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- 住宅ローンを兄弟に引き継げるかどうか
- 兄弟に住宅ローンを引き継ぐ場合の注意点
- 住宅ローンの支払いが困難だけど兄弟に頼れない場合の対処法
住宅ローンは基本的に契約者本人しか返済できないため、単純に名義を兄弟へ変更することはできません。実際に引き継ぐには、兄弟が新たに借り換えをするなど、金融機関での手続きが必要になります。
さらに、引継ぎには審査や団体信用生命保険の扱い、住宅ローン控除の可否、居住要件など注意すべき点が多くあります。正しく理解せずに進めると、トラブルや税負担に繋がりかねません。
本記事では、住宅ローンを兄弟に引き継ぎたいと考えるケースや実際の可否、注意点や対処法を分かりやすく解説します。
目次 ▼
1章 住宅ローンを兄弟に引き継ぎたいケース
住宅ローンは本来、契約者本人が最後まで返済することを前提としています。しかし、様々な事情から「兄弟に引き継ぎたい」と考えるケースがあります。ここでは、代表的な例を見ていきましょう。
1-1 返済が困難になった
病気やリストラ、収入の減少などによって、これまでのように住宅ローンを返済することが難しくなるケースは少なくありません。このような状況になると、「兄弟にローンを引き継いでもらえば家を失わずに済むのではないか」と考える方もいます。
特に、家族で住み続けたい場合や実家を守りたい場合には、その思いが強くなりやすいでしょう。ただし、住宅ローンの引継ぎには後で解説する金融機関のルールや審査が関わるため、必ずしも希望通りに進むとは限りません。
1-2 地方にある実家の住宅ローンの名義を、自分から兄弟名義に変更したい
両親が住むために実家を建て替えたりリフォームしたりした際、同居し自身が住宅ローンを組んで返済しているケースがあります。しかし、その後に転勤や結婚で生活拠点が変わると、実家に住み続けられない状況になることも少なくありません。
このような時、近くに住んでいる兄弟や同居を予定している兄弟がいる場合、「兄弟が実家に住むなら、住宅ローンも名義ごと引き継いでもらいたい」と考えるのは自然です。特に地方にある実家では、管理の負担や固定資産税の支払いが重荷となるため、生活する兄弟にローンを任せたいと希望する人もいます。
1-3 名義貸しをしていた
本来は住宅ローンを組めなかった兄弟のために、自分の名義でローン契約をして実際の返済は兄弟が行っている、名義貸しのケースも存在します。名義貸しは金融機関との契約違反であり、場合によっては契約解除や一括返済を求められるリスクのある違法行為です。
しかし、現実にはマイホームを購入したい兄弟から頼み込まれたことにより、行われてしまうケースもあると考えられます。その後、収入が安定してきたことにより、住宅ローンの名義を兄弟から居住者への変更を検討する場合もあるでしょう。
2章 住宅ローンの兄弟への引継ぎは可能?
住宅ローンを兄弟に引き継ぎたいと考えても、基本的には単純に名義を変更することはできません。住宅ローンは契約者本人が返済することを前提に組まれており、金融機関が認めていない以上、兄弟にそのまま引き継ぐことはできないのです。
2-1 原則として住宅ローンは契約者本人しか返済できない
住宅ローン契約は「誰に貸すのか」を金融機関が審査したうえで成立しています。そのため、契約者以外の人が勝手に返済を肩代わりすることや、名義を変更することは認められていません。兄弟も例外ではなく、契約者本人しか返済義務を負うことはできないのです。
ただし、兄弟が連帯保証人になっている場合は例外です。契約者が返済できなくなった時には、金融機関は連帯保証人である兄弟に対して返済を請求することができます。つまり、実質的に兄弟が返済を引き継ぐ形となります。
ただし注意が必要なのは、この場合でも名義変更が行われるわけではないという点です。連帯保証人が返済を肩代わりしても、住宅ローン契約自体の名義人はあくまで元の契約者のままです。
2-2 名義変更はできないので兄弟に借り換えてもらう必要がある
住宅ローンは、契約者本人と金融機関との信頼関係に基づいて組まれているものです。金融機関は契約時に、返済能力や勤務先、物件の担保価値などを細かく審査し、「この人であれば返済できる」と判断して融資を行っています。
もし契約途中で兄弟に名義を変えるとなれば、金融機関にとっては「審査をしていない人に貸す」ことになり、大きなリスクを負うことになります。そのため、金融機関が途中での名義変更を認めることはほとんどありません。
