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債務の返済が滞ってしまった場合、はじめのうちはさまざまな方法で督促を受けますが、それでも返済できないときには、土地の所有者であれば土地を差し押さえられてしまいます。
差押えを受ける財産にはさまざまなものがありますが、その中でも土地は大きな財産なので、差し押さえられては大変です。
では、どのようなことが原因となって土地を差し押さえられてしまうのでしょうか。
ここでは、どのような場合に土地が差し押さえられるのかといったことや、差し押さえから競売にかけられるまでの流れ、差し押さえを避けるための方法について解説していきます。
目次 ▼
1章 土地が差押えになる原因
土地が差し押さえられる原因には、以下の3つのものがあります。
1-1 住宅ローンの滞納
住宅ローンは、購入した住宅を担保にし、毎月返済を行う「借金」です。
このような性格を持つ住宅ローンは、毎月きちんと返済している限りは何も問題はありません。
しかし、住宅ローンを滞納してしまうと書面や電話による督促が始まり、それでも返済が行われない場合には競売に移行し、土地を差し押さえられてしまいます。
差押えが行われる時期は、ほとんどの場合滞納してから6か月程度の時点です。
1-2 住宅ローン以外の借金・債務の滞納
住宅ローン以外の借金や債務がある場合に滞納してしまうと、所有している土地を差し押さえられる可能性があります。
差押えは、裁判所から「訴状」や「支払督促」という法的な文書が届き、その後返済に応じない場合には訴訟が行われ、債権者の権利が認められた場合には、差し押さえが実行されます。
1-3 税金の滞納
税金を滞納すると督促状が送付されてきますが、督促状は税金が地方税であるか国税であるかによって納付期限から何日以内の送付となるかが異なります。
地方税の場合は20日以内(地方税法371条1項)、国税については50日以内(国税通則法37条2項)となっています。
この督促状の発送日から10日以上が経過すると、法的に差押えが認められるようになります。
2章 土地が差し押さえられるとどうなる?
実際に土地が差し押さえられると、どのようなことが起こるのでしょうか。
ここでは、土地が差し押さえられるとどのようなことが起こるのかについて解説していきます。
2-1 土地の処分ができなくなる
土地を差し押さえられてしまうと、その土地を勝手に売却するなどの方法で処分することができなくなります。
これは、差し押さえられた土地が差押えの登記がなされるためです。
差押えの登記を解除するためには、債務を返済し滞納状態を解消する必要があります。
2-2 債権の時効の更新
土地を差し押さえられることによって、債権の時効が更新されます。
つまり土地の差押えを行うことで、消滅時効によって債権が消えてなくなることを防ぐことができるのです。
そのため、催告など別の手段によって時効消滅を防ぐ必要がなくなります。
3章 土地が差し押さえになるまでの流れ
土地が差し押さえられるまでの流れは、以下のようになります。
3-1 住宅ローンの滞納
住宅ローン滞納した場合の差押えの流れは、以下の通りです。
STEP1 金融機関から書面や電話による督促が始まる
1か月から2か月程度住宅ローンを滞納すると、金融機関から電話や書面による督促が始まります。
STEP2 金融機関から一括返済を求められる
金融機関からの督促に応じない場合には、一括返済が求められます。
STEP3 保証会社が代位弁済を行う
債務者が一括返済に応じない場合には、保証会社が代位弁済を行います。
代位弁済とは、保証会社が債務者に代わって住宅ローンの一括返済を行うというもので、代位弁済が行われた後は債権が保証会社に移ります。
STEP4 裁判所から競売開始通知決定書が届く
代位弁済が行われると、保証会社は債務者に一括返済を求めます。
このとき保証会社への一括返済ができない場合に発生するのが、遅延損害金です。
遅延損害金も含めた債務を保証会社へ返済できない場合には、土地の差押えが実行されます。
3-2 住宅ローン以外の借金・債務の滞納
住宅ローン以外の借金や債務を滞納した場合の差押えまでの流れは、以下の通りです。
STEP1 債権者から「法的措置の予告通知書」が届く
法的措置の予告通知書とは、「これから法的手続きを取りますよ」ということを予告する通知書です。
その内容は、「このまま滞納が続くようであれば裁判所を通じて差し押さえなどを行う手続きを取ります」といった内容になります。
STEP2 裁判所から「支払督促」が届く
支払督促とは、裁判所が債権者の申し立て内容のみを審査し、裁判所書記官が債務者に対して金銭の支払いを督促する手続きです。
申立人(債権者)からの申立書を審査した後、この書類が発付され、債務者に送付されます。
STEP3 裁判所から「仮執行宣言付支払督促」が届く
