黒字でも廃業になる理由は?廃業を防ぐ方法と後継者探しのポイント

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
黒字でも廃業になる理由は?廃業を防ぐ方法と後継者探しのポイント

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事業をやめる手続きである廃業。

廃業は、自主的にやめることができることから、黒字でも廃業を選択するケースは珍しくありません。

黒字経営と聞くと、会社にとって健全で順調な状況を想像すると思います。しかし、それにもかかわらず、なぜ黒字でも廃業になるのでしょうか。

この記事では、黒字経営でも廃業になる理由を解説いたします。また、黒字廃業を防ぐための方法についても解説するので、廃業を検討している方はご参考にしてください。

1章 黒字廃業とは黒字なのにもかかわらず廃業すること

黒字廃業とは、その名の通り、黒字にもかかわらず廃業することです。

廃業した組織形態と廃業者の年齢構成

日本の行政機関である中小企業庁の調査によると、廃業を選択した組織形態の約9割が個人事業者ということが分かりました。

また、年齢構成も約9割が60代以上と、高齢者が自主的に経営をやめることができる廃業を選択しているようです。

上記のデータを踏まえると、60代以上の個人事業者が廃業を選択しているケースが多いことが分かります。

また、同調査の結果によると、廃業の手続きをした時点での経営状況が黒字だった企業は44.1%でした。

廃業時の経営状況

半数近くが黒字でも廃業を選択していることを踏まえると、黒字廃業はそう珍しくないことが分かるのではないでしょうか。

2章 黒字でも廃業を選択する理由は?

1章では、半数近くが黒字でも廃業を選択していたことが分かりました。

では、なぜ黒字でも廃業を選択する事業者が多いのでしょうか。

2章では、黒字でも廃業を選択する理由について見ていきましょう。

2-1 業績不振

中小企業庁の廃業に関する調査の結果では、最も廃業する理由として多かったのが「業績が厳しい」という理由です。

消費者の嗜好変化や、海外からの低価格品の登場など、様々な理由から業績不振は生じます。

その理由の中には、企業努力ではどうしようもないものも少なくありません。

人員削減や店舗閉鎖など、コストカットでなんとか黒字を維持していても、数年後の見通しが立たないという場合、廃業という選択肢を採ることが最善な場合もあります。

業績不振が続くと、最終的には破産などの倒産手続きにつながりますので、そうならないようにする、仕方なくではあっても前向きな黒字廃業といえるでしょう。

2-2 資金繰りの悪化

黒字と聞くと、問題なく経営できている状態だと思う方も多いかと思います。しかし、実際には利益が生まれても企業間の取引では入金されるまでに日数がかかることが珍しくありません。

そのため、最終的には黒字になったとしても、入金するまでの間の資金繰りが厳しく、売上が入金されるまで経営難に陥ってしまいます。

このような状態が続いてしまい、廃業を選択するケースが多いのです。

2-3 利益を上回る負債の増加

黒字倒産の原因として、利益でまかなえない負債の増加もあります。

営業利益がプラスであったとしても、経営状況としては多額の負債を抱えている場合、その返済に追われてしまいます。続けて、負債による黒字廃業には2つの理由があります。

一つ目は、借入したときの利息が積み重なり、営業利益以上に負担になってしまう場合は、営業黒字でも経常赤字になってしまい、廃業を選択せざるを得ない状況に陥る可能性があるでしょう。

二つ目は、元金の支払いです。元金の支払いは、黒字と赤字を判断する損益には影響しませんので、利益で利息がまかなえれば経常利益は黒字になります。

しかし、融資金は設備投資や運転資金として使っているはずなので、もうありません。つまり、利益で元金がまかなえなければ、いつかはキャッシュ不足で廃業を余儀なくされることになります。

一見、黒字と聞くと利益が出ていて問題なく経営できている状態のように思えますが、実際のところ会社として資金が逼迫しているケースもあります。

利息がまかなえているのであれば、元金返済によるキャッシュ不足解消のため、金融機関に借り換えを打診するのがいいでしょう。

2-4 後継者不在

業績以外に、黒字廃業を選択する理由として挙げられるのが「後継者不足」による廃業です。

1章での中小企業庁の調査で分かったように、廃業を選択する約9割が60代以上という結果でした。この結果を見ても、後継者の確保ができないという事業者は多いことがわかります。

また、似たような理由として「高齢のため」「従業員の確保が困難」という声も見受けられました。

業績は問題なかったとしても、人材が確保できないまま年齢層が高くなり、そのまま廃業を選択するケースも少なくないのです。

3章 黒字廃業をする場合のデメリット

廃業は、大きく分けて「業績が厳しい」「資金繰りが厳しい」か「後継者がいない」かのどれかが理由で廃業を決断するケースが多いです。

中小企業庁の調査でも実際に、黒字廃業を考えている方の43.8%が黒字と健全な財務状況が確保できているタイミングでの廃業を理想としています。

廃業する上での理想的なタイミング

つまり、廃業を考えている人のうち、事業自体が順調な方は少なくないということです。ということです。

4割以上が、黒字の状態で問題なく経営できているうちに事業をやめることを理想としていますが、一方で黒字で廃業する場合のデメリットもあるので注意しなくてはいけません。

