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支払いきれなくなった借金を大幅に減額する手続き、個人再生。
自分の財産を残しながら完済までのゴールが短縮されることから、個人再生は任意整理より借金を減額できて、自己破産よりリスクを負わずに済むのがメリットです。
借金を大幅に減額できるとはいえ、手続き後は支払いを続けていくことから「個人再生をしたいけれど無職なので認められるか心配」という方もいるでしょう。
現状無職の状態でも個人再生は可能なのでしょうか。この記事では、無職でも個人再生が適用可能なケースと手続きの方法を解説いたします。
▼個人再生のメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
目次 ▼
1章 無職の場合は個人再生が難しい!
結論から言うと、無職の方が個人再生を利用するのは難しいです。
個人再生は、すべての債務者に対する返済総額を5分の1程度まで減額し、その後は3年程度で分割払いしていく手続きです。
個人再生では、借金が減額されても、返済義務があり、安定した収入がないと計画的な返済が困難だからです。
2章 個人再生が利用できる条件
では、個人再生が利用できる条件はどういう内容なのでしょうか。
個人再生ができる条件は、
- 継続的に収入があること
- 住宅ローン以外の借金総額が5,000万円以下であること
の2つを満たすことです。
無職の場合「継続的に収入があること」に該当していないため個人再生を利用するのが難しいのです。
ここからは2つの条件を詳しく解説して行きます。
①継続的に収入があること
個人再生は、借金の総額を3年程度で完済できるように計画し、分割して支払っていきます。
そのため、最低でも3年は問題なく支払いし続けられる収入が必要になってきます。
正社員のように、毎月決められた給料が振り込まれる環境であれば、再生計画に基づいて返済をしていくのは問題ないでしょう。
例えば、個人再生で借金を減額してもらい、借金の総額が100万円になったとします。その場合3年計画を立てたとしたら、毎月約28,000円を返済していくことになります。
債務者がサラリーマンで毎月の給料が30万だったとしたら、給料の額を見ても十分返済が現実的です。
毎月同じ額が振り込まれることも分かっていることから、再生計画が頓挫する可能性が低いと言えるでしょう。そのため、再生計画が認められるケースが多いです。
②住宅ローン以外の借金総額が5,000万円以下であること
もう1つの条件は、住宅ローン以外の借金総額が5,000万円以下であることです。
例えば、FXなどのハイリスクなギャンブルに手を出してしまったり事業が失敗してしまったりと、多額の借金を重ねてしまい6,000万円借金があったとします。
その場合は、小規模個人再生・給与所得者再生の対象ではなく、通常の民事再生手続きの対象となるため個人再生の条件から外れてしまいます。
個人再生では個人を対象としているため手続きが簡略化されています。しかし、民事再生では、額が大きいこともあり個人再生よりも更に手続きが複雑となります。
民事再生は、基本的に法人を想定した制度設計にしているため、手続きが複雑なだけでなく費用も高くなります。しかし、借金総額が5,000万円以上になってしまった場合は、個人の借金でも民事再生をするしかなくなります。
小規模個人再生とは異なり、債権者集会を開く必要があったり、手続き後の返済中も監督委員が一定期間監督を行ったりと完済までの手順が増えてしまいます。できることであれば個人再生を利用できるようにするか、自己破産を視野に入れましょう。
個人再生の条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
3章 無職でも個人再生が利用可能なケースもあり!
