自己破産で通帳を提出する理由|提出方法と指摘を受けるケース

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 登録番号第10262380号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産

この記事は約 12 分で読めます。

自己破産の手続きをする際、裁判所から預金通帳の提出を求められます。

「なんで通帳が必要なの?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、通帳で何を見られるのか気になりますよね。

裁判所は通帳から

  • 自己破産が認められるほど支払不能かどうか
  • 怪しいお金の動きはないか
  • 保有している財産はどの程度か

などを確認します。

通帳は、通常原本ではなく写し(コピー)を提出しますので、手元に通帳がなくなることはありませんので安心してください

この記事では、自己破産の申立て後に通帳の提出が必要な理由や、提出方法などについて解説します。

1章 自己破産ではすべての銀行口座の通帳提出が必要

自己破産の手続き時には、破産者名義のすべての銀行口座を裁判所に提出しなければなりません。
自己破産時には裁判所や破産管財人が銀行口座の調査をするからです。

全く取引履歴がなく残高が0円の口座や凍結されていない銀行口座も、過去1年分の通帳のコピーを求められることが多いです。
自己破産時に通帳提出や銀行口座の調査が必要な理由は、次の章で詳しく解説します。

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2章 自己破産をする際に通帳の提出が必要な理由

冒頭でもお話しましたが、自己破産をする際、裁判所から通帳の提出を求められます。

裁判所が通帳の提出を求める理由は以下のとおりです。

  • 支払い不能かチェックするため
  • お金の流れを見るため
  • 保有している財産をチェックするため

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1 支払い不能かチェックするため

自己破産が認められるには、支払い不能であることが必要です。具体的には、客観的に見て、本人が借金の返済ができないほど財産・収入が不足し、支払い不能だと言える状況でなければいけません。

ある程度の収入・財産があるのであれば個人再生や任意整理などの債務整理でもよいのでは?と判断されます。

自己破産は、借金の支払い義務を完全に免れるための厳格な手続きなので、すべての人が認められるというわけではないのです。

そのため、裁判所は申立人の財産や収入の状況を通帳を見て確認します。

2-2 お金の流れを見るため

残念ながら、自己破産を認められやすくするためや、財産を没収されないよう、財産を隠す人がいらっしゃいます。また、持っている財産を1つの債権者に優先的に返済をすることは「偏頗弁済」といって、破産手続き上、禁じられていますが、私的な事情から偏頗弁済を行う人もいます。

このような行為は、自己破産が認められなくなる可能性があるので、決してやってはいけません。

裁判所は、通帳を見て申立人がそのような行為をしていないかチェックします。

例えば、通帳の明細が以下のような場合。

横スクロールできます

年月日お預り金お支払い金残高
2021年5月26日大阪太郎¥1,000,000¥1,080,000
2021年5月27日返済 ¥20,000¥1,060,000
2021年5月27日家賃 ¥80,000¥980,000
2021年6月1日山田花子¥200,000¥780,000
2021年6月2日ATM¥700,000¥80,000
2021年6月15日宝くじ¥3,000¥77,000
2021年6月20日賞与¥250,000¥327,000
通帳明細の例
  • 5月26日の100万円の入金はなんだ?
  • 6月1日の20万円は誰に、なんのために振り込んでいるのはなんだ?
  • 6月2日に70万円も引き出しているのはなぜ?何に使ったのだろう?
  • 宝くじはいつから購入しているんだ?常習的にギャンブルをしていたのでは?
  • 6月20日に賞与の振り込みがあるのに給与の振り込みがないのはなぜ?給与は他の口座に振り込まれている?

と疑問に思い、裁判所は調査します。

ここでは例として分かりやすく怪しいお金の流れを記載しましたが、裁判所は些細な違和感にも気づき、詳細に調査をします。

そのため、財産の動きについては隠さず、正直に話すようにしましょう。

2-3 保有している財産をチェックするため

自己破産をすると、一定額以上の財産は没収され、債権者に分配されます。

そのため、裁判所は申立人の所有する財産を確認するために通帳を確認します。

没収されないためにお金を引き出すような行為は、裁判所から言及されますので、決してしないようにしましょう。

3章 通帳を提出して指摘されるケース

1−2でも少し触れましたが、裁判所は通帳を見てお金の動きに違和感がないか確認をします。

もし、気になる点がある場合、裁判所から指摘をされることがあります。

具体的には以下のようなケースです。

  • 多額もしくは多数の入出金がある
  • 積立の出金がある
  • マイナスの残高がある
  • 生命保険料や固定資産税などの引き落としがある 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1 多額もしくは多数の入出金がある

