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金銭的に余裕がない環境でも進学を支援してくれる制度である奨学金。
奨学金は大学を卒業後に返済がスタートしますが、近年は日本の貧困化などが社会問題にもなっており、経済的に困難に陥っている若者は少なくありません。
生活が厳しい状況の中で奨学金を返済するのは厳しく「奨学金の毎月の返済を減額したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
奨学金は「減額返還制度」という制度を利用すれば減額することが可能です。
この記事では、奨学金を減額できる条件と申請手続きについて解説いたします。
目次 ▼
1章 奨学金は「減額返還制度」で減額できる!
奨学金を借りたものの、なかなか思うように給料が上がらずに毎月返済が厳しいという方は少なくありません。
日本学生支援機構のデータによると、令和2年の2月の延滞者率は13.0%ということが分かりました。
7〜8人に1人が延滞をしていることを考えると、決して対岸の火事ではないでしょう。
しかし、奨学金は返済できないからと延滞を続けてしまうと、督促状や催告状が届いてしまい、更に放置すると差し押さえとなり財産を差し押さえられてしまいます。
そのため、毎月の支払いを減額してでも少しずつ返済を進めていくのがおすすめです。
奨学金には「減額返済制度」があり、経済困難などの事情がある人が返済期間を延長し毎月の返済額を減額することが可能です。
何らかの理由で奨学金を予定通り返済するのが難しい場合は、減額返済制度の利用を検討しましょう。
1-1 1回の申請で12か月まで適用される
減額返還制度は、1回の返済あたりを2分の1もしくは3分の1に減額して返済することができます。
例えば、毎月2万円の引き落としだった場合は、1万円もしくは6,700円(小数点を繰り上げています)の返済に変更することが可能です。
ただし、当然ですが毎月減額した分だけ完済までの期間が延びてしまうことを覚えておきましょう。
減額返還制度は、1回の願出につき適用期間は12か月までです。
最長でも1年後には事前に設定した返済額に戻すことができるので、一時期だけ無理のない返済ができるのもメリットです。
最長15年(180か月)まで延長可能なので、毎年の経済状況と相談しながら減額返還制度を利用するのが良いでしょう。
1-2 所得連動返還方式の場合は減額返還制度を利用できないので注意
ただし、所得連動返還方式で返済している場合は減額返還制度を利用できないので注意が必要です。
所得連動返還方式とは、借りた奨学金の総額に関わらず、前年の所得に応じて返還月額が決まる返還方式のことです。
前年に所得が上がった場合は、今年の返済額が上がるということになります。経済状況によって返済額が決まっているのが所得連動返還方式の特徴です。
自分が借りた奨学金が所得連動返還方式かどうか分からないという方は、以下のどちらかを確認しましょう。
- 奨学金の振り込みが開始した際に受け取った奨学生証の右上の印字
- 奨学金の振り込みが終了した際に受け取った貸与奨学金返還確認票の右上の印字
所得連動返還方式の場合は「所得連動返還型無利子奨学金」と印字されています。
2章 減額返還制度を利用できる条件
奨学金の減額返還制度は誰でも利用できるわけではありません。
当初の約束通りの返済ができずに変更するので、相当の理由がなければ制度を利用することができません。
減額返還制度の適用条件は、以下の項目に当てはまっているかどうかが基準です。
- やむを得ない理由で返済が厳しくなった
- 滞納していない状態である
- 口座振替(リレー口座)加入者である
- 月賦返還である
減額返還制度を利用したいという方は、まずこの条件に該当しているか確認しましょう。
2-1 やむを得ない理由で返済が厳しくなった
災害や事故、失業などの経済的な理由で返済が厳しくなって奨学金の返済ができなくなった場合です。
奨学金を延滞している方の理由の内訳でも、自身の低所得が理由で延滞している方は62.7%と高い割合となっています。経済的な事情が理由で奨学金の返済が困難な方は躊躇せずに相談しましょう。
