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- 入院する際に活用したい公的制度
- 公的制度を活用しても入院費用が払えない場合の対処法
- 入院費用の相場と払えない場合に起きること
突然の病気や怪我で入院が必要になった際、「お金がないから入院できないのでは」と不安になる方もいるのではないでしょうか。入院費用は診療代だけでなく、食事代や差額ベッド代なども加わり、高額になるケースもあります。
しかし、日本は公的な制度が整備されており、うまく活用すれば入院費用の負担を減らすことが可能です。それでも支払いが難しい場合には、病院への相談や一時的な支払い方法に加えて、最終的には医療費も含めた借金を債務整理で解決できる可能性もあります。
本記事では、入院にかかる費用の目安、公的制度の活用方法、支払いが難しい時の対処法、そして払えないまま放置するとどうなるかまでを解説します。経済的な事情で治療を諦める前に、ぜひ参考にしてください。
目次 ▼
1章 入院費用はどれくらいかかる?
生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査(2022年度)」によると、入院1日当たりの自己負担費用の平均は約20,700円でした。この金額には、食事療養費や差額ベッド代といった公的医療保険が適用されない費用も含まれています。費用の分布をみると、「10,000円〜15,000円未満」が23.3%で最も多く、次いで「20,000円〜30,000円未満」が16.0%となっています。
さらに、入院時の自己負担費用の総額は平均約19.8万円で、「10万円〜20万円未満」が最も多くなっています。ただし、入院日数が長引いたり、高額な先進医療を受けたりする場合、総額は大きく膨らむ可能性があります。このように、入院には短期間でも数万円、場合によっては数十万円単位のお金がかかります。
2章 お金がない方必見!入院する際に活用したい公的制度
入院費用は平均でも約20万円ほどかかり、お金がない状態では非常に大きな負担になります。お金に困っている状況でも医療的な処置を受けるためには、医療費の自己負担を抑えるための公的制度を活用することが大切です。
2-1 高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヵ月に支払った医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。例えば、平均的な収入の会社員であれば、自己負担は1ヵ月当たり約8万円程度に抑えられます。
ただし、差額ベッド代や食事代など保険適用外の費用は対象外であり、支給までには3ヵ月ほどかかるため、一時的に自己負担を立て替える必要があります。さらに、申請できるのは診療月の翌月初日から2年以内に限られており、期限を過ぎると請求できません。
また、申請先は加入している医療保険の保険者です。会社員なら勤務先を通じて協会けんぽや健康保険組合へ、自営業や無職で国民健康保険に加入している場合は市区町村役場が窓口となります。
2-2 高額医療費貸付制度
高額医療費貸付制度とは、高額療養費制度による払い戻しを受けるまでの間、一時的に医療費を立て替える資金を無利子で借りられる制度です。高額療養費の支給が決定するまでには診療月から3ヵ月ほどかかるため、その間の家計負担を軽くするために設けられています。貸付額は、高額療養費の支給見込額の8割相当額です。
高額医療費貸付制度はあくまで貸付であるため、返済が前提となります。高額療養費が支給されると、その給付金から貸付金が自動的に差し引かれて清算されます。もし支給額が貸付金を下回った場合や不支給になった場合は、不足分を返納しなければなりません。また、申請から貸付金の交付までに時間がかかるため、早めの手続きが大切です。
この制度は主に協会けんぽが実施しているものです。国民健康保険や会社の健康保険組合でも、独自に貸付制度を設けている場合がありますので、加入している保険者に直接確認してください。
2-3 医療費控除
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に本人や生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、超過分を所得から差し引ける仕組みです。対象となるのは病院の診療費や薬代のほか、通院のための交通費なども含みます。医療費控除の計算方法は以下の通りです。
医療費控除額 = (支払った医療費の合計)-(保険金などで補填された金額)-(10万円または所得の5%のいずれか少ない額)