実際に兄弟にローンを引き継いでもらうには、兄弟が改めて金融機関の審査を受け、新しいローンを組んで残債を完済する、いわゆる借り換えの手続きを取る必要があります。
2-3 住宅ローンの契約者が亡くなった場合は基本的に引継ぎは不要
住宅ローンには、契約者が死亡または高度障害になったときに保険金で残債が完済される団体信用生命保険(団信)が付帯しているのが一般的です。
団信は契約者本人にのみ適用されるため、兄弟にそのまま引き継ぐことはできません。ただし、名義人が亡くなった場合、多くのケースでは団信が適用されて住宅ローンは完済されます。この場合は金融機関に死亡連絡を行い、抵当権抹消登記を済ませればローン関連の手続きは終了し、名義変更そのものは必要ありません。
3章 兄弟に住宅ローンを引き継ぐ場合の注意点
先述の通り、住宅ローンの引継ぎとは、実際には兄弟が新たに住宅ローンを組み直す借り換えを意味します。ここでは、兄弟に住宅ローンを引き継ぐ場合の注意点を解説します。
3-1 審査に通過するとは限らない
兄弟に住宅ローンを引き継ぐには、兄弟自身が新たに住宅ローンを組むための審査を受けなければなりません。以下のような項目をチェックされる審査に通過しなければ、住宅ローンを引き継げない点に注意が必要です。
- 安定した収入や勤続年数などの返済能力
- クレジットや他の借入を含めた信用情報
- 団信に加入できるかどうか
金融機関が定める条件を満たせなければ、借り換えは認められません。特に他の借り入れが多い場合や過去に延滞がある場合、健康状態に問題があって団信に加入できない場合などは、審査に落ちる可能性が高くなります。
3-2 借り換えには費用がかかる
兄弟に住宅ローンを引き継ぐためには、兄弟が新たに住宅ローンを組み直す必要があります。住宅ローンを借り換える際には、以下のような費用を支払わなければなりません。
- 繰り上げ返済手数料・保証料
- 登記費用
- 印紙税
- 団体信用生命保険料
これらの費用を合計すると、100万円以上になることも珍しくありません。よって、兄弟に住宅ローンを引き継ぐ場合は、残債の額や借り換えのメリットと比較し、「費用を払ってでも借り換える価値があるのか」を慎重に判断する必要があるでしょう。
3-3 売却金額によっては譲渡所得税が課せられる
兄弟に住宅ローンを引き継ぐ場合は、実務上は兄弟に不動産を売却し、その代金で既存のローンを完済する形を取ることになります。この時に売却金額が購入時より高くなり利益(譲渡所得)が出た場合には、譲渡所得税が課されます。
兄弟間の売却であっても通常の売買と同じく課税対象となる点に注意が必要です。また、譲渡所得にかかる税率は、以下のように不動産の所有期間によって異なります。
- 長期譲渡所得(所有期間5年以下):20.315%
- 短期譲渡所得(所有期間機関5年超):39.63%
一方で、譲渡所得税を避けるために時価より大幅に低い価格で売却すると、その差額が贈与税の対象になることがあります。なぜなら、実際の時価との差額は、実質的に無償で財産を渡したものと判断されるためです。
親族間売買は税務署のチェックも厳しいため、安易に価格を下げて売却すればよいというものではありません。住宅ローンを引き継いだ後にトラブルに発展しないよう、専門家に相談し適切な価格で取引を行うようにしましょう。
3-4 住宅ローン控除が利用できないケースがある
兄弟に住宅ローンを引き継ぐ場合、必ずしも住宅ローン控除が適用されるとは限りません。控除を受けるには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 契約者が実際に居住する住宅であること
- 取得から6ヶ月以内に入居し継続して住み続けること
- 床面積や築年数などの基準を満たすこと
- 取得時および取得後も生計を一にする親族や特別な関係にある者からの取得でないこと
そのため、同居して家計を共にしている兄弟からの取得は対象外ですが、兄弟が別生計で暮らしている場合には控除を受けられる可能性があります。
ただし、親族間売買は形式的な取引とみなされやすいため、実際に適用されるかどうかは税務署の判断によります。住宅ローン控除を前提に引継ぎを進める場合は、必ず専門家に確認しておくことが重要です。
4章 支払いが困難だけど兄弟に頼れない場合の対処法
収入減少や支出増加などで支払いが困難になったものの、兄弟に頼れない場合は以下のような対処が必要です。
- 金融機関に相談する