では、黒字廃業をする場合、どのようなデメリットがあるのかを見ていきましょう。

3-1 収益が出ている事業を手放してしまう

黒字で廃業する一番のデメリットは、収益が出ているにもかかわらず事業を手放してしまうことです。

国税庁の調査によると、企業が倒産せずに続く確率は、10年で6.3%、30年で0.21%という結果でした。

10年で100社のうち約6社しか続かないことを考えると、黒字で経営できている状況は非常にポジティブなことではないのでしょうか。

事業自体は儲かっているにもかかわらず、人材不足などで手放してしまうのは、単純にもったいない状態ということが挙げられます。

3-2 従業員の解雇が必要となる

廃業を選択した場合、経営をやめて会社を畳むということになります。会社を畳むという観点から、従業員は今まで通り働くことはできません。

廃業が決まったら従業員を解雇する必要があるため、従業員は次の職を探さなければいけなくなります。

従業員には、説明会などを開いてしっかり説明し、再就職の支援なども行った方がいいでしょう。

3-3 取引先に迷惑をかけてしまう

黒字経営の会社が廃業を選ぶことで、取引先が困ってしまうデメリットも挙げられます。

会社を黒字化できているということは、多くの取引先がいるケースが多いかと思います。

廃業を選ぶと取引を終了せざるを得ないので、取引先に迷惑をかけてしまうケースが考えられるでしょう。

特に、取引先が発注先の場合、自社からの発注がなくなることで、経営難に陥る可能性も考えられます。廃業する場合でも、取引先が対策できる時間を考慮して進める必要があるでしょう。

3-4 顧客に迷惑をかけてしまう

飲食店や洋服屋など、一般のお客相手に商売をしている場合、顧客にも迷惑をかけてしまうことがあります。

特に、オーダーメイドなど専門的な仕事だと、この会社でしか購入しないという方も少なくないため「廃業されると困る」というケースも珍しくありません。

長年自社を贔屓にして顧客がいる場合は、廃業を選択すると迷惑をかけてしまうデメリットがあるでしょう。

3-5 資産の価値が減少してしまう

廃業を選択した場合、会社の生産設備や商品などの資産を売却しますが、事業をやめることで資産の価値が下がってしまい、資産の売却先を見つけるのが難しくなってしまうのがデメリットです。

例えば、多くの在庫を抱えたまま廃業を考えている場合、在庫処分としてとにかく売り切るために、どんどん商品価値が下げていくケースが挙げられます。

本来であれば、価値がある資産も黒字廃業をすることによって、資産を下げざるを得ない状況に陥る場合も考えられるでしょう。

4章 黒字廃業を防ぐ方法

廃業をする理由の中には「もともと自分の代で事業を畳むつもりだった」「別の事業を始めたい」など、決してネガティブな理由だけではないものもあります。

しかし、業績の悪化や後継者不足など仕方なく廃業を選択するケースが多く、できることであれば黒字廃業を防ぎたいと考えている会社もあるでしょう。

4章では、黒字廃業を防ぐための方法について解説いたします。

4-1 早い段階で事業承継の準備をする

黒字廃業をする理由でも多いのが、後継者不足による廃業です。

そのため、事業者が高齢化する前に事業を引き継ぐ後継者を探す必要があります。

後継者を任せられる人材がいたとしても、事業を引き継いで続けていくための教育や引き継ぎには時間を要するため、できるだけ早い段階で準備をするのが良いでしょう。

目安としては、後継者が実際に事業の中心として活躍するには5年〜10年かかるといわれています。そのため、できることであれば事業者が50代・60代に差し掛かったあたりから始めるのがおすすめです。