経済的な理由で減額返還制度を申請する場合、2023年時点の日本学生支援機構では以下の通りの目安が設定されています。
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所得内容 | 収入・所得金額の目安 | 本人の被扶養者の控除 |
---|---|---|
給与所得者の場合の年間収入の目安 | 所得証明書等の年間収入金額325万円以下 | 本人の被扶養者について1人につき38万円を収入・所得金額から控除して審査 |
給与所得以外の所得を含む場合の年間所得の目安 | 所得証明書等の年間所得金額(必要経費等控除後)225万円以下 | 本人の被扶養者について1人につき38万円を収入・所得金額から控除して審査 |
この目安に当てはまった方は、奨学金を減額できる可能性があります。
奨学金の減額返還制度を申し込む方法は次の章で解説していますので、ご覧ください。
2-2 滞納していない状態である
滞納を既にしている場合は、滞納している奨学金を返済してから申請する必要があります。
つまり、滞納額が膨らんできてしまっている段階で申請しても通らないということになります。
減額返還制度を利用したくても、滞納分をどうにかしないと利用できないということがないように早めの申請が大切です。
滞納をしたことがあるからといって審査に落ちることはありませんが、3か月以上滞納している場合は個人信用情報機関に登録されてしまいます。いわゆるブラックリスト入りになるので注意しましょう。
一度載ってしまうと、滞納中はもちろんですが滞納を解消しても一般のクレジットカードと同様に奨学金を返済情報が登録され続けてしまいます。
奨学金を借りているだけでは登録されませんが、滞納をしてブラックリストに登録されると、完済してから5年後まで登録され続けてしまいます。
滞納を解消することによって減額返還制度の申請は可能になりますが、3か月以上滞納したことがある方は個人信用情報機関に載ってしまっていることを覚えておきましょう。
2-3 口座振替(リレー口座)加入者である
減額返還制度は、口座振替(リレー口座)加入者のみの利用が可能になっています。
平成10年3月卒業・貸与終了の方から全員口座振替(リレー口座)による返還になったので、ここ数年で奨学金の返済をスタートした方は問題ありません。
ただし、平成10年3月以前に卒業貸与終了した方は未加入の可能性があるため、未加入だという方は日本学生支援機構のホームページをご確認ください。
2-4 月賦返還である
減額返還制度は、毎月返済している方が対象になっています。
年賦、半年賦、月賦・半年賦併用で返還していて減額返還制度を利用したい方は、自動的に月賦の返還方法に変更されます。
ただし、月賦の返還方法に変更できない時期を挟むと希望する月から減額返還を開始できない可能性があります。いつから適用になるのか奨学金相談センターに確認しましょう。
また、減額返還の終了後も月賦返還に継続されるので、こちらも覚えておきましょう。
3章 奨学金の減額申請を申し込む方法
奨学金の減額返還制度の条件に当てはまっていたという方は、減額申請に申し込みましょう。
2章でも解説した通り、減額返還制度は滞納していない状態で申し込む必要があります。
このまま滞納を続けてしまうと、選択肢が狭まってしまうため条件に当てはまったら早めの申請をしましょう。
また、以前は郵送のみでの申請でしたが、令和5年3月よりインターネットからの申し込みができるようになりました。
郵送よりも提出が早く審査結果もネットで確認できるため、緊急性が高い方はインターネットからの申し込みをおすすめします。
ただし、月賦返還中でマイナンバーを日本学生支援機構に提出済みの方が対象になるので注意が必要です。
ここからは、奨学金の減額申請の手順について解説いたします。
3-1 奨学金減額返還願を記載する
まずは、奨学金減額返還願を記載しましょう。
この奨学金減額返還願がなければ申請することができないので、必ず提出が必要です。
記入例は日本学生支援機構のホームページに掲載されているので、記入例を参考に奨学金減額返還願を印刷して記入しましょう。
