある

任意整理において、65歳を超える高齢者は返済期間が短縮されるケースが見られます。高齢者の多くは収入源が年金に限定され、通常の返済期間にわたる長期的な返済が難しいと判断される場合が多いためです。

このため、3年以内の短期間での和解条件が設定される傾向があります。また、高齢者の場合、病気や介護といった将来的なリスクが高まるため、債権者は返済計画に慎重になるのです。

返済途中で健康問題が生じるリスクを考慮し、より確実な返済を求めて短い回数での和解が提案されやすくなります。さらに、高齢者は新たな就業や収入源の確保が困難であることも、短い回数でしか和解できない理由のひとつです。

とはいえ、任意整理を検討する高齢者にとって、短期間での返済計画は大きな負担となります。したがって高齢者であれば、専門家に相談のうえで現実的な返済計画を立てるのが、より望ましいわけです。

3章 任意整理で和解できない場合の対処法

任意整理で債権者との和解が成立しない場合、借金問題はさらに深刻化するおそれがあります。しかし、適切な対処法を知っていれば、状況の改善は可能です。

この章では、任意整理で和解できない場合の対処法として、次に挙げる3項目を見ていきましょう。

  • 任意整理に応じてくれない業者以外と交渉・手続する
  • 任意整理・借金問題に強い司法書士・弁護士に相談する
  • 任意整理以外の債務整理を検討する

3-1 任意整理に応じてくれない業者以外と交渉・手続する

一部の債権者が任意整理に応じてくれない場合でも、ほかの債権者とは交渉を進められます。すべての債権者との和解が難しい場合、応じてくれる債権者から手続を開始するのが賢明です。

応じてくれる業者との和解が成立すれ返済負担が軽減され、任意整理に応じない業者への返済も継続しやすくなります。部分的な解決でも、全体の状況を改善する効果はあるでしょう。

また、時間を置いて再度交渉を試みると、業者の態度が変わる場合もあります。ほかの債務が整理されているのを示せば、交渉がスムーズに進む可能性も高まるでしょう。

3-2 任意整理・借金問題に強い司法書士・弁護士に相談する

任意整理で行き詰まった場合、借金問題に精通した司法書士や弁護士に相談するのが賢明です。専門家は複雑な法律知識を持ち、最適な解決策を提案してくれます。

専門家に依頼すれば債権者との交渉力が高まり、任意整理に応じない業者とも和解できる可能性が高まります。また、法的な手続もスムーズに進められるでしょう。

さらに、司法書士や弁護士はほかの債務整理手段についてもアドバイスしてくれます。任意整理以外の方法が適している場合、適切な手続を提案してくれるでしょう。専門家に早い段階で相談することで、問題の深刻化を防げます。

3-3 任意整理以外の債務整理を検討する  

任意整理での和解が成立しない場合、ほかの債務整理方法を検討するのが賢明です。任意整理に代わる方法としては、個人再生と自己破産があります。

この章では任意整理以外の、2種類の債務整理をくわしく見ていきましょう。

3-3-1 個人再生  

個人再生は、裁判所の介入により、借金を通常5分の1、最高で10分の1まで減額できる法的手続です。安定した収入がある人が利用できる手段であり、減額後の借金を3〜5年かけて分割返済します。

個人再生のメリットのひとつは減額幅が大きいことです。また、マイホームを保持したまま債務整理を行える「住宅ローン特則」が利用できる点もメリットで、住宅ローンが残っていても住居を失わずに債務整理ができます。

ただしすべての債務が対象となるため、保証人がいれば迷惑をかけるのは必至です。官報にも記載されるので、法律関係や不動産関係の知人にはバレるかもしれません。

信用情報に事故情報が登録され、返済期間を含めておおむね8〜10年間はクレジットカードの利用や新規借入は難しくなるでしょう。この個人再生は裁判所を通しての手続なので専門知識が求められ、専門家のサポートが欠かせません。

個人再生の手続きによっては債権者の同意が必要となり、任意整理を認めない業者が多く含まれると利用できないケースもあります。その場合は、自己破産を選びましょう。

3-3-2 自己破産  

自己破産は、裁判所に破産を申し立ててすべての借金を免除してもらう最終手段ともいえる法的手続です。支払い能力がまったくない場合に適しており、免責が下りれば債権者への返済義務がすべて免除されます。

ただし、換価できるほとんどの財産(持ち家やマイカー、高級品など)は債権者への弁済に充てるために処分されるのは避けられません。また、会社役員や弁護士などの一定の職業や資格は、一時的に制限を受けます。

さらに、官報にも記載されるので、プライバシー上のリスクもゼロではありません。信用情報には少なくとも7年間の影響があります。家族や職場、保証人への影響も大きいです。

なお、免責不許可事由に該当する行為(たとえば浪費やギャンブルによる借金)は免除されません。この自己破産も個人再生同様、専門家のサポートが不可欠です。

なお、最後に債務整理の主な種類ごとの特徴やメリット、デメリットをまとめた一覧表を掲載しておきましょう。債務整理の方法を比較検討する際の、参考にしてください。

債務整理の種類任意整理個人再生自己破産
特徴裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法
メリット・手続が比較的簡単で費用が安い
・家族や勤務先に知られない
・厳しい取り立てを止められる
・新たな借入が制限される
・借金を大幅に減額できる
・住宅や車などの財産を守れる
・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い
・厳しい取り立てを止められる
・新たな借入が制限される
・借金が全て免除される
・新しい生活をスタートできる
・厳しい取り立てを止められる
・新たな借入が制限される
デメリット・減額できる金額は債権者との交渉次第
・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない
・複雑な裁判所申立てが必要
・複雑な裁判所申立てが必要
・官報に掲載される
・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない
・一定期間、職種制限を受ける
適したケース・債務額が大きくなく、将来的に返済できる見込みがある場合
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債務整理の種生活への影響に関しては、以下の記事でくわしく解説しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。

以下の返済シミュレーションツール【バーチャル債務整理】を使えば、借金問題の解決のために債務整理を行った場合に、借金がどれくらい減るのかの目安がわかります。

債務整理を検討しておられるみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。借金問題のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。

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まとめ

任意整理は、借金問題の解決手段として広く活用される一方、すべてのケースで和解が成立するわけではありません。特に、収入の不安定さや債権者の意向によっては、任意整理が難航するケースが多く見受けられます。

このような場合は、状況に応じた柔軟な対策が求められます。和解が難しい場合の対策は、応じてくれる業者とのみ交渉する、借金問題に精通した専門家に相談する、別の債務整理方法を検討するなどです。

個人再生や自己破産など、ほかの手段も視野に入れることで、自分に合った解決策を見つけやすくなります。自身の状況を冷静に見つめ直し、借金問題に長けた専門家のサポートを受け、最善の解決策を選択しましょう。

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