会社倒産時に従業員は全員解雇になる?タイミングや流れについて

   司法書士市川有美

監修者:グリーン司法書士法人   市川有美
【所属】大阪司法書士会 登録番号大阪第4555号 【保有資格】司法書士

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会社倒産時に従業員は全員解雇になる?タイミングや流れについて

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会社の倒産は経営者だけでなく、従業員にとっても深刻な影響を及ぼします。倒産の際、会社は従業員の取り扱いを、法的な枠組みの範疇で適切に行わなければなりません。

従業員の解雇は、倒産手続の一環として行われることが一般的ですが、すべての従業員が自動的に解雇されるわけではありません。今回の記事では、会社倒産時に従業員は全員解雇になるのかや、タイミングや流れについて解説します。

1章 会社倒産時の従業員の取扱い

会社が倒産する場合、従業員は基本的に解雇されます。これは、会社の財産不足により事業活動が継続不可能になった結果として、雇用契約が解消されるためです。このような解雇は、適切な法的手続を踏むことにより、解雇権の濫用とはみなされません。

会社倒産時の従業員の取扱いにおいては、従業員は基本的に解雇されますが、法的手続を遵守することで解雇権の濫用には当たらないとされています。

ただし、従業員へのダメージを最小限に抑えるため、未払賃金の立替払制度の利用や社会保険関連の諸手続への案内が重要です。未払賃金立替払制度では、国が未払賃金や退職金の一部を立て替えて支払い、従業員の生活を支援します​​。

倒産を従業員に告知するタイミングは、解雇通知と密接に関係しています。

原則として倒産直前に告知することが求められますが、必要に応じて重要な社員には先に説明することもあるでしょう。これは、倒産の事実が早期に広まると混乱を招く可能性があるためです​​。

最終的に、倒産手続における従業員への対応は、経営者の責任となります。適切な手続と十分な情報提供により、従業員への影響を軽減し、企業の社会的責任を果たす姿勢が必要です​​​​​​​​。

なお、倒産とはどういうことか、廃業や破産との違いなどを以下の記事でくわしく取り上げていますので、ぜひ参考にご覧ください。

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2章 会社倒産にあたり従業員を解雇すべきタイミング

会社が倒産する際、従業員を解雇すべきタイミングは、破産手続開始前が推奨されます。これは、破産手続が開始されると解雇に関わる手続が複雑化し、破産管財人が関与することになり、余分なコストが発生するためです。

従業員は破産手続開始前に解雇されることで、債権者の一員となり、未払賃金等の請求が可能になります。

なお、従業員への解雇通告が早すぎると、一部の債権者に倒産の情報が漏れ、早急に回収に動くなどのリスクがあるため注意しなければなりません。そのため、従業員に解雇通告するのは、なるべく申立てに近いタイミングが賢明です。

破産手続開始後に従業員を解雇しなければならない場合は、例外的な状況下でのみ考慮されます。これには、情報漏洩の防止、手続における支障の回避、または破産管財業務の遂行に必要な従業員の協力が必要な場合などが考えられます​​。

なお、法人の破産については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。

2-1 破産手続開始後も従業員の雇用を継続すべきケース

例外的な状況下では、会社破産後も一部の従業員の雇用を継続することが望ましい場合があります。これは、破産手続の円滑な進行を確保するためや、特定の業務の遂行や情報の管理が継続的に必要とされる場合に限られます​​。

特に、破産管財人と協力して破産財団の管理や清算業務を行う必要がある場合、破産申立後も一部の従業員を雇用することは、手続の効率化や資産価値の最大化に寄与します。このようなケースでは、従業員を一時的に再雇用することが適切な対応となるでしょう。

破産手続の完了後、従業員は新たな雇用を探す過程で、解雇予告手当や未払賃金立替払制度などの支援を受けることができます。これらの支援は、従業員が次の就職先を見つけるまでの経済的負担を軽減するためのものです。

従業員の解雇や賃金の取り扱いに関する詳細情報や助言が必要な場合は、専門家への相談が推奨されます。専門家のアドバイスを受けることで、適切な手続を踏み、法的なリスクを最小限に抑えることができます​​。

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3章 会社倒産にあたり従業員を解雇する流れ

会社倒産に際して従業員を解雇する際の手続は、適切に行われる必要があります。手順としては、以下の6つのステップで進めます。


STEP① 従業員向けの説明会を開催する
STEP② 解雇通知および解雇予告手当を支給する
STEP③ 未払賃金および退職金を債権者一覧表に計上する
STEP④ 雇用保険の手続を行う
STEP⑤ 社会保険の手続を行う
STEP⑥ 貸与品の回収・私物の持ち帰りを依頼する
STEP⑦ 源泉徴収票の作成を行う