3-2 休職・休業している場合は証明書を用意する
もし休職・休業している場合は、減額返還制度の審査基準になるため証明書を用意しておきましょう。
日本学生支援機構のホームページに休職証明書が印刷できるページがあるため、こちらを印刷して記入します。
休職証明書(返還期限猶予・減額返還申請用)はこちらから確認できます。
また、産前産後・育児休業用のシートもあります。該当する方は、こちらを印刷して記入しましょう。
どちらにも当てはまらないという方は、提出不要です。
3-3 マイナンバー関係書類を用意する
日本学生支援機構にマイナンバーを登録していない方は、マイナンバーの提出をする必要があります。
既にマイナンバーを提出している方は、再度の提出は不要です。
提出済みかどうかは、日本学生支援機構が運営するスカラネット・パーソナルで確認が可能です。
また、2019年度以降に奨学金を借りた方は、奨学金申込時(または採用後)にマイナンバーを提出しているため書類を用意する必要はありません。
もしマイナンバーカードを持っていない方は、マイナンバー記載の住民票の写しもしくは「通知カード」表面(マイナンバーがある面)を用意しましょう。
加えて、顔写真付きの公的身分証明書を提出する必要があるので注意が必要です。
4章 書類に問題なければ「奨学金減額返還承認通知」が届く
全ての書類を記載したら、以下の住所に送付しましょう。
独立行政法人日本学生支援機構 猶予減額受付窓口
マイナンバー関係書類を送付する場合は、必ず郵便局窓口より簡易書留で郵送する必要があります。
送付した書類に問題がなければ「奨学金減額返還承認通知」が届き、奨学金の減額が承認されます。
もし、申請書類に不備がある場合は、書類が返送されるので正しい情報を記載して再度送付しましょう。
また、奨学金減額返還承認通知は連帯保証人と返済している口座の名義人にも送られます。減額したことによって債務保証期間が延びる点と割賦金額が変更になる点を知らせなければいけないからです。
もし連帯保証人に黙って減額した場合は、トラブルの原因になるので必ず相談してから減額するようにしましょう。
4-1 奨学金を減額したい月の前々月末までに申請しよう
減額返還制度を利用したい場合は、奨学金の減額を希望したい月の前々月末までに提出する必要があります。
近年の不景気や社会情勢によって減額返還制度を利用する方が急増していることもあり、書類の内容の確認や証明書の審査に時間がかかるため、審査に間に合わない可能性があるからです。
審査中に減額返還を希望する月が来てしまって、通常の金額で引き落とされてしまう可能性があるので注意しましょう。
申請中に奨学金を滞納してしまうことがないように、余裕を持って提出することをおすすめします。
5章 一時的に支払いができない場合は「返還期限猶予制度」の利用がおすすめ
失業などで給料が入らなくなり、奨学金自体の支払いを一時的にストップしたい場合は「返還期限猶予制度」の利用がおすすめです。
返還期限猶予制度は、一定期間返済を先延ばしにできる制度です。
審査により承認された期間については返還の必要がなくなるため、経済を立て直す時間をつくることができます。
ただし、返還期限猶予制度も奨学金を滞納している状態では利用することができないので注意しましょう。
また、一定期間返済をしない期間があることで、将来的に完済する年数が延びてしまうのも覚えておく必要があります。今後、カーローンや住宅ローンなどを使って大きな買い物を考えている方は、こちらも踏まえて検討しましょう。
返還期限猶予制度は、平成26年4月から返還期限猶予制度を適用できる年数を通算5年から通算10年に延長になりました。長期的な立て直しが必要な方も利用しやすくなったのは嬉しいですね。
5-1 減額返還制度との違い
減額返還制度との違いは、簡単に言うと「減額して返済を続けるか」「返済自体を一時的にストップするか」の違いです。
減額返還制度の場合は、設定された額を減額すれば返済できる場合に利用するのがおすすめです。少額でも返済していけば、完済までの道のりがさほど遠くなることはありません。
