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- 自己破産のときの資産隠しは違法であること
- 自己破産の際に資産隠しと判断されるケース
- 財産別の自己破産の際に資産隠しがバレる理由
- 自己破産をしても手元に残せる財産の種類
- 資産を残して借金問題を解決する方法
自己破産は借金問題を解決するための重要な手段ですが、資産隠しを行うと重大なリスクが伴います。資産隠しが発覚すると、自己破産が認められず、結果として借金の返済義務がなくなりません。さらに詐欺破産罪に問われる可能性があります。
資産を守りながら借金を解決するための手段として、個人再生や任意整理の利用を検討することも有効です。これらの方法を理解し、正しい手続を踏むことで、健全な財務再建を目指せます。
今回の記事では、資産隠しの具体的なケースや、なぜそれがバレるのかを詳しく解説します。また、自己破産を避けつつ借金問題を解決するためのほかの方法についても見ていきましょう。
目次 ▼
1章 自己破産の際に資産隠しをするのは違法である
自己破産の際に、資産隠しをするのは違法であり、次2つのリスクがあります。
- 詐欺破産罪に該当するおそれがある
- 自己破産が認められなくなる可能性がある
詳しく見ていきましょう。
1-1 詐欺破産罪に該当するおそれがある
詐欺破産罪とは、破産者が債権者の利益を害する目的で財産を隠匿するなどの行為を行うことを指します。財産の譲渡や、債務の負担を装う行為も含まれます。
詐欺破産罪が成立すると、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられるかもしれません。さらに、法人が関与していた場合、法人も罰金を科されることがあります。
詐欺破産罪の行為は、破産手続の前後を問わず、行われた場合に適用されます。そのため、破産手続の開始前に行った財産隠しなども処罰の対象です。
詐欺破産罪は破産法によって規定されており、破産者が財産隠しを行うことで債権者の公平な分配を妨げる行為を防止することを目的としています。
詐欺破産罪が成立すると、破産者だけでなく、協力者も刑事罰に問われる可能性があります。具体的には、破産者の財産を隠匿するために協力した者も共犯と見なされるでしょう。
共犯者も主犯と同様に10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科される可能性があります。さらに、詐欺破産罪が成立すると、破産手続における免責が認められなくなるため、債務が残ることになるのです。
1-2 自己破産が認められなくなる可能性がある
自己破産の手続を進めるなかで資産を隠す行為は、破産法に定められた免責不許可事由に該当します。免責不許可事由とは、破産者が債権者に対して誠実に対応せず、法的義務を果たさない場合に適用されるものです。
具体的には、財産の隠匿、虚偽の財産目録の提出、重要財産の開示拒否などの行為が該当します。これらの行為が発覚すると、裁判所は破産者に対して免責を許可しない決定を下すことがあります。
免責が認められない場合、破産者は引き続き債務を返済しなければならず、経済的な再スタートが困難になるでしょう。さらに、破産手続の公正を害する行為として、刑事罰の対象にもなりえます。
このように、詐欺破産罪は重大な犯罪であり、厳罰が適用されます。自己破産の際には財産隠しを行わず、正直に申告するのが賢明です。また、詐欺を意図せず行った行為で詐欺破産罪に問われないように、専門家の助けを借りて手続を進めることが推奨されます。
2章 自己破産の際に資産隠しと判断されるケース
自己破産の際に資産隠しと判断される行為には、以下に挙げるようなケースがあります。これらの行為は、自己破産の手続において厳しく取り締まられます。
正直に財産を申告しなければ免責不許可事由に該当し、借金の免責が認められなくなる可能性が高いので、注意が必要です。
財産の名義を変更する
自己破産を申し立てる直前に財産の名義を家族や親族に変更する行為は、資産隠しと見なされる可能性が高いです。たとえば、車や不動産の名義を他人に変更することが該当します。
預金を移動させる
大量の預金をほかの口座に移動する行為も資産隠しと見なされます。特に、合理的な理由がない場合には、破産管財人によって疑われることが多いです。
財産目録に正しく計上しない
自己破産申請時に提出する財産目録に財産を正確に記載しない行為も資産隠しと判断されます。特に、価値の高い財産を意図的に漏らす場合が該当します。
偽装離婚で財産分与をする
離婚を偽装して財産を配偶者に分与する行為も資産隠しと見なされます。このような行為は、裁判所や破産管財人によって厳しく調査されます。
保険の存在を隠す
解約返戻金のある保険を申告せずに隠す行為も資産隠しとされます。保険料の引き落とし記録や郵便物の転送によって発覚することが多いです。
口座を申告しない
