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- 法人融資における社長の個人保証について
- 法人融資で社長の個人保証をするメリット・注意点
- 社長に有利に働く経営者保証に関するガイドラインの概要や利用条件
法人として融資を受ける際、「社長の個人保証が必要」と言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。個人保証は、中小企業の融資では一般的に求められてきた仕組みですが、社長個人に大きな責任が及ぶ点には注意が必要です。
近年では、経営者保証に依存しない融資を促す動きも進んでおり、個人保証のあり方は変わり始めています。しかし、内容を十分に理解しないまま契約してしまうと、将来的に思わぬリスクを抱えることにもなりかねません。
本記事では、法人融資における社長の個人保証とは何かを整理したうえで、メリットや注意点、見直しの考え方、万が一個人保証による借金を背負ってしまった場合の対処法までを解説します。
目次 ▼
1章 法人融資における社長の個人保証とは?
法人融資における社長の個人保証とは、会社が金融機関から借り入れた資金を返済できなくなった場合に、社長個人がその返済義務を負うことを約束する仕組みです。法人と個人は法律上は別の存在ですが、個人保証を付けることで、社長は会社の債務について個人としても責任を負う立場になります。
中小企業の融資では、会社の信用力だけで融資判断が行われるとは限りません。特に、設立間もない企業や、財務基盤が十分に整っていない企業の場合、金融機関は返済の確実性を高める目的で、代表者である社長の個人保証を求めるケースが多くなっています。
2章 個人保証のメリット
社長の個人保証はリスクが注目されがちですが、法人融資において一定のメリットがあるのも事実です。ここでは、金融機関側と社長側、それぞれの視点から個人保証のメリットを整理します。
2-1 金融機関側のメリット
個人保証が付くことで、金融機関は貸し倒れリスクを抑えやすくなります。万が一、会社が返済不能に陥った場合でも、社長個人に返済義務が及ぶことで、債権回収の可能性が高まるためです。
また、社長自身が保証人になることで、経営に対する責任意識が高まり、安易な借入や無謀な経営判断を抑制する効果も期待されます。このような背景から、金融機関にとって個人保証は、融資判断を行う際のリスク管理手段として利用されてきました。
2-2 社長側のメリット
社長が個人保証を付けることで、融資を受けられる可能性が高まる点は大きなメリットです。特に、創業間もない企業や、事業規模が小さい企業では、会社単体の信用力だけで融資を受けることが難しい場合も少なくありません。
そのような状況でも、個人保証を付けることで金融機関との信頼関係を築きやすくなり、資金調達の選択肢が広がります。また、担保となる資産が十分でない場合でも、個人保証を条件に融資が実行されるケースもあります。
また、個人保証を付けることで、融資の審査がスムーズに進む可能性が高まります。金融機関にとって返済の確実性が高まるため、融資実行までの期間が短縮されたり、希望する借入額や返済期間について柔軟に対応してもらえたりするケースもあります。資金調達のタイミングが事業の成否を左右する場面では、こうしたスピード感や条件面での融通が、経営判断を後押しする要素になることもあるでしょう。
3章 個人保証の注意点
社長の個人保証は、法人融資を受けやすくする一方で、経営や私生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。個人保証を付ける際には、以下のような点に注意が必要です。
3-1 社長の個人資産に影響を及ぼす
個人保証を付けている場合、会社が倒産すればその責任は社長個人に直接及びます。会社名義の借入であっても、保証人である社長は返済義務を免れないためです。
例えば、預貯金や不動産などの個人資産が返済原資として求められ、場合によっては自宅の売却を余儀なくされることもあります。本来であれば会社の経営リスクにとどまるはずの問題が、個人の生活基盤にまで影響を及ぼす点は、個人保証の大きなリスクと言えるでしょう。
3-2 事業承継やM&Aの障壁となる恐れがある
社長が個人保証を付けている場合、事業承継やM&Aを進める際に障壁となることがあります。特に事業承継の場面では、後継者候補が会社の経営を引き継ぐと同時に、個人保証も引き継ぎを求められるケースが少なくありません。
後継者にとって、会社の借入に対する個人保証まで背負うことは大きな負担となります。その結果、後継者が承継をためらったり、引き継ぎ自体を断念したりする恐れもあります。
M&Aの場合でも、買い手が個人保証の引き継ぎや新たな保証を求められることで、取引条件が厳しくなったり、交渉が難航したりします。個人保証が残っていることで、経営の引き継ぎが円滑に進まなくなる点は、事前に認識しておくべき注意点と言えるでしょう。
3-3 事業の拡大が難しくなる
社長が個人保証をしている場合、その重圧が経営判断に影響を及ぼすことがあります。会社の判断によって最終的に個人資産まで失う可能性がある状況では、どうしても慎重にならざるを得ないためです。
その結果、本来であれば挑戦すべき設備投資や新規事業への参入であっても、リスクを避ける選択を重ねてしまい、経営が守りに入りやすくなります。短期的な資金繰りや安定を優先するあまり、将来の成長につながる投資や人材育成を後回しにしてしまうケースも考えられます。
このように、個人保証は資金調達面だけでなく、社長の意思決定そのものに影響を与える点にも注意が必要です。過度な心理的負担が続くことで、企業が本来持っている成長の可能性を十分に発揮できなくなる恐れがあります。
4章 社長に有利に働く経営者保証に関するガイドラインとは?
