パスポートは自己破産で取得できない?海外旅行に許可は必要か解説

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産
パスポートは自己破産で取得できない?海外旅行に許可は必要か解説

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自己破産すると、海外旅行など行動制限を受けることでパスポートも取得できなくなるのではないかと不安を感じる方もいることでしょう。

長く苦しい借金問題から解放され、気晴らしに海外へ旅行したいと考えても、自己破産でパスポートが取得できなければ実現させることは難しくなります。

実際、パスポートは自己破産で取得することはできますが、管財事件で手続するときには一定期間居住地を離れることは制限され、クレジットーカードによる決済もできません。

そこで、自己破産によるパスポートの扱いや、海外旅行の許可の必要性について、次の3つの章に分けて説明していきます。

  1. パスポートは自己破産しても取得できる
  2. 自己破産で海外旅行が制限されるタイミング
  3. 自己破産中の海外旅行における3つの問題

1章 パスポートは自己破産しても取得できる

結論からお伝えすると、パスポートは自己破産しても取得できます。

ただし「旅券法」には、「発給または渡航先の追加をしないことができる」ケースについて規定がされているため、過去に外国で罪を犯した人や強制退去処分となった人はパスポート発給が「制限」される場合があります。

パスポート発給が「制限」されるケース

  • 渡航先の法規により入国が認められない場合(外国での刑罰・強制退去処分など)
  • 一定の罪により刑事裁判中または身柄拘束の予定がある場合(死刑・無期または長期2年以上の刑など)
  • 禁錮・懲役の実刑判決を受け仮釈放中または執行猶予期間中である場合
  • 旅券法第23条に違反した前科がある場合(虚偽の記載によるパスポート発給や他人名義のパスポート不正利用など)
  • パスポートまたは渡航書など公文書偽造の前科がある場合(偽造した文書の行使も含む)
  • 国援法の適用で帰国したことがある場合(海外渡航後の生活困窮で帰国費を借りたなど)
  • 日本国の利益や公安を害する恐れがあると認めれた場合(テロ行為や国際麻薬取引などの前科があるなど)

「自己破産」は上記の制限に含まれていないため、破産手続をしてもパスポート発給を制限されることはない​といえます。

2章 自己破産で海外旅行が制限されるタイミング

自己破産した場合でもパスポートは取得することができ、海外旅行にも行くことはできます。

ただし海外への「渡航」については、自己破産手続における次の3つの「タイミング」により、「一定期間」制限を受けることがあります。

  1. 自己破産手続前
  2. 自己破産手続中
  3. 自己破産手続後

それぞれの海外旅行に対する制限の「有無」について説明していきます。

2-1 自己破産手続前

自己破産の申立て「前」に海外への渡航制限を受けることはありません。

ただし海外旅行を目的とする場合やかかる費用が高額な場合には、旅行費用を借金の返済に充てることができるとも考えられます。

海外旅行自体が「免責不許可事由」に直接該当するわけではないものの、「浪費」に該当する可能性はあります。そうなると免責不許可事由に該当することになってしまいます。

たとえば「クレジットカード」で多額の旅行費用を賄い、返済せず自己破産を申立てた場合などは免責に影響が及ぶリスクが高くなるでしょう。

2-2 自己破産手続中

自己破産手続「期間中」の海外旅行に対する制限については、次のどちらで手続を進めているかによって扱いが異なります。

  • 同時廃止
  • 管財事件

2つの手続のうち、「同時廃止」では破産手続開始決定と同時に廃止決定となるため、海外への渡航を制限されることはありません

「管財事件」の場合、破産手続開始決定から終結まで(破産管財人がついている間)に居住地を離れることは制限されるため、海外旅行したい場合には破産管財人の「同意」と裁判所の「許可」が必要です。

