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会社の倒産は従業員にとって、深刻な影響をもたらす可能性がありますが、未払いの給料を受け取るための手段は存在します。破産手続の中で、労働債権は一定の優先順位を持ち、会社に資産が残っている場合は、これらの資産から支払われることがあります。
もし会社に資産が不足している場合は、未払賃金立替払制度によって受け取れます。今回の記事では未払賃金立替払制度について、詳しく解説します。
目次 ▼
1章 会社が倒産しても未払い分の給料は受け取れる
会社の倒産は従業員にとって大きな不安をもたらしますが、未払い給料の回収にはいくつかの救済措置があります。まず、会社に資産が残っている場合には、会社から給料が優先的に支払われるのが原則です。
法人破産の手続時にも未払い給料支払いの優先度は高く設定されており、従業員は一定の保護を受けることができます。
また、会社に資産が残っていない場合には、未払賃金立替払制度の利用によって未払い給料の一部を受け取ることが可能です。
未払賃金立替払制度は、会社が支払い不能に陥った際に、労働者健康安全機構が未払い賃金の一部を代わりに支払うものです。この制度を利用することで、従業員は未払い賃金の約8割を回収できる場合があります。
申請手続には、倒産した事実を証明する書類の提出が必要であり、破産管財人や労働基準監督署からの証明が求められます。この制度を通じて、従業員は経済的な困難の一部を克服し、新たなスタートを切る支援を受けることができます。
出典:未払賃金立替払制度の概要|独立行政法人 労働者健康安全機構
会社の倒産については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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2章 会社倒産時に未払い分の給料を請求する方法
会社が倒産した際、未払いの給料を回収する方法は主に以下の2つです。
- 破産手続内で給料を請求する
- 倒産前に給料を請求する
これらの方法を理解し、適切に行動することが、未払い給料を回収する上で重要となります。個別に補足しておきましょう。
2-1 破産手続内で給料を請求する
倒産した会社に資産が残っている場合、破産管財人が行う財産配当等の管財事務を通じて、優先的に支払いを受けることが可能です。
詳しくいえば、破産手続開始3ヶ月前以降に支払日が到来した未払賃金は「財団債権」として受け取れます。それ以前の給料については「配当債権」として、配当手続の中で優先的に支払いを受けることが可能です。
資産がない場合は「未払賃金立替払制度」を利用できます。この制度に関しては3章で詳しく解説します。
出典:未払賃金立替払制度における 破産管財人等の証明の手引き|独立行政法人 労働者健康安全機構
2-2 倒産前に給料を請求する
倒産の兆候を察知した場合、労働者は未払い賃金の請求をできるだけ早く行うべきです。これにより、会社の資産が枯渇する前に、賃金の一部でも回収する機会を確保できる可能性があります。
倒産前に給料を請求する際には、労働基準監督署への相談や、法的措置を検討することが有効です。特に、法的措置を取る場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
また、労働組合がある場合には、その支援を得ることも有効な手段のひとつです。労働組合に加入している場合、組合を通じて交渉を行うことで、倒産前に給料の支払いを確保する交渉が可能になることがあります。
最後に、未払い賃金に関する証拠をしっかりと保持しておくことが重要です。給与明細や労働契約書など、未払い賃金の請求に必要な書類を整理し、必要な証拠を確保しておくことで、請求の際にスムーズに手続を進めることができます。
出典:未払賃金立替払制度における 破産管財人等の証明の手引き|独立行政法人 労働者健康安全機構
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3章 会社が未払い分の給料を支払えないときには「未払賃金立替払制度」を利用する
「未払賃金立替払制度」とは、政府が事業主に代わって賃金の一部を支払う制度です。労働者と家族の生活を保護し、経済的な不安を軽減するために設けられたセーフティーネットともいえるでしょう。
制度の運用は、全国の労働基準監督署および独立行政法人労働者健康安全機構によって行われています。
制度の対象となるのは、倒産等により賃金の未払いが発生した労働者です。未払賃金立替払制度を利用するには、いくつかの要件を満たす必要があります。
