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不動産が競売にかけられる理由は、一般的に金銭債務の返済が滞っているからです。
住宅ローンなどで不動産に抵当権を設定している場合において、債務者から返済のない状態が続けば、債権者は担保の不動産を現金化して債権回収を図ろうとします。
ただ、不動産が競売にかけられる状態を回避できないわけではありません。
そこで、不動産が競売にかけられる理由や、回避する方法を次の4つの章に分けて説明していきます。
- 不動産の競売とは
- 競売にかけられる理由
- 住宅ローン滞納から競売までの流れ
- 競売を回避する方法
住宅ローンの返済ができず、不動産が競売にかけられることに不安がある方は、この記事をぜひ参考にされてください。
目次 ▼
1章 不動産の競売とは
不動産の「競売」とは、価格を確定せずに売り出した不動産に対して、購入を希望する者が「購入希望価格」を申し出る「オークション形式」の売買です。
担保として差し入れられている不動産について、裁判所の権限で差し押さえて売却し、その代金を債権の「回収」に充てるために実施します。
不動産の所有者の意思は考慮されず、すべての工程が「強制的」に進みます。
競売の典型的な事例として、主に住宅ローンを滞納したことで自宅を差し押さえられてしまった後、売りに出されるケースが挙げられます。
住宅ローンを組んでマイホームを購入するときには、債権者である金融機関が土地や建物に「抵当権」を設定します。
抵当権があることで、住宅ローン滞納など「債務不履行」が起こった場合、競売にかけることができる仕組みです。
競売による不動産の売却は、通常売却のように市場価格での売買ではないため、売却価格が大幅に低くなることが多いといえます。
そのため競売で自宅を売ってもローンを完済できないケースでは、家を手放しても借金は残り、返済を続けなければならない厳しい状態となります。
2章 競売にかけられる理由
不動産が競売にかけられてしまう理由は、所有者が何らかの事情で債務を返さなかったため、物件が差し押さえられてしまうからです。
具体的には次のような「理由」で競売にかけられてしまいます。
- 住宅ローンを返済できなくなった
- マンション管理費を滞納した
- 借金を返済できなくなった
- 固定資産税を滞納した
- 相続の遺産分割協議が整わなかった
それぞれの理由について説明していきます。
2-1 住宅ローンを返済できなくなった
不動産が競売にかけられる理由として最も多いものは「住宅ローン」を返済できなくなったことです。
住宅ローン滞納が原因の場合、返済期日から半年近く経っていることが一般的です。
1~2回の滞納なら大きな問題にならないことが多くても、3回以上滞納すれば競売の手続を始めて、ローン残債をすべて「一括」で回収しようと動きます。
住宅ローンは不動産を担保にして借入を行っているため、滞納が続くと担保である住宅を差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。
2-2 マンション管理費を滞納した
不動産が競売にかけられる理由として、「マンション管理費」の滞納が挙げられます。
マンション購入者は、毎月、管理費や修繕積立金を支払っています。
しかし支払わずに滞納が続いてしまうと、マンション内の他の住民との公平性が保たれなくなるため、マンション管理組合が競売を申立てます。
2-3 借金を返済できなくなった
不動産が競売にかけられる理由として、「借金」を返済できなくなったことが挙げられます。
債権者が競売を申立てる対象となる借金は、住宅ローンに限りません。
たとえば自営業者が不動産を「担保」として「事業資金」を借りており、返済できずに滞納し続けれて競売を申立てられるケースもあります。
また、不動産を担保としない消費者金融の「無担保ローン」などでも、返済せず滞納が続いていることを理由に裁判を起こされれば、所有している不動産が競売にかけられることもあります。
2-4 固定資産税を滞納した
不動産が競売にかけられる理由として、「固定資産税」の滞納が挙げられます。
固定資産税など、「税金」を滞納している場合、国や役所などが「公売」手続をします。
公売とは、滞納者が税金を納付しない滞納者の財産を差し押さえ、入札などの方法で売却して滞納国税に充てる手続です。
公売は裁判所に申立ては「不要」であり、自治体自らがオークションに出すことができるため、非常にはやく手続が進んでしまいます。
2-5 相続の遺産分割協議が調わなかった
不動産が競売にかけられる理由として、相続の「遺産分割協議」が調わなかったことが挙げられます。
相続が発生したとき、有効な遺言書がなければ、共同相続人全員で遺産分割について「協議」を行います。
しかしスムーズに遺産分割協議が進むとも限らず、遺産に不動産が含まれる場合においても、相続人同士の意見がまとまらないこともあるでしょう。
家庭裁判所における「調停手続」へと進んだ場合でも合意できず、調わないまま終了すれば今度は審判手続に移行します。
「審判手続」で不動産競売による分割が決定した場合、売却代金を相続分に応じて分けることになります。
3章 住宅ローン滞納から競売までの流れ
不動産が競売にかけられる典型的な事例として挙げられるのが、「住宅ローン滞納」によるものです。
もしも住宅ローン滞納により不動産を差し押さえられてしまった場合、競売にかけられて強制退去を求められる前に、今どの「段階」にいるのか把握した上での対処が必要といえます。
競売を回避する方法はあるため、必要なタイミングまでに手続を進めるためにも、以下の表で住宅ローン滞納から不動産競売までの簡単な「流れ」を把握しておきましょう。
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項目 | 手続が実施される期間 | 手続の内容 |
---|---|---|
①督促 | 住宅ローン滞納から1~5か月目 | 債権者の任意判断で支払いを催促するために送る通知が届く |
