不動産投資が原因で自己破産に至るケース|自己破産しないための対策

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産
不動産投資が原因で自己破産に至るケース|自己破産しないための対策

この記事は約 15 分で読めます。

悩む初老の男性
悩む初老の男性
最近、周りで不動産投資を始めて順調だって話をよく聞きます。そんなに上手くいくものなのでしょうか? 利益が出ず、自己破産・・・なんて事態になる可能性はないのでしょうか?
司法書士
司法書士
確かに不動産投資はローンの審査が通りさえすれば始められるため、投資の中でも手軽と言われていますが、“投資”である以上リスクはあります。
悩む初老の男性
悩む初老の男性
自己破産せざるを得ない状況になるのは、どのようなケースなのでしょうか?
司法書士
司法書士
部屋が埋まらなかったり、購入した不動産が高額で利益がうまく出せなかったりするケースが考えられます。
悩む初老の男性
悩む初老の男性
そうなのですね。ところで、「投資」による借金の場合自己破産ができない可能性があると聞いたのですが、不動産投資であってもそうなのでしょうか?
司法書士
司法書士
はい、不動産投資も株やFXといった投資と同様に免責不許可事由に該当し、免責許可が下りない可能性があります。しかし、免責不許可事由に該当したとしても、裁判所の裁量で免責が下りることも珍しくありません。不動産投資による借金を負ってしまった方も、諦めずご相談下さい。

不動産投資は会社員でも始められる投資としてポピュラーなものになりつつあります。しかし、「投資」というからには相応のリスクがあり、結果的に自己破産をしてしまう方もいらっしゃいます。

また、不動産投資は免責不許可事由に該当する可能性があります。とはいえ免責不許可事由に該当しても裁判所の裁量で免責が下りることがほとんどです。

ただし、その場合には管財事件となり、手続きにかなりの手間と費用を要することになります。

このように、不動産投資をしている方が自己破産をする場合にはリスクが伴います。

ここでは、不動産投資をしている方の自己破産について解説しますので、ぜひ参考にして下さい。

1章 不動産投資で自己破産に至るケース

悩む男性
悩む男性
不動産投資って投資の中でもリスクが低いように思いますが、どのようなケースで失敗し、自己破産に至ってしまうのでしょうか?
司法書士
司法書士
不動産投資に失敗する大きな原因は「物件選びの失敗」です。物件の良し悪しだけではなく、予算に合わない高額な不動産を買ってしまったり、背伸びをして高額な住宅ローンを組んだりすることが要因だと思われます。

不動産投資によって自己破産に至る原因として考えられるのは主に以下の3つのケースです。

  • 不動産を住宅ローンで購入した
  • 高値で不動産を購入した
  • 不動産選びを失敗した

それぞれ詳しく解説します。

1−1 不動産を住宅ローンで購入した

不動産投資をする方の多くが住宅ローンを利用して不動産を購入しているでしょう。

住宅ローンも借金です。それが返済できなくなれば、自己破産せざるを得なくなるでしょう。

一方、投資対象の不動産を一括購入している場合、その不動産自体が資産となるため、万が一投資がうまく行かなくなったとしても自己破産をするリスクは大きく軽減できると言えます。

最近では、築年数の古い安価な物件を自身でDIYして不動産投資する方も増えています。そのような方法であればリスクは低いでしょう。

1−2 高値で不動産を購入した

高額な不動産であればあるほど利回りが良いと思い、無理をして高値で購入してしまう方もいらっしゃいます。

しかし、実際に蓋を開けてみると家賃相場がそれほど高くなく、「家賃が安く入居者がいても赤字になってしまう」、「元が取れる家賃設定にすると入居者がいない」といった負の連鎖を引き起こし、破綻してしまう可能性があります。

不動産投資のために購入する物件は、相場をしっかりと見極めて購入するようにしましょう。

1−3 不動産選びを失敗した

不動産投資を成功させるために必須なのが、入居者が途絶えないということです。

「都心へのアクセスがいい」「人気エリア」「学生が多い」など選ぶ基準は様々ありますが、選び方を失敗すると思うように入居者が入らず投資に失敗してしまう可能性が高くなります。

