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- 動産執行(差押え)の流れを5ステップで解説
- 動産の差押えにかかる費用とその金額
- 動産執行で差押えの対象になるものとならないもの
債務者が長期間にわたって滞納を続けた場合、債権者には強制執行をおこなう権利があります。強制執行では銀行口座や給与の差押えといった債権執行が一般的ですが、債権者は動産執行も選択できます。
動産執行とは、債務者の現金や骨董品、宝石類などを差押え、それらを売却して債権を回収するための手続きです。ただし、動産執行を検討している債権者の中には、「どのような流れで進めれば良いのかわからない」「費用倒れにならないか心配」と不安な人もいるのではないでしょうか。
本記事では、動産執行の流れや必要な費用を解説します。差押えの対象になるものについても説明しているので、債権の回収に困っている人はぜひチェックしてください。
目次 ▼
1章 動産執行(差押え)の流れを5ステップで解説
動産執行による債権回収の流れは、以下のように5つのステップで進みます。
- 債務名義(判決など)を得る
- 裁判所に必要書類を提出する
- 裁判所の執行官と打ち合わせをする
- 債務者の自宅に訪問して動産を差し押さえる
- 差し押さえた動産を売却する
ここでは、それぞれの手順の内容を詳しく解説します。
STEP1 債務名義(判決など)を得る
動産執行をする際には、事前に債務名義を取得しなければなりません。債務名義とは、動産執行の申し立てをおこなう際に必要な文書です。債権回収の権利の強制的な行使を、裁判所が認めた場合に発行されます。債務名義には、以下のような種類があります。
- 確定判決
- 仮執行宣言付判決
- 仮執行宣言付支払督促
- 執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)
- 仮執行宣言付損害賠償命令
- 仮執行宣言付届出債権支払命令
- その他確定判決と同一の効力を有するもの
さまざまな種類がありますが、債務名義の約8割を占めるのが確定判決です。確定判決は裁判によって得られるため、動産執行をおこなう際は訴訟が必要なケースが多いです。
STEP2 裁判所に必要書類を提出する
債務名義を取得したら、以下のような必要書類を裁判所に提出して動産執行の申し立てをおこないます。
- 動産執行申立書
- 債務名義の正本
- 送達証明書
- 執行場所の略図
- 委任状(弁護士・司法書士に依頼する場合。司法書士の場合は少額訴訟のみ)
- 発行から3か月以内の法人の資格証明書(法人のみ)
提出書類に不備があると手続きが滞るので、慎重に準備する必要があります。また、申し立てをする際は予納金を支払わなければなりません。予納金の金額は手続き内容などによって異なるため、担当者に確認して申し立て前までに用意しましょう。
STEP3 裁判所の執行官と打ち合わせをする
動産執行の申立書を提出して受理されると、裁判所の執行官との打ち合わせをおこないます。事前の打ち合わせで決める内容は以下の通りです。
- 動産執行の実施日時
- 債務者の住所
- 動産執行の手順
- 開錠業者や運搬業者などの業者の手配要否
事前に打ち合わせをしておくことで、差押え当日に債務者の家に入れないなどのトラブルが起きにくくなります。
STEP4 債務者の自宅や店舗に訪問して動産を差し押さえる
打ち合わせ通りに執行官と集合したら、債務者の自宅や店舗に乗り込みます。この際、原則として中に入ることができるのは執行官のみです。債権者や代理人である弁護士・司法書士は入室が認められていないため、執行官から報告を受けて動産を差し押さえるかどうかを判断する流れになります。
執行官が差押えを実行する際に必要と判断した場合、施錠された扉や金庫を強制的に開錠できます。また、債務者が不在の場合でも、執行官はこれらの措置を講じて動産執行を実施可能です。
STEP5 差し押さえた動産を売却する
差し押さえた動産は、以下の方法で執行官が売却までおこないます。
- 買取業者に買い取ってもらう
- 債権者が自分で購入する
ブランドバッグや貴金属、高価な絵画・彫刻などを差し押さえた場合、買取業者に買い取ってもらうのが一般的です。現金を受け取れるため、売却金額で債権を回収できます。
また、差し押さえた動産によっては、執行官が評価した価格で債権者が自ら購入するケースもあります。動産の評価額と相殺するかたちで、債権を回収しているのです。債権者が現金化したい場合は、買い取った動産を自身で売却することになります。
