国民健康保険料の督促状を無視するとどうなる?支払えない時の対処法

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
国民健康保険料の督促状を無視するとどうなる?支払えない時の対処法

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 この記事を読んでわかること

  • 国民健康保険料の督促状を無視するリスクとデメリット
  • 国民健康保険料の滞納分は債務整理の対象にならないこと
  • 国民健康保険料を支払うことが困難な際の対処法

国民健康保険料の未納は、近年ますます厳しく対応されています。保険料の滞納は、単なる金銭的な負担増だけでなく、健康保険証の返却や保険給付の停止などのリスクを伴うでしょう。

督促状を無視し続けると、延滞金の請求や最終的には財産の差し押さえにまで発展する可能性があります。このような状況を避けるためには、早期に適切な対策を講じることが重要です。

今回の記事では、国民健康保険料の督促状を無視するリスクと支払いが困難な場合の対処法について詳しく解説します。未納のリスクを理解し、適切な行動をとるための参考にしてください。

1章 国民健康保険料未納への対応は年々厳しくなっている

国民健康保険料の未納に対する対応は、近年ますます厳格化しています。自治体は、保険料の「収納率」を上げるために、未納者に対する督促を強化しています。

収納率とは保険料の予定額に対して、実際に収納できた額の割合を百分比で表したものです。厚生労働省による直近の公式データによると、国民健康保険料の収納率は94.24%(前年度から 0.55 ポイント上昇)です。

国民健康保険料の収納率

特に、納期限を過ぎた場合の督促状や催告書の送付が迅速化されており、支払いを怠ると早期に対応が必要です。そのため、督促状を無視しても支払いを免れることは、不可能に近いといえるでしょう。

また、健康保険証の返却を求められるケースも増加しており、保険給付を受けるための手続が複雑化することもあります。さらに、滞納が長期化すると、財産の差し押さえなどによる強制徴収(滞納処分)が行われるリスクも高まるでしょう。

出典:令和3年度国民健康保険(市町村国保)の財政状況について

2章 国民健康保険料の督促状を無視するリスク・デメリット

国民健康保険料の督促状を無視した場合の、主なリスクやデメリットとしては、次の5つが挙げられます。

  1. 健康保険証の返却を求められる
  2. 被保険者資格証明書を交付される
  3. 保険給付を受けられなくなる
  4. 延滞金を請求される
  5. 最終的には財産を差し押さえられる

それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。

2-1 健康保険証の返却を求められる

国民健康保険料の未納が続くと、市区町村から健康保険証の返却を求められることがあります。これは未納者に対する厳しい措置の一環で、保険制度の公平性を保つためです。

健康保険証を返却しなければならない場合、短期被保険者証が代わりに交付されます。短期被保険者証は有効期限が通常より短く、頻繁に更新が必要です。これにより、未納者は定期的に市区町村と連絡を取ることを余儀なくされます。

短期被保険者証を受け取った場合でも、医療機関での受診は可能ですが、通常の保険証と比べて手続が煩雑です。この制度は未納状態を改善するための強制力を持っています。

2-2 被保険者資格証明書を交付される

国民健康保険料の未納が続くと、被保険者資格証明書が交付されることになります。被保険者資格証明書は、未納者が引き続き医療サービスを受けられることを証明するものですが、医療費は全額自己負担となります。

自己負担額は後日、未納分の保険料を納付することで一部が返還される仕組みです。しかし、返還手続には市区町村での申請が必要となり、手間がかかります。医療費の全額自己負担は経済的に大きな負担となるため、未納状態の早期解消が求められます。

2-3 保険給付を受けられなくなる

国民健康保険料の滞納が続くと、最終的に保険給付が停止されることがあります。滞納が1年6ヶ月以上続くと、医療機関での治療費を全額自己負担する必要が生じます。

通常の保険給付が受けられなくなるため、医療費の負担が急増し、経済的な負担が大きくなります。保険給付の停止は、未納者への強い制裁措置として機能するものです。

これにより、未納者は医療サービスを利用する際に多額の費用を、一時的に負担しなければならなくなります。さらに、負担分は滞納の解消に充当されるため、実質的に返金されない場合も珍しくありません。

