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不動産を競売にかけた場合、必ず買い手が見つかるわけではなく、売れない場合もあります。
競売で売れない場合は、手続は取り消しとなり、債務も残ったままとなってしまいます。
では、競売で売れないまま残った不動産や債務は最終的にどうなるのか、差し押さえられた家からは追い出されるのでしょうか。
そこで、競売で売れない不動産と債務の行方について、次の3つの章に分けて詳しく説明していきます。
- 不動産競売の流れ
- 特別売却とは
- 競売で売れない場合の対処法
不動産を競売にかけられたものの、売れなければ引き続き自宅に住むことができるのか気になる方は、この記事を参考にされてください。
目次 ▼
1章 不動産競売の流れ
通常の不動産競売は、一般的に「期間入札」のことであり、最も「高額」の入札者が「落札」できる仕組みになっています。
期間入札は、次の「流れ」で手続が進みます。
- 入札
- 開札
- 最高値を提示した人が落札
- 裁判所による売却許可決定
- 買受人による代金支払い
- 所有権移転・不動産引渡し
期間入札で落札者が存在せず、売れなかった場合には競売は成立しません。
経済的な理由を抱えている方は買い手が見つからなかったことに不安な状態が続きますが、競売不成立で終わりではなく、次の「特別売却」へと移ります。
2章 特別売却とは
一般的な競売は「期間入札」のことであり、最も高い金額で入札した方が落札者となります。
しかし入札者がおらず、不動産が売れない場合には次の「特別売却」へ移行します。
「特別売却」とは、入札または競り売り以外の特別な売却方法であり、期間入札で不動産を買い受ける申し出がなく、売れない場合にのみ行います。
なお、裁判所があらかじめ提示した「売却基準価額以上」の金額でなければ落札できないルールとなっているため、破格といえる低値で早い者勝ちできるわけではありません。
特別売却は合計3回の入札期間が設けられますが、以下の回数ごとの手続で売れない場合はどうなるのか説明していきます。
- 1回目の手続で売れない場合
- 2回目の手続で売れない場合
- 3回目の手続で売れない場合
2-1 1回目の手続で売れない場合
1回目の期間入札で誰からも入札がなく、特別売却に移行しても買い受けたい人があらわれなかった場合、裁判所は「売却基準価格」と「買受可能金額」を見直します。
1回目の売却基準価格と買受可能金額を2~3割程度下げて、「2回目」の期間入札へ移行します。
2-2 2回目の手続で売れない場合
2回目の期間入札と特別売却でも買受人があらわれなかった場合、裁判所は「再度」売却基準価格と買受可能金額をさらに2~3割程度下げます。
「3回目」の期間入札へと移行する流れです。
2-3 3回目の手続で売れない場合
3回目の期間入札と特別売却でも買受人があらわれなかったときには、売れる見込みのない物件であると裁判所に判断されます。
裁判所や債権者も手の施しようがない状態と判断するため、競売手続は「取り消し」となります。
3章 競売で売れない場合は住み続けられる
競売で売れない場合、買い手がいなかったため、引き続き自宅に住むことはできるでしょう。
「特別売却」は、入札期間に最もはやく入札書を提出した方が買い受けできる仕組みとなっているため、早いもの勝ちならすぐに落札されると考える方もいるかもしれません。
しかし実際には、「期間入札」で売れない訳有り物件と「懸念」される可能性があります。
たとえば、
- 心理的瑕疵がある
- 複雑な権利関係になっている
- 持分売りで使用・収益化が難しい
など様々な「事情」により売れない不動産も存在します。
ただし債務はそのまま残るため、債権者から返済を請求され続けることとなり、再度競売を申し立てられたり、訴訟など提起されて給与の差押えを受けたりする可能性があります。
そのため返済が難しいという場合には、次の3つの「対処法」を検討していく必要があります。
- 任意売却
- 親族による競落
- 破産手続き
それぞれどのような方法か説明していきます。
3-1 任意売却
「任意売却」とは、住宅ローンなどの支払いができなくなったとき、債権者の「了承」を得て一定条件で不動産を売却することです。
