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多くの人にとって、一生のうちで最も高額な買い物は「住宅」ではないでしょうか。
ライフステージが上がるタイミングで住宅を購入する方も多いかと思います。
一方、住宅ローンは35年ほど払い続けるものですので、借入れをしたときとは状況が変わり、払い続けることができなくなってしまうケースもあるでしょう。そのような状況を「住宅ローン破綻」と呼びます。
フラット35などを提供している、住宅金融支援機構の「統合報告書2023」(※)によると、リスク管理債権(破綻先債権、延滞債権、3ヶ月以上の延滞債権、貸出条件緩和債権)の割合は約3%。つまり100人に3人は住宅ローン破綻に陥っているということです。
※参照:住宅金融支援機構「統合報告書」https://www.jhf.go.jp/files/400366714.pdf
住宅ローン破綻に陥ってしまうと、競売にかけられてしまい、家を失ってしまうリスクがあります。
この記事では、
- 住宅ローン破綻とはなにか
- 住宅ローン破綻に陥る原因
- 住宅ローン破綻しないための対策
- 住宅ローン破綻したときの対策
などについて解説します。
目次 ▼
1章 100人に3人が陥る「住宅ローン破綻」とは?破綻したらどうなる?
住宅ローン破綻とは、経済的に住宅ローンの支払いができない状況陥ってしまうことを言います。
住宅ローンは20〜35年返済し続けるものですので、借入時と状況が変わり支払いができなくなってしまうケースも少なくありません。
フラット35などを提供している、住宅金融支援機構の「統合報告書2023」(※)によると、リスク管理債権の割合は約3%。つまり100人に3人は住宅ローン破綻に陥っているということです。
令和2年度〜令和4年度のリスク管理債権 | |
---|---|
令和2年度 | 3.32% |
令和3年度 | 3.17% |
令和4年度 | 3.05% |
※参照:住宅金融支援機構「統合報告書」https://www.jhf.go.jp/files/400366714.pdf
では、住宅ローン破綻に陥ってしまうとどうなるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
1−1 滞納した分に遅延損害金が上乗せされる
支払いが1日でも遅れると、遅延損害金が発生します。遅延損害金は年率14〜15%と高い傾向があり、滞納が続けば高額になってしまうでしょう。
遅延損害金の計算方法は以下のとおりです。
遅延損害金=滞納額×1日あたりの遅延利率【利率÷365日※】×延滞日数
※閏年の場合は366日
例えば、返済予定額2,000万円を、30日滞納した場合の1ヶ月(30日)あたりの遅延損害金(年率15%)は以下のようになります。
2,000万円×15%÷365日×30日=約24万6,575円
上記のように、住宅ローンの返済を滞納し続け一括返済を求められた場合、元金に対して遅延損害金が発生します。
遅延損害金は20万円を超えるため、月々のローン返済額よりも高額になってしまい、自力での解決はほぼ不可能となるでしょう。
1−2 住宅が競売にかけられる
住宅ローンを滞納し続けると、金融機関から督促や催促を受けますが、それをも無視していると、不動産が強制的に競売にかけられてしまいます。
住宅ローンを組む際に不動産に抵当権が設定されており、金融機関が住宅ローンの回収が難しいと判断したら、強制的に売却してその売却益を住宅ローンに充てられる権利を持っているからです。
なお、競売では相場よりも安い金額で売却される傾向があります。そのため、可能であれば競売にかけられる前に自身で家を売却する(任意売却)判断をするのがよいでしょう。
任意売却であれば、相場に近い金額で売却できる可能性が高まります。なお、グリーン司法書士法人にはグループ内に不動産会社を有しています。
借金トラブルの解決策も考えながら、不動産を有利に売却できるようサポートすることも可能ですので、ぜひご相談ください。
1−3 売却しても残債がある場合、一括請求される
競売にかけられた場合でも、任意売却をした場合でも、売却益で住宅ローンがすべてまかなえなかった場合、その残債が請求されます。
金融機関にもよりますが、残債の請求は一括請求であることがほとんどです。
残債を支払えない場合には自己破産など債務整理をするしかなくなってしまいます。
2章 住宅ローン破綻してしまう原因
住宅ローン破綻に陥る原因として挙げられるのは、以下の4つです。
- 収入が減った
- 定年を超えても住宅ローンが終わっていない
- 金利が上がった
- 世帯収入が減った
原因を知ることで、「住宅ローン破綻してしまうかも…」と感じている方も、自身の状況を見つめ直すきっかけになるでしょう。
