共有名義の住宅ローンは離婚したらどうなる?連帯債務のリスクと対処法

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

住宅ローン問題
共有名義の住宅ローンは離婚したらどうなる?連帯債務のリスクと対処法

この記事は約 10 分で読めます。

 この記事を読んでわかること
  • 連帯債務のローンで購入した共有名義の家が離婚後どうなるか
  • 連帯債務の住宅ローンが残っている共有名義の家に離婚後もどちらかが住み続ける方法
  • 離婚後に連帯債務の住宅ローンを残すリスク

離婚を考えた時に大きな問題となるのが、住宅ローンが残っている共有名義の家です。特に連帯債務でローンを組んでいる場合、離婚後も双方に返済義務が残り続けるため、トラブルに発展するケースも少なくありません。

「離婚後もどちらかが住み続けられるのか?」「返済が滞ったらどうなるのか?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では連帯債務の住宅ローンと共有名義の家が離婚後にどうなるのかを詳しく解説します。さらに、リスクを避けるための対処法について紹介します。

1章 連帯債務のローンで購入した共有名義の家は離婚後どうなる?

住宅ローンを連帯債務で組み、夫婦で共有名義にしている場合、離婚をしても家の名義と住宅ローンの債務は自動的に解消されるわけではありません。離婚届を提出したとしても、不動産登記や金融機関との契約内容には何の影響も与えないため、原則として離婚後も共有名義のまま、住宅ローンも連帯債務のまま残ることになります。ここでは、共有名義の家の連帯債務の住宅ローンの取り扱いについて解説します。

1-1 共有名義の家はそのまま共有することになる

連帯債務で住宅ローンを組んでいる場合、家は共有名義になっているケースがほとんどです。離婚しても共有名義が自動的に解消されることはなく、双方が不動産の所有者のままです。

そのため、家を売却する、名義を変更するといった手続きをしない限り、離婚後も「元夫婦が共同で所有している不動産」という状態が続きます。元配偶者と不動産を共有したままにしておくと、将来売却や相続の際にトラブルになるリスクがあります。

1-2 住宅ローンは双方に返済義務が残る

連帯債務の住宅ローンは、夫婦それぞれが金融機関に対して同等の返済義務を負っています。離婚したからといって債務が消えるわけではなく、両者とも最後まで返済しなければなりません。

2章 連帯債務の住宅ローンが残っている共有名義の家に離婚後もどちらかが住み続ける方法

離婚後も共有名義の家にどちらか一方が住み続けたい場合、住宅ローンの処理方法を明確にしておく必要があります。金融機関との契約は離婚によって自動的に変更されないため、事前に解決策を講じなければトラブルに発展するかもしれません。ここでは、連帯債務の住宅ローンが残っている共有名義の家に離婚後もどちらかが住み続ける方法を見ていきましょう。

2-1 住み続ける側が債務を引き受け単独名義で所有する

離婚後も住宅に住み続けたい場合には、相手の持分と住宅ローンの返済義務を一人で引き受け、単独名義に切り替える方法があります。単独名義に変更するためには、金融機関の再審査を受けなければなりません。

収入や信用情報などをチェックし問題がないと判断されれば、債務引受が認められる流れです。ハードルは高いものの、単独名義にできれば所有権と返済義務を一本化できるため、離婚後に元配偶者と住宅に関して金銭トラブルが生じるリスクを減らせます。安定した収入がある方にとっては、将来の安心に繋がる選択肢と言えるでしょう。

2-2 借換えによって単独でローンを組む

離婚後に共有名義を解消する方法としては、現在の住宅ローンを解約し、新たに一人の名義で住宅ローンを借り換えるという選択肢もあります。この場合、借り換え先の金融機関で改めて審査を受けることになります。審査基準は通常の住宅ローンと同じく、年収・返済負担率・勤続年数・信用情報などがチェックされるため、安定した返済能力が求められます。

また、借り換えに際しては登記の変更費用や保証料、事務手数料などの諸費用が発生する点にも注意が必要です。現在のローンより金利が下がれば返済負担の軽減に繋がりますが、諸費用を含めた総額で本当にメリットがあるかを慎重に試算しましょう。借り換えに成功すれば、所有権と返済義務を一人にまとめられるため、離婚後の金銭トラブルを避けられるメリットがあります。

2-3 住宅ローンを一括で返済する

住宅ローン残高を全て清算すれば、金融機関への返済義務はなくなり、家の所有権も自由に整理できます。完済後に不動産を売却すれば、その売却益を夫婦で公平に分け合うことも可能です。

ただし、一括返済をするためには多額の資金を一度に用意する必要があり、現実的には難しいケースが多いのも事実です。親族からの援助や退職金、まとまった貯蓄がある場合に検討できる方法と言えるでしょう。

2-4 離婚後もそれぞれが払い続ける

離婚後も夫婦それぞれが住宅ローンを支払い続けるという選択肢もあります。例えば、子どもの養育環境を優先してどちらかが家に住み続け、もう一方も引き続き返済に協力するケースです。

ただし、住んでいない側が返済を続けるメリットは少なく、途中で支払いが滞る恐れもあります。そうなると住んでいる側にも影響が及び、最悪の場合は競売に発展するリスクも否定できません。こうしたリスクの詳細については、次章で改めて解説します。

3章 離婚後に連帯債務の住宅ローンを残すリスク

ここでは、離婚後に連帯債務の住宅ローンを残すリスクについて見ていきましょう。

3-1 住んでいない方の支払いが滞りがちになる

離婚後、住宅に住んでいない側は「使っていない家に対して返済を続ける」という心理的な負担を抱えやすくなります。モチベーションが低下することにより、返済を後回しにしたり、支払い自体が滞ったりするケースも少なくありません。

