賃貸住宅の連帯保証人になるリスクとは?責任はどこまで問われる?

司法書士渡邊優太

監修者:グリーン司法書士法人   渡邊優太
【所属】大阪司法書士会 登録番号大阪第4454号 / 大阪府行政書士会所属 会員番号第17260997号 【保有資格】司法書士・行政書士

借金返済の知識

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 この記事を読んでわかること

  • 賃貸住宅の連帯保証人とはどういうものか
  • 賃貸住宅の連帯保証人になることで負うリスク
  • 賃貸住宅の連帯保証人が問われる責任の範囲
  • 連帯保証人を用意できない場合の対処法

賃貸住宅の連帯保証人になることは、大きな責任を伴います。連帯保証人は、借主が負うべき費用や義務を共に負う立場にあるため、借主が家賃を滞納した場合や物件を適切に管理しなかった場合に、連帯保証人が借主同様の責任を問われます。

賃貸契約が途中で解消されないかぎり、連帯保証人はその責任から容易に逃れることができません。また、連帯保証人が亡くなった場合、その地位は相続人に引き継がれる可能性があります。

これらの点を踏まえ、連帯保証人になる前には、そのリスクと責任の全容を十分に理解しておくことが重要です。今回の記事では賃貸住宅の連帯保証人になるリスクと、責任はどこまで問われるのかについてくわしく見ていきましょう。

1章 賃貸住宅の連帯保証人とは

賃貸住宅の連帯保証人とは、借主が履行しなければならない賃貸契約に関する義務を極度額(上限額)まで同等に負う人物です。連帯保証人は、借主が家賃を滞納した場合に極度額を上限として全額を支払う責任を負います。

連帯保証人には、借主が借りている物件の原状回復費や損害賠償費用の支払い責任もあります。これは、借主が物件を退去する際に発生する可能性のある費用です​。

さらに、連帯保証人は賃貸契約の期間中は契約を、自己の意思で破棄することはできません。また、連帯保証人が死亡した場合、その地位は相続人が引き継ぐことになります。ただし、相続人は相続放棄を行うことで、連帯保証から逃れることは可能です。

1-1 連帯保証人と保証人・保証会社の違い

保証人連帯保証人
催告の抗弁権の有無
検索の抗弁権
分別の利益の概念の有無

連帯保証人と保証人の最も大きな違いは、「催告の抗弁権」の有無です。また、連帯保証人と保証人には、「検索の抗弁権」の有無の違いもあります。まさらに、「分別の利益」という概念においても、保証人と連帯保証人には違いがあります。

催告の抗弁権
催告の抗弁権とは、保証人が債権者に債務の履行を請求された場合に、先に借主に対して債務の履行を請求することを求める権利を意味します。

連帯保証人には催告の抗弁権が認められていないので、借主の頭越しに債務の返済を求められることがあります。

検索の抗弁権
検索の抗弁権とは、保証人が債権者に債務の履行を請求されたとしても、借主に弁済資力があることを証明することで、先に借主の資産の差押えを求める権利を意味します。

連帯保証人は検索の抗弁権も認められておらず、借主の資産状況にかかわらず、債権者からの請求に応じなければなりません。

分別の利益
分別の利益とは、複数の保証人がいる場合、通常の保証人であれば保証額を等分に分担する考え方です。連帯保証人は、連帯保証人がたとえ複数存在しても、個々が全額の支払い義務を負うことになります。

なお、保証会社と連帯保証人の違いは、保証会社は個人ではなく企業がビジネスとして、債務の保証を提供する点です。保証会社は賃貸契約において、家賃の不払いリスクを軽減する役割を担います。

しかし、連帯保証人が負うような、原状回復義務や損害賠償債務の保証などは、契約で除かれていることがほとんどです。

これらのさまざまな違いにより、連帯保証人は通常の保証人や保証会社と比べて遥かに大きな責任とリスクを負うことになります。

1-2 賃貸住宅の連帯保証人になれる人の条件

賃貸住宅の連帯保証人になるためには、借主が負担するべき賃料やそのほかの費用を支払う能力が求められます。具体的には、連帯保証人は安定した収入がある人であることが一般的です。

ただし、収入があればよいわけではなく、賃貸物件の家賃に見合った支払い能力が必要です。このため、勤務状況や年収が評価の対象となり、審査を受けることになります​。

また、連帯保証人は一般的に借主の親族や知人が務めることが多く、特に法律上の制約はないため、友人や親戚でも可能です。ただし、連帯保証人が高齢者である場合、定期的な収入が少ないことから、連帯保証人としての適格性が問われることもあります。