予算がないからと安価な物件を選んだことによって、なかなか入居者がつかずに赤字が続いてしまうこともあります。

不動産を購入する際には、エリアや築年数、間取りなどをしっかりと吟味するようにしましょう。

2章 不動産投資で自己破産をしないための対策

悩む男性
悩む男性
もうすでに不動産投資を始めています。最近入居者が少なくなっていて赤字寸前・・・。このままでは自己破産してしまうかもしれません。自己破産しないためにはどうしたらいいでしょうか?
司法書士
司法書士
まずは収支を見直してみて下さい。不動産投資において自己破産に至るのは【収入<ローンの返済】になったときです。収入を増やすために入居率を上げる施策を考える、返済を減らすためにローンの返済計画を見直すなどの対策をしてみるのがよいでしょう。

不動産投資がうまく行かないと感じた時、自己破産をしないために以下の対策を取ってみましょう。

  • ローンの借り換えをする
  • 入居率を上げる
  • 物件を手放す

それぞれ詳しく解説します。

2−1 ローンの借り換えをする

ローンの返済が厳しいと感じたら、ローンの借り換えを検討してみましょう。

ローンの借り換えとは、今より金利が低いローンで新たに借り入れをして、現在のローンを返済することです。

昨今は超低金利時代とも言われるほど、金利が下がっています。借り換えをすることで月々の返済額を減らせる可能性があります。

月の返済額が減れば、収支も立てやすくなるでしょう。

2−2 入居率を上げる

不動産投資において最も大切なのが入居率です。安定して入居者がつけば、収入も安定します。

一方、退去者が出たら新しい入居者を探すためのコストがかかりますし、空き部屋になっている間は赤字になってしまいます。

一度入居した人がなるべく長く住んでくれるよう、空き部屋が出てもすぐに入居者が見つかるよう工夫をすることが大切です。

例えば以下のことを心がけましょう。

  • 共用部分を清潔に保つ
  • 住民が抱えるトラブルに迅速に対応する
  • 水回りなどの設備を新しくする

2−3 物件を手放す

不動産投資が原因で自己破産しなければいけなくなりそうな状況なのであれば、最終的に物件を手放すことも検討しましょう。

ローンの返済を滞納し続けると、不動産が競売に掛けられてしまう可能性があります。

また、売却をするのであれば築年数が浅く価値が高いうちに売却するほうが良いでしょう。

ただし、他の借金もあり、それも原因で破産しそうな場合、勝手に処分すると「直前処分」として問題になる可能性があります。

いずれにしろ、不動産を手放す場合には事前に専門家に相談するようにしましょう。

具体的な不動産の売却方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

3章 不動産投資は免責不許可事由に該当する可能性が高い

不動産投資をしている方が自己破産をする場合、投資行為が免責不許可事由に該当し、免責が下りなくなる可能性があります。

免責不許可事由とは?
免責不許可事由とは、自己破産において免責を許可しないとする要件で、以下のようなことが該当します。

・借金の原因がギャンブルや投資、浪費などである
・カード利用で購入した商品の現金化をしたことがある
・返済可能なフリをして借りた不当な債務である
・債権者を平等に扱わず一部の借金だけ優先させて返済した
・免責決定を過去7年以内に受けている

3−1 免責不許可事由に該当しても免責が受けられる可能性も高い

免責不許可事由に該当したとしても、裁判所の裁量で免責が受けられることも少なくありません。

そもそも自己破産は借金の返済で生活が苦しい人を救済する制度ですので、投資やギャンブルによる借金だからといってすべての免責を認めずにいると、制度の役割が成立しなくなってしまいます。

