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- 債権者が勤務先を調べる方法
- 給料はいくら差し押さえられるのか
- 給料差押えを回避する方法
借金や税金、養育費などを滞納すると、給料の差押えを受ける可能性があります。
給料を差し押さえられると、生活が苦しくなったり勤務先に滞納がバレたりする恐れがあるため、できれば回避したいものです。
債権者が勤務先を知らなければ給料の差押えはできないので、「転職すれば逃れられるのでは」と考える人もいるでしょう。しかし実際には、差押え前に転職しても債権者から調査されるため、結局は転職先を突き止められてしまうのです。
今回は、債権者がどうやって勤務先を調査するのか、また給料差押えを回避する方法などを詳しく解説します。
目次 ▼
1章 債権者は勤務先を調べることができる
債権者は滞納してすぐに給与を差し押さえるわけではありません。滞納後、しばらくは電話連絡や督促状の送付で繰り返し支払いを求めます。
債権者は督促を無視され続けた末に、訴訟を起こします。そこで債務者の敗訴が確定すると、続いて債権者は給料を差し押さえるために「債権差押命令」を申し立てます。
申立てを受けて、裁判所から「債権差押通知」が勤務先と債務者の両方へ送付されることになります。このときに債権者が債務者の勤務先を知らなければ、もちろん債権差押通知は送付できません。
しかし、債権者は差押えを実行するための権利として、勤務先を調査することが可能です。
ここでは、債権者がどうやって債務者の勤務先を把握するのかを詳しく見ていきましょう。
1-1 そもそも借金の申込時に勤務先を申告している
金融機関から借入れした場合、契約時に必ず勤務先の申告を求められます。勤務先や年収は審査に必要な情報なので、契約後に変更していなければ債権者は把握しているはずです。
債権者は契約時の情報をもとに給与の差押えを進めますが、転職して変わった場合、差押えは自動的に引き継がれるわけではありません。そのため、債務者の新しい勤務先が明らかになるまで差押えは止まることになります。
1-2 債務者から財産開示手続きをとられると申告しなければならない
では、契約時以降に転職した場合、債権者はどのようにして次の勤務先を調査するのでしょうか。
転職先がわからない場合、債権者は裁判所へ「財産開示手続」を申し立てます。財産開示手続とは、債権者が債務者の財産についての情報を得るための手続きであり、申立てが認められると債権者は以下の財産情報を開示しなければなりません。
- 給与、俸給、役員報酬、退職金
- 預金、貯金、現金・生命保険、損害保険
- 売掛金、請負代金、貸付金
- 不動産所有権、不動産貸借権
- 自動車・ゴルフクラブ会員権
- 株式、債権、出資持分、手形小切手、主要動産
- その他の財産
このうち、給与について開示する際に勤務先も知られることになるでしょう。
申立てが認められたら、1か月後に財産開示期日が設定されます。債務者には裁判所への呼出状が送付されるので、それに従って出頭する必要があります。
もし呼出状を無視して出頭しなかった、あるいは財産について隠したり嘘をついたりした場合は、6か月以上の懲役または50万円以下の罰金という重い罰則が科せられます。そのため、債権者から財産開示手続きを取られると、勤務先を隠しておくのは難しいでしょう。
1-3 第三者からの情報取得手続きで勤務先を調査される
さらに、2020年の民事執行法改正によって新設された「第三者からの情報取得手続き」(民事執行法204条以下)でも、勤務先を調査できるようになりました。
第三者からの情報取得手続きは、市区町村や日本年金機構など厚生年金を扱う団体といった第三者が有している情報を開示してもらう手続きです。
手続きには債務者のプライバシー保護の観点から、満たすべき要件がいくつかあります。
- 先に財産開示手続きを行っている
- 債務者へ債務名義が送られている
- 債務者へ破産開始決定がされていない
- 強制執行で十分な弁済を得られなかった
また、勤務先に関して第三者からの情報取得手続きを取れるのは、以下の場合に限られます。
- 養育費や婚姻費用などを請求する場合
- 損害賠償の支払いを求める場合
つまり金融機関からの借金や、債務者がアルバイト勤務など厚生年金に加入していない場合では、第三者からの情報取得手続きによる勤務先調査はできません。しかし、不動産情報や預金口座の情報などは取得できるため、別の財産で差し押さえられる可能性があります。
給与の差押え中に転職・退職するとどうなるかについて知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
2章 給料を差し押さえられると会社にバレる
前章でも言及していますが、裁判所から給料差押えが認められると、債権差押通知が勤務先と債務者両方へ送付されます。
債権差押通知は債務者より先に勤務先へ送られるため、差し押さえられる本人よりも前に勤務先が差押えの事実を知ることになるのです。
債権差押通知を受け取った勤務先は、「第三債務者」として給与の一部を債権者へ支払うことになります。
例えば規模の大きい会社ならば、給与を管理している経理・会計課の社員にしか差押えされていることはバレないかもしれません。しかし、中小企業など小さい会社の場合はすぐに全員が知りかねないでしょう。
2-1 会社にバレても解雇されることはない
ただし、会社に給与差押えがバレてしまっても、それが理由で解雇されることはありません。
給与差押えは従業員自身が滞納した結果起こったことで、会社の利益には直接関係がないためです。給与差押えによって債権者へ毎月支払う手間は生じますが、給与の中から払うため会社に損失はありません。
そのため、給与差押えのみを理由に解雇とするのは不当解雇にあたります。ただ、借金を滞納した事実は間違いないので、職場での信用はなくなって居づらくはなるでしょう。
給料の差押えで不当解雇されたとき、どのような対処をすればいいのか知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