連帯保証人として求められるものには、単なる経済力だけでなく、借主が履行しなかった債務を補償する法的責任もあります。そのため、連帯保証人は契約の全体像を理解し、借主の信用状況を十分に認識しなければなりません。

なお、賃貸借契約における連帯保証人の解除方法や、特例および更新拒否については、以下の記事でくわしく取り上げています。

そちらも、ぜひ参考にお読みください。

2章 賃貸住宅の連帯保証人になるリスク

賃貸住宅の連帯保証人になると、主に次のリスクを負うことになります。

  • 借主が家賃を滞納したら請求されるおそれがある
  • 原状回復費用や損害賠償にも責任が及ぶ
  • 滞納している借主が退去しないことがある

それぞれを見ていきましょう。

2-1 借主が家賃を滞納したら請求される恐れがある

連帯保証人は借主の家賃滞納があった場合、その責任を全面的に負うことになります。具体的には、借主が家賃を滞納すると、滞納分の全額が連帯保証人に請求されることが起こりえるでしょう。

家賃保証会社を利用している場合でも、保証会社が立替払いした家賃の請求が連帯保証人に向けられることがあります。このため、連帯保証人は、常に借主の支払い状況を把握しておかなければなりません。

もし借主がその身を海外に移動してしまうなど、連絡が取れなくなった場合には、家賃の支払いを求められるため、連帯保証人の負担は非常に大きくなります。

2-2 原状回復費用や損害賠償にも責任が及ぶ

借主が賃貸物件を故意であれ過失であれ損傷させた場合の、原状回復費用や損害賠償も連帯保証人の責任範囲です。

たとえば、借主が賃貸物件を適切に管理せず、故意か過失による損害が発生した場合に、連帯保証人は修復費用を負担する責任があります。ただし、自然災害やほかの入居者による損害は、原則的に連帯保証人の責任範囲外です。これは3章でくわしく解説します。

また、賃貸契約の終了時、借主には物件を原状回復する義務がありますが、これには通常の使用による経年劣化を除く、損耗や破損の修復が含まれます。たとえば、壁紙の補修や床材の交換、キッチンやバスルームのクリーニングなどが要求される場合があります​。

連帯保証人は、通常なら借主が支払うべき原状回復費用を、全額請求されるおそれがあるわけです。このように、連帯保証人は文字どおり、借主と連帯責任を共有することになります。

3-3 滞納している借主が退去しないことがある

貸主(大家)からすると、家賃さえ払ってもらえればいいので、連帯保証人が払い続けるかぎり、とりたてて追い出すメリットはありません。また、借主も連帯保証人が払ってくれることに甘えて、出て行かない可能性もあるでしょう。

加えて、強制的に退去させることができるのは貸主だけであり、連帯保証人には追い出す権利は与えられていないので、どうしようもありません。2-1で述べた、借主と連絡が取れなくて家賃を支払わなければならないケースと同じようなものです。

回避方法としては借主から連帯保証人が、実印と印鑑証明書付で、滞納があったことを連帯保証の停止条件とする賃貸借契約の解消、解除に関する一切の権限の委任を受けておくことです。

なお、賃貸契約の連帯保証人が生活保護になった場合、どうすべきかについては以下の記事でくわしく解説しています。

参考にご覧ください。

3章 賃貸住宅の連帯保証人が問われる責任の範囲はどこまで?

賃貸住宅の連帯保証人になった場合、責任の範囲はどこまで問われるのかを見ていきましょう。

3-1 【責任が問われる】借主が家賃を​​​​滞納したケース

賃貸住宅の連帯保証人となる場合、借主が家賃を滞納した際には、連帯保証人にも責任が及ぶことがあります。連帯保証人は借主と同様に、滞納した家賃全額の支払いを求められる可能性があります。

なお、改正民法によって、現在では連帯保証人が負担するべき最大限度額(極度額)が賃貸借契約書に明記されるようになっています。これは連帯保証人が、想定外の多額の債務を負うことを防ぐための措置です。

連帯保証人が無限に責任を負うのではなく賃貸契約書に明記されている範囲内

3-2 【責任が問われる】借主が火災を起こしたケース

賃貸住宅において借主が火災を起こした場合、連帯保証人の責任が問われます。連帯保証人は、借主と同等の責任を負うため、火災による損害も含めて借主の債務を負担する義務があります​。

