債務不履行とは?意味をわかりやすく解説|具体例や損害賠償リスクも

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
債務不履行とは?意味をわかりやすく解説|具体例や損害賠償リスクも

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 この記事を読んでわかること
  • 債務不履行の意味
  • 債務不履行の主な種類とその具体例
  • 債務不履行になった場合のリスクとその対処法

「債務不履行」という言葉は法律や契約の場面でよく使われますが、日常生活ではあまり聞き慣れない用語かもしれません。債務不履行とは「契約で約束した内容を守らない状態のこと」を指します。

例えば、借金の返済期限を過ぎても支払わない、商品を納品できなかった、依頼された仕事の内容が不十分だったといったケースがこれに当たります。債務不履行になると、一括請求や損害賠償、契約解除など重大なリスクが発生するため注意が必要です。

この記事では、債務不履行の意味や種類、起こり得るリスク、防止するためのポイント、万一発生した場合の対処法をわかりやすく解説します。

1章 債務不履行とは?わかりやすく解説

債務不履行とは、契約によって生じた約束を果たさないことを指します。例えば、借金を返済期限までに支払わなかった、納期に遅れて商品を届けられなかった、契約通りの品質を満たさないサービスを提供したなどが典型例です。

債務不履行が発生すると、債権者(お金を貸した人・依頼をした人)は契約を守ってもらえなかったことによって損害を受けるため、損害賠償請求や契約解除といった対応を取る権利を持ちます。

つまり債務不履行は、単なる約束違反ではなく、債務者の責任がある場合には法的な責任を伴う重大な問題だと言えるでしょう。

ただし、すべての債務不履行に債務者の責任があるわけではありません。地震や大雨などの自然災害、予測できない法改正や社会情勢の変化といった不可抗力による事情で債務が履行できなくなることもあります。この場合は、債務者に責任がないため損害賠償の対象にはならず、契約解除などの別の取り扱いがされます。

2章 債務不履行の主な種類とその具体例

債務不履行にはいくつかのパターンがあり、民法では履行遅滞、履行不能、不完全履行の3種類に大別されます。ここでは、債務不履行の主な種類とその具体例を解説します。

2-1 履行遅滞(期限までに約束を果たさない)

履行遅滞とは、支払いや納品をする能力はあるのに、約束された期限を守らないことです。「できるのに遅れた」というケースを指し、以下のような具体例があります。

  • 借金を返済期日までに支払わなかった
  • 商品を納期までに納めなかった
  • 工事を契約で定められた工期までに終えられなかった

なお、「お金がなくて支払えない」という状況でも、法律上は履行不能ではなく履行遅滞に当たります。なぜなら、ある商品が滅失したなどの場合と異なり、お金(日本円)そのものが社会から調達不可能となることは考えられないためです。この考え方は「金銭債務に不能なし」と表現されます。

2-2 履行不能(約束を果たすこと自体ができなくなる)

履行不能とは、契約の内容を実行すること自体が不可能になってしまうことです。履行遅滞が「期限を守れなかった」ケースであるのに対し、履行不能は「物理的または社会的に履行ができなくなった」というケースを指します。履行不能の具体例は以下の通りです。

  • 納品予定の商品が火災で焼失し、引き渡せなくなった
  • 建設予定地が法改正で使用禁止となり、工事ができなくなった
  • 委託された業務に必要な資格を喪失し、契約を遂行できなくなった

このように、債務の内容そのものが果たせなくなった場合、債務者に責任があるときは損害賠償の対象となります。一方で、天災や法改正など不可抗力による場合には、契約が解除されるのが一般的です。

2-3 不完全履行(約束を一部果たしたが内容が不十分)

不完全履行とは、形式的には契約を果たしていても、内容が契約通りでなく不十分な場合を指します。つまり「やったことはやったが、約束通りではない」という状態です。不完全履行の具体例は以下の通りです。

  • 注文した商品が届いたが、数量や品質が契約内容と異なっていた
  • 修理やリフォームを依頼したが、仕上がりが不十分で使えない部分が残っていた
  • プロジェクトの成果物を納品したが、合意した仕様を満たしていなかった