2-3 自己破産手続後

管財事件で移動の「制限」を受けるのは、破産手続開始決定から「免責許可決定確定」までの3~6か月の期間までです。

そのため免責許可決定が確定し、自己破産手続が「終了」すれば、渡航の制限は「解除」され自由に海外旅行にも行くことができます。

自己破産を「理由」にパスポートの発行や更新ができなくなることもありません

3章 自己破産中の海外旅行における3つの問題

自己破産中でも、「同時廃止」で手続を進めているのなら、海外への渡航の制限は受けず海外旅行に行くこともできます。

たとえ「管財事件」であっても、破産管財人の同意と裁判所の許可を得ることができれば海外旅行は可能となるでしょう。

ただし自己破産手続中の海外旅行には、次の3つの「問題」があることを留意しておく必要があります。

  1. クレジットカードは使えない
  2. 自己破産手続が長期化する
  3. 免責許可に影響する場合がある

それぞれの問題について説明していきます。

3-1 クレジットカードは使えない

自己破産手続中の海外旅行においては、クレジットカードを使うことができません。

クレジットカードは自己破産により「強制解約」されることになるため、渡航先での支払いはすべて「現金」による支払いが必要です。

また、自己破産すると信用情報機関に事故情報として登録される「ブラックリスト」扱いとなるため、5~7年間は新たにクレジットカードを作ることはできません

渡航先によるものの、日本人観光客を狙ったスリや窃盗などの「犯罪」も横行しており、現金を常に持ち歩かなければならないことは大きな「リスク」といえるでしょう。

3-2 自己破産手続が長期化する

自己破産手続中に海外旅行すると、自己破産手続が「長期化」する可能性があります。

スムーズに手続が進んだ場合でも3~6か月はかかるため、裁判所に本人が出向かなければならないタイミングに海外旅行中であれば、免責許可までの「期間」が長期化します。

早く手続を完了させるためにも、自己破産手続中の海外旅行は避けたほうがよいといえるでしょう。

3-3 免責許可に影響する場合がある

自己破産手続中に海外旅行すると、「免責許可」に影響する場合があります。

勤務先の出張や、家族の結婚式など特別な「事情」があり海外へ渡航することは認められると考えられます。

しかし単なる娯楽目的の海外旅行であれば、破産手続中であるにもかかわらず行くほどの事情が基本的には認められないでしょう。

海外にいることで裁判所や管財人との連絡が取りにくくなりますし、それによって「破産手続に真摯に取り組んでいない」とか「反省の態度を示していない」という印象を抱かれてしまうと、免責判断に大きく影響します

このような娯楽のための旅行は、そもそも許可が出ない可能性が高いですが、だからと言って管財人らに知らせずに旅行すると、「許可を取るべきところを取らず、内緒で行った」ということ自体で大きなマイナスになってしまいます。

自己破産手続中の海外旅行は、原則として控えるのがよいでしょう。

まとめ

自己破産が理由でパスポートが取得できなくなることはなく、自己破産しても海外旅行に行くことはできます。

ただし自己破産前や手続中に海外旅行に行くことは、返済能力を失っているわけではないと疑われても仕方がないため、免責許可してもらえなくなる可能性もあります。

海外旅行を理由に自己破産で免責が許可されなくなると本末転倒となるため、もしも自己破産したいけれど海外旅行も予定しているという場合には、一度グリーン司法書士法人グループへご相談ください。

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よくあるご質問

自己破産をするとパスポートが作れなくなる?
パスポートは自己破産しても取得できます。
ただし、自己破産手続き中は海外に行く際に許可が必要な場合がある、自己破産後はクレジットカードを使えないなどの点に注意が必要です。
自己破産とパスポートの関係について詳しくはコチラ
自己破産をすると何ができなくなる?
自己破産すると信用情報機関に事故情報として登録される「ブラックリスト」扱いとなるため、5~7年間は新たにクレジットカードを作ることはできません。
自己破産後の制限について詳しくはコチラ
自己破産すると旅行に行けない?
自己破産の手続きが管財事件になった場合、手続中の旅行は裁判所の許可が必要になります。
また、同時廃止になった場合、制限はかからないものの、無事に自己破産の手続きを完了させるためには控えるべきと言えます。
自己破産中の旅行について詳しくはコチラ
パスポートが取れないことはある?
過去に外国で罪を犯した人や強制退去処分となった人はパスポート発給が「制限」され、取れない場合があります。
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