4-2 キャッシュフローの管理を徹底する

業績の悪化により廃業を選択しないためにも、利益だけではなく、資金繰りやキャッシュフローの管理を徹底するのが重要です。

現金が足りず、資金が枯渇しないためにも、現金収入と現金支出のバランスを把握して、収入が支出を上回る状態をキープしましょう。

資金繰り表を作成して、現金の流れを把握しておくとキャッシュフローを可視化でき、いざというときに焦らずに済むので安心です。

4-3 取引条件を見直す

損益計算表では黒字だったとしても、入金期日や売掛金の未回収によっては経営難に陥るケースがあります。

経営難が続く期間が多いと、黒字だったとしても廃業を視野に入れなければいけないため、取引条件を見直してみるのがおすすめです。

現金不足に陥らないためにも、支払い期日や入金日の見直しを行い、収入と入金の期間が空かないように調整しましょう。

4-4 資金調達を強化する

資金調達ができずに資金繰りが悪化している場合は、資金を調達できる環境をつくるのが大切です。

金融機関の関係を強化したり、複数の資金調達先を確保したりと、いざというときに困らないような体制を整えておくことで資金繰りの問題が解消される可能性があります。

利息を保険料と考え、資金需要がないときでも「流動性確保としての資金準備」として銀行から融資を受けて信用をつけておくことも効果的です。

安定した資金繰りを行うため、資金調達の計画を立てて黒字廃業を回避しましょう。

5章 黒字廃業を避けるための後継者探しのポイント

黒字廃業の中でも、後継者不足がネックとなっている会社は少なくありません。

黒字廃業を避けるためには、早い段階で後継者を探すことが大切です。しかし、後継者探しといっても誰を後継者にしてよいのか迷ってしまうケースも少なくないでしょう。

後継者は、大きく分けて「親族の中から探す」「親族以外から探す」「M&Aを利用する」のどれかから探すことが一般的です。

5章では、この3つの後継者探しについてメリットデメリットを比較して解説いたします。

5-1 親族の中から探す場合のポイント

小規模な会社で後継者探しをする場合、親族が候補となって事業を継承するケースが多いでしょう。

長年会社に従事していた親族が後継者となる場合は、会社の事業内容や業務を理解している場合も多いため、引き継ぎにさほど時間がかからない点はメリットとして挙げられます。

また、従業員との人間関係が良好だと従業員にも歓迎されやすく、受け入れやすいでしょう。

しかし、黒字で順調なことから現状の体制を変える必要がなく、新しい挑戦に取り組みにくいデメリットもあります。そのため、何か新規事業を立ち上げたいと考えている場合は、同意を得られないこともあるでしょう。

また、経営者としてのモチベーションがそこまでない親族の場合は、後継者として適切ではない可能性もあります。経営者としての意欲を持って、会社として大きく成長できる人材を選ぶことが大切なポイントとなります。

5-2 親族以外から探す場合のポイント

親族以外から探す場合、会社の従業員が後継者の候補として挙げられます。

今まで一緒にやってきたということもあり、親族と同じくスムーズな引き継ぎが可能なのは大きなメリットでしょう。

会社のやり方や方針を理解しているため、トップが変わったからといって大きな変化がないので、他の従業員としても負担が少ないのは良いですね。

しかし、変化が求められる業界の場合、従業員が後継者になることで新たな方法が取り入れられにくいデメリットも考えられるのは忘れてはいけません。

また、消去法で選んでしまうと経営者としての資質が足りないのに後継者となってしまい、スムーズな事業ができないおそれもあります。

従業員から選ぼうと考えている場合は、適当な人材から選ぶのではなく十分な時間を取って、後継者として教育する必要があるでしょう。

5-3 M&Aを利用する場合のポイント

親族や従業員以外で後継者を探すのであれば、M&Aを利用する方法もあります。

M&Aとは、企業の合併・買収のことです。他の企業とひとつになったり、自社を買ってもらったりすることを指します。

合併・買収と聞くと大企業がするイメージかもしれませんが、最近では、中小企業も積極的に取り入れられており、最近ではインターネットでの後継者探しのマッチングサイトが活発です。

代表例では、日本政策金融公庫がサービスを行っており、地域に特化した後継者探しも可能となっています。

外部の方を後継者とすることで、方針や引き継ぎに時間がかかるデメリットはありますが、M&Aの最大のメリットは事業を成長させることができる点です。

購入側の知識や経験を活かせるため、今までのやり方よりも効率化できたり、購入側の顧客リストを活用して取引先の新規開拓もできたりと従業員と購入側で情報共有することで相乗効果を狙うことができます。

今までよりも会社として成長することができるため、事業の可能性が広がるでしょう。

また、黒字で売却できることから、会社売却の利益が経営者に入る可能性が高いのもメリットです。

6章 廃業以外の選択肢で休業も検討しよう

ここまで、廃業について解説していきましたが、廃業以外の選択肢を視野に入れるのも方法のひとつです。

黒字廃業以外の選択肢としては、休業が挙げられます。休業とは、会社を一時的に休むことです。

休業をすると、会社を畳むことなく会社の事業をストップさせることができるため、会社を廃業させるかどうか迷っている場合にもおすすめです。

では、次は廃業ではなく休業にするメリットを見ていきましょう。

6-1 休業にするメリット

廃業ではなく、休業を選択するメリットとしてはじっくり後継者を探すことができる点が挙げられます。

後継者となる従業員がいない場合や、外部で後継者を探している場合は、事業を一旦停止することで後継者探しに専念することができます。

ただし、休業にすると、労働基準法により平均賃金の60%以上の休業手当を従業員に支払う必要があるため、利益が出ないまま支出が発生します。

そのため、従業員がいない場合におすすめの方法です。

7章 早めの対策で黒字廃業は防げる!

この記事では、黒字でも廃業を選択する理由と黒字廃業を防ぐための方法を解説いたしました。

黒字廃業は、業績や資金繰りの悪化、後継者不足が理由で選択するケースが多いです。

どちらも早めの対策で黒字廃業を防ぐことができるため、改善できることがあるかチェックしてみましょう。

最近では、後継者探しのマッチングサイトなどさまざまなサービスが登場しています。ぜひ上手く利用して黒字廃業を防ぎましょう。

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