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自己破産をすると、給料が差し押さえられてしまうのではないかと心配する声をよく聞きます。
自己破産の手続き中に給料が差し押さえられることはありません。
ところで、一般に「差し押さえ」と聞くと裁判で判決を取って強制執行をして・・・ということを思い浮かべる人が多いでしょう。もちろん、通常の意味での差し押さえはこのような場合に使われます。
一方、自己破産における「差し押さえ」は、正確には「管財人によって強制的に処分される」というイメージです。法律用語で財団組入れの対象になる、と表現します。
財団組み入れの対象になると、給料を含め、破産者が所有している財産の一部は管財人によって強制的に現金に替えられ、債権者に分配されます。
本記事ではこの財団組入れのことを便宜上「差し押さえ」と表現していますので、それを踏まえてお読みください。
目次 ▼
1章 自己破産では給料は原則として差し押さえられない
自己破産をしたときに差押えの対象となる財産は「自己破産開始決定時点」の所有していた財産です。
そのため、自己破産手続き中もしくは手続き後に受け取った給料やボーナスは差押えの対象外となります。
なお、念のため繰り返しますが、自己破産では「差し押さえ」ではなく「処分」というのが正確な表現です。処分というのは、給与を含め、財産を換価し債権者に分配することを指します。
ここでは便宜上「差し押さえ」と表現しています。
1−1 破産手続開始時点で受け取り予定の給料は差し押さえの対象
自己破産手続において給料が差し押さえられる可能性があるのは、破産手続開始時点で給与債権(受け取り予定の給料)がある場合です。その場合、給料の一部が差し押さえの対象になります。
例えば、毎月月末締め、翌月25日払いの場合、月末時点で「25日に給料を受け取る権利(給与債権)」を得ることになります。
この場合、1日に破産手続開始決定が降りた場合、その時点で破産者は給与債権を持っています。給与債権も財産に含まれますので、差し押さえの対象になります。
ただし、給与債権は全額対象になることはありません。差し押さえ禁止財産に則り、給与債権の4分の3(上限33万円)まで手元に残すことが可能です。
例えば、給与債権が24万円の場合、差し押さえの対象になるのは6万円までであり、残りの18万円は手元に残すことができます。
1−1−1 自由財産の拡張が認められ、差し押さえられないことがほとんど
前述したように、破産手続開始決定が出た時点で給与債権が発生している場合には給料が差し押さえの対象になる可能性があります。
しかし、こと給与債権に関しては、実務上は自由財産の拡張が認められ、差し押さえられないことがほとんどです。
自由財産の拡張とは、裁判所が「破産者の生活再建に必要不可欠な財産」であると認めた場合に、差し押さえ(処分)されない財産が拡張されることです。
給料が、生活の再建に必要な範囲内である場合には、自由財産の拡張が認められる可能性が高く、かつ、ほとんどの場合は給与の性質上、生活に必要不可欠な財産であると認められるでしょう。
なお、給料が生活の範囲内を超えている特殊な場合や、ボーナスなどの高額な一時報酬の場合には自由財産の拡張が認められない可能性があります。
実際、個別のケースで自由財産の拡張が認められるかどうかは、依頼している専門家に相談してみるのがよいでしょう。
1−2 破産手続開始前後の給与は差し押さえの対象外
破産手続開始決定が出る前に支払われた給料は、少なくとも「給与債権」として差し押さえられることはありません。
ただし、給与が口座に振り込まれるなどして預貯金や現金として手元にある場合は、給料としてではなく預貯金・現金として差し押さえの対象になります。99万円を超える財産は差し押さえの対象になるので注意しましょう。
例:給与の一部を貯金し続けて500万円の残高が口座にある場合
一方、破産手続開始決定後の財産は「新得財産」(新しく得た財産)として差し押さえの対象外になります。この部分は給与債権であろうと預貯金であろうと問題なく自由に使うことができます。
1−3 退職金は全額もしくは一部が差し押さえの対象
退職金は、受け取るタイミングによって差し押さえの対象になる割合が異なります。
具体的には以下のとおりです。
すでに退職金を受け取っている場合 | 全額 |
退職したがまだ退職金を受け取っていない場合 | 4分の1 |
まだ在職中で退職の予定がない場合 | 8分の1 |
自己破産における退職金の取り扱いについて詳しくは以下の記事を御覧ください。
2章 自己破産をすれば給料の差し押さえを止めることができる
この章における「差し押さえ」は、冒頭で説明した本来の意味における差し押さえ、つまり裁判をして判決を取得して強制執行という場合における差し押さえを意味します。
借金の返済を滞納し続け、債権者(消費者金融や銀行など)が訴訟をした場合、最終的に強制執行として給料や貯金などの財産を差し押さえる可能性があります。
しかし、自己破産の申立てをして、破産手続の開始決定が出れば、差し押さえが中止または失効します。
なお、差し押さえのがストップするまでの流れは、自己破産が同時廃止か管財事件かによって異なります。それぞれ簡単に説明します。
2−1 同時廃止
同時廃止の場合、同時廃止決定(※)後に、差し押さえを担う裁判所(執行裁判所)に破産開始決定が出たことを報告することで、差し押さえが中止されます。
ただし、自己破産が終了する(免責が下りる)までは、差し押さえられた財産がプールされます。給与の場合、雇用主の元にプールされるのが通常です。
この時点では破産免責決定が出るか未確定である以上、形の上では「債権者と債務者のどちらに渡せばいいか不確定である」となるためです。
最終的に免責決定が出ると、プールされていた財産をすべて受け取ることができます。
(※)同時廃止決定・・・正しくは破産手続開始兼同時廃止決定。申立人に財産がなく、財産を清算することなく、開始と同時に破産手続きを終了するという旨の決定書のこと。
2−2 管財事件
管財事件の場合、破産手続開始決定と同時に差し押さえが失効します。その後は、すぐに給与の全額を受け取ることができます。
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よくあるご質問
- 自己破産をすると給料は差し押さえられる?
- 自己破産をしても、原則として給料が差し押さえられることはありません。
ただし、破産手続開始の時点で給与債権(受け取り予定の給料)が発生している場合にはその一部が差し押さえの対象になります。
自己破産と差し押さえについて詳しくはコチラ
- 自己破産をするとクレジットカードは解約になる?
- 自己破産すると、破産手続の時点で所有しているクレジットカードは「強制解約」されるため、使うことができなくなります。
自己破産とクレジットカードについて詳しくはコチラ