10年放置した借金は返済すべき?時効は成立する?

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

時効の援用
10年放置した借金は返済すべき?時効は成立する?

この記事は約 9 分で読めます。

 この記事を読んでわかること
  • 10年放置していた借金を返済する必要があるか
  • 10年放置していた借金は時効を迎えているか
  • 10年放置していた借金の時効援用方法
悩む男性
悩む男性
自分でも忘れていたのですが、10年以上前の借金の取り立てが今更来ました。もう時効を迎えているのではないでしょうか?
司法書士
司法書士
はい。確かに借金の時効は5年であることがほとんどですので、10年以上放置されていたのであれば時効を迎えている可能性があります。しかし、その間に裁判上の請求などを受けている場合には時効がリセットされている可能性もあります。
悩む男性
悩む男性
時効を迎えているかの確認はどうしたらよいのでしょうか?
司法書士
司法書士
取引履歴を取り寄せるなどの方法がありますが、一般の方の判断で行ってしまうと相手に時効の存在を気づかせてしまうリスクがあります。時効を迎えていると感じたら、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

10年間放置した借金の場合、消滅時効を迎えている可能性があります。

借金の時効は、最後の返済日(一度も返済していない場合には返済期日)から5年または10年です。

しかし、その期間に債権者から裁判上の請求をされるなどのアクションを起こされると、時効がストップしてしまいます。

そのため、10年前の借金だからといって必ずしも消滅時効を迎えているとは限りません。

この記事では、10年放置した借金が時効を迎えているケース・迎えていないケースや、時効を成立させるための援用についてに解説します。

1章 10年放置した借金は時効を迎えている可能性がある

一般債権の場合の消滅時効

10年にわたり返済せず放置していた借金はすでに消滅時効を迎えている可能性があります。
前提として、借金の時効が成立する条件は以下の2つです。

①返済期日または最後の返済から5年または10年経過していること
②相手から催告や裁判上の請求などをされていない

①の条件が5年または10年なのは、消滅時効の成立要件が以下のように定められているためです。

  • 権利を行使することができることを知ったときから5年間(主観的起算点)
  • 権利を行使することができるときから10年間(客観的起算点)

とはいえ、金融機関からの一般的な借り入れの場合、前者の主観的起算点が適用されることがほとんどです。

そのため、通常「最後の返済から5年」で時効を迎えていると考えておけば問題ありません。

ただし、債権者から裁判所上の請求を受けたり、一度でも返済してしまったりすると、時効がストップされたりリセットされたりすることがあるため、「5年以上前の借金だから、時効だ」とは言い切れません。

以下では、10年経過している借金が時効を迎えているケース・迎えていないケースんついて解説します。

1−1 時効を迎えているケース

最後の返済または返済期日から5年(返済期日が定められていない場合には10年)が経過していて、かつ債権者から裁判上の請求や催告などを受けていないのであれば時効を迎えている可能性が高いでしょう。

