家賃滞納の消滅時効とは?成立するまでの年数と要件をわかりやすく解説

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

時効の援用
家賃滞納の消滅時効とは?成立するまでの年数と要件をわかりやすく解説

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家賃滞納した状態でも、いずれ時効を迎えれば支払う必要はないと考える方も中にはいるようです。

確かに家賃滞納は5年以上放置することで、消滅時効により未払分の請求ができなくなるとされています。

しかし単に時効を経過しただけで支払い義務が消滅するわけではなく、すべての未払い分が消えたと思っていてもそうでない場合もあります。

そこで、家賃滞納の消滅時効が成立するまでの年数やその要件について、次の章ごとに詳しく説明していきます。

  1. 消滅時効とは
  2. 家賃滞納の時効が成立する年数と要件
  3. 家賃滞納を放置する3つのリスク
  4. 家賃滞納で民事訴訟を起こされるリスク
  5. 違法性のある督促行為があったときはまず相談

なお、時効の援用については以下の記事を参考にしてください。

1章 消滅時効とは

「消滅時効」とは、一定期間権利を行使しなかったことによって、その権利が行使できなくなる制度です。

法律で定められた時効の消滅期間経過後、たとえば家賃滞納者である借主が、消滅時効を利用する旨を債権者である貸主に告げれば家賃を請求する権利は消滅します。

家賃滞納の消滅時効の期間は「5年間」であるため、家賃を支払わずに放置していても5年経過すれば時効を迎えますが、単にその期間を過ぎれば支払い義務がなくなるわけではありません。

次の章で家賃滞納の時効が成立するために必要な「年数」と「要件」について説明していきます。

2章 家賃滞納の時効が成立する年数と要件

家賃滞納の時効が成立する年数と要件

家賃を5年以上滞納すると、消滅時効により支払いを請求されることがなくなります。
家賃滞納の時効が成立するには、下記の要件を満たさなければなりません。

  1. 家賃を滞納して5年以上経っている
  2. 時効成立まで家賃を一度も支払っていない
  3. 家賃を回収する手続がされていない
  4. 時効を援用している

それぞれ説明していきます。

2-1 家賃を滞納して5年以上経っている

家賃滞納の時効成立の要件として、まず支払っていない状態で5年以上経過していることが必要です。

家賃は民法で「定期給付債権」に含まれますが、定期給付債権の消滅時効期間は「5年間」とされています。

定期給付債権とは
定期給付債権とは、1年以内の一定時期に一定金銭を支払わせることを目的とした債権で、家賃・養育費・年金などが該当します。

債権は、次のどちらか早い方に達したとき時効で消滅します。

  • 債権者がその権利を行使できると知ったときから5年
  • 債権者がその権利を行使することができるときから10年

「5年」とは最後に家賃を支払ったとき、または請求された日から数えます。

そこからさかのぼって5年よりも前の債権(滞納している家賃)は消滅しますが、その後の滞納分はまだ5年経過していないため消滅しません。

仮に家賃を7年間滞納している場合、5年を経過した2年分の滞納分は時効で消滅したとしても、残り5年分は消滅しないことになります。

家賃滞納時の消滅時効例

ただし5年以上前に1か月のみ家賃を滞納し、それ以外の月については翌月から滞納せず支払っていた場合には、滞納した1か月分の家賃はそこから5年経過すれば時効消滅しますので、月ごとの判断が必要です。

家賃保証会社が保証人の場合

家賃保証会社が保証人の場合、家賃を滞納すると家賃保証会社が代わりに家賃を支払う「代位弁済」が行われます。

その後、家賃保証会社は家賃を滞納している借主に対し家賃の支払いを求めることになります。

家賃保証会社が代位弁済したときの時効の消滅期間も「5年間」ですが、この場合は代位弁済があった日を起算点として、そこから5年経過していることが必要です。

2-2 時効成立まで家賃を一度も支払っていない

家賃滞納の時効成立の要件として、時効が成立するまで5年間、滞納している家賃を一度も支払っていないことが必要です。

仮に1円でも家賃を支払えば時効は「中断」されることとなり、それまで経過した年数は「リセット」されます。

2-3 家賃を回収する手続がされていない

家賃滞納の時効成立の要件として、家賃を回収するための手続が行われていないことも必要です。

定期給付債権は5年間権利を行使しなければ消滅するため、貸主が滞納している家賃を回収する「手続」や「行動」を示していないことも必要となります。

たとえば「督促状」や「催告書」を送付したり裁判や「差し押さえ」をしたりなどが、主な手続や行動として挙げられます。

2-4 時効を援用している

上記すべての条件がそろっている場合でも、借主が貸主に対し「時効援用」の手続をしていなければ時効は成立しません

単に5年間経過したからといって、それだけで自動的に権利が消えるわけではないのです。

時効援用とは
時効援用とは、時効が成立することにより利益を得るものが、時効の完成を主張することです。

債権者である貸主に対し、内容証明郵便で「時効援用通知書」を送ることで時効援用できます。

内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に対し・どのような内容の文書を送ったか郵便局が証明する郵便のことです。

時効の援用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

3章 家賃滞納を放置する3つのリスク

家賃滞納を放置する3つのリスク

家賃の支払いが厳しく、たとえ滞納したままでも年数や要件を満たせば消滅時効により支払い義務はなくなるなら、このまま支払わず逃げ続ければよいと考える方もいることでしょう。