ここでは、以下の4点について、詳しく見ていきましょう。
- 未払賃金立替払制度を利用できる人
- 未払賃金立替払制度の立替金額
- 未払賃金立替払制度を利用する方法
- 未払賃金立替払制度を利用する際の注意点
3-1 未払賃金立替払制度を利用できる人
この制度を利用できるかどうかは、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 破産手続開始等の申立て(事実上の倒産の認定申請)の6ヶ月前の日から2年間に退職していること
- 未払賃金額等について、法律上の倒産の場合は破産管財人等が証明すること、事実上の倒産の場合は労働基準監督署長が確認すること
- 破産手続開始の決定等(事実上の倒産の認定)の日の翌日から2年以内に立替払請求を行うこと
出典:未払賃金立替払制度の概要|独立行政法人 労働者健康安全機構
3-2 未払賃金立替払制度の立替金額
未払賃金立替払制度を利用した際に、立替払される金額は以下のルールにもとづいて決定します。
- 立替払される金額は、未払賃金総額の80%です。
- ただし、退職時の年齢によって未払賃金の限度額があり、実際の未払い賃金がその限度額を超える場合は、未払賃金総額の限度額の80%が立替払の上限額となります。
年齢別の未払賃金立替限度額は以下のとおりです。なお、この基準は2024年2月現在のものであり、今後変更される可能性があるのでご注意ください。
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退職日における年齢 | 未払賃金総額の限度額 | 立替払の上限額 |
---|---|---|
45歳以上 | 370万円 | 370万円×0.8=296万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 | 220万円×0.8=176万円 |
30歳未満 | 110万円 | 110万円×0.8=88万円 |
たとえば、退職日に47歳の人で未払賃金が300万円の場合は、立替払額240万円です。退職日に47歳の人で未払賃金が400万円の場合は、未払賃金総額の限度額370万円を基準に立替払額296万円となります。
出典:未払賃金立替払制度の概要|独立行政法人 労働者健康安全機構
3-3 未払賃金立替払制度を利用する方法
未払賃金立替払制度を利用するためには、労働者健康安全機構に未払賃金等の請求を行い、審査を経て行われ、審査を通過すると指定した口座に立替払金が振り込まれます。
未払賃金立替払制度を利用するための手続は、以下のような流れになります。
- フェーズ1:未払賃金があることの証拠を入手し金額を算出する
- フェーズ2:倒産の証明もしくは確認を受ける
- フェーズ3:労働者健康安全機構に未払賃金の立替払請求書を提出する
- フェーズ4:審査を経て支払いを受ける
順を追って見ていきましょう。
フェーズ1:未払賃金があることの証拠を入手し金額を算出する
まず、未払賃金があることの証拠を集めて、金額を算出します。計算根拠は給与明細書やタイムカード、給与規程や退職金規程などです。
会社がすでに閉鎖されて手元に証拠となる資料がない場合でも、破産管財人に相談して資料を提供してもらう方法があります。
どうしても証拠となる資料が入手困難な場合や、手元の資料が証拠として通用するか判断に迷うような場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談するのが賢明です。
フェーズ2:倒産の証明もしくは確認を受ける
次に、勤め先の会社が倒産したことの証明もしくは確認を受けます。
法律上の倒産の場合は、倒産の区分に応じた証明者(破産した場合は破産管財人)に倒産したことの証明書を発行してもらうのが一般的です。
証明者がなんらかの理由で、証明書を発行してくれない場合は、労働基準監督署に立替払請求の必要事項について確認申請をし、確認通知書の交付を受けます。
事実上の倒産の場合は、労働基準監督署に2段階にわたる申請手続が必要です。
まず、雇用主は賃金支払能力がない状態であることの認定申請を行い、認定通知書の交付を受けます。次に、立替払請求の必要事項についての確認申請を行い、確認通知書の交付を受けて完了です。
フェーズ3:労働者健康安全機構に未払賃金の立替払請求書を提出する
続いて、法律上の倒産の場合は、労働者健康安全機構の公式サイトからダウンロードできる未払賃金の立替払請求書・証明書に必要事項を記入し、労働者健康安全機構に提出します。
事実上の倒産の場合には、労働基準監督署から確認通知書を交付してもらった場合は確認通知書と一体になっている書類です。