主要な取引口座を申告せず、あまり使っていない口座のみを申告する行為も資産隠しに該当します。破産管財人は各銀行に照会して口座の存在を確認するため、このような行為は発覚しやすいです。
直前現金化を行った
自己破産を申し立てる直前に、高額な資産を現金化し、その現金を隠す行為も資産隠しと見なされます。これは、現金の流れを追跡することで発覚する可能性が高いです。
実際に現金化が資産隠しとみなされるかどうかは、裁判所の判断によります。裁判所は、以下の要素を総合的に考慮して判断します。
- 現金化した金額
- 現金化した時期
- 現金化した理由
- そのほかの事情
たとえば、短期間に多額の現金化を行った場合は、資産隠しとみなされる可能性が高くなる一方、生活費などのために少額の現金化した場合は、資産隠しとみなされる可能性は低くなります。
資産隠しと判断されるリスクを考えれば、直前現金化については専門家に確認してから行うのが賢明です。
3章 【財産別】自己破産の際に資産隠しがバレる理由
破産管財人は、基本的に自己破産の申立者の提出する「財産目録」を厳しくチェックします。つまり、「財産目録」に記載する必要がある以下のような資産は、まず資産隠しが発覚すると考えてよいでしょう。
- 現金・預貯金
- 車や不動産
- 保険
個別に補足しておきましょう。
3-1 現金・預貯金
自己破産の際、現金や預貯金の隠蔽は容易に発覚します。まず、破産管財人は申立者の提出する「財産目録」を厳しくチェックするでしょう。
この書類には、すべての財産とその評価額が記載されており、支払い不能となった以降の最低1年分の銀行取引明細、源泉徴収票、課税証明書なども提出が求められます。
不自然な現金の動きや大きな出金があれば、使用用途を追及されます。加えて、家族や知人への資金移動も監視対象です。
破産管財人が不審に思う取引があれば、口座間の資金移動や現金の使途について詳しく調査し、必要に応じて関係者への聞き取り調査も行います。それによって、現金や預貯金の隠蔽は発覚しやすいのです。
3-2 車や不動産
車や不動産の隠蔽もまた、破産管財人の調査で発覚します。所有する車両や不動産も、「財産目録」に記載する必要があるからです。
記載を怠った場合、車両登録情報や不動産登記情報をもとに調査が行われます。破産管財人は、申立者の過去の不動産取引や車両購入履歴を詳しく調べ、不審な点があれば、その取引の正当性を確認します。
特に、破産申立直前の名義変更や売却は財産隠しと見なされる可能性が高いです。破産法上、「否認権」を行使することで、こうした不正な取引は無効化され、元の状態に戻されます。
また、取引相手や仲介業者にも影響が及ぶため、慎重な調査が行われます。それによって、車や不動産の隠蔽は破産手続のなかで明らかにされやすいのです。
3-3 保険
保険も隠蔽しようとすると、破産管財人の調査で発覚します。生命保険やそのほかの保険契約も、「財産目録」に記載する必要があるからです。記載しなかった場合、保険契約の存在は容易に判明します。
保険会社からの通知や契約書類が証拠となり、保険契約の詳細が明らかにされるでしょう。破産管財人は、申立者の保険契約の受取人変更や解約金の受領についても詳しく調査します。
特に、破産申立直前の受取人変更や解約は、不正な財産隠しと見なされることがあります。このような行為が発覚すると、「否認権」を行使され、契約は元の状態に戻されます。
否認権とは、破産管財人が破産者による不当な取引を無効にする権利で、破産手続の公平性を保つために設けられたものです。否認権の行使によって、破産者が隠した財産を再び破産財団に戻し、債権者に分配できます。
4章 自己破産をしても手元に残せる財産
自己破産を行うと、基本的には財産の大部分が債権者に配当されます。しかし、すべての財産が没収されるわけではありません。破産後の生活を最低限度保障するために、特定の財産は手元に残すことが認められています。
これらの財産は「自由財産」と呼ばれる、生活必需品や一定額の現金などです。自由財産の具体的な内容は法律で定められており、裁判所の裁量により拡張されることもあります。
自由財産の範囲の理解は、自己破産を検討するうえで非常に重要です。ここでは、具体的にどのような財産が手元に残せるのか、また自由財産の拡張について詳しく見ていきましょう。
4-1 どんな財産を手元に残せるのか
自己破産をしても手元に残せる財産は、法律で厳密に定められています。まず、99万円以下の現金は「自由財産」としての保有が認められます。預貯金に関しては、20万円までが自由財産の対象です。
生活に必要な家財道具や日用品も対象となり、テレビやエアコンなどの家電は1台ずつ残すことができます。家具、寝具、衣服、食器、調理器具なども差押禁止動産として保護されます。
また、職業に必要な道具や、宗教的な物品も自由財産の範疇です。さらに、給料の4分の3、国民年金や厚生年金、生活保護受給権などの差押禁止債権も手元に残すことができます。
4-2 自由財産の拡張をすれば手元に残せる財産を増やせる
