賃貸保証人になる5つのリスクとは?注意点や対処法も合わせて解説

司法書士市川有美

監修者:グリーン司法書士法人   市川有美
【所属】大阪司法書士会 登録番号大阪第4555号 【保有資格】司法書士

借金返済の知識
賃貸保証人になる5つのリスクとは?注意点や対処法も合わせて解説

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 この記事を読んでわかること

  • 賃貸の連帯保証人の概要
  • 賃貸の連帯保証人になる6つのリスク
  • 賃貸保証人を頼まれた際に回避する方法

「賃貸保証人になって自分に不利益なことが起こらないか心配」

「配偶者の兄弟から賃貸の連帯保証人を依頼されたが、本当になっても大丈夫なのか」

賃貸保証人に関して、上記のような悩みを抱えている人がいるのではないでしょうか。賃貸借契約における連帯保証人とは、借主と同等の支払い責任を負う人です。

万が一の場合は家賃や損害賠償を支払わなければならないため、賃貸の連帯保証人になることには大きなリスクがともないます。

本記事では賃貸保証人の概要を解説した後、賃貸の連帯保証人になるリスクや頼まれた際に回避する方法を説明します。賃貸の連帯保証人を頼まれて悩んでいる人は、確認して判断に役立ててください。

1章 賃貸の連帯保証人とは?

賃貸の連帯保証人とは、借主と同等の支払い義務を負う人です。家賃はもちろん、故意または重大な過失による火災の損害賠償、設備を破損した際の修理費用なども、借主が滞納している場合は支払う必要があります。

借主と同等の支払い責任を負っている連帯保証人には、借主が滞納した時点で貸主から連絡が届きます。そして、借主に返済能力があった場合でも、連帯保証人は大家さんからの請求を断ることはできません。

また、賃貸の連帯保証人は誰でもなれるわけではなく、大家さんや管理会社によって以下の条件が定められています。

  • 安定した収入があって、万が一の場合に返済能力がある
  • 3親等以内の親族
  • 国内に住んでいる人

借主が支払わない家賃や損害賠償の回収を目的に貸主は連帯保証人の設定を求めているため、返済能力の有無は必ずチェックされます。そのほかの条件は大家さんや管理会社によっても異なるので、契約前の確認が必要です。

2章 賃貸の連帯保証人になる6つのリスク

先述の通り、賃貸の連帯保証人になると、突然家賃や損害賠償の支払い義務を負う可能性があります。そのため、トラブルを避けたい人には、賃貸保証人になることをおすすめしていません。

また、以下の6つのリスクを背負うことになるため、契約する際は慎重な判断が求められます。

  • 借主が滞納した家賃を返済しなければならない
  • 原状回復費用を請求される可能性がある
  • 損害賠償も請求されるかもしれない
  • 借主から返金される可能性は低い
  • 連帯保証人から外れるのは難しい
  • 連帯保証人には解除権がない

ここでは、それぞれのリスクについて詳しく解説します。連帯保証人になるリスクを知って判断に役立てたい人は、ぜひ参考にしてください。

2-1 借主が滞納した家賃を返済しなければならない

借主が家賃を滞納した場合、賃貸保証人には支払い義務が生じます。しかも、連帯保証人には、先に借主に請求を要求する「催告の抗弁権」、借主の財産からの請求を要求する「検索の抗弁権」が認められていません。

そのため、借主に返済能力があったとしても、家賃を滞納している場合は支払いを拒否できないのです。もし借主の銀行口座に100万円が入っている場合でも、連帯保証人は滞納した家賃を支払う必要があります。

2-2 原状回復費用を請求される可能性がある

賃貸の連帯保証人になると、借主の退去時に原状回復費用を請求されるリスクも背負います。原状回復費用とは、故意・過失によって生じた傷や汚れを修繕して入居時の状態に戻すために必要な費用です。

基本的に退去費用は敷金で支払われますが、借主の使い方が悪いと敷金では賄いきれないケースがあります。そして、借主が支払わない場合、大家さんは賃貸保証人に原状回復費用を請求するのです。

契約内容によっては高額な原状回復費用を請求される可能性があるので、賃貸保証人になる場合は必ず契約書の内容を確認しておきましょう。

2-3 損害賠償も請求されるかもしれない

賃貸の連帯保証人になると、損害賠償を請求される可能性があります。損害賠償が発生するのは、契約解除後に借主が部屋を明け渡さなかったり、火事を起こしたりした場合です。

特に火事の場合は、被害規模が大きくなると損害賠償金額が高くなります。損害賠償金額が100万円を超えて数1,000万円単位になるリスクもあるため、賃貸保証人になる際は十分に注意しましょう。

なお、大家さんに対する火災の損害賠償は、借主に過失がなくても発生します。火災が起きて賃貸住宅に被害が及んだ時点で、損害賠償を請求されることを把握しておいてください。

2-4 借主から返金される可能性は低い

連帯保証人が家賃や原状回復費用、損害賠償を支払ったとしても、借主から返金される可能性は高くありません。連帯保証人の支払ったものは、求償権として借主に請求できるのになぜでしょうか。

そもそも連帯保証人に請求が届いた時点で、借主はお金に困っている可能性が高いです。返済が難しい状況にあるため、借主からの返金はあまり期待できないでしょう。

2-5 連帯保証人から外れるのは難しい

賃貸借契約の当事者は、貸主である大家さんと借主です。連帯保証人は当事者だと見なされないため、契約を結んでしまうと希望しても連帯保証人から外れるのは難しいです。

また、連帯保証人が亡くなると相続人へと引き継がれるため、配偶者や子どもに迷惑がかかるかもしれません。相続を放棄すると連帯保証人を引き継がなくて済みますが、その代わりに預貯金や金融商品、不動産などの財産も相続できなくなってしまいます。