この場合、債権者は損害賠償の他、やり直しや代替物の提供を請求できる権利があります。

3章 債務不履行になった場合の5つのリスク

債務不履行になった場合のリスクは以下の通りです。

  • 期限の利益を喪失し一括請求を受ける
  • 損害賠償請求を受ける
  • 強制執行が行われる
  • 契約を解除される
  • 追完請求を受ける

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

3-1 期限の利益を喪失し一括請求を受ける

分割払いやローン契約では、借主が毎月少しずつ返済していくことを前提に期限の利益が認められています。期限の利益とは、「決められた期日までは一括で支払わなくても良い」という借主の権利です。

しかし、一度でも返済を怠ったり、遅延が続いたりすると、この期限の利益を失ってしまいます。期限の利益を喪失すると、残りの返済額をすべて一括で請求されることになります。例えば、100万円の借入を毎月2万円ずつ返している途中で延滞を起こした場合、すでに20万円を払っているなら残り80万円を「すぐに払ってください」と請求される可能性があります。なお、法律上は一度でも返済に遅れると期限の利益を喪失しますが、1回遅れただけで一括請求を受けるケースは多くないでしょう。

3-2 損害賠償請求を受ける

債務不履行となった場合、債権者から損害賠償請求を受けます。損害賠償請求は「もし債務者がきちんと約束どおり履行していれば発生しなかった損害」を補うための制度です。つまり、債務者に責任がある場合は損害賠償請求を受けますが、災害や法改正などによる不可抗力の場合は原則として損害賠償請求を受けません。

ただし、借金の返済のような金銭債務については特別なルールがあります。民法では「金銭債務の不履行は不可抗力を理由に免れることはできない」と定められており、借金やクレジットカードの返済を滞納すると遅延損害金を支払わなければなりません。

3-3 強制執行が行われる

債務不履行が続くと、裁判所を通じて強制執行を受ける可能性があります。強制執行とは、支払いに応じない債務者の財産を差し押さえて強制的に回収する手続きです。裁判所の確定判決が出て強制執行が行われると、以下のような財産が差し押さえられます。

  • 給与(毎月の給料の4分の1が天引きされる)
  • 預貯金(66万円を超える部分)
  • 不動産(住宅・土地)
  • 自動車

なお、毎月の手取り額が44万円を超える場合は、33万円を超える部分全てが差押えの対象になります。また、一度強制執行が始まると、自分の意思では止めることができません。給料や銀行口座が差し押さえられると生活費が不足し、日常生活に大きな支障が出る可能性が高いでしょう。

3-4 契約を解除される

債務不履行になった場合、相手方から契約を強制的に解除される可能性があります。法律上、債権者は「履行してください」という催告をしたうえで、債務者が応じなければ、一方的に契約を解除できるとされています。つまり、債務者の同意がなくても契約関係を打ち切られてしまうのです。

さらに、債務の全部が履行不能である場合や、債務者が債務の履行を明確に拒否した場合は、催告すら不要で、すぐに契約解除が可能です。契約解除の手続きも複雑ではなく、債権者が「契約を解除します」と通知するだけで効力が生じます。そのため、契約解除通知は内容証明郵便で送付されるのが一般的です。一度契約を解除されると、取引の継続は不可能になり、住居の退去や取引停止といった大きな不利益を受けることになります。

3-5 追完請求を受ける

債務不履行の中でも不完全履行にあたる場合、相手方から追完請求を受けることがあります。追完請求とは、「契約で約束した内容通りにやり直してください」と追加の履行を求められる請求のことです。代表的な例としては以下のようなものがあります。

  • 建築工事の仕上がりが契約仕様に達しておらず、修繕や再施工を求められる
  • 商品の納品数が不足しており、不足分の追加納品を求められる
  • 契約どおりのサービスが提供されず、改善を要求される

