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- 相続人が亡くなった方の過払い金を請求できる背景
- 亡くなった方の借金の過払い金の有無を調べる方法
- 相続人が過払い金を請求する流れ
- 相続人が過払い金請求する場合の注意点
相続が発生したとき、亡くなった方の借金に過払い金が発生していれば、その請求権は相続人にあります。
高齢で亡くなると、コツコツと長期に渡り借金を返済しているケースもあり、高額な過払い金が発生していることもめずらしくありません。
亡くなった方に借金があり、過払い金が発生していた場合は、相続人である配偶者や子が請求手続を行うことが一般的です。
そこで、親の過払い金の相続について、手続と請求方法を詳しく解説します。
目次 ▼
1章 相続人は故人が遺した過払い金を請求できる
相続人は、亡くなった方の過払い金を請求できます。
過払い金が発生している可能性が高いのは、2010年にグレーゾーン金利が完全撤廃されるまでに開始した、消費者金融のカードローンやクレジットカードのキャッシングなどです。
過払い金を受け取る権利のある相続人とは、民法で定められた「法定相続人」です。
- “法定相続人とは”
- 法定相続人とは、民法で定められた相続人です。配偶者と血族(子・父母・兄弟姉妹など)が含まれ、以下の順位で相続人となります。
- 第1順位 被相続人の子
- 第2順位 被相続人の直系尊属(父母・祖父母など)
- 第3順位 被相続人の兄弟姉妹
亡くなった方(被相続人)による「遺言」がある場合は、遺言の内容が優先されます。
ただし遺言で遺留分(特定の相続人に認められている最低限の取り分)が侵害されていれば、侵害額に相当する金銭を請求できます。
また、遺言がある場合でも、相続人全員による遺産分割協議で、法定相続分や遺言と異なる割合での相続は可能です。
過払い金は、貸金業者との最後のやり取りから10年経過していなければ返還請求できます。(貸金業者が倒産している場合は除く)
業者から過払い金の発生に関する連絡はないため、亡くなった方が消費者金融やカードローンなどを利用していた場合は、過払い金が発生していないか調べてみましょう。
2章 故人の借金に過払い金が発生しているか調べる方法
亡くなった方の借金に過払い金が発生していても、貸金業者から伝えてもらえるわけではありません。
発生の有無や金額などは、過払い金を相続した相続人が、以下の流れ調査することが必要です。
- 故人が借金を遺していたか調べる
- 故人の借金に過払い金が発生しているか調べる
それぞれ説明します。
STEP① 故人が借金を遺していたか調べる
まずは亡くなった方が借金をしていたか調査しましょう。
遺された通帳や借用書などの有無を確認し、信用情報機関への「開示請求」を行います。
開示を受けることで、亡くなった方がどこの貸金業者から借入れをしていたのか調べることができます。
ただし、完済後5年経過しているときは、借入先情報は削除されている可能性もあるため、早めに請求しましょう。
STEP② 故人の借金に過払い金が発生しているか調べる
亡くなった方が貸金業者からお金を借りていた場合、過払い金が発生しているか調査が必要です。
貸金業者に「取引履歴」の開示を求めましょう。
なお、個人で調査することが困難な場合には、司法書士など専門家に依頼するとスムーズです。
3章 相続人が過払い金を請求する流れ
亡くなった方の借金の引き直し計算をした結果、過払い金が発生していたときは、相続人が貸金業者に請求できます。
相続人が貸金業者へ過払い金を請求する場合、以下の流れで手続をします。
- 取引履歴を確認する
- 引き直し計算により過払い金を算出する
- 遺産分割協議を行う
- 貸金業者に対し過払い金を請求する
- 貸金業者と任意交渉する
- 過払い金を受け取る
それぞれ説明します。
STEP① 取引履歴を確認する
相続人が過払い金を請求する場合、まずは取引履歴の開示を請求し、確認が必要です。
「取引履歴」とは、過去の借入れと返済の経過や内容の記録であり、貸金業者やカード会社などが保存しています。
貸金業者などは、開示を求められたときには応じる義務があるとされているものの、最終返済日から10年前の取引履歴は残っていない場合もあります。
この場合、返済の領収証や通帳の履歴などを確認しましょう。
STEP② 引き直し計算により過払い金を算出する
貸金業者から開示された取引履歴をもとに、利息制限法の上限金に基づいて再度「引き直し計算」をすれば、過払い金発生の有無を確認できます。
引き直し計算は個人でも可能ではあるものの、複雑で手間がかかるため、司法書士や弁護士などの専門家に依頼すると安心です。
STEP③ 遺産分割協議を行う