しかし、債権者が何年も借金を放置することは考えにくいのが現実です。

また、仮に期間を経過していることが分かっても、それだけで満足してはいけません。この点は2章で詳しく解説します。

1−2 時効を迎えていないケース

前提として、返済期日または最後の返済から5年が経過していなければ時効になりません。

また、5年が経過していても債権者から以下の行為が行われると、時効が中断または延長されます。

債務の承認
債権者が借金を返済するなど借金を承認した
→承認時点で時効がストップし、時効が0から再スタートする

裁判上の請求
債権者が債務者に対して返還を求める訴訟を起こした
→訴訟を起こした時点で時効がストップし、裁判確定時に時効が0から再スタートする

催告
債務者が債権者に対して返還を求める催告をした
→催告をした時点から裁判確定まで時効がストップし、その後裁判が確定時した時に時効が0から再スタートする

債権者と債務者の合意
債権者と債務者で時効の完成を猶予することに合意している
→当事者の合意のもと、最長で1年間時効の完成を猶予することが可能

また、裁判上の請求を受けた上で、判決が取られると、その時点から10年経過しなければ時効を迎えることはありません。

その他、時効の起算点について詳しくは、以下の記事を御覧ください。

2章 時効を成立させるためには、時効の援用をする必要がある

借金の場合時効の期間を迎えていても、刑事事件のように勝手に成立することはありません。

時効を成立させるためには、債権者に対して時効が完成したことを主張する必要があります。これを「時効の援用」といいます。

ここでは、時効の援用方法について解説します。

2−1 時効の援用方法

時効の援用は債権者に対して「時効援用通知書」を送付することで行います。時効援用通知書は一般的に内容証明郵便を利用して送付するのが一般的です。

内容証明郵便とは、「いつ、誰が、どのような内容を、誰に差し出したか」を郵便局が証明してくれる制度です。

具体的な流れは以下のとおりです。

  1. 消滅時効を迎えているかを確認
  2. 時効援用通知書の作成
  3. 内容証明郵便を用いて債権者に時効援用通知書を送付

万が一、時効がまだ成立していないにもかかわらず時効援用通知書を送付してしまうと、相手に時効が近いことを気づかせてしまい、裁判上の請求などをするきっかけになってしまいます。

そのため、時効の援用は慎重に行うべきです。そのため、司法書士などの専門家に依頼することがおすすめです。

2−2 時効援用にかかる費用

時効を援用するのにかかる費用は以下の2つです。

  • 内容証明郵便の費用:440円〜700円程度(基本料金440円、2枚目以降は1枚につき260円)
  • 専門家への依頼費用:1社につき5万円〜8万円程度

なお、グリーン司法書士法人では、時効の援用を以下の費用で承っています。

相談料無料
過払い返還成功報酬取り返した額の20%(裁判での回収は25%)
減額成功報酬減額報酬無し
基本料金19,800円(税込21,780円)

2−3 時効援用通知書の作成方法

時効援用通知書に記載する内容は以下のとおりです。

時効を援用する日付書類を送付する日付でOK
ただし、その日付が消滅時効経過後の日付になっているか必ず確認する。
差出人の情報差出人の「氏名」「住所」「連絡先」を記載します。
専門家に依頼している場合、差出人はその専門家になります。
債権を特定する情報債権者の情報(法人):名称・本店住所・代表者の氏名
債権者の情報(個人):氏名・住所
債務者:氏名・生年月日・住所・会員番号
債権:債権の性質・金額・発生日・最終返済日
消滅時効を援用する旨「消滅時効を援用する」という旨を記載します。
この記載がなければ援用通知にはなりません。

時効援用通知書の書式は特に決められていません。そのため、手書きで作成しても、パソコンなどで作成してもOKです。

ただし、記載する内容は法的に適切なものでなければいけません。簡単な文章に見えますが、複雑な法的判断が必要ですので、失敗しないためにも司法書士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

2−3−1 内容証明郵便の書式と発送方法

時効援用通知書に限らず、内容証明郵便には決まった書式があります。具体的には以下のとおりです。

横スクロールできます

文字数行数
縦書き1行20文字以内1枚26行以内
横書き1行13文字以内1枚40行以内
1行20文字以内1枚26行以内
1行26文字以内1枚20行以内

援用通知書を作成したら、債権者送付用、郵便局保管用、差出人の控え用の3部を用意し、全てに押印するようにしましょう。

作成した文書を郵便局に持参して、内容証明郵便を依頼すると、配達証明の控えがもらえます。これは郵送したことを証明する大切なものですので、しっかり保管しておいて下さい。

3章 時効を迎えている可能性がある場合にはグリーン司法書士法人にご相談下さい

10年放置している借金は、時効を迎えている可能性があります。

グリーン司法書士法人では、時効の援用に関するご相談も受け付けています。

借金の状況から、時効を迎えているかを確認し、援用通知書の送付まで対応可能です。

初回の相談料は無料です。オンライン相談も受け付けておりますので、お気軽にご相談下さい。

時効の援用に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

アクセス数が多いキーワード:消滅時効

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