一方で、返還期限猶予制度の場合は、奨学金自体の返済をストップさせたい場合に利用するのがおすすめです。
失業や災害、病気やケガなどで給料が入らない状態や、やむを得ず別の出費に追われている場合は検討するのも一つの方法です。
返済をしない期間をつくるため、完済までの道のりが遠くなってしまいますが、滞納してしまう状態をつくるのはよくありません。差し押さえを回避するためにも返還期限猶予制度に踏み切ってみてはいかがでしょうか。
6章 返済の目処が立たない場合や他に借金を抱えている場合は債務整理を検討しよう
減額返還制度や返還期限猶予制度を利用しても、返済の目処が立たない場合は債務整理で奨学金を減額したり免除するのも検討しましょう。
債務整理は、借金やローンなどの債務の支払いを減額したり免除したりできる手続きです。奨学金も債務整理の対象なので、利用することが可能です。
また、奨学金とは別に借金やローンがあって同時に支払いに追われている方は、一緒に減額できるのもメリットです。
債務整理をした時点でブラックリストに登録されてしまいますが、何十年も先の見えない借金を返済し続けるよりは債務整理で一気に減額した方が経済的にも心理的にも負担が減るといえます。
債務整理の種類は、以下の3種類があります。
債務整理の種類 | 特徴 |
---|---|
任意整理 | ・借金の利息や遅延損害金など元金以外をカットする手続き ・奨学金以外の借金を減額したい方におすすめ |
個人再生 | ・借金の元金を大幅にカットする手続き ・奨学金の総額が多く完済が厳しい方におすすめ |
自己破産 | ・全ての借金を免除することができる手続き ・支払い能力がなく返済不能に陥った場合におすすめ |
経済事情や他の借金の状況、奨学金の総額によってもおすすめできる債務整理が異なります。
債務整理や借金問題に詳しい専門家であれば「そもそもなぜ奨学金を払えていないのか」といった分析も行えます。
借金問題の解決や収支のバランスを整えるアドバイスも専門家であれば可能です。まずはお気軽にご相談ください。
6-1 ただし連帯保証人に迷惑がかかるので注意
ブラックリストに載るデメリットのほかに、奨学金を債務整理する場合はもう一つ懸念点があります。
それは、連帯保証人に迷惑がかかることです。
債務整理をするということは、自力で返済ができずに減額して返済するということになります。
奨学金を貸した側としては、当初戻ってくる予定の金額よりも大幅に減額されて戻ってくることになるためデメリットになります。そういったことを防ぐために、奨学金は連帯保証人をつけることが一般的です。
最近では、保証会社をつけることが多いですが、まだまだ身内に連帯保証人になってもらうことも多いです。
債務整理をすると、連帯保証人に支払い義務が回ってしまうため、残りの奨学金は連帯保証人が支払わなければいけません。黙って債務整理をすると大きなトラブルになるので、必ず連帯保証人に相談してから手続きを進めましょう。
ちなみに、任意整理の場合は債務を選んで減額することができます。奨学金を外して任意整理をすることで、連帯保証人に迷惑をかけることはありません。
もし他の借金が原因で奨学金の支払いが困難になった場合は、任意整理を選ぶと良いでしょう。
7章 奨学金の減額は可能!早めの判断がおすすめ
経済状況などが原因で奨学金の返済していくことが難しい場合は、早めに奨学金を減額することをおすすめします。
もし、支払えずに滞納を続けてしまうと、ブラックリスト入りしてしまい、クレジットカードの登録やローンの審査などに影響してしまう可能性があります。
また、滞納してしまうと返済するまで減額返還制度や返還期限猶予制度の利用ができなくなるので、より状況が悪化してしまいます。
できるだけ早い段階で奨学金を減額して、無理なく返済を続けられるようにしましょう。
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よくあるご質問
- 奨学金を減額する方法とは?
- 奨学金を減額する方法は、下記の通りです。
・奨学金減額返還願を記載する
・休職・休業している場合は証明書を用意する
・マイナンバー関係書類を用意する