引き直し計算後に過払い金の金額が確定したら、誰が相続するのか「遺産分割協議」で決定します。
「遺産分割協議」とは、相続人全員の合意のもと、遺産を分けるための話し合いです。
遺言がなければ、民法の法定相続分の割合に従い遺産を分割します。
貸金業者に過払い金を返す意思はあったとしても、複数の相続人から返還を求められれば、二重払いしてしまう恐れがあるため、遺産分割協議を求められます。
話し合いがまとまらない場合、相続人単独での請求も可能ではあるものの、法定相続分のみの請求となります。
STEP④ 貸金業者に対し過払い金を請求する
貸金業者に対する「過払い金返還請求書」を作成し、「引き直し計算書」を添付の上、内容証明郵便で送付します。
過払い金返還請求書に記載する内容は以下のとおりです。
- 請求日時
- 貸金業者・貸金業者の代表者名
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- 振込口座・番号
- 契約または会員番号など
- 過払い金の金額
STEP⑤ 貸金業者と任意交渉する
貸金業者に過払い金の返還を求めても、請求額を満額返してくれることはほぼありません。
できるだけ金額を増やす粘り強い交渉が必要であり、複数社への請求であれば平行して交渉を行います。
専門家ではない個人からの請求では、理由をつけて金額を引き下げられる恐れもあるため、司法書士や弁護士に依頼したほうが安心です。
STEP⑥ 過払い金を受け取る
貸金業者から返還に応じる旨の連絡があった場合は、過払い金を受け取る手続を進めます。
返還拒否や無視された場合は、裁判所への提訴も検討が必要です。
和解成立や訴訟判決の確定後は、指定口座に妥結した金額が入金されます。
4章 相続人が過払い金請求をするときの注意点
相続人が過払い金を請求するときは、以下の3つに注意しましょう。
- 過払い金請求をすると相続放棄・限定承認ができなくなる
- 受け取った過払い金には相続税がかかる
- 自力で過払い金の計算・請求をすることは難しい
それぞれ説明します。
4-1 過払い金請求をすると相続放棄・限定承認ができなくなる
相続人が過払い金請求をした場合、相続放棄や限定承認はできなくなります。
まず「相続放棄」とは、亡くなった方のすべての財産の相続権を手放す手続であり、最初から相続人ではないものとして扱われます。
「限定承認」は、預貯金・株式・不動産などのプラス財産の限度で、借金などマイナス財産を引き継ぎます。
また、亡くなった方の借金が発覚し、焦って相続放棄を選んでしまうと、後で過払い金請求できなくなるため注意しましょう。
4-2 受け取った過払い金には相続税がかかる
「相続税」は相続した財産の金額によって課税されます。
過払い金は債権のため、財産評価により課税対象となります。
4-3 自力で過払い金の計算・請求をすることは難しい
過払い金の請求は、取引履歴の請求後の引き直し計算や、貸金業者との交渉・回収まで、全てがスムーズに進むわけではありません。
相続人が請求する場合は、過払い金と相続という2種類の法律問題が絡むため、さらに複雑です。
過払い金の有無の確認や請求は、司法書士や弁護士など専門家に依頼することをおすすめします。
まとめ
過払い金は相続財産に含まれます。
亡くなった方に過払い金が発生していた場合、相続人が返還請求できます。
まずは亡くなった方に貸金業者の借金があったのか調査を行い、取引履歴の請求や引き直し計算などが必要です。
実際には、貸金業者との交渉などを相続人が自力で行うことは難しいといえます。
また、借金の存在に焦り、先に相続放棄してしまうと後で過払い金請求できなくなります。
手続に不安なときは、早めにグリーン司法書士法人へご相談ください。
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よくあるご質問
- 過払い金が返ってくるまでの期間はどれくらい?
過払い金が返ってくるまでの期間の目安は以下のとおりです。
- 取引履歴の取得(1~2か月程度)
- 引き直し計算(1~2週間程度)
- 貸金業者との和解交渉(2~3か月程度)
- 訴訟の提起(3~6か月程度)
- 過払い金の返還(1~6か月程度)
- 過払い金はいつまで請求できる?
過払い金を請求しても、完済から10年経過していれば返還されません。
ただし、2010年以前の契約で、最近まで借入れと返済を繰り返し行っており、最終の返済から10年経過していなければ請求できる可能性はあります。
- 他の相続手続きが完了した後も過払い金は請求できる?
他の相続手続完了後も、過払い金の請求ができます。
過払い金請求権は相続財産の1つであり、相続人が請求します。
ただし先に相続放棄した場合は、過払い金の返還請求はできないため注意してください。