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裁判所から支払督促で支払いを命じられた借金が、すでに消滅時効期間を過ぎている場合でも、「時効の援用」をしていなければ消滅時効は成立していません。
長い期間放置し時効成立したはずの借金であっても、裁判所から支払督促が送られてくると、焦りと恐怖で支払ってしまいそうになるものですが冷静な対処が必要です。
そこで、裁判所から支払督促が届いたらどうすればよいのか、「時効の援用」の方法とポイントについて次の3つの章に分けて説明していきます。
- 裁判所の支払督促とは
- 裁判所から支払督促が届いた場合の対処法
- 支払督促の「時効の援用」におけるポイント
時効成立したはずの借金に対する支払督促が届き、どうすればわからないという方は、ぜひこの記事を参考にされてください。
目次 ▼
1章 裁判所の支払督促とは
「支払督促」とは、貸金や売掛金、家賃などの支払いをしない相手に対し、簡易裁判所を通じて支払うように命じてもらう略式の手続です。
金額に関係なく、次に該当する金銭の「未払い」や「未返還」に対し、請求したいとき利用できます。
貸金・立替金・売掛金(売買代金・請負代金・修理代金など)・給与・報酬・地代・家賃・敷金・保証金など
債権者の申立てに基づき、裁判所書記官が支払督促申立書を「審査」するだけで手続が進むため、裁判所に出向くことや証拠を提出するなど、手間がかからないことが特徴です。
ただし、支払督促を受け取った債務者は「言い分」を聞かれないまま支払いが命じられることになるため、受け取った内容に納得できなければ「異議」を申し立てることができます。
そのため支払督促は、対象である支払いについて債権者と債務者に「相違」がない場合にのみ適している手続ともいえるでしょう。
債務者から異議申立てにより「反論」される可能性が高い場合には、民事訴訟や民事調停などの手続が選択されると考えられます。
もちろん、債務者としては異議を出せばいいだけなので、債権者はとりあえず手軽にできる支払督促を出してみるということは十分にあり得ます。
なお、支払督促は書類を郵送することになるため、債務者の「住所」が判明していなければ手続できません。
2章 裁判所から支払督促が届いた場合の対処法
最後の返済から5年以上放置し、消滅時効期間を過ぎた借金であるにもかかわらず、裁判所から支払督促が届くと「焦り」や「不安」から支払いをしてしまいそうになるものでしょう。
しかし冷静に、次の3つの対処法で「時効の援用」をすることが必要です。
- 異議を申立てる
- 答弁書を提出する
- 裁判所に出廷して判決を取得する
それぞれ説明していきます。
2-1 異議を申し立てる
「時効の援用」に向けて、支払督促を受け取ってから「2週間以内」に裁判所へ「異議申立書」を提出しましょう。
異議申立書を提出すると、支払督促は自動的に「通常訴訟」へ移行します。
消滅時効期間が過ぎている場合には、異議申立書に「消滅時効を援用する旨」を記載します。
債権者が「時効の援用」を認めれば、支払督促は取り下げられ「取下書」が届きますが、同意が必要な取下書の場合には「内容証明郵便」を送付しておくと安心です。
基本的に取り下げに相手方の同意は不要とされているため、同意が必要な取下書の場合でも、2週間以内に異議を申し立てなければ「同意」したとみなされます。
なお、異議申立書の書き方などわからない場合には、司法書士や弁護士など専門家に相談すると安心です。
2-2 答弁書を提出する
支払督促に対し「異議申立て」を行い、債権者が取り下げなければ通常の裁判に移行するため、簡易裁判所から「答弁書」と「呼出状」が届きます。
答弁書には、「消滅時効を援用する旨」を記載し提出しましょう。
通常訴訟に移行した後も債権者から取り下げされず、裁判期日を迎えたのなら裁判所に「出廷」し、債権者の言い分や裁判所の見解を伝えてもらうことになります。
実際に出廷する方法のほか、自分の主張を書いた書面を提出することでもかまいません。詳しくはこちらの記事で解説しています。
2-3 裁判所に出廷して判決を取得する
債権者が「時効の援用」を争わない場合には、裁判を続けることは「無駄」と判断し、裁判所に出廷しないことがあります。
このとき、債務者も出廷しなければどちらも「欠席」することになるため裁判は「休止」しますが、休止後1か月以内にどちらからも新たな「裁判期日」の指定がなければ「取下げ」とみなされ「時効の援用」もなかったことになってしまいます。
そのため債権者が出廷しなかった場合でも、債務者は裁判所に出廷または書面を提出して「判決」を取得することが必要です。
また、裁判が取り下げられた場合、内容証明郵便で「時効の援用通知」を債権者に送っておくことで「証拠」として残すことができるでしょう。