STEP① 従業員向けの説明会を開催する

倒産前に全従業員に対する説明会を開催し、会社の状況を伝えます。この説明会では、以下の4つのポイントを伝えるのが重要です。

  • 会社が事業を廃止することを決断し破産の申立てを行うこと
  • 全従業員を解雇すること
  • 従業員の給料、退職金、解雇予告手当に関しての説明
  • 雇用保険や社会保険の手続についての説明

基本的には従業員に個別(五月雨式)ではなく、同時に同じ内容の情報を伝えることが望ましいです。噂や憶測が広がると全従業員の解雇がスムーズにいかなくなるからです。

ただし例外として、重要な役職にある従業員には、全体の説明会に先立って個別に情報を提供する場合があります。これにより、手続の円滑化や必要な業務の引継ぎを効率的に進めることが可能です​​。

STEP② 解雇通知および解雇予告手当を支給する

解雇通知は、通常であれば法律で定められた解雇予告期間(通常30日前)を守って行う必要があります。予告期間が短い場合は、その不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません​​​​。

しかしながら、倒産時は即日解雇が一般的です。なぜなら、即日解雇は「離職票」などを速やかに発行できるため、解雇された従業員が失業保険を直ちに受給できるからです。

なお、即日解雇では30日の解雇予告期間は設けないため、会社は各従業員に対して、平均賃金額の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。

STEP③ 未払賃金および退職金を債権者一覧表に計上する

倒産する場合も、会社には従業員に解雇時までの給料を支払う義務があります。解雇時にその日までの給料を、すぐに支払えるのであれば、「未払賃金はない」状態です。

しかし、多くの倒産において、最後のひと月程度の給料を支払うことができないまま、破産の手続を始めることになります。その場合、破産申立の際に未払賃金を「労働債権」として、債権者一覧表に計上し、裁判所に提出します。

未払賃金のうち、破産手続の開始前3ヶ月間の給料分は財団債権に分類されます。これは優先的破産債権で、一般の破産債権よりも優先されるものです。また、就業規則や退職金規程により、退職金が発生している従業員については、退職金額を計算し、債権者一覧表に計上します。

未払賃金と退職金は、本来破産手続において、破産管財人から「財団債権」または「優先的破産債権」として支払を受けるものです。ただし、支払を受けるためには、会社の保有資産がある程度換価され、原資が形成されるまで待たなければなりません。

とはいえ、解雇された従業員が破産管財人からの支払を待つ間に生活に困窮してしまう可能性があります。そこで、国の制度として未払賃金および退職金の一部を立替払する制度「未払賃金立替制度」が用意されています。

STEP④ 雇用保険の手続を行う

解雇(会社都合の退職)においては、自己都合の退職で設けられる給付制限の期間がありません。解雇により失業した従業員は雇用保険の失業給付を、速やかに受給できます。

手続は、平常時に従業員が退職した際と同様です。会社は、解雇された従業員が失業給付を滞りなく受給できるよう、雇用保険被保険者の「離職証明書」および「資格喪失届」をハローワークに提出し、「離職票」の発行を受けます。

従業員が雇用保険の失業給付の申請手続をするために、ハローワークが発行した離職票を従業員に交付しなければなりません。

しかし倒産後の事業所が閉鎖されており、従業員に離職票を直接交付できないので、破産申立代理人(弁護士)の事務所から従業員宅に郵送等で交付することになります。

STEP⑤ 社会保険の手続を行う

解雇された従業員は、社会保険被保険者の資格を喪失します。会社は、従業員の保険証カード(被扶養者がいればそのカードも)を回収したうえで、日本年金機構に資格喪失届と一緒に提出します。

従業員が社会保険の資格を喪失後に、健康保険を使用するための選択肢は以下の3つです。いずれを選択するかは従業員が個々に決めることとなります。

  • 国民健康保険に加入する
  • 社会保険を任意継続する
  • 家族の社会保険の被扶養者になる

STEP⑥ 貸与品の回収・私物の持ち帰りを依頼する

会社は解雇した従業員に貸与した物品があれば、回収を行います。また、従業員が会社で私物を保管していた場合に、持ち帰りを依頼します。

この一連の作業は、会社と従業員の双方の財産を保護し、事業の清算プロセスを円滑に進めるために欠かせません。貸与品のリストを作成し、双方で確認することが望まれます。

STEP⑦ 源泉徴収票の作成を行う

解雇された従業員の源泉徴収票を作成し、交付します。源泉徴収票は、所得税の確定申告を行うための必要書類です​​。

源泉徴収票の作成は、年間の給与所得と税金の源泉徴収額を記載するもので、正確な記録および計算が求められます。従業員が将来の、税務上のトラブルを避けるためにも重要です​​。

