生活保護費は差押えの対象にならない!借金問題の解決方法とは?

司法書士市川有美

監修者:グリーン司法書士法人   市川有美
【所属】大阪司法書士会 登録番号大阪第4555号 【保有資格】司法書士

借金返済の知識
生活保護費は差押えの対象にならない!借金問題の解決方法とは?

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 この記事を読んでわかること

  • 生活保護費の受給権は差押えの対象にならないこと
  • 預金口座に振り込まれた生活保護費は差押えの対象になる可能性があること
  • 振り込まれた生活保護費が差し押さえられた際の対処法
  • 生活保護受給者が借金問題を抱えている場合の対処法

生活保護を受給している人のなかには、借金問題は避けて通れない人もおられるでしょう。しかし、生活保護費は最低限度の生活を保障するためのものであり、差押えの対象となりません。

今回の記事では、生活保護費が差押えの対象にならない理由や、もし振り込まれた生活保護費が差し押さえられた場合の対処法についてくわしく解説します。

加えて、生活保護受給者が抱える借金問題をどのように解決するかについても触れていきます。生活保護受給者が直面する可能性のある、借金問題に対する具体的な解決策として参考にしてください。

1章 生活保護費の受給権は差押えの対象にならない

生活保護法にもとづく受給権は、法的に差押えの対象外とされています。生活保護費は生活困窮者の最低限度の生活を保障するために支給されるものであり、その趣旨から差押えを認めることはできません。

生活保護法第63条では、生活保護を受ける権利が差押え、譲渡、そのほかの処分の対象とならない旨が明確に定められています。この保護は、受給者が最低限度の生活を維持するために必要不可欠であるとされているためです。

加えて、生活保護受給者の権利を保護するため、生活保護費の受給権は差押えの対象とならないだけでなく、不当な譲渡も防止されています。

それによって、生活保護受給者は債権者からの差押えのリスクから守られ、その生活が一層安定する旨が保障されているのです。このような法的保護措置により、受給者は安心して生活保護費を受け取られます。

2章 振り込まれた生活保護費は差押えの対象になる可能性がある

一方で、振り込まれた生活保護費は、預金口座に入金された時点で預金債権となり、差押えの対象となる可能性があります。生活保護費が銀行口座に振り込まれた瞬間、生活保護費の受給権から預金債権に変わるため、その法的性質が変わるわけです。

それによって、債権者は預金債権に対しての差押えが可能となります。つまり、生活保護受給者の口座にあるお金も、場合によっては債権者によって差し押さえられるリスクがあるのです。

ただし、振り込まれた生活保護費が差し押さえられた場合に、3章で述べるような法的手続を取れば、受給権の差押え禁止の趣旨に反する(制度趣旨が没却される)という理由で、差押えの範囲変更が認められる可能性があります。

参考に、生活保護費と同じく差押禁止債権である児童手当に関して、2013年の鳥取の裁判でひとつの結論が出されています。

原告である個人事業が不振で個人事業税など約29万円などを滞納していたときに、預金口座に振り込まれた児童手当13万円を、被告(鳥取県)が入金の9分後に狙い撃ちのように差し押さえた件です。

その児童手当は教育費や給食費に充てる予定だったもので、その後原告のお子さん一人が高校中退を余儀なくされました。そして原告が鳥取県に対し、児童手当法で差押禁止債権に定められている児童手当の差押えは違法であると訴えたのです。

判決は、預貯金は原則として差押え対象ではあるものの、本件の約13万円は状況的(児童手当入金までは残高73円で、入金後130,073円)に児童手当である事実は明白で、それを差し押さえることは正義に反するという趣旨で、原告の勝訴となりました。

県税局職員の主観面に着目すれば、実質的には、差押禁止債権である児童手当受給権の差押えがあったものと同様の効果が生ずるものと評価するのが相当である。そうすると、本件においては、本件差押処分を取り消さなければ、児童を養育する家庭の安定、児童の健全育成及び資質の向上に資することを目的とする児童手当の趣旨(児童手当法1条)に反する事態を解消できず、正義に反するといわざるを得ないから、本件差押処分は権限を濫用した違法なものと評価せざるを得ない。

引用元;2013年3月29日鳥取地方裁判所判決

3章 振り込まれた生活保護費が差し押さえられたときの対処法

振り込まれた生活保護費が差し押さえられた場合、まずは「差押えの範囲変更の申立て」を行うのが有効です。この申立てを裁判所に提出すれば、預金の全部または一部が、差押えの対象から除外される可能性があります。

特に、生活保護費が唯一の収入源であり、その口座にほかの収入がない場合には、裁判所が差押えの効力を解除する期待ができます。ただし、この手続は迅速に行う必要があり、支払いが行われる前に申立てを行わなければなりません。