仮執行宣言付支払督促とは、債務者が支払督促を受け取ったにもかかわらず支払いに応じてくれなかったり異議申し立てをしたりしない場合に、すでに発布された支払督促に仮執行宣言をつけて強制執行を可能にする文書のことです。
この時点で、強制執行による土地の差押えが可能になり、債権者に不動産を回収される恐れがあります。
3-3 税金の滞納
税金を滞納してしまうと、以下のような流れで土地の差押えが行われます。
STEP1 役所から電話や文書等で催告される
督促状が送付されても税金が納付されない場合は、電話や文書による催告がなされます。
催告とは、相手に対して一定の行為を要求することをいい、応じない場合は時効の更新や履行遅滞など一定の法律効果が生じます。
STEP2 役所から「法的措置の予告通知書」が届く
税金の納期限後、20日以内に「法的措置の予告通知書」が送られてきます。
法律では、督促状を発送した日から10日を過ぎると財産を差し押さえなければならないとされています。
STEP3 役所による財産調査が行われる
滞納者がどのような人なのかといったことを調べる身辺調査や、差押えのための財産調査などが行われます。
STEP4 土地を差し押さえられる
財産調査の結果をもとに、差し押さえるべき財産(今回の場合は土地)が決められ差押えが行われます。
4章 土地が差し押さえられた後は競売にかけられる
差し押さえられた土地は、競売にかけられます。
競売とは、裁判所の権限で担保になっている不動産を差し押さえ、強制的に売却しその代金を債権の回収に充てる手続きのことです。
競売にかけれらると、ほとんどの場合土地を任意売却した場合と比べて低い価格でしか売却できません。
競売の流れは、現況調査とそれをもとにした落札価格の決定、土地の情報の公開、入札開始、落札、買受人決定と裁判所による売却許可決定、落札者への代金納付通知書の送付、買受人が代金を納付し所有権を取得、債務者の強制退去、売却代金の配当となります。
落札される前の時点で取り下げのための手続きを行わなければ、競売を取り下げることは現実的には不可能になります。
買受人が代金を納付し所有権を取得した時点で、取り下げが確定的に不可能にななあるので、競売の取り下げを希望する場合には、早めに手続きを行いましょう。
5章 差押えと仮差押えの違い
差押えと似た言葉に、「仮差押え」というものがあります。
両者の違いは、差押えが勝訴判決を得てから競売等を行う前に債務者の財産を保全する手続きであるのに対して、仮差押えは訴訟を提起する前または提起している間に債務者の財産を保全する手続きのことを言います。
訴訟を起こした際には、判決がでるまで時間がかかります。
その間に債務者が財産を他人に譲渡するなどの方法で処分してしまうのを防ぐために、訴訟前または訴訟中に債務者の財産を仮に差し押さえるのが、仮差押えです。
6章 差押えを避ける方法
差押えを避ける方法には、以下のようなものがあります。
6-1 住宅ローンの場合
住宅ローンを滞納している場合に差押えを避ける方法には、以下のようなものがあります。
6-1-1 返済の意思があることを金融機関に伝え返済計画の変更について相談する
返済が可能であれば、金融機関に返済の意思があることを伝え、返済計画の変更について相談しましょう。
借入期間を延長し、月々の返済額を減らすなどの方法で返済計画を見直すことに金融機関の同意を得られれば、差押えを回避することができる可能性があります。
6-1-2 債務の一括返済を行う
債務を一括返済することで、差押えを回避することができます。
しかし、住宅ローンを延滞している状態では、一括返済できる資力があるケースはほとんどありません。
そのため、任意売却やリースバックという方法で一括返済のための資金を調達するのが一般的です。
差押えの後にこれらの手続きを行うのも不可能ではありませんが、手続きが非常に煩雑になるので、土地を差し押さえられる前に専門家に相談することが大切です。
6-1-3 債務整理を行う
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。
この3つの方法については、7章で詳しく説明します。
債務整理の方法にはそれぞれ違いがあるので、専門家に相談して最も自分の状態にあった方法を選びましょう。
6-2 住宅ローン以外の借金・債務の場合
住宅ローン以外の借金や債務による差押えを避ける方法には、以下のようなものがあります。
6-2-1 債務の一括返済を行う
借金や債務の一括返済を行うことで、差押えを避けることができます。
ただし、借金や債務を滞納している状態で一括返済する資力があるケースはまれで、親類などを頼るのが一般的です。
他の貸金業者から借入を行い一括返済をしようと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、最初に滞納してしまった時点で個人信用登録機関に金融事故情報として記録されてしまうため、新規に借り入れを行うのは難しいでしょう。