3章 給料を差し押さえられるのは原則手取り額の4分の1まで
給料の差押えといっても、引かれるのは全額ではありません。差し押さえられる金額は、原則として社会保険料や税金を控除した手取り額の4分の1になります。
例えば毎月手取りで20万円もらっている人の場合、下の表のとおり毎月5万円を差し押さえられるわけです。ただし、手取りが44万円を超える場合は、33万円を超えた金額が差押えの対象になります。
給料の手取り額 | 差し押さえられる金額 | 手元に残る給料額 |
---|---|---|
20万円 | 5万円 | 15万円 |
25万円 | 6万2500円 | 18万7500円 |
30万円 | 7万5000円 | 22万5000円 |
40万円 | 10万円 | 30万円 |
45万円 | 12万円 | 33万円 |
50万円 | 17万円 | 33万円 |
手取り44万円以上ある場合は、50万円や60万円でも差押え後は33万円しか手元に残らないということです。これが延滞金を含む滞納額をすべて返済し終わるまで継続します。
一方で税金や養育費を滞納した場合は、上記の差押え範囲とは異なる場合があるので注意しましょう。
税金は国税徴収法や地方税法によって差押え額が算出されます。養育費に関しては、民法によって手取り額の2分の1までが差押え範囲と認められているのです。
3-1 ボーナスや退職金も差し押さえられる
毎月の給料だけでなく、年数回あるボーナスや退職金も差押えの対象です。差し押さえられる範囲は給料と同様、手取り額の4分の1か、33万円を超えた金額のいずれか高い方になります。
まだ定年まで期間があり、退職の予定がない人でも退職金を受け取る権利はあるため、差押え時点の見込み額に対して差押えを受けます。
3-2 アルバイトであっても差し押さえられる
給料の差押えはアルバイト、派遣社員といった勤務形態によらず実行されるため、注意しましょう。
ただ、アルバイトで勤務先を頻繁に変えている場合は、債権者も勤務先を調査せず預貯金など他の財産の差押えを検討する可能性もあります。
給料の差押えについてさらに詳しく内容を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
4章 給料の差押えを回避する方法
給料の差押えは決定してしまうと拒否できません。勤務先へ応じないように頼んでも、差押え額を債権者へ払わなければ勤務先が処罰対象になってしまいます。
勤務先に迷惑をかけたり周囲からの信頼を損なったりしないために、給料の差押えを回避する方法について見ていきましょう。
4-1 借金を完済する
給料を差し押さえられると、会社には確実にバレます。その前にどうしても差押えを回避したいなら、滞納している借金を一括返済しましょう。
身近な人に相談して、滞納金を含めた額を完済すれば、その時点で給料の差押えは取り下げられます。
4-2 早めに債務整理する
差押えを回避するもっとも手っ取り早い方法は借金の完済です。とはいえ、すぐに完済できるあてがあるなら差押えに慌てていないでしょう。
借金を返済できないならば、早めに専門家へ相談して債務整理の手続きに入るのをおすすめします。債務整理には、次の3つがあります。
給料の差押えを受けていると、専門家への報酬が支払えないので依頼も難しくなります。給料を満額受け取っているうちにまず相談に行きましょう。
4-2-1 差押え前なら任意整理できる
給与の差押えを受ける前なら、任意整理が可能です。任意整理は手続きに裁判所を介さないため、債務整理の中ではもっとも手軽に行えます。
借金の総額があまり多くなければ、債権者と交渉して減額することで借金問題を解決できるかもしれません。
任意整理について、メリット・デメリットを詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
4-2-2 強制執行を止めるなら個人再生か自己破産を検討しよう
強制執行(差押え)がすでに始まっているのなら、個人再生か自己破産の手続きをすべきです。手続きの開始と同時に強制執行を止められます。
ただし、個人再生と自己破産のうち同時廃止事件の場合は、手続き開始時点で差押えは止まるものの、全額受け取れるようになるわけではありません。また、手続き開始というのは専門家に依頼した段階ではなく、裁判所での手続きが開始した時点ですので、依頼報酬を分割にしている場合にはしばらく差押えは止まらないことに注意しましょう。
差押えが「中止」されるという扱いなので、差押え分は勤務先で保管されます。同時廃止事件においては、免責許可が出た時点で差押えは失効となるので、免責許可後は給料を全額受け取れるようになります。
また、自己破産の管財事件では手続き開始と同時に差押えは「失効」します。つまり、手続きが始まると給料は元のとおり満額受け取れます。
個人再生について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
自己破産について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
5章 給料を差し押さえられてお困りの方はグリーン司法書士法人へご相談ください
債権者が現在の勤務先を知らなくても、法的に認められた方法で調査して勤務先を突き止めることは可能です。契約時の勤務先から転職・退職していても、給料の差押えから完全に逃れるのは難しいといえます。
給料を差押えられると生活が苦しくなる上、職場での信用を失います。給料差押えを回避したい方、すでに差し押さえられてお困りの方は債務整理を検討してください。
債務整理は、借金の額や債務者の状況によって最適な方法が異なります。差押えをすぐ止めたいからといって管財事件を選ぶと、費用が多くかかる、免責まで時間がかかるなどかえって不利益をもたらすこともあるため注意が必要です。
債務整理を検討するならば、給与差押えを解決するとともに抱えている借金問題についても最適な選択肢を選ぶために、早めに専門家へ相談しましょう。
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