自身で手続することに不安がある場合には、司法書士など専門家に相談することをおすすめします。
3章 支払督促の時効の援用におけるポイント
5年以上放置された借金など、消滅時効期間を過ぎている場合でも支払督促を申し立てることは可能です。
また、消滅時効成立には「時効の援用」が必須となるため、長期間放置していたことで返済義務がなくなったと勘違いせず、支払督促が届いたときには適切な対処が必要といえます。
消滅時効期間を過ぎた借金の支払督促の「時効の援用」については、次の4つをポイントとして押さえた上で、行動を起こすようにしましょう。
- 支払督促を無視しない
- 債権者に連絡しない
- 消滅時効期間を過ぎているか確認する
- 迷ったら専門家に相談する
それぞれのポイントについて説明します。
3-1 支払督促を無視しない
支払督促の「時効の援用」については、簡易裁判所からの通知を無視しないことが大切です。
届いた支払督促を無視し、異議申立書を提出しなければ時効は「10年」に延長され、仮執行宣言の申立てにより2度目の支払督促である「仮執行宣言付支払督促」が届きます。
2度目の支払督促に対しても異議申立てしなければ、仮執行宣言付支払督促が「確定」してしまいます。
これにより、財産の「差押え」が可能になり、新たに10年が経過するまでは「時効の援用」を主張することもできなくなります。
3-2 債権者に連絡しない
支払督促の「時効の援用」を行うためにも、焦って債権者に「連絡」しないようにしてください。
送り主が「裁判所」であるため、
「財産を差し押さえられるのではないか」
と不安になり、債権者へ連絡して支払う約束をしてしまうと「時効の援用」はできなくなってしまいます。
3-3 消滅時効期間を過ぎているか確認する
支払督促の「時効の援用」を行うためにも、支払督促が届いたら無視せず、消滅時効期間が経過しているかどうかを確認してください。
なお、銀行や金融機関などの借金の消滅時効は「借り入れから5年」とされています。
「時効の援用」は、消滅時効期間が経ぎた「後」に行うことが必要であり、時効完成前に手続しても意味がありません。
「消滅時効期間経過後」に支払督促が届いたのみであれば、時効は更新(リセット)せず「時効の援用」は可能であるため、必ず消滅時効期間を経過したことを確認した上で忘れず手続しておきましょう。
とはいえ、債権者も当然、消滅時効については知っています。その上で、逆に消滅時効の完成を防ごうとするために支払督促を出してくることが多いです。
なお、消滅時効期間経過後に「訴訟」を起こされた場合でも時効は更新しませんが、「既判力」による特殊な効果によって時効の援用はできなくなります。
- 既判力とは
- 既判力とは、裁判所の判断が最終的なものとして、前の裁判の判断内容が、後の裁判を拘束する効力です。
仮に時効の援用を「主張」しなかったことで訴訟になった場合には、既判力により主張しなかった側の「後」の言い分は認めてもらえなくなるため、「判決前」に時効の援用をすることが必要です。
3-4 迷ったら専門家に相談する
支払督促の時効の援用で迷ったときには、司法書士や弁護士など「専門家」に相談しましょう。
異議を申し立てたくても、異議申立書の「書き方」が分からないときには専門家を頼ったほうが安心です。
また、時効が援用できない場合にどうしたら良いかのアドバイスもしてくれます。
たとえば「司法書士」には簡易裁判所の「訴訟代理権」があるため、支払督促の「訴訟代理人」になることもできます。
代理人として「時効の援用」を進めることもできるため、手続に不安がある場合には司法書士など専門家に相談することをおすすめします。
消滅時効期間が経過しているか否かにかかわらず、支払督促が届いたら何らかの対処をする必要がありますので、早急に専門家へ相談するようにしましょう。
まとめ
すでに5年以上放置して時効成立したはずの借金でも、ある日突然裁判所から支払督促が届くこともあります。
消滅時効期間を過ぎた借金だとしても、時効の援用をしなければ消滅時効は成立しないからです。
仮に裁判所からの支払督促を無視し、異議申立てをしなければいずれ強制執行により財産を差し押さえられることになるでしょう。
そのため裁判所から支払督促が届いたときには、焦って債権者に連絡することは避け、正しい異議申立書の記載で提出することが必要です。
もしも書き方を間違ってしまうと返済の意思を表示したとみなされる可能性もあるため、時効の援用のやり方などわからないときなどは、一度グリーン司法書士法人グループへご相談ください。
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