6-2-2 債権者に返済計画の変更について相談する
借金や債務による差押えを避ける方法の中で、一番現実的なのがこの方法です。
債権者に今後の返済計画について相談し、返済期間を延長する代わりに月々の支払額を下げてもらうことで差押えを避ける可能性が高くなります。
6-2-3 債務整理を行う
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。
この3つの方法については、7章で詳しく説明します。
債務整理の方法にはそれぞれ違いがあるので、専門家に相談して最も自分の状態にあった方法を選びましょう。
6-3 税金の場合
税金の滞納による差押えを避ける方法には、以下のようなものがあります。
6-3-1 徴収猶予してもらえないか窓口に相談する
税金には支払い期限があり、基本的にはその期限までに納付しなければなりません。
しかし、病気や失業などやむをえない事情が原因で税金を滞納している場合には、納税について原則1年以内の期間に限り納税を猶予してもらえる可能性があります。
6-3-2 土地の換価を猶予してもらえないか窓口に相談する
債務者に税金を支払う意思があると認められた場合には、1年以内の期間を設けて財産の換価を猶予してもらえる可能性があります。
それ以外にも、税金を払うと生活や事業の継続が困難になると予想される場合も猶予してもらうことが可能です。
しかし、申請期限が納税期限から6か月以内と定められているため、この点に注意が必要です。
換価の猶予については、各自治体のホームページで確認しましょう。
7章 債務整理とは
ここまで記述したどの方法を実行しても差押えを避けることができない場合には、債務整理を行う必要があります。
ここでは、債務整理について解説していきます。
7-1 任意整理
任意整理とは、専門家が債務者の代理人となって現在借り入れている債務の支払額を軽減するために、債権者と返済計画についての交渉を行い、利息の軽減や支払回数の延長などについて合意を行い、毎月の返済額を低く押さえるというものです。
和解後の将来利息をゼロにし、残債を3年から5年程度の期間で分割して支払うというのが、一般的な和解の内容です。
この方法には債務の使い道が問われないというメリットがありますが、一方で元本がそのまま残る、将来利息がゼロにならない可能性もあるといったデメリットがあります。
また、ブラックリストに載ってしまうため、概ね7年間は新たにローンを組んだりクレジットカードを発行できなくなることもデメリットとなるでしょう。
また、現在所有しているクレジットカードの使用もできなくなってしまいます。
7-2 個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てを行い再生計画を策定して、債務の借入金額を減額してもらう手続きです。
減額された借入金を原則3年で返済することにより、減額前の債務の返済が免除されます。
個人再生には、債務の残高が大幅に減額できる、債務の使用目的は問われない、債権者からの督促が止まるといったメリットがあります。
しかしデメリットもあり、それはブラックリストに載ってしまうため、新たなローンが組めない・クレジットカードの新規発行ができない・現在使用中のクレジットカードが使用できなくなるということに加えて、官報に住所・氏名が掲載されるというものです。
7-3 自己破産
自己破産とは、自身の収入では返済の継続が困難になり、所有している財産を処分しても残債を完済できない場合に、その残債を免除してもらうという手続きです。
自己破産を行うためには、裁判所に申し立てを行い一定の価値がある財産を処分しなければなりません。
それによって入手した現金を債権者に配当し、裁判所から免責が下された後に残債がゼロになるというものです。
自己破産を行うと、債務の支払いが免除される、ある程度の財産は手元に残せるというメリットがありますが、ブラックリストに載るため概ね7年間は新たにローンを組む・新規にクレジットカードを発行する・現在使用中のクレジットカードが使用できなくなる・官報に住所と氏名が掲載されるというデメリットがあります。
また、自己破産により職業制限を受けることもあるので、自己破産は他の方法で債務を整理するのが難しい方にお勧めの方法です。
8章 土地が差し押さえられる前に早い段階で専門家に相談しよう
債務や税金の滞納により土地が差し押さえられそうになったら、早いタイミングで専門家に相談しましょう。
専門家に相談するタイミングは早ければ早いほど良いので、住宅ローンやその他の借金・債権、税金等を滞納してしまいそうだと感じた時点で相談するのがおすすめです。
早期に専門家に相談することで、土地の差押えを防ぐための選択肢が多くなり、最も有利な方法で差押えを防ぐことができます。
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