しかし家賃滞納を放置することには、次の3つのリスクがあります。

  1. 3か月以上滞納すれば契約解除される
  2. 時効中断の手続を取られる
  3. 賃貸入居審査に通らなくなる

それぞれ説明していきます。

3-1 3か月以上滞納すれば契約解除される

家賃を滞納したまま5年間逃げ切れば支払いから免れると考えるかもしれませんが、そもそも賃貸借契約は家賃を3か月以上滞納すれば解除がされることが多いといえます。

そのため家賃を支払わない状態で同じ場所に住み続けることはできず、立ち退かなければならなくなる可能性があると留意しておくべきでしょう。

3-2 時効中断の手続を取られる

家賃を支払わずに滞納したままでも、「時効中断」の手続を取られればそれまでの年数は「リセット」されます。

そうなると、いつまで経っても滞納家賃はなくならず、逆に延滞金がどんどん増えていくだけになります。

そして、時効中断のために実行される可能性のある手続は次の3つです。

  1. 支払い義務を認めるように求められる
  2. 簡易裁判所に申立てされる
  3. 催告書が内容証明郵便で届く

それぞれ説明していきます。

支払い義務を認めるように求められる

時効中断のために実行される可能性のある手続として、家賃の支払い義務を認めるように求められることが挙げられます。

家賃滞納者が未払い家賃の「存在」や「支払い義務」を認める「債権承認」があれば、時効は中断されるからです。

繰り返し家賃の支払いを請求され、

「家賃を支払います」

と伝えたわけではなくても、

「支払いを少し待ってください」

「家賃を減額してほしい」

などとお願いした場合は債務の存在を認めたこととなり、時効は中断されます。

なお、この時点から再度5年経過すれば時効を迎えることになるため、時効そのものがなくなるわけではありません。

簡易裁判所に申立てされる

時効中断のために実行される可能性のある手続として、簡易裁判所に申立てされる可能性が挙げられます。

家賃の滞納が続いており、支払いがない場合には「支払督促」を受ける可能性があります。

支払督促とは
支払督促とは、貸したお金を返してもらえないときや家賃を払ってもらえないときなど、簡易裁判所に申立てを行うことで、簡易裁判所の書記官が代わりに支払いを命じる制度です。

なお、支払督促を受けた後、督促に異議を申立てたり督促に応じなかったりした場合には、「民事訴訟」に移ることになります。

催告書が内容証明郵便で届く

時効中断のために実行される可能性のある手続として、催告書が「内容証明郵便」で届くことが挙げられます。

郵送・電話・対面での交渉をしても家賃が滞納されたままで支払われないときには、家賃の支払いがなければ賃貸借契約を解除する内容を伝える「催告書」を内容証明郵便で送られることが多いといえます。

また、家賃の請求を内容証明郵便で送ることで、時効までの期間は6か月間延長されます。

その間に裁判所に申立てを行うことで、時効の中断が成立してしまいます。

3-3 賃貸入居審査に通らなくなる

賃貸物件に新たに入居するときには審査が行われますが、家賃を滞納したままでは審査に通らなくなる可能性があります。

通常であれば、手取り収入の30%までの家賃の部屋なら、収入に見合う賃料として審査に通ることが多いですが、家賃滞納の履歴があれば「信用」がないと判断され通らなくなってしまいます。

現在家賃を滞納中でなくても、過去に滞納を繰り返していたり強制退去処分を受けていたりすると、信用力が低いとみなされ審査に通らなくなるでしょう。

4章 家賃滞納で民事訴訟を起こされるリスク

家賃滞納が続き、貸主が「支払督促」を手続したものの、異議を申立てた場合や支払いに応じなかったときには、「民事訴訟」に移ることになります。

民事訴訟では滞納した家賃を回収するだけでなく、「強制退去」も視野に入れた訴えとなるため、次のような流れで手続が進みます。

家賃滞納で民事訴訟を起こされる際の流れ

家賃の支払いがなければ、裁判による判決で財産が差し押さえられることもあると留意しておいてください。

5章 違法性のある督促行為があったときはまず相談

家賃滞納が続いているからといって、手段を選ばず取り立てを行ってもよいわけではありません。

たとえば次のような「違法性」のある督促行為には注意が必要です。

  • 借りている部屋に無断で入室された
  • 早朝や深夜に電話や訪問により請求された
  • 学校や勤務先に電話や訪問して請求された
  • ドアや共用部などに家賃滞納の事実を張り紙された
  • 長時間部屋を訪問したまま帰ってくれなかった
  • 保証人以外の支払い義務がない人にまで請求された
  • 部屋の鍵を勝手に交換された

脅迫や恐喝、名誉棄損に該当する行為があったときには、警察や弁護士に相談するようにしましょう。

まとめ

家賃滞納には時効があるため、一定期間経てば支払い義務はなくなります。

しかし単に時効まで待てばよいわけではなく、時効援用の手続などが必要となり、それ以前に時効成立までの要件を満たしていることが必要です。

そもそも家賃滞納は賃貸借契約を解除されたり訴訟を起こされたりなど、リスクも高いため時効を待つことはおススメできません。

もしも借金や他の支払いで家計が火の車状態で、家賃の支払いに充てることができないと悩んでいるのなら、グリーン司法書士法人グループへ一度ご相談ください。

最適な解決方法を提案させていただきます。

時効の援用に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

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