詳しく解説します。
2−1 収入が減った
住宅ローン破綻の原因として多いのが、収入の減少です。
失業や転職、病気などを原因に収入が減ってしまうこともあるでしょう。
最近では、新型コロナウイルスの影響で仕事を失ってしまう人も急増しました。
住宅ローンを組んだ時には払えると思っていても、住宅ローンの支払いは20年〜35年と長いですので、その期間に収入の状況が変わり、支払いが続けられなくなることもあります。
2−2 定年を超えても住宅ローンが終わっていない
住宅ローンは長くて35年。例えば35歳でローンを組んだのであれば、完済するのは70歳です。
多くの人は65歳で定年しますので、この場合、定年から先5年も支払いを続けなければいけません。
年金暮らしは、正社員として働いてきたときよりも収入が減少しますので、定年後十分な蓄えが無いことで、住宅ローンの支払いが困難になってしまうケースは多くあります。
2−3 金利が上がった
変動金利で住宅ローンを組んでいる場合、金利の上昇に伴い返済額が上がることがあります。
2000年頃からかなりの低金利が続いています。近年、大幅に金利が上がることはありませんでしたが、今後経済状況によっては急激に上昇する可能性は否めません。
万が一、将来金利の急上昇が起こった場合にはそれが原因で住宅ローンが支払えなくなることがあります。
2−4 世帯収入が減った
婚姻中は共働きであったものの、離婚したことで自身の収入だけになり、住宅ローンが支払えなくなるケースもあります。
また、奥様が妊娠・出産によって産休・育休を取っている期間は収入が6割程度になるため、それによって世帯収入が減ることもあるでしょう。
ローンを組むときに、「2人で働けば払える」と背伸びをして借入れをしてしまうと、もしものときに支払いができなくなってしまいますので、ローンを契約している人が「1人の収入でも払える」だけの返済額に抑えておくことが大切です。
3章 住宅ローン破綻しないための対策
これから住宅ローンを組もうと考えている方は「将来住宅ローン破綻するのでは」と不安もあるかと思います。
住宅ローンを組む際には以下のことを心がけることで、住宅ローン破綻を予防することができるはずです。
- しっかりと返済のシミュレーションをする
- 固定金利でローンを組む
- ボーナス返済は避ける
- 余裕があるときに繰り上げ返済をしておく
- なるべく定年前にローンが終わるように計画する
ここでは、住宅ローン破綻しないための対策について解説します。
3−1 将来のことも考えてしっかりと返済のシミュレーションをする
住宅ローンを組む際には、しっかりと返済シミュレーションをしておくことが大切です。
「今の収入なら、月々10万円返済することができる」と、その金額でローンを組んでしまうと、定年したときや世帯年収が減ったときに対応することができなくなってしまいます。
今払える金額のギリギリでローンを組むのではなく、以下のように将来発生しうることも想定してシミュレーションすることが大切です。
- 失業や休職(失業保険や傷病手当の受給での生活)
- 妊娠・出産による配偶者の収入の減少
- ボーナス返済は避ける
- 子供の養育費の増加(大学の学費や仕送り、留学費用など)
- 定年後の収入(年金)
上記のことも考えた上で、少し余裕を持って支払額を決定するようにしましょう。
3−2 固定金利でローンを組む
住宅ローンには大きく分けて「変動金利」「固定金利」の2種類があります。
変動金利は、固定金利に比べて金利が低い傾向にあります。特に最近は低金利が続いていますので、変動金利が魅力的に感じるかもしれません。
しかし、変動金利はその名前の通り、経済状況に応じて金利が変動していきます。今はかなり金利が低くても、数年後には急上昇する可能性は否めません。
変動金利よりは高いですが、フラット35など固定金利を選択するのが安心です。
3−3 ボーナス返済は避ける
住宅ローンの支払い方法には「ボーナス返済」があり、ボーナス返済にするとボーナス月には月々の返済に上乗せして返済することになります。
ローン契約時にはボーナスが支給されていても、将来的に転職や失業などでボーナスがなくなることもあるでしょう。
ボーナス返済を利用することで月々の返済額を抑えることができますが、万が一ボーナスがなくなった場合には大きな負担になります。
そのため、ボーナス返済は避けるのがよいでしょう。
3−4 余裕があるときに繰り上げ返済をしておく
住宅ローンでは、繰り上げ返済として毎月の返済とは別にまとめて返済することが可能です。
繰り上げ返済は、すべて元本に充てることができ、それによって返済期間を短縮したり、毎月の返済額を軽減できたりします。