そのため、免責不許可事由に該当していても、裁判所が「免責するにあたいする」と判断した場合には免責を受けらるとされています。

実務上、投資やギャンブルを原因とする借金であっても、ほとんど方が免責を受けています。

3−2 免責不許可事由に該当すると費用と手間がかかる

自己破産には、破産管財人が選任され、財産の処分が行われる「管財事件」と破産管財人が選任されず簡易的な手続きで行う「同時廃止」の2種類があります。

破産法上、自己破産の原則は「管財事件」ですが、裁判所が特段問題がないと判断した場合には「同時廃止」で処理されることもあります。

しかし、免責不許可事由に該当している場合「管財事件」として処理されます。

管財事件は同時廃止に比べて手間も費用も多くかかります。同時廃止にかかる費用が1〜5万円、期間は準備期間含めて半年程度なのに対し、管財事件の費用は50万円、期間が1年程度です。

4章 不動産投資をしている人が自己破産をするリスク

悩む男性
悩む男性
自己破産をするしかない状況であることは分かっているのですが、自己破産というとリスクが大きイメージでがあり不安です。実際にはどのようなリスクがあるのでしょうか?
司法書士
司法書士
自己破産の最も大きなリスクは、財産が処分されることでしょう。特に不動産投資をされている方の場合、所有している物件は処分されてしまいますので、生計を立てる手段を失ってしまいます。その他、連帯保証人・保証人がいる場合には借金を背負わせてしまったり、一部の職業が制限されたりするなどのリスクがあります。

4−1 所有している財産が処分される

自己破産をすると、所有している財産は処分(売却)され、債権者への返済に充てられます。所有している不動産も処分の対象です。

不動産の収益で生計を立てている方は、処分されてしまうと生計を立てる手段がなくなってしまいます。

4−2 連帯保証人・保証人が借金を背負う可能性がある

借金に連帯保証人・保証人がついている場合、自己破産をするとその人が借金を背負う可能性があります。

連帯保証人・保証人への請求は基本的に一括請求ですので、借金額によっては連帯保証人・保証人も自己破産をしなければいけなくなる可能性があるでしょう。

4−3 手続き中、一部の職業が制限される

自己破産の手続き中は、以下のような一部の職業・資格が制限されます。

自己破産手続き中制限される職業・資格の一例

  • 証券外務員
  • 商品投資販売業
  • 商品投資顧問業
  • 金融商品取引業
  • 警備員
  • 宅地建物取引士
  • 生命保険外交員・募集人
  • 貸金業
  • 会社の取締役
  • 不動産鑑定士
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 公認会計士
  • 社会保険労務士
  • 旅行業 など

この制限を理由に解雇することは法的に禁止されているため、解雇される心配はありませんが、少なからず仕事に影響は出てしまうでしょう。

なお、制限されるのは手続き中のみであり、手続きが終了すれば解除されます。

4−4 破産者の情報が官報に載る

自己破産をすると官報という、国が発行する機関紙に破産者の氏名・住所などが掲載されます。

とはいえ、一般の方が官報をチェックしていることはほとんどありません。

一方、会社が官報の破産者情報を逐一確認している場合には、勤め先に知られてしまう可能性があるでしょう。

4−5 手続き中、引っ越しや旅行の制限がかかる

自己破産が管財事件になった場合、手続き中は引っ越しや旅行をする場合には都度裁判所に許可を取る必要があります。

転勤や家賃を安く抑えるための引っ越し、冠婚葬祭を目的としたやむを得ない遠征などであれば認められる可能性がありますが、特別な事情のない引っ越しや娯楽のための旅行は認められない可能性が高いでしょう。

なお、破産手続きが終了すればこの制限はなくなります。

5章 自己破産の手続きはグリーン司法書士法人にお任せください

不動産投資をされている方が自己破産をする場合、管財事件になる可能性が高いでしょう。

管財事件では、破産管財人との面談や家計簿の作成など、複雑な手続きが多くなるため、一般の方が自身で手続きを進めるのは難しいと言えます。

グリーン司法書士では、これまで多くの借金問題を解決に導いてまいりました。

初回相談は無料です。オンラインでのご相談も可能ですので、お気軽にご相談下さい。

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