口座から、多額もしくは多数の入出金がある場合、以下のようなことを疑われ、その用途について説明を求められる可能性があります。

  • 特定の債権者にのみ返済をしているのではないか(偏頗弁済)
  • 不要な浪費をしているのではないか
  • ギャンブルをしているのではないか
  • 申告のない債権・債務があるのではないか
  • 申告のない収入があるのではないか

自己破産の手続きをする前は、生活に必要な最低限のお金だけを出金するようにし、収入がある場合には裁判所にきちんと申告するようにしましょう

また、特定の債権者にだけ返済をする「偏頗弁済」という行為は禁止されています。専門家に依頼したら債権者に受任通知が送付され、取り立てがストップしますので、全債権者への返済を一度やめるようにしましょう。

3-2 積立の出金がある

口座の履歴に「積立」などの出金がある場合、定期預金などの存在があるのではないかと判断されます。

別途定期預金がある場合には、その金額についても開示するようにしましょう。

3-3 マイナスの残高がある

口座貸越というマイナスの残高がある場合、定期預金などを担保に貸付を受けている可能性が高いと判断されます。

マイナスの残高が発生している理由について、説明をするようにしましょう。

3-4 生命保険料や固定資産税などの引き落としがある 

保険会社からの引き落としがある場合には生命保険への加入が、固定資産税の引き落としがある場合には不動産を所有しているのではないか、と判断されます。

不動産はもちろん、生命保険の解約返戻金についても所有財産に含まれるため、正確に提示するようにしましょう。

指摘に備えて領収書や契約書などの証拠を残しておく

裁判所から多額の出金や不自然な入出金について指摘を受けた場合、お金の使途を明確に説明しなければなりません。 その際、口頭で説明するだけでは説得力に欠けるため、領収書や利用明細、契約書などの客観的な証拠を提示する必要があります。

正当な生活費や支払いであることを書面で証明できれば大きな問題にはなりませんが、証拠がないと財産隠しなどを疑われるリスクが高まります。 自己破産の手続きを進めるにあたり、普段からお金を使った際の領収書や控えは必ず手元に残しておくようにしてください。

4章 自己破産をする際の通帳の提出方法

自己破産で通帳を提出する際には、以下の点を踏まえておきましょう。

  • 通帳の原本ではなくコピーの提出でOK
  • 所有している銀行口座のすべてを提出する
  • 残高が0円であっても提出する
  • 申し立て後2週間以内に記帳をしておく
  • 過去1年分の履歴を提出する(大阪の場合)

自己破産をする際には、残高が0円であっても、所有する銀行口座すべての通帳を提出する必要があります。

なお、通帳は、申し立てをする2週間以内に記帳をしておくようにしましょう。

提出するのは、通帳の原本ではなくコピーでかまいません。事前にすべての通帳のコピーを取っておくようにしましょう。

4-1 長期間記帳をしていない場合や通帳がない場合は取引明細書を提出する

長期間記帳をせずおまとめ通帳になってしまった場合や、通帳が見当たらず通帳が提出できない場合には、銀行に取引明細書を発行してもらいましょう。取引明細書は銀行によって料金は様々ですが、400〜600円/月程度かかるので注意しましょう。

また、インターネットバンクではそもそも通帳を発行しておらず、提出できないことがあります。その場合には、インターネット上の取引記録を印刷して提出すれば問題ありません。

ただし、ネット上で遡れる記録は限られていますので、表示されない部分については取引記録を発行してもらってください。

4-2 過去1年分の取引履歴を提出する

大阪地方裁判所の場合、申立て前1年間の取引履歴を出す必要があります。何年分の通帳を提出するかは裁判所によって異なる可能性があるので、専門家ないし裁判所の指示に従いましょう。

したがって、通帳を紛失した場合には窓口で履歴を取得することになります。

また、繰越しにより通帳が切り替わっている場合は、古い通帳も合わせて出さなければなりません。

なお、新規に開設した口座の場合は、開設以後の分しかありませんので、それを出せば十分です。

4-3 通帳を紛失した場合は再発行の手続きをしておく

手元に通帳が見当たらない場合、銀行の窓口で取引明細書を取り寄せることも可能ですが、できるだけ通帳そのものを再発行しておくのがおすすめです。
自己破産の手続きには数ヶ月から半年程度の期間がかかることがあり、その間に裁判所から最新の入出金履歴の提出を何度も求められるケースがあります。