個人保証の負担が中小企業経営に与える影響が問題視されるようになり、その見直しを促す目的で整備されたのが経営者保証に関するガイドラインです。ここでは、経営者保証に関するガイドラインの概要や利用条件を解説します。
4-1 経営者保証に関するガイドラインとは
経営者保証に関するガイドラインとは、社長に過度な負担が集中しがちだった個人保証の慣行を見直すために、国の関与のもと策定された指針です。法律のような強制力はありませんが、中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルールとして位置づけられています。
このガイドラインが目指しているのは、個人保証に依存しない融資慣行の定着です。経営者保証があることで、社長が過度にリスクを恐れ、事業拡大や新たな挑戦に踏み切れなくなるといった弊害が指摘されてきました。経営者保証に関するガイドラインは、こうした状況を改善し、果敢な事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継を後押しすることを目的としています。
また、2022年12月に行われた改定では、個人保証を求めない融資を原則とする姿勢が、より明確になりました。融資の申込みがあった場合には、経営者が保証を提供しない選択をした際の代替的な融資方法について、金融機関が検討・説明することが求められています。
さらに、個人保証を付ける場合であっても、将来的にどのような条件を満たせば保証が解除されるのか、その基準をできる限り具体的に示すことが求められました。これにより、経営者は保証解除に向けた目標を明確にし、計画的に経営改善へ取り組みやすくなっています。
4-2 経営者保証に関するガイドラインの利用条件
経営者保証に関するガイドラインを活用するためには、一定の条件を満たす必要があります。単に「保証を外したい」と申し出るだけでは足りず、金融機関が納得できる経営体制が整っているかどうかが重要な判断材料となります。
4-2-1 法人と経営者が区分されている
まず前提となるのが、法人と経営者個人との関係が明確に区分されていることです。会社の資産と個人の資産が混在していたり、私的な支出が会社経費として処理されていたりする状態では、ガイドラインの適用は難しくなります。法人名義の財産管理や、役員借入金・貸付金の整理などを通じて、会社と個人の財務関係を明確に分けていることが求められます。
4-2-2 財政基盤が安定している
法人単体で返済能力があると評価できる財務基盤も欠かせません。これは、会社の資産や収益力によって、借入金の返済が継続的に可能であるかをチェックするためのものです。必ずしも大企業並みの財務内容が求められるわけではありませんが、安定した利益構造や、過度な借入に依存していない経営状況であることが重要になります。
4-2-3 金融機関に適時かつ適切に財務情報を開示している
金融機関からの信用を得るために、適時かつ適切に財務情報を開示する必要があります。決算書の提出だけでなく、資金繰りの状況や事業計画についても、必要に応じて説明できる体制が整っているかが見られます。経営の透明性が高いほど、金融機関からの信頼を得やすくなり、個人保証の見直しにも繋がりやすくなるでしょう。
4-3 利用する際は専門家への相談がおすすめ
経営者保証に関するガイドラインは、社長にとって有利に働く可能性がある一方で、内容を正しく理解せずに進めてしまうと、思うような結果に繋がらないこともあります。特に、金融機関との交渉を社長自身だけで行う場合、ガイドラインの趣旨が十分に反映されないまま話が進んでしまうケースも少なくありません。
なぜなら、ガイドラインは法律のように一律に適用されるものではなく、あくまで金融機関と経営者の自主的な判断に委ねられている指針だからです。そのため、「自社が要件を満たしているか」「どの点を改善すれば保証解除や見直しの対象になり得るか」を整理せずに相談しても、金融機関から慎重な対応を取られてしまうことがあります。
こうした場面では、税理士や公認会計士、中小企業診断士といった専門家のサポートを受けることが有効です。専門家であれば、財務状況や経営体制を客観的に分析したうえで、ガイドラインの要件とのギャップを整理し、どのような準備や説明が必要かを具体的に示してくれます。
5章 法人融資における個人保証を見直したい場合は金融機関の担当者に相談しよう
法人融資における個人保証は、契約時に一度決まったら終わりというものではありません。会社の業績や財務状況が改善した場合には、保証内容の見直しを検討できる余地があるため、個人保証を見直したければ金融機関の担当者への相談を検討しましょう。
経営者保証に関するガイドラインが整備されたことで、金融機関側も、一定の条件を満たす企業については、個人保証に依存しない融資や、既存の保証の解除を検討する姿勢を持つようになっています。そのため、会社と個人の資産・経理が明確に分かれていることや、財務内容が改善していることを具体的に説明できれば、保証の見直しに向けた話し合いが進む可能性があります。