差押えの範囲変更が認められると、預金が戻されるため、生活費を確保できます。なお、再度差押えが行われる可能性もあるため、長期的な解決策としては、専門家に相談し、自己破産などの法的手続の検討が推奨されます。

生活保護受給者の場合、法テラスを利用してさまざまな支援を受けられ、自己破産に要する費用も軽減されます。早期に専門家へ相談し、適切な対処法を検討するのが賢明です。

なお、法テラスで自己破産を含む債務整理を依頼したときの弁護士費用については、以下の記事でくわしく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。

4章 生活保護受給者が借金をしているときの対処法

生活保護を受給している人が借金を抱えている場合、その対処法はかぎられています。生活保護費は最低限度の生活を維持するためのものであり、借金返済に充てる行為は認められていません。

借金問題が深刻化すると、生活そのものが脅かされる可能性があります。ここでは、生活保護受給者が借金問題に直面した際の具体的な対処法を紹介します。

まず、生活保護費で借金を返済することが禁止事項であるのを確認し、その次に、借金問題を解決するための自己破産の方法を確認しましょう。

これらの対処法を理解すれば、生活保護受給者が借金問題に適切に対応し、安定した生活を維持するための手助けとなります。

4-1 生活保護費で借金を返済することは認められない

生活保護費は、受給者の最低限度の生活を保障するために支給されるものであり、その目的以外に使用することは法律で禁止されています。したがって、生活保護費を借金返済に充てる行為は認められていません。

生活保護法第4条では、生活保護は受給者が生活困窮状態から脱するまでの最低限の援助を提供するものであり、この目的に反する使用は違法とされます。もし、生活保護費を借金返済に使用すると、保護の停止や返還請求がなされるリスクがあります。

借金返済に困った場合は、市区町村の福祉事務所や法テラスに相談し、債務整理などの適切な対策を講じるのが重要です。

そもそも生活保護受給者が借金返済を優先すれば、生活が破綻するリスクがあります。そのため、受給者はまず自身の生活を優先し、借金問題は別の方法で解決する必要があります。

具体的な解決策としては、費用負担が少ない法テラスを通して専門家に相談し、自己破産の手続を進めましょう。それによって、生活保護費は生活費として確保され、借金問題も法的に解決される道が開かれます。

なお、生活保護を受けていても自己破産できるのかどうかや、生活保護への影響ついては、以下の記事でくわしく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください

4-2 生活保護受給者の借金問題は自己破産で解決しよう

自己破産は、生活保護受給者が抱える借金問題を解決する有力な方法です。自己破産を申請することで、すべての借金が免除され、返済義務から解放されます。

特に、生活保護受給者の場合、自己破産の影響を受ける財産がほとんどないため、そのデメリットも少なくて済むでしょう。自己破産手続は、専門家を通じて行うのが一般的であり、法テラスの支援を受ければ費用の負担を軽減できます。

生活保護受給者が自己破産を選択する際には、事前に法テラスを通して専門家に相談し、手続を進めるのが重要です。自己破産を行えば、借金から解放され、生活保護費を確保して、生活維持に専念できるようになります。

なお、生活保護費での返済が禁止されているということは、債権者にとっては、ほかに収入がない生活保護者に貸付すると理論上では返済してもらえないという意味になります。

そのため、債権者はいつ裁判や強制執行をしてもおかしくありません。したがって、自己破産の手続も速やかに行うべきです。また、自己破産の手続中でも生活保護の受給資格は維持されるため、安心して自己破産の手続を進められます。

このように、借金問題に悩む生活保護受給者にとって、自己破産は最後の手段として有効です。早期に法テラスを利用して専門家に相談し、適切な手続を取って生活を立て直しましょう。

なお、法テラスの審査期間はどれくらいかかるのかや、利用条件などについては、以下の記事でくわしく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。

まとめ

生活保護費は受給権の段階では差押えの対象とならないものの、振り込まれた後は預金債権として差押えの対象となる可能性があります。差押えの範囲変更の申立てを行えば、預金の一部または全部の差押えを回避できる場合があります。

生活保護受給者が差押えに直面した場合には、迅速に法的手続を取り、生活を守るための行動を起こすことが重要です。また、法テラスを通して専門家に相談すれば適切なアドバイスを受けられ、自己破産などの手続も視野に入れられます。

生活保護受給者が借金問題に直面した場合、生活保護費で借金を返済する行為は認められていないので、自己破産を選択するのが推奨されます。自己破産を行うことで、借金から解放され、生活保護費を確保し、生活の維持に専念できます。

生活保護受給者が安心して生活を続けるためには、法テラスを通して早期に専門家に相談し、法的手続を適切に進めるのが賢明です。

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