自由財産の拡張を申立てることで、手元に残せる財産を増やすことが可能です。自由財産の拡張とは、本来は破産財団に属する財産を特別に自由財産として認めてもらう手続です。
裁判所に対して、生活の維持に不可欠な財産の具体的な必要性を主張し、認められれば、その財産を保持できます。たとえば、高額な医療機器や特別な職業道具などです。また、預貯金の一部を自由財産として認めてもらうケースもあります。
自由財産の拡張が認められるには、詳細な理由書を提出し、裁判所の判断を仰ぐ必要があります。この手続を適切に行うことで、破産後の生活基盤をより確保できます。」
5章 資産を残して借金問題を解決したいなら個人再生・任意整理を利用しよう
自己破産は多くの財産を失うリスクがありますが、ほかにも借金問題を解決する方法があります。個人再生と任意整理は、資産を残しながら借金を減らす手段として利用されています。
これらの手続は、自己破産と比べて財産の処分が少ないため、生活基盤を維持しやすいのが特徴です。
個人再生では、大幅な借金減額が可能であり、住宅ローン特則の利用で自宅を守ることもできます。任意整理は将来利息をカットし、元金の分割払いで返済負担を軽減します。
どちらの方法も、法律の専門家の助けを借りて進めることが一般的です。ここでは、個人再生と任意整理の詳細について見ていきましょう。
5-1 個人再生
個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額する手続です。個人再生の最大のメリットは、住宅ローン特則の利用で自宅を守りながら債務整理ができる点です。
ただし、無担保の借金の総額が5,000万円以下であることが条件です。再生計画案が認可されると、借金の返済額は最大で5分の1に減額されます。
それによって、無理のない返済計画を立てることが可能です。また、個人再生は自己破産とは異なり、資格制限がないため、職業を失う心配がありません。
再生計画の認可後は、3〜5年の間に分割払いで返済を行います。この期間中に再生計画に従って返済を続けることで、残りの借金は免除されます。
個人再生は、一定収入はあるものの債務額が大きく、任意整理では難しい場に適した債務整理の方法です。
なお、個人再生とはどういうものかや、個人再生が持つメリットとデメリット、事例などについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
5-2 任意整理
任意整理は、裁判所を介さずに債権者と直接交渉して返済条件を変更する手続です。任意整理の主なメリットは、利息および遅延損害金のカットと元金の分割払いによる返済負担の軽減です。
通常、司法書士などの専門家が債権者と交渉し、3〜5年間の分割払いで返済計画を立てます。借金を任意整理する場合、将来利息をカットして元金のみの返済で、毎月の返済額が大幅に減少します。
それによって、返済期間中の生活負担が軽くなります。また、任意整理では裁判所の手続が不要なため、手続が比較的迅速に進行するでしょう。
なお、任意整理後の返済は自分で行うこともできますが、司法書士などを介して行うことで、債権者との直接のやり取りを避けられます。
任意整理は、債務額が比較的少なく、安定した収入によって一定の返済能力がある場合に適した債務整理の方法です。
なお、任意整理とはどういうものかや、任意整理が持つメリットとデメリット、向いている人や事例などについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
まとめ
自己破産を行う際の資産隠しは違法であり、発覚すれば自己破産が認められず、詐欺破産罪に問われるリスクがあります。資産隠しがどのようにバレるのかについては、破産管財人の徹底した調査が関係します。
具体的には、現金や預貯金、車や不動産、保険などが対象となり、それぞれ詳細な調査を受けるでしょう。また、否認権の行使により不正な取引が無効化されることもあります。
自己破産を検討する際は、正直に財産を申告し、適切な手続を行うことが重要です。一方で、自己破産以外にも借金問題を解決する手段として、個人再生や任意整理が存在します。
個人再生では、借金を大幅に減額しながらも自宅を守ることが可能であり、任意整理では将来利息をカットしたうえでの元金の分割払いで、返済負担を軽減できます。
これらの方法の活用で、資産を残しながら借金問題を解決し、安定した生活を維持できます。専門家に相談すれば、個々の借金・資産状況に見合う債務整理の方法を提案してもらえるでしょう。
債務整理を検討しているみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。債務の解決のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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