自己破産では家計簿が必要!内容や注意点を専門家が解説します

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産
自己破産で必要な家計簿を 簡単作成! 記載内容や注意点を専門家が解説

この記事は約 13 分で読めます。

自己破産の手続きをする場合、裁判所から家計簿の提出を求められます。

裁判所は、破産を認めるかどうか判断するために家計の状況を把握する必要があるからです。

では、自己破産で必要な家計簿には、どのような内容を記載し、どのように作成すればよいのでしょうか。

この記事では、自己破産における家計簿について、みなさまが簡単に作成できるよう解説いたします。

作成例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

1章 自己破産で家計簿の提出が必要な理由

自己破産は、簡単に言うと、裁判所に「借金をもう返済しなくてよい」と認めてもらう(免責許可)ための手続きです。

当然ながら、借りたものは返すのが原則なので、免責は厳格な審査を経て、やむを得ない場合にのみ出されるものです。適当に申し立てれば認めてもらえるというものではありません。

そのため、裁判所は「本当に借金を免除しなければいけない状況なのか」「不当に免責を受けようとしていないか」を慎重に判断する必要があります。

具体的に、家計簿で確認されるのは、以下の2つです。

  • 支払不能の状態かどうか
  • 免責不許可事由に該当しないか

それぞれ詳しく解説します。

1−1 支払不能の状態かどうか

自己破産の申立てが認められるには、支払不能の状態でなければいけません。

本当は借金を返せるだけの収入や資金があるにもかかわらず、自己破産をして借金から逃れるということはできないようになっているのです。

「支払不能」かどうかは、借金の総額や、収入、財産などを鑑みて判断されます。

節約など、家計の改善をすることで借金の返済ができる状態であれば、支払不能とは言えません。

裁判所は、家計簿を見ることで、本当に支払不能の状態にあるかどうかを確認します。

1−2 免責不許可事由に該当しないか

免責不許可事由(借金の免除を受けられない要件)に該当している場合、自己破産は認められません。

免責不許可事由には、「ギャンブルや浪費で作った借金であること」や「不当に財産を隠したこと」などがあります。

裁判所は、家計簿からお金の動きを見ることで、それらに該当している行為をしていないかを確認しているのです。

免責不許可事由となる行為
・借金を返さないためにわざと財産を隠したり、財産価値を下げる行為
・特定の債権者だけに偏って返済する行為
・クレジットカード決済で商品を購入し、それを売るなどして換金する行為
・ギャンブルや、投資、不要なショッピングなどによる浪費行為
・自己破産をする前提で新たに借金をする行為
・裁判所に嘘の債権者一覧や借金額など虚偽の報告をする行為
・過去7年以内に自己破産をしたこと

もっとも、少しでも該当していれば絶対にダメというわけではありません。詳しくはこちらをご覧ください。

2章 自己破産で提出する家計簿に記載する内容

自己破産で提出する家計簿は、おおむね家計管理のためにつけるようなものと同じように作成すれば問題ありません。

家計簿には、収入と支出どちらも詳細に記載しましょう。

具体的な書式や作成方法は3章で説明します。まずは以下で、家計簿に記載するべき内容と、その概要についての全体像を記載していますので、参考にしてください。

収入

横スクロールできます

項目概要
前月の繰越金現在手元にある金額を記載します。
預貯金と手持ちの現金の合計した金額です。
2ヶ月目以降は前月で余った分を記載します。
給与・賞与自身や配偶者など世帯を同じくしている人のものをそれぞれ記載します。
自営収入自営業の方は、自営収入を記載します。
年金年金受給者の方は年金の金額を記載します。
生活保護生活保護受給者の方は生活保護の支給額を記載します。
児童手当等児童手当や児童扶養手当など、国や自治体から何かしらの手当を受けている場合には記載します。
援助等親などから資金援助を受けている場合に記載します。
借入金消費者金融や個人から借りた借入金を記載します。
その他税金還付金など、上記以外になにか収入がある場合には記載します。
収入合計上記すべてを合算した金額を記載します。

