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- 奨学金の一括返済とは何をするのか
- 奨学金を一括返済することでどのようなメリットがあるのか
- 奨学金を一括返済することでどのようなデメリットがあるのか
- 奨学金の一括返済はいつできるのか
- 奨学金の一括返済でどのくらい総返済額が変わるのか
- 奨学金を一括返済するとき何に注意すればよいのか
奨学金をまとめて一括返済すれば、利息の負担が軽減され総支払額を抑えることができます。
国内の大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)・大学院へ進学・通学したい方のうち、経済的な理由で資金が準備できないときに利用できる制度が奨学金です。
奨学金には「貸与型」と「給付型」の2種類があり、給付型であれば返還する必要はありませんが、貸与型は卒業後の一定期間内に返済しなければなりません。
毎月一定額を返済する方法が一般的ではあるものの、返還額の全額または一部を繰り上げて返還したほうが利息負担は軽くなります。
そこで、奨学金の一括返済について、メリット・デメリットや注意点を解説していきます。
目次 ▼
1章 奨学金の一括返済とは
奨学金の給付型は返還が不要であるのに対し、「貸与型」では原則、卒業後の一定期間内に貸与分を全額返済することが必要です。
返済方法は制度によって異なるものの、毎月指定口座からの自動振替(引落し)される「月賦返還」が一般的といえます。
月賦返還による毎月の返済額は、大学を卒業したらすぐ開始されるのではなく、貸与終了月の7か月目にスタートします。
卒業後、まとまった現金が用意できた場合など、一定期間分をまとめて返す「繰上返還」を利用すれば、返済総額を抑えることができるでしょう。
1-1 一括返済と繰り上げ返済の違い
日本学生支援機構では、繰上返還も可能としています。
「繰上返還」とは、一般的に繰り上げ返済と呼ばれる方法であり、返還額の「全額」または「一部」を繰り上げて返還することです。
通常の返還と同様、登録している口座から振替により支払いできます。
一括返済は残りの債務すべてを返すイメージが強いといえますが、一部のみを繰り上げて支払う繰上返還であれば、繰上上限金額もしくは希望する繰上回数のどちらかを選択して支払いできます。
繰上上限金額で申し込む場合、希望金額内で「繰上可能回数」を計算し、金額調整されます。
一部のみ繰り上げる繰上返還の場合、繰り上げた分の返済期間は短縮されますが、翌月からの返還は従来通りの金額で自動振替が行われます。
毎月の割賦金額が減額されるわけではないため、勘違いしないように注意してください。
2章 奨学金を一括返済するメリット
奨学金の「貸与型」には、次の2種類があります。
- 第一種奨学金(無利子)
- 第二種奨学金(有利子)
第二種奨学金は利息を支払うことが必要であるため、貸付金額と残高に応じた利息の合計から、毎月の返還額が設定されます。
しかし奨学金を一部のみ繰り上げて返済することや一括返済することにより、以下の2つのメリットがあります。
- 返済期間を短くできる
- 返済総額を少なくできる
それぞれのメリットについて説明します。
2-1 返済期間を短くできる
奨学金を一括返済すれば、第一種と第二種の種類にかかわらず、「返済期間」は短縮されます。
ただし「第一種奨学金」は利息が発生しないため、毎月の支払いは元本のみです。
そのため一部を繰り上げて返済することで返済期間は短くなっても、「返還総額」は変わりません。
2-2 返済総額を少なくできる
有利子の奨学金を一括返済すれば、返済総額を少なくできます。
「第一種奨学金」の場合、先に説明したとおり支払いは「元金」のみであるため、繰り上げて支払っても返済総額は変わりません。
しかし「第二種奨学金」は、毎月の支払いに残債に応じた「利息」が含まれます。
繰り上げで返済した額は「元本」に充てられるため、利息の負担も少なくなります。
3章 奨学金を一括返済するデメリット
奨学金を一括返済することに、特にデメリットはないと考えられます。
ただ、奨学金よりも金利の高い借入れがある場合、「低金利」の奨学金返済を優先してしまうことで、その他の借金返済が厳しくなる恐れがあります。