例えば、年間の医療費が60万円、民間保険や高額療養費制度で20万円が補填され、所得が300万円の場合は、60万円-20万円-10万円=30万円が医療費控除の対象になります。
これにより課税所得が減り、確定申告をすれば支払った税金の一部が還付金として戻ってきます。ただし、医療費が直接安くなるわけではなく、収入が少なく所得税を払っていない場合は控除の恩恵を受けられない点に注意が必要です。また、医療費控除の対象かどうかや、確定申告の方法が分からない場合は、お近くの税務署に相談しましょう。
2-4 健康保険限度額適用認定証
健康保険限度額適用認定証とは、医療機関の窓口で提示することで、支払い時点から自己負担額を高額療養費制度の上限までに抑えられる証明書です。本来なら高額療養費は一度支払った後に払い戻しを受ける仕組みですが、認定証を提示すれば立て替えの必要がなく、最初から自己負担限度額までの支払いで済みます。
申請は加入している健康保険の保険者に行います。会社員であれば勤務先を通じて協会けんぽや健康保険組合、自営業や無職で国民健康保険に加入している場合は市区町村役場が窓口です。入院や高額な治療が予定されている場合は、事前に取得しておくと安心です。
2-5 一部負担金減免制度
一部負担金減免制度とは、国民健康保険に加入している方が、災害や失業など特別な事情によって収入が著しく減少し、医療費の自己負担分を支払うことが困難な場合に、その負担を一時的に減額または免除してもらえる制度です。窓口で支払う自己負担分(通常は3割など)が対象となり、一定期間の支払いが軽減されます。
ただし、誰でも利用できる制度ではなく、災害で住居に被害を受けた、世帯主が失業や長期療養で収入を失った、といった特別な事情に該当する世帯のみが対象です。適用期間は3ヵ月程度と限定され、再度利用するには更新手続きが必要です。
また、一部負担金減免制度の申請は市区町村役場の国民健康保険窓口で行います。対象になるかどうかは自治体ごとに判断されるため、支払いが難しいと感じたら、できるだけ早めに役所に相談することが大切です。
2-6 傷病手当金
傷病手当金とは、会社員など健康保険に加入している方が、業務外の病気や怪我で働けず給与が支給されない場合に、生活保障として受け取れる給付金です。支給額は休業前の給与(日額)の3分の2程度で、最長1年6ヵ月まで受給できます。
ただし、仕事以外の病気や怪我であること、医師が就労不能と判断していること、連続3日間の待機期間を経て4日目以降も働けない状態であること、休業中に給与の支払いがないことが条件になります。さらに、この制度は健康保険に加入している被用者のみが対象であり、自営業やフリーランスといった国民健康保険の加入者は利用できません。
申請は加入している健康保険の保険者に行います。勤務先を通じて申請するケースが多く、主治医に就労不能の証明をもらい、会社に休業状況や給与支給の有無を記入してもらったうえで、健康保険組合や協会けんぽに提出します。傷病手当金に関して不安がある場合は、勤務先の人事・労務担当者に確認しましょう。
2-7 付加給付制度
付加給付制度とは、大企業の健康保険組合や共済組合が独自に設けている制度で、高額療養費制度の自己負担限度額をさらに下回るように医療費を軽減できる仕組みです。
上限となる自己負担額は組合ごとに異なりますが、厚生労働省の指導額である2万5,000円程度に近い水準で設定されているのが一般的です。ただし、協会けんぽや国民健康保険にはなく、一部の健康保険組合や共済組合の加入者しか利用できません。
また、申請は基本的に不要で、組合が自動で計算し、高額療養費と合わせて払い戻されます。制度の有無や内容は、加入している健康保険組合に確認しましょう。
3章 公的制度を活用しても入院費用が払えない場合の対処法
高額療養費制度や医療費控除などを利用しても、入院費用の支払いが難しい場合もあるでしょう。ここでは、入院費用が払えない場合の対処法を紹介します。
3-1 病院に相談する
入院費用の支払いが難しい場合は、まず病院の医事課や相談窓口に相談しましょう。病院によっては、経済状況に応じて分割払いや支払期限の延長に対応してくれるケースがあります。
また、病院には医療ソーシャルワーカーと呼ばれる専門職がいて、経済的な不安や生活上の悩みにも対応してくれます。高額療養費制度や一部負担金減免制度の利用方法を案内してくれたり、社会福祉協議会の貸付制度や生活保護などに繋げてくれたりと、状況に合わせた支援を受けられます。
「お金がないから入院できない」と諦めるのではなく、まずは病院に正直に打ち明けることが大切です。相談することで、制度の活用や支払い方法の調整を通じて、必要な治療を受けやすくなるでしょう。
