自由財産の拡張とは?認められる範囲や例・申立手続きの流れについて

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産
自由財産の拡張とは?認められる範囲や例・申立手続きの流れについて

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自由財産の拡張とは何ですか?
司法書士
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自由財産の拡張が認められれば、自己破産後に手元に残せる財産の金額を増やせます!

自由財産とは、破産者が自己破産による免責決定後も手元に残せる財産です。
自由財産の金額は法律によって決められていますが、自由財産の拡張が認められれば自由財産として手元に残せる金額を増やせます。

ただし、自由財産の拡張はあくまでも破産後の生活に必要不可欠となる場合のみに適用されます。
また、自動的に適用されるわけでではなく自由財産の拡張を裁判所に申立てなければなりません。

本記事では、自由財産の拡張とは何か、認められる財産の金額や種類について解説していきます。
自己破産については、下記の記事でも詳しく解説しています。

1章 自由財産の拡張とは

自由財産の拡張とは

自由財産の拡張とは、破産者の生活を保障するため裁判所が自由財産の範囲を広げることです。
自由財産とは、破産手続き後に破産者の手元に残せる財産であり、法律によって決められています。

しかし破産者の生活に影響が出る場合は裁判所に申立て自由財産の拡張を認めてもらい、本来決められている財産よりも多く手元に残すことが可能です。

次の章では、具体的に自由財産の拡張によって増やせる財産の例を詳しく見ていきましょう。

2章 自由財産の拡張が認められる財産の例

自由財産の拡張が認められる財産は、原則として「総額」99万円までの財産です。
また、99万円内の範囲であればすべての財産で自由財産の拡張が認められるわけではなく、ある程度残せる財産の種類は決まっています。

詳しく確認していきましょう。

2-1 定型的拡張財産

裁判所によって自由財産の拡張が原則として認められる財産を定型的拡張財産と呼びます。
定型的拡張財産は主に以下の通りです。

  • 預貯金
  • 生命保険解約返戻金
  • 自動車
  • 居住用家屋の敷金債権
  • 電話加入権
  • 退職金債権

上記のように、自由財産の拡張が認められる財産は破産者の生活において必要不可欠である財産といえます。
そのため、後述する評価額が99万円の範囲内に収まったとしても、趣味に使う資産や宝飾品など生活していく上でなくても支障がないと判断される財産は自由財産の拡張が認められない可能性があります。

2-2 財産評価額の合計99万円までの財産

先ほど解説した定型的拡張財産に該当したとしても、すべての財産で自由財産の拡張が認められるわけではありません。

自由財産の拡張が認められる財産は、原則として評価額の合計金額が99万円までの財産です。

例えば、以下のように定型的拡張財産の評価額が合計99万円を超える場合には、自分でどれを残すのか選択する必要があります。

  • 預貯金:50万円
  • 自動車:50万円
  • 生命保険解約返戻金:20万円

99万円を超える財産を自由財産と認めてもらうことも可能ではありますが、この自由財産の拡張は例外的処理で実際には難しいことが多いでしょう。

また、自由財産の拡張はすべての自己破産手続きで認められるわけではありません。
次の章では、自由財産の拡張が認められる条件について詳しく解説していきます。

3章 自由財産の拡張が認められる条件

自由財産の拡張は、破産者の生活状況や破産手続き開始時において破産者が所有していた財産の種類や金額、収入条件を考慮して決定すると法律によって決められています。

司法書士
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すべての自己破産で自由財産の拡張が認められるわけではないのでご注意ください。

自由財産の拡張は大まかな判断基準が設けられているものの、裁判所が破産者の状況をみて個別に判断をします。
具体的には「自由財産の拡張をしないと自己破産後に破産者が生活の立て直しをすることが難しくなるのか」といった部分を見られます。
自分の都合のみで自由財産の拡張が認められるわけではない、と理解しておきましょう。

これを専門的に表現すると「破産者の経済的更正に必要不可欠であるという特段の事情が認められる場合」には自由財産の拡張が認められる、となります。

裁判所に自由財産の拡張を認めてもらうには、破産者側が自由財産の拡張を認めるべき理由や事情を説明しなければなりません。
手続きや裁判所への説明に不安があるのであれば、債務整理に詳しい司法書士や弁護士への相談をおすすめします。

4章 同時廃止では自由財産の拡張は関係ない

破産後も残せる財産の金額を増やすための自由財産の拡張は、管財事件のみで必要となります。
同時廃止はそもそも破産手続き開始時に破産者がほとんど財産を持っていない場合に行われる手続きなので、同時廃止で自己破産手続きを進める場合には所有している財産をすべて破産後も手元に残せます。

司法書士
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自由財産の拡張の問題が顕在化するのは管財事件だけと理解しておきましょう。

5章 自由財産の拡張を申立てる流れ

自由財産の拡張は自動で認められるわけではなく、破産者が裁判所に対して申立手続きをする必要があります。
申立後は以下の流れで破産管財人による調査が行われます。

  1. 裁判所の職権もしくは破産者自身が自由財産の拡張を申立てる
  2. 裁判所は破産管財人に意見を聴くなどをして自由財産の拡張をすべきか判断する
  3. 自由財産拡張可否について裁判所が決定をする

自由財産の拡張申立てには「自由財産拡張の申立書」を提出します。
また、申立ては破産手続開始決定の確定日から1ヶ月までに行わなければなりません。
ただし、裁判所の判断により期限を延長してもらえるとされています。