前述した通り、強制的に返済が発生するボーナス返済は避けたほうがよいですが、ボーナス月に余裕があるのであれば繰り上げ返済を利用するのがおすすめです。
3−5 なるべく定年前にローンが終わるように計画する
2章でもお話したように、定年後までローンが残っていると、定年後に住宅ローン破綻してしまう可能性があります。
住宅ローンは最長35年ですが、定年の年齢(60歳〜65歳)を念頭に入れて返済期間を決定しましょう。
4章 住宅ローン破綻したときの対策
万が一、住宅ローン破綻をしてしまった場合には以下のような対策があります。
- 任意売却をしてローンの返済に充てる
- 他の借金があるなら個人再生で借金を軽減
- どうしてもローンが払えないなら自己破産
それぞれ詳しく解説しますので、参考にしてください。
4−1 任意売却をしてローンの返済に充てる
住宅ローンの支払いが難しいと感じたら、任意売却を検討しましょう。任意売却とは、債権者(ローンを借りている金融機関)に許可を取り、一般市場で売却する売却方法です。
住宅ローンの売却益が残債を超えれば、住宅ローンを完済することができます。ただし、売却益が残債を下回る場合には一括請求される可能性もあるので注意必要しましょう。(金融機関によっては分割払いに応じてもらえることもあります)
競売にかけられるよりも任意売却のほうが売却額が高くなる傾向にありますし、引き渡しの日程もある程度自身で調整することができます。
そのため、住宅ローンを放置して競売にかけられる前に、「支払いが難しい」と感じた時点で任意売却に向けて動くのがよいでしょう。
4−2 他の借金があるなら個人再生で借金を軽減
住宅ローン以外にも借金があり、それらの返済との兼ね合いで住宅ローンの支払いが難しくなっているのであれば個人再生をするのがよいでしょう。
個人再生とは、裁判所に申し立てることで借金額を5分の1〜10分の1程度に減額する手続きです。
個人再生では、住宅ローンの特例を利用することで、住宅ローン以外の借金を圧縮することができます。
ただし、住宅ローンはそのまま残りますので、住宅ローンだけでも返済が難しい状況であれば適していません。
4−3 どうしてもローンが払えないなら自己破産
どうしても住宅ローンが支払えない状況が続くのであれば自己破産も検討しなければいけません。
自己破産とは、裁判所に申し立てることで借金の返済義務を免除してもらう手続きです。
借金がなくなる代わりに、一定以上の財産は裁判所によって処分されてしまいます。不動産を残すことはできないのでその点は理解しておく必要があります。
4−4 不動産の価値が高いときはリースバックやリバースモーゲージを利用する
住宅ローンの残額より住宅の価値が高いときは、住宅を活用した資金調達で住居を変えることなく解決できる可能性があります。
- リースバック
- リバースモーゲージ
リースバックとは、自宅を売却して資金を得たうえで、売却した物件を借りて住み続ける方法です。
借家にはなってしまいますが、住宅ローンを完済したうえで、同じ生活を続けることが可能です。住宅ローン残高と不動産の価値によっては、まとまった生活費を手にすることもできます。
リバースモーゲージとは、自宅を担保に入れて資金調達をする方法です。
住宅ローンより金利は高いのですが、月々の支払額は大きく減らせる可能性があります。
年齢的に住宅ローンの借り換えができない方には適しているといえるでしょう。
リバースモーゲージは多くの金融機関が独自のサービスを展開していますので、自分にあったものを探すことが重要です。
5章 住宅ローン破綻が不安な方はグリーン司法書士法人にご相談ください
住宅ローン破綻に陥りそうで不安な方は、お早めにご相談ください。支払えないまま放置してしまうと、競売にかけられたり財産が差押えられたりするリスクがあります。
「支払いが難しい・・・」と感じた時点であれば、不動産を残したり、競売や自己破産を避けたりする解決策を提案できるかもしれません。
グリーン司法書士法人では、グループ内に不動産会社を有していますので、任意売却が必要な場合でも、スムーズに対応することが可能です。
なお、初回相談は無料です。オンライン相談にも対応していますので、お気軽にご相談ください。
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よくあるご質問
- 住宅ローンが破綻する理由とは?
- 住宅ローンが破綻する理由は、主に下記の通りです。
・収入が減った
・定年を超えても住宅ローンが終わっていない
・金利が上がった
・世帯収入が減った
- 住宅ローンが破綻するとどうなる?
- 住宅ローンが払えなくなると起きることは、下記の通りです。
・滞納した分に遅延損害金が上乗せされる
・住宅が競売にかけられる
・売却しても残債がある場合、一括請求される