競売は債権者であればいつでも取り下げが可能となっているため、競売回避の方法としても活用される方法ですが、債権者と協議して「合意」を得ることが必要となります。
任意売却は競売と「同時進行」することが前提となる上に、ローンを3~4か月程度滞納し、保証会社の「代位弁済」があった後でなければ本格的な交渉ができません。
さらに債権者と協議を開始すれば競売が停止するわけでもなく、代位弁済の2~3か月後には裁判所から「競売開始決定通知」が届きます。
その後、競売で入札があれば任意売却に応じて貰うことは難しくなるため、売却前に手続を完了させなければならない時間との勝負であると留意しておきましょう。
なお、任意売却であれば物件購入者と引っ越しのタイミングなど交渉できるため、すぐに追い出されることはありません。
売却代金から10~20万円程度の「引っ越し代」を捻出することを認めてもらえる場合もあります。
3-2 親族による競落
債権者から任意売却の合意を得ることができなかった場合や、現在の家を手放したくないという場合には、「親族」に競落してもらうことも方法として挙げられます。
親族に競売で競り落としてもらい、その後、親族から家を借りて住むという方法です。
競売は入札形式で買受人が決まるため必ずしも親族が購入できるかはわかりませんが、過去の類似物件の同程度の落札価格を提示できるのなら、競落できる可能性はあります。
競売は、裁判所の「BIT 不動産競売物件情報サイト」に過去3年分の入札結果が公表されています。
最低売却価格と落札価格が開示されているため、どのくらいの金額であれば落札の可能性があるか推測できます。
3-3 破産手続
競売で売れず、任意売却や親族による競落も望めない場合でも、債務者は貸したお金の回収はあきらめることなく、引き続き債務を返済するように請求されます。
給料や動産など、自宅以外の資産を差し押さえられたり訴訟を提起されたりといった可能性もあるため、支払いができない状態なのであれば最終的に「破産手続」を検討していくことも必要です。
「自己破産」は、裁判所に借金返済能力がないことを認めてもらい、借金の支払い義務を免除してもらう手続です。
借金の支払い義務はなくなるものの、自宅を自由に売買することはできなくなるため、任意売却など検討するのなら自己破産手続前に専門家に相談してください。
まとめ
競売は、高い金額を提示した方が落札できる期間入札を行い、売れない場合には最も早い入札者が落札できる特別売却へ移行します。
それでも売れない場合は、価格を下げて同じ手続を3回繰り返し、最終的には手続が取り消されます。
競売が取り消された場合、自宅は手元に残ったとしても借金も残るため、返済を請求され続ける苦しい生活のまま何も解決できません。
たとえ自宅を手放したくない気持ちがあっても、望ましい結果とはいえないため、このような状態に陥る前に「任意売却」を検討することをおすすめします。
グリーン司法書士法人では、任意売却に関する相談も無料で受け付けています。
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よくあるご質問
- 競売で売れない場合はどうなる?
- 期間入札で落札者が存在せず、売れなかった場合には競売は成立しません。 経済的な理由を抱えている方は買い手が見つからなかったことに不安な状態が続きますが、競売不成立で終わりではなく、次の「特別売却」へと移ります。
- 自己破産のデメリットとは?
- 自己破産のデメリットは、主に下記の通りです。
・持ち家や車などの資産を失う可能性が高い
・自己破産後はブラックリストに登録されてしまう
・住所・氏名が官報に掲載される
・連帯保証人・保証人は返済義務がなくならない
・自己破産手続き中は一部の職業が制限される
・自己破産手続き中は引っ越しや旅行に制限がかかる
・自己破産手続き中郵便物を管理される
自己破産のデメリットについて詳しくはコチラ
- 競売物件購入で起きやすいトラブルとは?
- 今日入物件購入時には、下記のトラブルに注意しなければなりません。
・多額のリフォーム費用がかかる
・残置物の撤去に手間がかかる
・債務者がなかなか退去してくれない
上記のリスクを理解した上で競売物件を購入することが大切です。