火災が借主の過失によって発生した場合、その修繕費用や損害賠償費用が連帯保証人に請求されることがあります。

たとえば、借主が不注意から火災を起こし、それが建物やほかの財産に損害を与えた場合、連帯保証人もこれらの費用を支払う責任が出てきます。

3-3 【責任が問われない】近隣の火災に巻き込まれたケース

賃貸住宅の連帯保証人が近隣の火災に巻き込まれた際に責任を負うかどうかは、火災の原因となった行為の性質によります。

一般的に、連帯保証人の責任は賃借人が直接的に引き起こした問題にかぎられるため、近隣からの火災による損害(類焼)で連帯保証人が責任を負うことはありません。

この点において、日本の法律では「失火責任法」が適用され、故意や重大な過失がなければ、火災を起こした人に損害賠償の責任は生じません​ 。もし近隣の火災が賃貸物件に延焼しても、連帯保証人に賠償責任が課されることは基本的にないと解釈されます。

さらに、火災保険の観点からも、もらい火による損害は通常、火災保険でカバーされるため、連帯保証人個人が直接費用を負担することは少ないです。保険が適用される範囲内での補償が行われるため、連帯保証人が経済的な負担を強いられるケースは限定的です​。

総じて、連帯保証人は近隣の火災による被害に対して責任を問われることはなく、賃借人自身の行為に起因する問題に対してのみ責任を持つことになります。その点からも、賃貸契約における連帯保証人のリスクはある程度限定されることとなります。

3-4 【責任が問われない】地震により物件が損傷を受けたケース

地震による賃貸物件の損傷に関しては、これも連帯保証人の責任範囲外とされます。地震は不可抗力に分類されるため、賃借人や連帯保証人がこれに対して責任を負うことは法的に認められていません。

具体的には、賃借人に故意や過失がないかぎり、連帯保証人が責任を問われることはありません​​。自然災害としての地震が引き起こす物理的な被害について、連帯保証人が金銭的な負担を強いられる事態は避けられます。

なお、連帯保証人が簡単にやめられない件や、やめられるケース、請求されたときの対処法などについては、以下の記事でくわしく取り上げています。

そちらも、ぜひ参考にご覧ください。

4章 連帯保証人を用意できないときの対処法

賃貸住宅を借りたい人が、どうしても連帯保証人を用意できない場合もあるでしょう。その際には、対処法として次の2つがあります。

  • 連帯保証人が不要の物件を借りる
  • 家賃保証会社を利用する

個別に見ていきましょう。

4-1 連帯保証人が不要の物件を借りる

連帯保証人不要の物件が、不動産市場には存在しており、これらの物件を選ぶことで連帯保証人なしでも賃貸契約を結べます。

ただし、連帯保証人が不要の物件を選ぶ際には、家賃保証や賃貸保証という保険に加入する必要があることが多く、初期費用や更新料が割高に設定されている場合があります。

保証会社との別途契約が必要になる場合もあるため、契約前には条件をしっかりと確認しましょう。連帯保証人が不要の物件は、特に単身者や初めての賃貸経験者にとって有利な選択肢となる可能性があります。

4-2 家賃保証会社を利用する

家賃保証会社の利用は、連帯保証人がいない場合の一般的な対処法です。保証会社は借主の代わりに連帯保証人としての役割を果たし、賃貸契約の成立をサポートします。

契約する際には、保証会社によって異なる料金体系が設定されており、たとえば「2年間で家賃の1ヶ月分を支払う」「2年ごとに家賃の40〜70%を支払う」などがあります。

保証会社の利用には審査が伴いますが、過去に多くの家賃滞納がなければ問題なく通過できることが多いです。料金や契約条件は事前にしっかりと確認し、自分に合ったサービスを選択しましょう。

なお、賃貸借契約における保証に関して、連帯保証人と保証会社のどちらを選ぶべきか、またどういうケースでは両方必要なのかについては、以下の記事でくわしく取り上げています。

そちらも、ぜひ参考にご覧ください。

まとめ

連帯保証人になることは、借主と同等の責任を共有するということです。借主が家賃を滞納した場合、連帯保証人に対して全額の支払いが求められることもあります。

また、物件の損傷や原状回復費用についても、連帯保証人が借主と同等の責任を負うことになります。連帯保証人は、賃貸契約を自らの意志で解除することはできず、契約が終了するまでその責任は持続するものです。

さらに、連帯保証人が亡くなるとその地位は相続人に引き継がれるため、家族が相続放棄をしなければ、影響を及ぼすことになります。

もし家族から連帯保証を依頼された場合は、これらのリスクが付きまとうことを考えて判断すべきです。リスクを避けるためには、依頼してきた借主に、連帯保証人不要の賃貸物件を選ぶ、または家賃保証会社を利用するなどの選択肢を示唆するのが賢明でしょう。

どうしても依頼を受けざるを得ないなら、ここで挙げたリスクを理解し、契約書に明記される責任の限度を納得した上で承諾することが必要です。

賃貸契約の連帯保証人となっている人が、借主の債務不履行によって自身も借金問題を抱え、自力返済が難しくなった場合は、グリーン司法書士法人なら個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。

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