支出

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項目概要
家賃・地代家賃や地代などを記載します。
管理費や修繕費積立金がある場合にはそれも合算します。
住宅ローン住宅ローンがある場合には記載します。
その他ローン車などのローンがある場合には記載します。
食費日々の食事にかかった費用を記載します。
同世帯の人の分も合算します。
嗜好品代お酒やタバコなどの嗜好品、趣味にかかった費用を記載します。
電気代
ガス代
水道代
水道・光熱費は正確に記載しなければいけません。
領収書を見ながら記載し、領収書は保管しておきましょう。
電話代
インターネット代
固定電話・携帯電話・インターネットなどの通信費を記載します。
同世帯の人の分も合算してください。
ここも正確な金額を記載するので、領収書は保管しておきましょう。
新聞代新聞の定期購入にかかった費用を記載します。
ガソリン代車やバイクなどでガソリン代が発生した場合に記載します。
同世帯の人が使用している場合にも記載しなければいけません。
また、備考欄に車の所有者の名前を記載してください。
医療費医療費が発生した場合には記載します。
病院で診察したときだけでなく、薬局でかぜ薬を買ったときなどもここに記載してください。
同世帯の人に発生した場合も同様です。
備考欄に受診者や費用の詳細を記載します。
教育費子どもに教育費がかかった場合に記載します。
学費や学習塾の月謝、教材費などです。
交通費電車代等の交通費を記載します。
同世帯の人にもかかった場合には合算します。
被服費衣類や靴などを購入した場合には記載します。
同世帯の人にもかかった場合には合算します。
日用品費トイレットペーパーやティッシュ、洗剤、シャンプーなど日常生活に必要なものを購入した際に記載します。
同世帯の人にもかかった場合には合算します。
交際費友人や職場の人と食事などに行った際にかかった費用を記載します。
同世帯の人にもかかった場合には合算します。
娯楽費飲み会での費用は食費ではなく「娯楽費」になります。
同世帯の人にもかかった場合には合算します。
保険料生命保険や医療保険、国民健康保険などの保険料を記載します。
返済金月々の返済額を記載します。
家族のクレジットカード支払いがある場合などです。
支出合計上記をすべて合算した額を記載します。

3章 自己破産で提出する家計簿の作成方法

ここでは、実際の家計簿の作成方法などについて解説します。

3−1 作成期間

家計簿は、自己破産の申立てをする前の2ヶ月分を作成する必要があります。たとえば、4月に申立てをするには2月と3月の家計簿を提出することになります。

自己破産の申立てには、準備期間として2〜3ヶ月を要します。

自己破産をする際、ほとんどの方が司法書士などの専門家に依頼するかと思います。

その場合専門家に依頼してから2〜3ヶ月間は準備期間となりますので、専門家に依頼後、アドバイスをもらいながら家計簿を作成すれば問題ありません。

3−2 書式

家計簿は、手書きでも構いませんが、可能であればエクセルなどで作成すると修正もしやすいためおすすめです。

家計簿見本

3−3 作成例

家計収支表の記入例
専門家に作成をサポートしてもらおう!
自己破産で提出する家計簿は、必要事項を詳細に記載する必要があります。
そのため、自分で作成するのは難しいと感じることもあるでしょう。
専門家に相談することで、作成のポイントをアドバイスしてもらえます。
また、あらかじめ記載すべき内容を教えてもらい、それに関する日々の収支をメモしたり、レシートを保管したりして、実際の作成は専門家にお願いするのもよいでしょう。

4章 自己破産で提出する家計簿を作成する際の注意点

自己破産の申し立て時に提出する家計簿は、裁判所が自己破産を認めるかどうか判断するための重要な資料です。

そのため、日常でつける家計簿よりも慎重に作成する必要があります。

作成時には、以下の点に気をつけましょう。

4−1 ごまかさずに正確に記入する

家計簿に記載する金額は、正確な数字を記載しましょう。

特に、給与・賞与・光熱費・通信費については、正確に記載する必要があります。

その他、食費や日用品については、基本的には1円単位できっちりと記載する必要はないとされていますが、生活を見直すためにも、レシートなどを確認しながらできるだけ正確に記載するようにしましょう。

4−2 世帯家計で作成する

家計簿は、申立人と同じ世帯の人全員の収支を記載する必要があります。

配偶者や家族の協力を得て、作成しましょう。

また、別居中であっても仕送りをもらっている場合や、逆に仕送り・婚姻費用を送っている場合にはその金額も記載してください。

とはいえ、中には家族に内緒で手続きを進めたいと思っている人もいると思います。しかし、自己破産は裁判所を通す厳格な手続きです。今後の生活まで含めて考えた場合、家族に打ち明けて協力を得た方が絶対に良いでしょう。

4−3 領収書・レシートを保管する

水道光熱費や家賃、通信費のような固定費は領収書の提出を求められることがあります。しっかりと保管しておきましょう。

日用品や食費に関しては、領収書の添付は必要ないとされていますが、自身の出費を把握するためにも、領収書を保管しておくのが良いでしょう。

4−4 「繰越額」には口座残高と現金を合算した額を記入する

「繰越金」の項目には、銀行口座にある預貯金と、手元にある現金を合算した金額を記載します。

2ヶ月目以降は、給与などが入る前に余っていたお金が「繰越金」となります。

この繰越金にずれが生じていると、不正が疑われる可能性がありますので、ごまかさず正確に記載するようにしましょう。

4−5 食費・交際費・娯楽費などが多すぎると審査にひっかかる可能性がある

食費や交際費、娯楽費などが多すぎる場合、「節約をすれば、返済が可能」と判断され、裁判所での審査で指摘される可能性があります。

明らかに高額であり、裁判所や専門家の指導によっても治らない場合は、管財人がつけられる可能性もあります。

自己破産手続中の破産者であるという自覚を持ち、なるべく自炊を心がけ、飲み会・食事会や趣味に費やすお金は最低限に抑えるようにしましょう。

5章 自己破産の家計簿についてよくある質問

ここでは、自己破産の申し立ての際に提出する家計簿について、よくある質問にお答えします。ぜひ参考にしてください。

5−1 家計簿に嘘を書いたらバレますか?