2-4 延滞金を請求される

国民健康保険料の未納が続くと、延滞金が加算されます。延滞金は、未納期間に応じて利息のように課されるため、未納期間が長くなるほど負担が増えるでしょう。

延滞金の利率は法律で定められており、未納者に対する経済的なペナルティとして機能します。未納者は、未納分の保険料に加えて延滞金も支払わなければならないため、支払い額が大幅に増加します。

なお、延滞金や遅延損害金については、計算方法や解決方法も含めて以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、参考にご覧ください。

2-5 最終的には財産を差し押さえられる

国民健康保険料の滞納が続くと、最終的には財産が差し押さえられる可能性があります。差押えの対象となるのは、給与、預貯金、不動産などの資産です。

給与の差押えでは、手取り額が大幅に減少し、生活に必要な最低限の分を除いた部分が徴収されます。預貯金の差押えでは、銀行口座が凍結され、引き出しや振り込みが不可能となるでしょう。

不動産の差押えでは、売却や抵当権設定が一切できなくなり、資産価値が失われます。差し押さえは、未納者の経済的基盤を大きく揺るがす厳しい措置です。

なお、差押えの強制執行や差押えの対象外となるものは何かについて、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

3章 【注意】国民健康保険料の滞納分は債務整理の対象にならない

国民健康保険料の滞納分は、非免責債権です。非免責債権とは、債務整理の手続をしても支払い義務を免除にならない債権を意味します。つまり、自己破産や個人再生の手続を行っても、免除されることはありません。

任意整理を行う場合でも、貸主が貸金業者である場合とは異なり、自治体が債権者であるため、受任通知を送付しても督促を止めることはできません。滞納処分として裁判を経ずに差押えが可能であり、自治体との交渉の余地は非常にかぎられています。

自治体は法律にもとづいて厳格に対応するため、未納分の支払いを免れることは困難です。こうした厳しい取り扱いは、公共サービスの維持と公平性を保つために必要とされています。

なお、非免責債権に該当する6つの債権について、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

4章 国民健康保険料を支払うことが難しい時の対処法

国民健康保険料を支払うことが困難になった際の主な対処法としては、次の5つが挙げられます。

  1. 自治体に相談・交渉する
  2. 減免・免除制度を活用する
  3. 確定申告を正しく行えているか確認する
  4. 家族の健康保険の扶養に入る
  5. ほかに借金があれば債務整理について司法書士・弁護士に相談する

個別に詳しく見ていきましょう。

4-1 自治体に相談・交渉する

国民健康保険料の支払いが困難な場合、まず自治体に相談することが重要です。各自治体の保険課窓口では、支払い計画の調整や分割払いの相談を受け付けています。

自治体に相談や交渉を行うことで、個々の状況に応じた支払い方法を提案してもらえる可能性があります。多くの自治体では分割払いのほかに、減免や猶予の制度も用意されています。

特に失業や収入減少などの特別な事情がある場合、柔軟な対応をしてもらえるでしょう。相談時には、現状の収入や支出を明確に伝え、具体的な支払い計画を話し合うことが賢明です。

4-2 減免・免除制度を活用する

国民健康保険料の減免・免除制度は、経済的に困難な状況にある世帯にとって大きな助けとなります。減免制度は、前年の所得や現状の収入状況にもとづいて適用されるものです。

たとえば、失業や収入減少が理由で支払いが困難な場合、一定の条件を満たすことで保険料の軽減が受けられます。自治体によっては、所得が一定基準以下の場合に自動的に減免が適用されるケースもあります。