通帳を再発行しておけばATMですぐに最新の状態を記帳できるため、何度も明細を取り寄せる手間を省くことができます。
なお、銀行の届出印も紛失している場合は、先に印鑑を変更する改印手続きを行わなければなりません。

4-4 管財事件になった場合は通帳の原本を提出する

自己破産の申立て時には通帳のコピーを提出すれば問題ありませんが、一定以上の財産があるなどの理由で管財事件となった場合は扱いが異なります。管財事件では破産管財人が選任され、保有財産の詳細な調査が行われることになります。

その際、破産管財人からコピーではなく通帳の原本を直接提出して預けるよう指示されるケースがあります。
そのため、申立て用に通帳のコピーを取った後も、原本は決して処分したり紛失したりしたりしないよう、手元にしっかりと保管しておいてください。

4-5 通帳の出し忘れに気づいた場合は速やかに追加提出する

裁判所に通帳の提出を求められた際、長期間使っていない口座の存在を忘れており、出し忘れに後から気づくケースがあります。
その場合は、見つかった時点ですぐに弁護士などの専門家や裁判所へ追加で提出してください。早急に対応すれば大きな問題に発展することはありません。

しかし、残高があることや不都合な入出金履歴を知られたくないという理由で、意図的に通帳を隠した場合は財産隠しと見なされてしまいます。
免責が認められず借金がなくならないだけでなく、詐欺破産罪に問われるおそれがあるため、必ずすべての通帳を提出してください。

自己破産での使ってない口座の取り扱いについては以下の記事で解説しています。

4-6 同居家族の預金通帳の提出を求められるケースがある

自己破産では基本的に申立人本人の財産が調査対象となりますが、状況によっては同居している家族名義の預金通帳の提出を求められることもあります。
裁判所は、申立人が本当に借金の返済が不可能な状態にあるのかを判断するために、家計全体の収支状況や生活費の負担割合を正確に把握する必要があるからです。
配偶者などの口座履歴も確認される可能性があるため、裁判所や破産管財人から指示があった場合は隠さずに速やかに応じるようにしてください。

自己破産での家族の収入調査については以下の記事で解説しています。

4-7 キャッシュレス決済の利用履歴や残高も申告する

近年利用者が増えているPayPayなどの電子マネーやキャッシュレス決済の残高も、自己破産においては保有財産として扱われます。
銀行口座からキャッシュレス決済へのチャージや送金履歴は通帳に記録されるため、利用状況は必ず調べられることになります。

そのため、ネット銀行の口座情報だけでなく、電子マネーの利用履歴や現在の残高がわかるアプリ画面のスクリーンショットなどの提出も欠かせません。
隠すと不利益を被るおそれがあるため、正直に申告するようにしてください。

5章 自己破産の手続きは専門家に依頼しよう

自己破産の手続きは、通帳以外にも提出する書類が数多くあり、自身で進めるのは非常に困難です。

そのため、ほとんどの人が司法書士などの専門家に依頼しています。

グリーン司法書士法人では、これまで数多くの自己破産手続きをサポートした実績があります。

申し立て前の準備から、手続完了までしっかりとサポートさせていただきます。

初回相談は無料です。オンラインでのご相談も可能ですので、ぜひ一度ご相談ください。

自己破産に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

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よくあるご質問

自己破産時の通帳はどこまで調べられる?
自己破産時には過去1年分の通帳を見られる場合が多いです。
長期間取引していない口座に関しては取引明細書を発行してもらい提出する必要があります。
自己破産時の通帳提出に関して詳しくはコチラ
自己破産手続き中にやってはいけないことは?
自己破産手続き中にやってはいけないことは、下記の通りです。
1.裁判所の指示に従う
2.財産は隠さずに申告する
3.借金はすべて申告する
4.申立て直前に大量の借金をしない
5.専門家の指示やアドバイスに沿った行動をする
6.管財事件のときは破産管財人の指示に従う
自己破産中にやってはいけないことについて詳しくはコチラ
自己破産の通帳の提出期間は?
大阪地方裁判所の場合、申立て前1年間の取引履歴を出す必要があります。何年分の通帳を提出するかは裁判所によって異なる可能性があるので、専門家ないし裁判所の指示に従いましょう。
自己破産時の通帳提出について詳しくはコチラ
自己破産で通帳を提出しないとどうなりますか?
自己破産で通帳を提出しなかった場合には、財産隠しと判断される可能性があります。 財産隠しが発覚すると、自己破産の免責不許可事由に該当するとされ、自己破産が認められなくなります。
▶免責不許可事由について詳しくはコチラ

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