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4章 倒産により従業員への給料・退職金の支払いが難しいときの対処法

倒産や経営難は、従業員にとって給料や退職金の不払いという深刻な問題を引き起こします。このような状況で従業員の権利を守るためには、いくつかの公的支援制度の活用が考えられます。

ここでは、特に中小企業の従業員が利用できる「中小企業退職金共済制度」と「未払賃金立替払制度」に焦点を当て、それぞれの制度の利用方法とメリットについて解説します。

4-1 中小企業退職金共済制度を利用する

中小企業退職金共済制度(中退共制度)とは、中小企業の従業員に退職金制度のメリットを提供するための国の支援制度です。この制度は、事業主の相互共済と国の援助によって運営されています。

掛金納付後の退職金の支払いは、従業員が退職時に直接、独立行政法人勤労者退職金共済機構から受け取ります。受取方法は一時金、分割受取、またはその併用が選択可能です​​​​。

中退共制度には、退職金だけでなく、提携サービスによる福利厚生の充実や、通算制度による退職金額の増額など、従業員にとって多岐にわたるメリットがあります。また、事業主にとっては掛金が経費として全額計上できるため、経済的負担を軽減しつつ従業員への福利厚生を提供できます。

なお、倒産時の退職金については、以下の記事で特集していますので、ぜひ参考にご覧ください。

4-2 未払賃金立替払制度を利用する

未払賃金立替払制度は、倒産等により賃金や退職金が支払われない労働者に対し、その未払賃金の一部を国が立て替えて支払う制度です。この制度は、労働基準監督署及び独立行政法人労働者健康安全機構によって実施されています。

立替払いを受けるための要件として、事業主が1年以上事業活動を行っており、法律上の倒産または事実上の倒産が発生していることが挙げられます。また、労働者は倒産した日から2年以内に退職している必要があります​​​​。

立替払いの対象となるのは、退職日の6ヶ月前から立替払い請求日の前日までに支払期日が到来している未払賃金と退職手当です。未払賃金の総額が2万円未満の場合は、対象外となります。

立替払いされる額は、未払賃金の額の80%で、退職時の年齢に応じて限度額が設けられています。立替払を行った場合、独立行政法人労働者健康安全機構が賃金債権を代位取得し、事業者に請求します​​​​。

年齢別の未払賃金立替限度額は以下のとおりです。なお、このルールは2024年2月現在のものであり、今後変更される可能性があるのでご注意ください。

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退職日における年齢未払賃金総額の限度額立替払の上限額
45歳以上370万円370万円×0.8=296万円
30歳以上45歳未満220万円220万円×0.8=176万円
30歳未満110万円110万円×0.8=88万円

たとえば、退職日に33歳の人で未払賃金が200万円の場合は、立替払額160万円です。退職日に33歳の人で未払賃金が300万円の場合は、未払賃金総額の限度額220万円を基準に立替払額176万円となります。

出典:未払賃金立替払制度の概要|独立行政法人 労働者健康安全機構

なお、会社倒産時の未払賃金立替払制度に関しては、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、参考にご覧ください。

会社倒産時も未払い分の給料は受け取れる?未払賃金立替払制度とは(未公開)

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まとめ

会社の倒産は、従業員にとって重大な転換点となります。倒産手続において従業員の解雇が避けられない場合でも、法的な枠組みに従って公正に行われるべきです。

給料や退職金の未払いに直面した従業員は、中小企業退職金共済制度や未払賃金立替払制度などの公的支援を利用できる場合があります。これらの制度は、従業員が経済的な困難から回復するための重要なサポートとなりえます。

会社の倒産と従業員の解雇は複雑なプロセスですが、適切な準備と対応によって、その影響を最小限に抑えることが可能です。司法書士などの専門家に法人破産を依頼すれば、おおむね手続を任せられるので、従業員問題などに集中できます。

倒産を決めたものの、従業員への影響を最小限にしたい場合や、丁寧に解雇について説明したい場合は、できるかぎり専門家に相談して進めていきましょう。

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