4章 債務不履行を防ぐためには契約内容を正しく把握することが大事

債務不履行を避けるために最も重要なのは、契約内容を正しく理解しておくことです。契約条件を曖昧にしたまま進めてしまうと、気づかないうちに期限を過ぎたり、約束した水準を満たせなかったりして、不履行に陥る恐れがあります。その結果、損害賠償や契約解除など、取り返しのつかないトラブルに繋がりかねません。

特に注意すべきは、支払いや納品などの期限です。勘違いでも履行遅滞とされ、信用を損ねる原因になります。また、内容や品質の基準を具体的に把握しておくことも欠かせません。これを誤解していると、不完全履行と判断され、追加の対応や費用負担を求められる可能性があります。

加えて、契約書には多くの場合、遅延損害金や違約金といったペナルティが盛り込まれています。これらを事前に確認しておけば、万一遅延したときにどの程度の負担が発生するのかを把握でき、リスク管理に繋がるでしょう。

5章 債務不履行になった場合の対処法

債務不履行を起こしてしまったとしても、すぐに全てが手遅れになるわけではありません。大切なのは放置しないことと、適切な相手に早めに相談することです。ここでは3つの対処法を紹介します。

5-1 履行が難しい場合は早めに相手に伝える

支払いや納品など、契約通りに履行するのが難しいと感じた時は、できるだけ早く相手に伝えることが大切です。黙って滞納や遅延を放置してしまうと、「誠意がない」と判断され、損害賠償や契約解除といった厳しい対応に発展しやすくなります。反対に、事情を正直に説明し相談すれば、期限の延長や分割払いなど、柔軟な対応をしてもらえる可能性があります。

5-2 借金返済など支払い関係の場合は弁護士・司法書士に相談する

借金の返済を放置すると、遅延損害金の発生や強制執行など、状況は悪化する一方です。そのため、借金の返済が難しくなった場合は、一人で抱え込まずに弁護士・司法書士へ相談しましょう。

専門家に相談すれば、任意整理や自己破産などの債務整理の手続きを通じて、返済額を減らしたり、返済自体を法的に整理したりすることができます。さらに、専門家に依頼することで、債権者からの督促がストップします。放置しても状況が良くなることはないため、借金返済に不安がある場合は、なるべく早いタイミングでの弁護士・司法書士への相談がおすすめです。

グリーン司法書士法人では、借金返済でお困りの方のサポートを行っています。無料相談にも対応しておりますので、債務整理を検討中の方はお気軽にお問い合わせください。

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5-3 それ以外の債務不履行の場合は弁護士に相談する

借金以外にも、工事の遅れや商品納品の不備、サービス提供の不完全履行など、様々な債務不履行があります。こうしたケースでは、契約関係や損害の内容が複雑になることが多いため、弁護士に相談することが有効です。

弁護士に依頼すれば、相手との交渉を代理してもらえるだけでなく、契約解除や損害賠償請求といった事態にどう対応すべきか、法律的に有利な立場を確保するためのアドバイスを受けられます。

専門家のサポートを受けることで、無用なトラブルの拡大を防ぎ、早期解決につなげることができます。借金以外の契約トラブルに直面したら、まずは弁護士に相談しましょう。

まとめ

債務不履行とは、契約で約束した内容を期限通りに果たせなかったり、不十分な形でしか履行できなかったりする状態を指します。債務不履行になると、損害賠償請求や契約解除、強制執行など、生活や事業に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

こうした事態を避けるためには、まず契約内容を正しく理解し、期限や履行内容をきちんと把握しておくことが大切です。それでも履行が難しいと感じた場合は、放置せずに早めに相手へ相談することで、トラブルの拡大を防げる可能性があります。

特に借金の返済に関しては、遅延損害金や強制執行といった深刻な事態に直結するため、弁護士や司法書士に早めに相談することが重要です。それ以外の契約トラブルについても、弁護士に相談することで適切な対応を取りやすくなるでしょう。

グリーン司法書士法人では、借金問題や債務不履行に関するご相談を随時受け付けています。返済が苦しい、契約を果たせそうにないといった不安を抱えている方は、お一人で悩まずにぜひ一度ご相談ください。専門家が状況に応じた解決策をご提案し、生活の立て直しをサポートいたします。

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