2-6 連帯保証人には解除権がない

賃貸保証人には、賃貸借契約の解除権が認められていません。そのため、借主が行方不明になって賃貸住宅で生活していない場合でも、契約を解除できずに再契約のタイミングまで延々と家賃を支払わないといけないという事態に陥ることもあります。

大家さんとしては、家賃が回収できれば何の問題もありません。しかも契約を解除するには公示催告が必要で、大きな手間がかかります。大家さんは手間をかけて現状を変える必要がないうえに、行方不明の借主は契約を解除できないので、連帯保証人が家賃を支払う義務を背負ってしまうのです。

なお、賃貸契約の期間は2年が一般的です。契約を結んですぐに借主が行方不明になった場合、1年以上にわたって家賃を代わりに返済し続けなければなりません。

ただし、契約解除に関する委任を受けておけば、連帯保証人でも契約を解除できます。誰も生活していない賃貸の家賃を支払い続けなくて済むように、必ず契約解除に関する委任を受けておくようにしましょう。

3章 賃貸の連帯保証人になることを依頼された際はリスクを理解したうえで判断しよう

ここまで解説した通り、賃貸の連帯保証人にはさまざまなリスクがともないます。家賃や損害賠償を請求されることによって自身の生活が苦しくなる可能性もあるため、依頼された際はリスクを踏まえたうえで判断してください。

なお、2020年に民法が改正されたことにより、賃貸の連帯保証人を設定する際は、支払限度額である極度額を決めることが義務化されました。連帯保証人は極度額までしか支払い義務を背負わないため、契約時にリスクをコントロールできるようになっています。そして民法改正は全契約に適用されるので、改正前に賃貸借契約を結んでいる場合でも、契約書の巻き直しが必要です。

たとえば、極度額が500万円の場合、借主が火事を起こして損害賠償が発生しても連帯保証人には500万円までしか請求できません。ただし、極度額に制限はないため、10億円や100億円のような高額な金額に設定することも可能です。

最大の支払い金額がいくらになるかわからない状態で、連帯保証人になるのは非常に危険です。火事の場合は損害賠償が億を超える可能性もあるため、連帯保証人になる際は必ず極度額をチェックしましょう。

もし、極度額の記載がない場合は、連帯保証人の契約は無効になります。連帯保証人になって請求が届いた場合、契約書に極度額が記載されているかどうかを見直して、支払いを無効にできないか確認してください。

4章 賃貸の連帯保証人を頼まれた際に回避する方法

リスクを踏まえたうえで賃貸保証人にならないと決めたものの、「どのように回避すべきかわからない」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。もし賃貸保証人になりたくない場合は、以下の3つの方法から適切なものを選択してください。

  • 素直に断る
  • UR賃貸住宅の存在を伝える
  • 賃貸保証会社(家賃保証会社)を勧める

それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。

4-1 素直に断る

賃貸の連帯保証人になってリスクを負いたくないなら、連帯保証人にならない意思を明確にするために素直に断りましょう。

両親に頼むように伝えて遠回しに回避こともできますが、「親に頼めないから頼んでいる」と返される可能性があります。結局スタートに戻ってなりたくないと伝えなければならないため、最初から断っておきましょう。

4-2 UR賃貸住宅の存在を伝える

ほかに依頼できる相手がいないと言われた場合は、UR賃貸住宅の存在を伝えてください。独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が運営しているUR賃貸住宅では、連帯保証人を設定する必要がありません。

そして礼金や解約違約金も必要ないため、連帯保証人を頼んできた相手は賃貸契約にかかるコストをカットできます。相手のメリットも大きいので、連帯保証人の依頼を回避しやすいでしょう。

また、UR賃貸住宅でなくても連帯保証人が不要な物件もあります。もしUR賃貸住宅以外を希望しているのであれば、連帯保証人が不要な物件を探すように伝えましょう。

4-3 賃貸保証会社(家賃保証会社)を勧める

すでに希望の物件が決まっていてどうしても連帯保証人が必要な相手には、賃貸保証会社(家賃保証会社)を勧めるのも一つの選択肢です。賃貸保証会社とは、借主が家賃を滞納した場合に代わりに返済してくれる機関です。

賃貸保証会社を利用すれば、連帯保証人が必要な物件でも借りられる可能性があります。また、会社がバックにつくことで滞納した家賃や原状回復費用を徴収しやすくなることから、敷金が減って初期費用を抑えられるかもしれません。

一方で、賃貸保証会社の利用には保証料として手数料を支払う必要があります。そして、賃貸保証会社が立て替えた家賃は返済が必要です。後でトラブルにならないように、賃貸保証会社を勧める際はデメリットも一緒に伝えましょう。

まとめ

賃貸の連帯保証人になった際のリスクや回避する方法について解説しました。借主と同等の支払い責任を負う賃貸の連帯保証人になると、以下のさまざまなリスクを背負うことになります。

  • 借主が滞納した家賃を返済しなければならない
  • 原状回復費用を請求される可能性がある
  • 損害賠償も請求されるかもしれない
  • 借主から返金される可能性は低い
  • 連帯保証人から外れるのは難しい
  • 連帯保証人には解除権がない

ある日いきなり多額の支払いに追われるリスクを秘めているので、賃貸の連帯保証人を頼まれた際はリスクを踏まえたうえで判断しましょう。

すべての賃貸住宅で連帯保証人が必要なわけではないため、たとえ断ったとしても相手は住む場所を見つけられるでしょう。賃貸保証人になりたくない場合は素直に断って大丈夫です。気軽に契約を結んで後悔することがないように、連帯保証人になるリスクと適切な回避方法を把握しておいてください。

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