②一括請求 | 住宅ローン滞納から5~6か月目 | 債務を分割で支払うことを認める権利(期限の利益)を失い、債権者から一括弁済の請求を受ける |
③代位弁済 | 住宅ローン滞納6~8か月目 | 債務者に代わって保証会社が代位弁済を行い、保証会社に債権が移る |
④競売開始決定 | 住宅ローン滞納8~9か月目 | 債権者が裁判所に競売の申立てを行う |
⑤現況調査 | 競売開始決定から1~2か月後 | 競売を進めるために対象物件の調査が実施される |
⑥入札開始 | 現況調査後2~3か月後 | 入札期間の通知により開札日が確定する(※通知に記載された開札日前日までであれば任意売却が可能) |
⑦落札者決定 | 1週間以上1か月以内の入札期間経過 | 入札者がいた場合には最も高額な提示をした者を落札者として決定する |
⑧立ち退き | 落札者決定後 | 落札から約1か月後までに購入手続が行われ、不動産は購入者へ引き渡しされる流れにより、立ち退きが必要となる |
3-1 落札者決定後は競売物件からの立ち退きが命じられる
競売にかけられると、落札者が決定してから1か月程度で購入手続きが行われます。
落札後は購入者に物件が引き渡されるので、もともとの所有者は物件から立ち退かなければなりません。
ただし、落札後6か月は退去まで猶予期間として設定される場合があります。
猶予期間の有無や期間については、落札目的やもともとの所有者の事情によってケースごとに判断されます。
そのため、猶予期間があるからと考えるのではなく競売後は立ち退きに向けて準備を進めておきましょう。
4章 競売を回避する方法
まだ競売に掛けられていないものの、このままでは滞納してしまう恐れがある状態であれば、次の「方法」で不動産を競売にかけられることを防ぎましょう。
- 借金の借り換えや一本化を検討する
- 無駄遣いを辞めるなど生活費を見直す
- 副業するなど収入を増やす
- 債権者と返済期限や方法など交渉する
- 専門家に解決策について相談する
なお、具体的な方法は以下の記事を参考にしてください。
すでに競売の手続が進んでいる場合には、次の3つを検討しましょう。
- 一括返済する
- 任意売却する
- 住宅ローン特則付個人再生
それぞれの方法について説明していきます。
4-1 一括返済する
競売の手続が進んでいる場合において、回避するためには「一括返済」することが必要です。
債権者と債務者との間には、契約で返済期限が定められており、その期限までに返済を行えば残債があっても一括請求されることはない「期限の利益」が存在します。
毎月の期限に遅れることなく返済していれば問題ないのにもかかわらず、期限を過ぎても返済しなければ「期限の利益」を失うため、債権者から残債を「一括返済」するように求められます。
競売手続を止めるためにローンの一括返済が必要ですが、実際には資金難に陥っていることを理由に、ローンの返済が遅れている状態です。
一時的に親族などに立て替えてもらえるケースなどでなければ、一括返済することは難しいでしょう。
4-2 任意売却する
競売の手続が進んでいる場合において、回避するためには「任意売却」を検討しましょう。
「任意売却」とは、住宅ローンなどの支払いができなくなった場合、債権者の「合意」のもとで一定条件により不動産を売却することです。
競売は債権者であればいつでも取り下げが可能であるため、任意売却の合意を得て、期間入札の開始前日までに手続完了できれば競売回避につながります。
そもそも競売で不動産が売れたとしても低い価格での売却となるため、市場価格で売る任意売却のほうが有利です。
なお、任意売却した後に残った債務については、支払い条件を変更して引き続き返済することになります。
決められた条件に従って返済を続けなければ、「自己破産」などの必要性も高くなるため、現実的に支払いできる金額で交渉を進めましょう。
4-3 住宅資金特別条項(住宅ローン特則)付個人再生
競売の手続が進んでいる場合において、回避するためには「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)付個人再生」を検討しましょう。
個人再生を申立てた後で、競売を中止する命令を裁判所から出してもらうための「競売中止命令」を申立てます。
裁判所から競売中止命令が出された後、競売を行っている裁判所に競売中止命令の謄本を提出すると、一定期間は競売を止めてもらうことができます。
競売が中止される期間は3~4か月程度であるため、さらに止めてほしい場合は再度の申立てが必要になります。
なお、申立てをしても必ず認められわけではなく、住宅ローン特則付個人再生において再生計画認可の「見込み」がある場合のみです。
一定以上収入を確保できており、減額後の借金を遅れず支払うことができると認められなければ、中止命令は出してもらえません。
自分の収入や借金の状況で裁判所に中止命令を出してもらえそうか、判断するのが難しい場合は借金問題に詳しい司法書士や弁護士に相談してみるのがおすすめです。
まとめ
競売とは、価格を確定しないまま売り出した不動産に対して、購入希望者が購入希望価格を申し出るオークション形式の売買です。
不動産が競売にかけられてしまう理由は、主に債務を返さなかったため、物件が差し押さえられてしまうことにより起こります。
たとえば住宅ローン滞納が原因の場合、返済期日から半年近く経っていることが一般的であり、1~2回の滞納なら問題にならなくても3回以上滞納で競売手続が開始されます。
競売手続が進むと、現実的な方法として任意売却するか住宅ローン特則付個人再生を検討することになります。
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よくあるご質問
- 競売にかけられる理由とは?
- 競売にかけられる理由は、主に下記の通りです。
・住宅ローンを返済できなくなった
・マンション管理費を滞納した
・借金を返済できなくなった
・固定資産税を滞納した
・相続の遺産分割協議が調わなかった
- 競売にかけられるとどうなる?
- 競売が終了すると、自分の家ではなくなるため強制退去になります。
落札者に所有権が移っても住み続けた場合、不法占拠になるため注意しましょう。