2章 動産の差押えにかかる費用
現金や骨董品、宝石類などを差し押さえて弁済に充てる動産執行では、以下のような費用が発生します。
- 予納金
- 開錠業者への謝礼
- 弁護士・司法書士への報酬
ここではそれぞれの金額を説明するので、「どのくらいの費用が必要かわからない」「債務者からの回収額より費用が高くならないか心配」という人はぜひチェックしてください。
2-1 予納金
予納金は裁判所に動産執行を申し立てる際に支払うお金で、執行官が動産を差し押さえる際に必要な費用に充てられます。予納金の金額は動産執行の規模によっても異なりますが、3万円~5万円程度が一般的です。
手続きでは動産の差押えや売却に必要な費用を予納金として事前に支払っているため、動産執行完了後に余りがある場合は返金されます。
2-2 開錠業者への謝礼
差押えを実行する際、債務者が不在だったり、ドアに鍵がかかっていたりするかもしれません。そのようなケースでは、執行官が開錠業者を手配して物件内に立ち入ることが認められています。開錠業者への謝礼は債権者が負担する必要があり、8千円~3万円程度が相場です。
開錠業者への謝礼の金額は、実際に開錠作業が必要になったかどうか、開錠の難易度などによって異なります。
2-3 弁護士・司法書士への報酬
動産執行の手続きは複雑で手間と時間がかかるため、弁護士・司法書士に依頼するのが一般的です。専門家に依頼することで書類作成や執行官との打ち合わせをサポートしてもらえます。弁護士・司法書士への報酬額は、依頼内容や弁護士・司法書士の報酬基準によって異なりますが、10万円~30万円程度です。
3章 動産執行で差押えの対象になるものとならないもの

差押えが認められるのは換金性があり、売却後に債権回収が見込めるものに限られます。たとえば、貴金属やブランド品は高値がつきやすいため、動産執行による差押えの対象です。
一方で衣類や家具、家電といった日常生活に欠かせなないものは差押えの対象から外れています。また働けなくなると債務者は収入源を失ってしまうため、仕事で使う道具も差し押さえられません。債権者としては一番差し押さえたい現金も、66万円以上自宅に置いている人は少ないでしょう。
なお、車は車種や登録状況によって動産執行の対象かどうかが変わります。軽自動車や未登録の自動車(ナンバーなし)は、動産執行の対象です。一方で、登録を受けている自動車は動産執行の対象外なので、差し押さえたい場合は自動車執行という別の手続きが必要になります。
4章 動産執行をするなら弁護士・司法書士に相談しよう
動産執行は未払いの家賃や売掛金などを回収するのに役立つ手続きですが、必要書類の準備や執行者との打ち合わせなどが必要で個人でおこなうのは難しいです。もし不備があり、手続きに時間がかかっている間に債務者が債務整理をすれば、債権を回収できなくなる恐れがあります。そのため、動産執行をするなら動産執行に詳しい弁護士・司法書士に相談しましょう。
また、動産よりも給与や預金口座といった債権を差し押さえる債権執行の方が、家賃や売掛金を回収できる可能性が高いケースも多いです。専門家に相談すれば動産執行と債権執行のどちらが効果的かのアドバイスも受けられるため、有効な選択肢を選べます。
なお、グリーン司法書士法人でも、動産執行や債権執行のサポートをおこなっております。債権回収に困っているなら、まずは無料相談に申し込んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
債権を回収する方法の選択肢である動産執行の流れや、必要な費用について解説しました。動産執行の流れは以下の通りです。
- 債務名義(判決など)を得る
- 裁判所に必要書類を提出する
- 裁判所の執行官と打ち合わせをする
- 債務者の自宅に訪問して動産を差し押さえる
- 差し押さえた動産を売却する
動産執行を自力でおこなうは不可能ではありませんが、必要書類の準備や執行官とのやり取りなどが必要で膨大な時間と労力がかかります。そして専門的な知識や経験が求められる経験も多いため、動産執行をする際は弁護士・司法書士に相談しましょう。
10万円~30万円の費用を支払う必要はありますが、弁護士・司法書士に相談すれば、預貯金や給与を差し押さえる債権執行も含めて最適な方法を提案してもらえます。
グリーン司法書士法人では、経験豊富な司法書士が動産執行の準備から実行までをトータルでサポート可能です。無料相談も実施しているので、お気軽にお問い合わせください。
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