3-2 クレジットカードで決済する
すぐに費用が用意できない場合でも、、病院によってはクレジットカードで入院費用を支払える場合があります。カード払いなら支払いを翌月以降に繰り延べられるため、急な入院で資金が足りないときの一時的な解決策になります。
ただし、分割払いやリボ払いを選ぶと利息や手数料が発生し、総支払額が膨らむ点には注意が必要です。また、全ての医療機関がカード決済に対応しているわけではないため、事前の確認が欠かせません。クレジットカードでの決済は支払いの先延ばしに過ぎないため、利用する際は返済の見通しを立て、無理のない範囲で活用することが大切です。
3-3 医療ローンを組む
入院費用が高額になり手元で用意できない場合、金融機関や信販会社が扱う医療ローンを利用できる場合があります。医療ローンは医療費に特化したローンで、一般的なカードローンよりも金利が低く設定されていることが多く、返済計画を立てやすい点がメリットです。
ただし、医療ローンはあくまで借金です。無職や収入が不安定な方は審査に通らない可能性が高く、利用できたとしても返済が滞れば延滞利息が発生したり、信用情報に悪影響が生じたりします。
そのため、公的制度の利用や病院への相談、家族の支援など、他の手段を尽くしてもなお資金が不足する場合に医療ローンを検討しましょう。どうしても利用するなら、金利や返済条件をよく確認し、無理のない範囲で返済できるかを判断することが大切です。
4章 入院費用が払えない場合に起きること
入院費用は退院時に請求されるのが一般的ですが、月をまたぐ入院の場合は月末締め・翌月払いといった形になることが多くなっています。もし支払期限を過ぎても入金できない場合、まずは電話での督促があり、それでも支払いが確認できなければ督促状が郵送されます。
また、多くの病院では入院時に身元保証人を求めています。身元保証人は緊急連絡先や意思表示ができないときの対応のために設けられていますが、患者本人が支払いをしない場合の請求先にもなります。督促を無視し続けると、身元保証人に対して請求が及ぶでしょう。
それでも支払いがなされない場合、病院側は弁護士を通じて請求を行います。この段階でも返済する意思を示さなければ、裁判に発展し、給与や預金といった財産を差し押さえられる可能性があります。
5章 返済に追われてお金がない場合は債務整理を検討しよう
入院費用をクレジットカードや医療ローンで支払った場合、退院後に返済が家計を圧迫し、「生活費が足りない」「他の支払いまで滞ってしまう」といった悪循環に陥ることがあります。さらに、もともとカードローンや消費者金融からの借入がある場合、医療費とあわせて返済負担が膨らみ、自己解決が難しくなることも少なくありません。
こうした状況で無理に返済を続けようとすると、延滞や滞納を招き、利息や遅延損害金によって借金はさらに膨らんでしまいます。返済に追われて生活が成り立たなくなっているなら、債務整理を検討するのも一つの方法です。
債務整理には任意整理・個人再生・自己破産といった手続きがあり、利息をカットして返済を軽くしたり、借金そのものを減額・免除できたりします。「医療費だけでなく、他の借金にも悩んでいる」という方にとっても、生活を立て直すための有効な手段です。
なお、債務整理の手続きを個人で行うのは非常に難しいため、弁護士・司法書士に依頼するのが一般的です。無料相談を実施している事務所の多いため、手遅れになる前に早めに相談しましょう。
グリーン司法書士法人では、借金や返済に悩む方のご相談を随時受け付けています。入院費用や生活費で困っている方も、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。
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まとめ
入院費用は1日当たり約2万円、総額で20万円前後になることもあり、家計に大きな負担となります。しかし、高額療養費制度や限度額適用認定証、医療費控除などの公的制度を活用すれば、自己負担を大きく減らすことが可能です。
それでも支払いが難しい場合は、病院に相談して分割払いを検討したり、一時的にクレジットカードや医療ローンを利用する方法もあります。さらに苦しい状況に陥ってしまっても、債務整理を通じて解決を図ることも選択肢の一つです。
グリーン司法書士法人では、医療費や生活費の返済に悩む方からのご相談を承っています。お金の不安で治療を諦める前に、まずはお気軽にご相談ください。
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