ただし、保証を外すことは金融機関にとってもリスク判断を伴うため、単に「保証を外してほしい」と伝えるだけでは、前向きな対応を得るのは難しいでしょう。自社の財務状況や経営体制を整理したうえで、なぜ保証の見直しが可能と考えられるのかを、根拠をもって説明することが重要です。
6章 個人保証による借金を背負ってしまった場合の対処法
会社の経営悪化や倒産により、社長が個人保証に基づく返済義務を負ってしまうケースも少なくありません。そのような状況に陥った場合でも、個人再生や自己破産といった債務整理を選択することで、負担を軽減できる可能性があります。ここでは、それぞれの債務整理方法について詳しく解説します。
6-1 任意整理
任意整理は、裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して返済条件を見直す手続きです。将来利息や遅延損害金をカットすることで、毎月の返済負担を軽減できます。
個人保証による借金であっても、一定の収入があり、元本を分割で返済できる見込みがある場合には、任意整理が有効な選択肢となります。保証債務も通常の借金と同様に整理の対象となるため、返済計画を立て直すことで、生活への影響を抑えながら解決を図れる点が特徴です。
また、任意整理は整理する債権者を選べるため、取引先や金融機関との関係を考慮しながら手続きを進められる点もメリットといえます。事業継続や再就職を見据え、影響を最小限に抑えたい場合には、柔軟な対応が可能です。
一方で、借金総額が大きすぎる場合や、安定した収入が見込めない場合には、任意整理での解決が難しいでしょう。そのため、任意整理を行う際は、個人保証による借金の状況を踏まえたうえで他の手続きと比較しながら検討することが重要です。
6-2 個人再生
個人再生は、裁判所を利用して借金を大幅に減額し、原則3年での返済を目指す手続きです。借金総額に応じて、返済額を5分の1から10分の1程度まで圧縮できる可能性があり、任意整理では対応しきれないケースでも利用が検討されます。
個人保証による借金が高額であっても、将来にわたって安定した収入が見込める場合には、個人再生によって返済の見通しを立て直すことができます。返済額が大きく減ることで、生活を維持しながら再スタートを切れる点が特徴です。
また、住宅ローンを抱えている場合には、住宅ローン特則を利用することで、マイホームを手放さずに手続きを進められます。個人保証による借金と住宅ローンが同時に重なっているケースでは、個人再生によって効果的に借金を整理できるでしょう。
ただし、個人再生を利用するためには、再生計画に基づいて返済を継続できるだけの安定した収入が必要です。収入の見通しが立たない場合や、返済を続けられないと判断される場合には、再生計画が認可されず、個人再生を利用できない可能性があります。
6-3 自己破産
自己破産は、返済が不可能な状態であると裁判所に認められた場合に、借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。個人保証によって多額の借金を背負い、任意整理や個人再生でも対応が難しい場合には、自己破産が現実的な選択肢となるでしょう。
個人保証による借金は、会社の倒産や経営悪化をきっかけに一気に返済不能に陥るケースも少なくありません。そのような状況でも、自己破産を利用することで、保証債務を含めた借金を一括で整理し、生活を立て直すことが可能です。
一方で、一定の財産処分や、手続き中の職業制限などの影響が生じる点には注意が必要です。ただし、これらの制限は永続的なものではなく、手続き終了後は再スタートを切ることができます。
返済の見込みが立たない状態で無理に支払いを続けることは、精神的・経済的な負担を大きくするだけの結果になりかねません。個人保証による借金で行き詰まっている場合には、自己破産も含めた選択肢を冷静に検討することが大切です。
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まとめ
法人融資における社長の個人保証は、資金調達を円滑に進めるための手段として、これまで広く用いられてきました。創業期や事業基盤が十分でない段階では、個人保証を付けることで融資を受けやすくなる場面があるのも事実です。
一方で、個人保証は会社の経営リスクを社長個人が直接背負う仕組みでもあります。こうした背景を踏まえ、近年では経営者保証に関するガイドラインが整備され、一定の条件を満たす企業については、個人保証に依存しない融資や、既存の保証の見直しが検討されるようになっています。
また、すでに個人保証による借金を背負ってしまった場合でも、任意整理・個人再生・自己破産といった法的な手続きを通じて、状況を整理し、生活や経営の立て直しを図れる可能性があります。
ただ、自身で適切な債務整理方法を選択するのは難しいでしょう。そのため、個人保証が原因で多額の借金を背負ってしまったら、すぐに弁護士・司法書士に相談するのがおすすめです。
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