返済が続けて滞ると、金融機関は担保となっている住宅を競売にかけることがあります。競売にかけられると市場価格よりも安い金額で売却されてしまううえ、残債が多く残る可能性が高くなります。最悪の場合、家そのものを失い、住み続けていた側も退去を迫られるリスクがあるため注意が必要です。

3-2 元配偶者との金銭トラブルが長期化する恐れがある

連帯債務の住宅ローンは、離婚後も二人に返済義務が残ります。そのため「どちらがいくら払うのか」「滞納した分をどう負担するのか」といった取り決めをめぐり、元配偶者との間で金銭トラブルが続くケースがあります。

一度トラブルが起きると、感情的になってしまって話し合いが難航しやすく、裁判などに発展してしまうこともあるでしょう。トラブルが長引けば、その間に返済が滞って競売に至るリスクも高まります。離婚後の生活を安定させるためには、金銭面の取り決めを曖昧にしないこと、専門家を交えて早めに解決策を見つけることが欠かせません。

3-3 養育費との二重負担になる可能性がある

離婚時に子供がいる場合、多くのケースで養育費の支払い義務が発生します。住宅ローンの返済義務がそのまま残っていると、住宅ローンと養育費の二重負担となり、家計に大きな負担がかかります。

養育費を払わなければ子供の生活に影響が出る一方で、住宅ローンを滞納すれば家が競売にかけられて住まいを失うリスクもあります。無理のある返済計画はトラブルに繋がるため、離婚後に連帯債務の住宅ローンを残す際は慎重に検討しましょう。

4章 共有名義の家によるトラブルを避けたいなら任意売却を検討しよう

離婚後に連帯債務の住宅ローンを残したままにすると、住んでいない方のモチベーション低下による支払いの滞納や養育費との二重負担など、大きなリスクを抱えることになります。最悪の場合は家が競売にかけられ、低い価格で処分されてしまう可能性もあるでしょう。

このようなトラブルを避けるためには、任意売却を検討するのも一つの選択肢です。任意売却とは、金融機関の合意を得て家を売却し、その代金をローンの返済に充てる手続きです。競売よりも高値で売れるケースが多いため、トラブルを防ぎつつ生活再建につなげやすいのが特徴です。

ただし、任意売却後にどの程度ローンが残るかによって、その後の対応は変わってきます。以下ではアンダーローンとオーバーローンの2つのケースに分けて解説します。

4-1 アンダーローンの場合

アンダーローンとは、売却金額よりも住宅ローンの残高が少なく、売却するとローンを完済したうえでお金が手元に残る状態です。例えば、ローン残高が1,500万円で、売却金額が2,000万円なら、500万円がプラスとして残ります。

任意売却によって住宅ローンの完済と共有名義の解消を同時に実現できるため、離婚後の金銭トラブルを避けやすいのが大きなメリットです。余った資金は財産分与の対象となり、夫婦で話し合って分け合うことになります。

4-2 オーバーローンの場合

オーバーローンとは、売却金額よりも住宅ローンの残債が多く、売却してもローンが残ってしまう状態です。例えばローン残高が2,500万円で、売却金額が2,000万円だった場合、500万円の債務が残ります。

オーバーローンでは、任意売却を行っても住宅ローンをすべて清算することはできません。ただし、競売よりも高い金額で売れる可能性があるため、残債をできるだけ少なくすることができます。さらに、残った債務については金融機関と交渉し、分割払いなど柔軟な返済方法を認めてもらえる場合もあります。オーバーローンの状態は厳しい状況ではありますが、競売に比べれば損失を抑えることが可能です。

まとめ

離婚時に共有名義・連帯債務の住宅ローンが残っていると、住んでいない側の返済滞納や養育費との二重負担といったリスクを抱えることになります。最悪の場合は家が競売にかけられ、市場価格より安く処分されてしまう恐れもあります。

こうしたトラブルを避けるためには、単独名義への切り替えや借換え、一括返済、任意売却といった方法を早めに検討することが大切です。状況に応じて適切な対応を選ぶことで、離婚後の生活を安定させやすくなるでしょう。

もし、「任意売却が最適な選択肢かどうか分からない」という場合は、弁護士・司法書士や、不動産会社への相談がおすすめです。特に弁護士・司法書士と不動産会社がワンストップで対応できるサービスを選択すれば、スムーズに任意売却の手続きを進められるでしょう。

グリーン司法書士法人では、グループ内の不動産会社と連携し、任意売却のサポートを行っております。離婚後のトラブルを回避するためにも、ぜひお早めにご相談ください。

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連帯債務の住宅ローンに関してよくある質問

ここでは、連帯債務の住宅ローンに関してよくある質問に回答します。

連帯債務と連帯保証の違いは何ですか?

連帯債務は、複数人が同じ立場で住宅ローンの返済義務を負う契約です。夫婦で住宅ローンを組む場合によく使われ、双方に返済義務が残ります。一方で連帯保証は、主たる債務者が返済できない場合にのみ保証人が支払う義務を負う契約です。

離婚後、住宅ローンの残っている家は賃貸として活用できますか?

住宅ローンの残っている家は、原則として賃貸に出すことはできません。住宅ローンはあくまで「契約者本人がマイホームとして住むこと」を前提に融資されているため、無断で賃貸にすると契約違反となり、一括返済を求められる可能性があります。そのため、離婚時に賃貸として活用したい場合、住宅ローンを自己資金で一括返済する、もしくは賃貸用ローン(投資用ローン)に借り換える必要があります。なお、賃貸用ローンは住宅ローンよりも金利が高く設定されることが多いため、賃貸活用を検討する際には注意が必要です。

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