A.家計簿に嘘を書いても、何らかの形でバレてしまう可能性が高いです。

嘘がバレると、免責不許可事由に該当し、自己破産が認められなくなることもあります。最悪の場合、詐欺破産罪として罪に問われる可能性も否めません。

自己破産の申し立てをすると、破産管財人との面談をします。その質疑応答の中で家計簿の内容についても触れられるでしょう。

嘘をついていた場合、どこかで辻褄が合わなくなりますし、破産管財人は少しの違和感にも敏感です。

また、通帳を提出するため、お金の出入りについて、細かく把握されています。

嘘をついて得することは一切ありませんので、正直に書くようにしましょう。

5−2 家計簿を作成したいのですが、レシートがありません。大丈夫でしょうか?

A.食材や食事、日用品の購入費については、ある程度金額を把握していればレシートがなくても大丈夫です。

一方で、水道光熱費や通信費などの固定費については、領収書の提出を求められる可能性があります。

支払先に依頼して再発行が可能であれば、再発行してもらいましょう。どうしても入手できない場合には、保管できる期間から家計簿をつけるようにしてください。

なお、通帳に引き落としの記録がある場合は、その記録を提出すれば足ります。

5−3 出費の詳細を覚えていないのですが、どうしたら良いでしょうか?

A.出費の詳細が全くわからない場合には、分かる期間から家計簿を作成しましょう

ある程度、出費の内容を把握していて、収支の辻褄が合うようであれば、その内容で作成しても大丈夫です。

ただし、あまりにもいい加減につけると、破産管財人から指摘されることもありますので、覚えていない場合には依頼している専門家に相談することをおすすめします。

もっとも、大抵は「〇月から作ってください」と指示されると思います。指示された後は、意識的に領収書などを残すように心がけてください。

5−4 タバコ代を家計簿に書いても大丈夫でしょうか?

A.良識の範囲内のタバコ代であれば、問題ないことがほとんどです。家計簿には「嗜好品代」として記載します。

しかし、人からお金を借りていて、それを返せないという状況の中、タバコのような嗜好品にお金をかけていることは、印象の良いものではないでしょう。

例えば、1ヶ月に2万円も3万円もタバコ代がかかっている場合、破産管財人から「その分を節約すれば返済にあてられる」と判断されてもしかたありません。

難しいとは思いますが、自己破産をする前に禁煙するか、少なくとも本数を減らすよう努力しましょう。

6章 自己破産の家計簿作成に不安がある方はグリーン司法書士法人までご相談を

グリーン司法書士法人では、これまで債務整理に関するご相談を累計10,000件以上受けてまいりました。

もちろん、自己破産に関するご相談もいただき、家計簿作成についてアドバイスさせて頂いた実績も多くあります。

突然「家計簿をつけてください」と言われても、何を書いたら良いか、どう管理したら良いかわからないことも多いでしょう。

当事務所にご依頼いただければ、家計簿の作成も含め、自己破産の手続きをサポートさせていただきます。

初回のご相談は無料で、オンラインでのご相談にも対応しております。

自己破産を検討している方は、ぜひグリーン司法書士法人にご相談ください。

自己破産に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

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よくあるご質問

自己破産手続き中に家計簿は出す?
自己破産手続き時には家計簿の提出が必要です。
裁判所が支払い不能であるか、免責不許可事由に該当しないかを確認するためです。
なお、家計簿は自己破産申立前の2ヶ月分を作成、提出します。
自己破産時に提出する家計簿について詳しくはコチラ
自己破産をするとどこまで調べられる?
自己破産の手続きを進めるにあたって調べられるのは、「所有財産」「借金の内容」「免責に関すること」の3点です。詳細を細かく調べられるので、財産を隠すなどはやめておきましょう。
財産を隠していた事実が発覚すれば、自己破産で借金を0にすることができなくなる可能性があり、破産詐欺罪となった場合は厳しい処罰を受けることになります。
自己破産時の調査について詳しくはコチラ
自己破産は家族にバレてしまう?
自己破産を同居の家族にバレずに行うことは難しいでしょう。
自己破産時には世帯全体の家計簿の作成や同居家族の収入証明書の提出などが必要になるからです。
他にも裁判所からの郵便物が自宅に届きバレる可能性があります。
自己破産をすると家族にバレるかについて詳しくはコチラ
自己破産で提出する家計簿の期間は?
自己破産時には申し立て前の2ヶ月分の家計簿の作成および提出が必要です。
自己破産時に提出する家計簿について詳しくはコチラ
自己破産で提出する家計簿にレシートがないときはどうすればいい?
自己破産では、提出する家計簿にレシートや領収書を添付する必要はありません。
ただし裁判所からの質問に対応できるように、レシートや領収書がない場合は通帳の引き落とし履歴やメモなどを残しておきましょう。
自己破産の家計簿について詳しくはコチラ
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