- 任意売却を検討する
- 債務整理を検討する
それぞれについて詳しく解説します。
4-1 金融機関に相談する
住宅ローンの返済が難しくなった場合、まずは金融機関に相談してみましょう。金融機関は債務者が返済不能に陥ると競売や法的手続きに進まざるを得ませんが、その前に相談すれば、返済計画を見直してもらえる可能性があります。
返済が滞ってからでは交渉の余地が少なくなってしまうため、支払いが難しいと感じた時点で早めに金融機関に相談することが重要です。誠実に事情を説明すれば、これまでの返済実績や事情によっては柔軟に対応してもらえるでしょう。
4-2 任意売却を検討する
兄弟に住宅ローンを引き継ぐことが難しい場合、任意売却を検討しましょう。任意売却とは、住宅ローンの返済が滞り競売にかけられる前に、金融機関の合意を得て不動産を売却し、その代金を返済に充てる方法です。競売と違い、市場価格に近い金額で売却できる可能性があるため、残債を減らせるメリットがあります。
また、競売になれば強制的に退去させられ、売却価格も低くなりがちですが、任意売却であれば事前に話し合いながら進められるため、引っ越し時期なども比較的柔軟に調整できます。
「住宅ローンを返済できない=もうどうにもならない」と考えてしまう人もいますが、任意売却を利用すれば、競売よりも有利な条件で住宅ローン問題を整理できる可能性があります。
4-3 債務整理を検討する
兄弟にも頼れず、金融機関との返済条件の見直しでも解決が難しい場合には、債務整理を検討するのも一つの方法です。債務整理には、主に以下の3種類があります。
| 債務整理 | 内容 |
|---|---|
| 任意整理 | 弁護士や司法書士を通じて債権者と交渉し、将来利息のカットや返済額の減額を行う手続き。裁判所を通さずに進められるため比較的利用しやすい。住宅ローンは対象外となるが、他の借金を整理することで住宅ローンの返済を続けやすくなる。 |
| 個人再生 | 裁判所を通じて借金を大幅に減額してもらい、残りを原則3〜5年で返済する手続き。住宅ローン特則を利用すれば、住宅を手放さずに他の借金だけを減額できる点。住宅ローン以外の返済が重く、生活が立ち行かない人に向いている。 |
| 自己破産 | 裁判所に申し立てて全ての借金を免除してもらう手続き。返済義務がなくなるため生活を立て直しやすいが、住宅や車などの資産は手放さなければならない。住宅ローンの返済が不可能な場合の最終手段。 |
状況に応じて最適な方法は異なるため、弁護士・司法書士などの専門家に相談して自分に合った解決策を選ぶことが重要です。
5章 借金が原因で住宅ローンの返済が苦しいなら弁護士・司法書士に相談しよう
カードローンや消費者金融からの借入など、住宅ローン以外の借金が原因で返済が苦しくなるケースは少なくありません。住宅ローンを支払いたくても、複数の返済が重なると生活が立ち行かなくなることがあります。
このような場合には、一人で抱え込まずに弁護士・司法書士へ早めに相談することが大切です。専門家に相談すれば、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理の手続きを通じて、返済額の軽減や返済計画の見直しが可能になります。
特に個人再生の住宅ローン特則を利用できれば、住宅を手放さずに他の借金だけを大幅に減額することも可能です。逆に、すでに住宅ローンの支払い自体が困難であれば、自己破産によって借金を帳消しにして生活を再建する選択肢もあります。
借金問題を放置してしまうと、遅延損害金の発生や競売など、取り返しのつかない事態に発展しかねません。住宅を守りたい方も、生活を立て直したい方も、早めに専門家へ相談しましょう。
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まとめ
住宅ローンを兄弟に引き継ぎたいと考えても、名義を直接変更することはできず、兄弟が新たにローンを組んで借り換える必要があります。 その際には金融機関の審査や費用、税金などの負担が発生するため、簡単に実現できるものではありません。
また、兄弟への引継ぎが難しい場合でも、任意売却や金融機関との交渉、債務整理など、状況に応じた解決策は存在します。重要なのは、返済が苦しいと感じた段階で放置せず、早めに対応することです。もし適切な対応が分からない場合は、弁護士・司法書士に相談しましょう。
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