未払賃金の立替払請求書には、必要事項(請求年月日や氏名、振込口座番号)などを正確に記入しましょう。
未払賃金立替払金は、税法上は退職所得の扱いになるので、請求書下欄の「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」も記入する必要があります。
請求書は証明書もしくは確認通知書と一体となっているので、提出の際に間違って切り離さないよう注意が必要です。
出典:Ⅱ未払賃金立替払請求書・証明書及び立替払請求における各種届出一覧|独立行政法人 労働者健康安全機構
フェーズ4:審査を経て支払いを受ける
未払賃金立替払請求書・証明書を提出した後は、労働者健康安全機構の審査を経て支払いを受けます。労働者健康安全機構は、不正受給を防止するため、厳格なる審査を行うものです。
労働者健康安全機構は、破産管財人に出勤記録や賃金台帳、社内規程などの各種資料の提出を求めたり、関係者に対するヒアリングなどを行ったりして、請求の妥当性を審査します。
審査の結果、支払が決定すれば請求者に決定通知が送られ、指定された口座に未払賃金立替払金が振り込まれるという流れです。
未払賃金立替払請求書・証明書の提出からおよそ1〜2ヶ月程度の後に、立替金の支払いが実施されます。
3-4 未払賃金立替払制度を利用する際の注意点
未払賃金立替払制度を利用する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 未払賃金立替払制度では交通費やボーナスは補償対象外である
- 未払賃金立替払制度は申請期限が決まっている
- 未払賃金立替払制度では給料の全額は立て替えてもらえない
- 未払賃金立替払制度の利用後も未払賃金を請求できる
個別に見ていきましょう。
3-4-1 未払賃金立替払制度では交通費やボーナスは補償対象外である
未払賃金立替払制度では、基本給や残業代などの定期的な賃金と退職金が対象ですが、交通費やボーナスなどの特別支給は補償の対象外です。したがって、申請前にどの賃金が対象になるかを、正確に確認しておくことが重要です。
3-4-2 未払賃金立替払制度は申請期限が決まっている
未払賃金の立替払いを受けるためには、倒産した日の翌日から起算して2年以内に申請する必要があります。この期限を過ぎてしまうと、制度を利用できなくなるため、なるべく早めの申請が賢明です。
3-4-3 未払賃金立替払制度では給料の全額は立て替えてもらえない
未払賃金の立替払いの支払率は「賃金の80%」と定められており、なおかつ退職時の年齢によって上限額が設定されています。これは、全額立替はないことを意味しており、申請者は実際に受け取れる金額の把握が必要です。
3-4-4 未払賃金立替払制度の利用後も未払賃金を請求できる
立替えられた賃金については、独立行政法人労働者健康安全機構が事業主から回収を試みます。しかし従業員自身も、払賃金立替払制度の利用後においても、未払賃金の全額回収に向けて追加的な法的手続の検討の余地があります。
これらの注意点を踏まえ、未払賃金立替払制度の利用を検討する際には、事前にしっかりと条件を確認し、必要な準備を行うことが重要です。また、不明点がある場合には、労働基準監督署や専門家に相談することをおすすめします。
出典:未払賃金立替払制度の概要|独立行政法人 労働者健康安全機構
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まとめ
ここで見てきたように、会社が倒産しても従業員は未払いの給料を受け取る権利があります。この権利の実現には、破産手続内での請求や未払賃金立替払制度の活用など、複数の手段が考えられます。
未払賃金立替払制度を利用するには、一定の条件を満たさなければなりません。また、この制度を利用する際には、申請期限や請求可能な給料の範囲など、注意すべき点があります。
適切な手続を行い、必要な書類を準備することが未払賃金回収の鍵です。抱えていた借金返済を、倒産による未払賃金の存在がさらに困難にしている人は、速やかに司法書士に相談して、解決への第一歩を踏み出してください。
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よくあるご質問
- 会社が倒産すると未払の給料はどうなる?
- 会社が倒産しても未払い分の給料は受け取れます。
- 会社が倒産したときに給料は優先的に受け取れる?
- 会社に資産が残っている場合には、会社から給料が優先的に支払われるのが原則です。
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