東京地方裁判所では自由財産の拡張申立ての流れが異なる
東京地方裁判所の場合、自由財産の拡張申立てをする前に破産管財人との協議が必要です。
破産手続きをスムーズに進めるためにも、早い段階で破産管財人と自由財産の拡張について話し合いをしておきましょう。

6章 自由財産の拡張を行うときの注意点

自由財産の拡張を行えば、破産後も手元に残せる財産の金額を増やせます。
メリットがある一方で、自由財産の拡張にはいくつか注意すべき点もあります。
詳しく確認していきましょう。

6-1 財産目録にない財産は自由財産の対象外になる

自己破産申立て時に財産目録に記載していなかった財産に関しては、自由財産の拡張は認められません。
意図的に財産目録に記載していなかったわけではなく、後から財産を発見した場合も自由財産として認められないので注意が必要です。

さらに、財産目録に記載していない財産が後から発見された場合には、自己破産の免責不許可事由のひとつである財産隠しに該当する恐れもあります。
自己破産による免責そのものが認められなくなる恐れもあるので、財産目録時には自分が所有する財産すべてを記載しておきましょう。

6-2 自由財産の拡張は破産手続き開始決定確定日の1ヶ月後まで

本記事4章で解説したように、自由財産の拡張は破産手続き開始決定確定日の1ヶ月後までと期限が決められています。
ただし、期限はあくまで原則的なものであり実務上では破産手続きが終結するまでの期間内に申立てをすれば自由財産の拡張が認められるケースは多いです。

しかし、破産手続きが完了する直前に自由財産の拡張を申し込むと手続きが長引く恐れもあり、生活の立て直しに時間がかかってしまいます。

司法書士
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自由財産の拡張を検討している場合には、早めに申立てを行いましょう。

7章 自由財産の拡張を認められなかったときの対処法

自由財産の拡張を裁判所に認めてもらえなかった場合には、主に2つの対処法があります。
ひとつは自由財産の拡張を諦め、潔く財産を手放すことで、2つ目は個人再生や任意整理など他の債務整理を検討することです。

ただし、自由財産の拡張が認められないことを理由に他の債務整理に切り替える場合には自己破産の申立てを一旦取り下げる必要があります。
また、他の債務整理方法では借金を返済できないから自己破産を選択した場合には、そもそも他の債務整理を認められない可能性もあるでしょう。
自由財産の拡張が認められなかった場合に他の債務整理に切り替えることはあまり現実的ではない点はご理解ください。

7-1 財産を手元に残すのを諦める

自由財産の拡張が認められなかった場合もしくは自由財産の拡張をしても残しきれない財産がある場合には、財産を手元に残すのを諦め自己破産による借金の返済義務をなくすことに集中するのも選択肢のひとつです。

自己破産の最大のメリットは、借金の返済義務をなくし生活の立て直しを図れる点です。
自己破産が認められる以上、没収される財産の金額より返済義務が免除される借金の金額が大きいはずなので、手元に残せない財産については潔く諦めることも必要になります。

7-2 他の債務整理を検討する

自己破産以外にも債務整理にはいくつか方法があるので、より手元に財産を残しやすい債務整理を行うのも選択肢のひとつといえるでしょう。
自己破産以外の債務整理には、主に以下の3つがあります。

債務整理特徴
個人再生借金を5分の1~10分の1に減額し、3~5年で返済していく制度
任意整理債権者と交渉をし、将来の利息カットや返済期間の見直しをしてもらう制度
特定調停裁判所にて債権者と債務者で話し合い、返済条件の見直しをする制度

上記の債務整理を行えば、自己破産よりも手元に残せる財産を増やせる可能性はありますが以下の点に注意が必要です。

  • 自由財産の拡張は自己破産申立て後に行う必要があるので、他の債務整理を行うには自己破産の申立て取り下げが必要
  • 他の債務整理は自己破産よりも借金減額効果が低いので、借金の金額によっては他の債務整理では対応できない可能性が高い

上記の理由により、自由財産の拡張を申立てた後の他の債務整理への切り替えは現実的ではありません。
他の債務整理を検討したい場合には、自由財産の拡張申立て後ではなく、自己破産申立て前に検討することが大切です。

債務整理に詳しい司法書士や弁護士であれば、複数の債務整理方法を比較してご相談者様の資産状況や借金の金額に合った提案を行えます。

まとめ

自由財産の拡張が認められれば、自己破産による免責完了後に手元に残せる財産の金額を増やせます。
ただし、自由財産の拡張は自動的に認められるわけではなく裁判所への申立が必要です。
また、自由財産の拡張が認められる財産の種類も生活をしていく上で必要不可欠なものに限定されており、金額も合計99万円までと決まっています。

自由財産の拡張をしたい、できるだけ手元に財産を残した状態で自己破産をしたいと考えている場合には、債務整理に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。

グリーン司法書士法人では、自己破産をはじめとした債務整理に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

自由財産の拡張とは?
自由財産の拡張とは、破産者の申立もしくは裁判所の判断によって破産者が所有できる自由財産の範囲を広げることです。
自由財産の拡張について詳しくはコチラ
自由財産の拡張が認められる条件とは?
自由財産の拡張を認めるかは裁判所が個別に判断します。
認められる基準は「自由財産の拡張をしないと自己破産後に破産者が生活の立て直しをすることが難しくなるのか」です。
自由財産の拡張について詳しくはコチラ
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