奨学金で設定される「利率」は、住宅ローンや教育ローンなどのローンよりも低いため、その他の借金より先に返す必要はありません。
そもそも一括返済ではまとまった資金が必要となるため、大きな出費で貯えが減ってしまいます。
留学や結婚などのライフイベントに向けて貯めたお金の場合、目的を達成できなくなるため、貯えを返済資金に充てないほうがよいでしょう。
さらに一括返済ではなく一部を繰り上げて返済する場合、繰り上げした月数分の返済が停止することもなく、毎月従来どおりの返済額を「完済」まで支払い続けることが必要です。
貯えに余裕のない状態における一括返済や繰上返還は、その後の生活を苦しい状況にしてしまうリスクがあるため、無理に返済する必要はないと考えられます。
4章 奨学金を一括返済できる時期
奨学金は、貸与終了後にいつでも一括返済を申し込むことができます。
全額または一部繰上返還は、原則、「スカラネット・パーソナル」から申し込むことが必要です。
繰上返還申込書の「受付期間」は、繰上返還希望月の4か月前の振替日翌日から、繰上返還希望月の1か月前の振替日とされています。
ただし注意しておきたいことは、返還が始まるタイミングを半年まで引き延ばせる制度を利用している場合、返還開始を延期中も「利息」が発生することです。
繰上返還などで早期の前払いを申請しても、返還開始の延期期間中の利息は減額されません。
5章 奨学金を一括返済した場合のシミュレーション
奨学金に一括返済を検討している場合には、実際にどのくらい「総返済額」が変わるのか、「シミュレーション」した上で判断するとよいでしょう。
たとえば第二種奨学金を500万円借りたときの貸与利率が0.940%だった場合でシミュレーションしてみましょう。
返還期間2024年4月~2044年3月の20年間で、毎月の支払い額や回数、総額は以下のとおりです。
貸与額500万円(貸与利率0.940%)
返還期間2024年4月~2044年3月(20年間)
月賦返還通常22,957円・最終22,872円
返還回数240回
返還総額5,509,595
なお、日本学生支援機構の公式サイトにある「奨学金貸与・返還シミュレーション」で、借入額や返済額についてシミュレーションできます。
6章 奨学金を一括返済するときの注意点
学生時代に借りた奨学金はできるだけ早く完済したいと考えがちですが、繰上返還や一括返済するときには、以下の2つを理解した上で決断することが必要です。
- 一括返済後も完済までは返済が続く
- 奨学金の金利は他の借金と比較しても低い
それぞれの注意点について説明します。
6-1 一括返済後も完済までは返済が続く
奨学金の残債すべてを一括返済すれば、その後の支払いはなくなります。
しかし一部のみ繰り上げて返す「繰上返還」においては、手続後も完済するまで返済を続けなければなりません。
繰上返還した月数分は返還期間が短縮されても、月数分の期間で返還義務が停止するのではなく、翌月から通常通り「継続」して支払うことが必要です。
6-2 奨学金の金利は他の借金と比較しても低い
奨学金のうち、「第二種奨学金」は利息が発生する貸与型の制度ですが、金利は年率3.0%であり、それを超えることはありません。
消費者金融やクレジットカードなどのリボ払いと比べると金利はかなり低いため、奨学金よりも優先させるべき借金があるのなら、余裕資金を高金利の借金返済に充てたほうがよいでしょう。
まとめ
奨学金は、残債を一括返済することや、一部を繰上返還もできます。
学生時代に借りた借金であるため、たとえば結婚前などに早期完済しておきたいと考える方は少なくないですが、低金利のため無理に一括返済する必要はありません。
第二種奨学金の場合は利息の支払いも必要であるため、繰り上げて返済することで返還総額は減らすことができますが、無利子の第一種奨学金は返還総額が変わらず前払いのメリットはそれほどないといえます。
奨学金よりも高い金利が設定された借入れがある場合は、他の借金返済を優先させたほうがよいでしょう。
もしも奨学金や、他の借金のどちらも返済が難しい状況に陥っているときには、今後の返済計画についてグリーン司法書士法人に一度ご相談ください。
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