申請が必要な場合は、役所の窓口で手続を行いましょう。必要書類としては、所得を証明する書類や雇用保険受給資格者証などがあります。

災害や特別な事情がある場合も減免の対象となるため、状況に応じて自治体に相談しましょう。減免制度を活用することで、保険料の負担を軽減できる可能性が高まります。

4-3 確定申告を正しく行えているか確認する

サラリーマンではなく個人事業主の場合、確定申告が正しく行われているか確認することは非常に重要です。確定申告に誤りがあり、実際の所得よりも高く申告している場合、国民健康保険料が過大に請求されることになります。

特に必要経費の計上漏れや収入の過大申告は、保険料の負担を増大させる要因です。申告内容を見直し、必要であれば修正申告を行うことで、保険料の負担を軽減できます。

また、誤って実際の所得よりも低く申告している場合、税務調査が入った際に追徴税や保険料の追加の支払いが発生する可能性があります。

正確な申告を行うためには、領収書や支払調書などの証拠書類を、しっかりと整理して保管しておくことが大切です。

4-4 家族の健康保険の扶養に入る

国民健康保険料の負担が重い場合、家族の健康保険の扶養に入ることを検討するのもひとつの方法です。扶養に入ることで、国民健康保険料を支払わずに済むため、経済的な負担を大幅に軽減できます。

扶養に入るためには、被扶養者の年間収入が一定額以下であることが条件となります。通常、収入が130万円以下(60歳以上や障害者の場合は180万円以下)の場合、扶養に入ることが可能です。

家族が社会保険に加入している場合、その被保険者の扶養に入ることで、健康保険料を節約できます。扶養に入る手続は、被保険者が加入している健康保険組合や会社の人事担当を通じて行います。

必要書類としては、収入証明や扶養関係を証明する書類が求められます。扶養に入ることで、国民健康保険料を大幅に節約できるため、経済的負担の軽減に効果的です。

4-5 ほかに借金があれば債務整理について司法書士・弁護士に相談する

国民健康保険料の未納のほかに借金があり、国民健康保険料の支払いが困難な場合、債務整理を検討することも有効な手段です。債務整理は、借金の返済条件を見直し、負担を軽減するための手続です。

具体的には、任意整理、個人再生、自己破産などの方法があります。

任意整理は、債権者と交渉して返済条件を変更し、月々の返済額を減らす手続です。個人再生は、裁判所を通じて借金の一部を免除し、残りの返済を計画的に行う方法です。自己破産は、すべての借金を免除する代わりに、一定の財産を処分する手続です。

これらの手続を行うには、司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。債務整理の主な種類ごとの特徴やメリット、デメリットについては、以下の表にわかりやすくまとめてあります。

債務整理の種類任意整理個人再生自己破産
特徴裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法
メリット・手続が比較的簡単で費用が安い
・裁判所への申立て記録が残らない
・家族や勤務先に知られない
・借金を大幅に減額できる
・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる
・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い
・借金が全て免除される
・新しい生活をスタートできる
デメリット・減額できる金額は債権者との交渉次第
・将来、再び借金問題に陥る可能性がある
・裁判所への申立て記録が残る・裁判所への申立て記録が残る
・官報に永久に掲載される
・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない
・一定期間、就業制限を受ける
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まとめ

国民健康保険料の未納は、さまざまなリスクを伴います。督促状を無視すると、健康保険証の返却や保険給付の停止、さらには延滞金の請求や財産の差し押さえに発展することがあります。

支払いが困難な場合は、自治体に相談・交渉し、減免・免除制度を活用することが重要です。また、確定申告を正しく行い、家族の健康保険の扶養に入るなどの対策も検討しましょう。

ほかにも借金がある場合は、司法書士や弁護士に相談して債務整理を行うことも有効です。適切な対応を取ることで、経済的負担を軽減し、安心して生活を送るための一歩を踏み出しましょう。

さまざまな理由から借金問題が深刻化してお困りのみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。借金問題のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。

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