無職の場合、個人再生の「継続的に収入があること」の条件に該当しませんが、100%個人再生ができないというわけではありません。
中には、無職でも個人再生が利用できる可能性があるケースもあります。
利用できる可能性があるケース | ・現在求職中である ・家族の援助を受けられる ・公的年金を受給している ・アルバイトや派遣社員をしている |
場合によるが利用が難しいケース | ・専業主婦(主夫)である |
利用できないケース | ・今後も就職予定がない場合 ・生活保護を受けている |
このように、無職でも状況次第では個人再生をできるため、財産を残しておきたい場合や自己破産をしたくない場合は諦めずにチャレンジしてみましょう。
同様に、個人再生ではなく任意整理を選択する場合も認められるケースは似ています。
無職で任意整理をする方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
3-1 【利用できる可能性あり】求職中の場合
現在無職ではあるが、面接に行ったりハローワークへ通ったりと就職活動中である。
この場合、就職する意思があり近いうちに収入を作れる可能性があると見なし、個人再生が認められるケースがあります。
現時点では無職でも、すぐに就職する予定があるとか、その意気込みを持って就職活動をしているという場合には、仕事が見つかってから申立てをすれば問題ありません。
とはいえ、仕事が見つかるまでどの程度かかるかは一律に言えませんし、その仕事の給料で再生後の支払いができるのかも分かりません。個別の案件における専門家の判断が必要になるため、このような状況にある方は一度相談してみましょう。
就職活動の段階において一番認められやすいのは、既に内定が決まっている状態まで進んでいることです。
就職予定の会社では毎月どれくらい収入が貰える見込みがあり、毎月いくらまでなら返済可能ということを債権者に伝え、完済ができることを説得しましょう。
そのうえでやはり支払いが困難となれば自己破産へ切り替えることも必要になるかもしれません。
3-2 【利用できる可能性あり】家族の援助を受けられる場合
無職で収入がないことから、家族から毎月いくらか援助を受けて生活している。
家族から定期的にお金をもらっている場合、個人再生が通る可能性があります。
自分が作ったお金ではありませんが、毎月お金が入ってくることには変わりありません。
ですので、毎月の支払いが援助を受けているお金で賄えるのであれば再生計画に問題ないとして認める債権者もいます。
ただし、お金が入るかは親次第なため、3年間安定して貰える保証がないと見なし認められないケースも少なくありません。
個人再生を認めてもらう可能性を上げるために「自分も就職活動している」と、自分でも収入を作る気があることをアピールするのをおすすめします。
3-3 【利用できる可能性あり】公的年金を受給している場合
現在は定年退職しているため、年金暮らしをして生活をしている。
一見、退職していて収入がないため難しいと思うかもしれませんが、決められた日に安定して年金が振り込まれることから個人再生を利用できるケースがあります。
個人再生が利用できる条件は「継続的に」収入が入ることなので、継続的に振り込まれることが分かっている年金は条件に該当するのです。
もちろん、貰える年金以上の返済額の場合は認められませんが、年金の範囲内で返済が可能であれば認めてもらえる可能性があります。
3-4 【利用できる可能性あり】アルバイトや派遣社員の場合
無職で収入がないため、職が見つかるまでアルバイトをして収入を作っている。
このケースについては、利用できる可能性がかなり高いと言えます。毎月どれくらい働いていて、毎月これくらいの収入が貰えるということを説明できれば有利になります。
大切なのは、正社員かそうでないかではありません。継続的に収入が得られる状況であるかどうかや、借金を返済できるだけの能力があるのかどうかです。
例え、アルバイトや派遣社員でも毎月安定して支払える収入が貰えていれば問題ないのです。
ただし、日雇いで収入を作っている場合は個人再生が難しいので注意が必要です。日雇いは日毎に雇用契約を結ぶため、安定した収入がないと見なされるのです。
たとえ日雇いで月に正社員程度の収入を稼いでいるとしても、それはあくまで「現状はそうである」というだけだと思われ、個人再生が認められないケースがほとんどです。
3-5 【利用が難しい】専業主婦(主夫)の場合
専業主婦なので収入がないが、旦那は安定した収入があるため個人再生したい。
このケースは利用がかなり難しいでしょう。
個人再生など債務整理を認めるかどうかは、本人の収入や支払い能力を見て判断します。ですので、同居家族に収入があったとしても個人再生を認める材料にはなりません。
極端な例だと、本人の借金総額が100万円に対して同居家族の年収が5,000万円だとしても本人が無職だったら個人再生は認められません。普通に見れば明らかに返済できるケースだったとしても、本人次第になるのです。
よって、同居家族の給料から返済が可能だとしても、専業主婦(主夫)が個人再生することはできません。
借金を自己破産以外で解決するのであれば、同居家族にお願いして肩代わりしてもらうなどの対応を取るか、アルバイトやパートで収入を作る方法を取りましょう。
3-6 【利用できない】今後も就職予定がない場合
持病が悪化してしまい退職したが、今後も回復見込みがないことから就職する予定がない。
残念ですが、個人再生を利用することはできないでしょう。
無職が個人再生を利用できる可能性が出てくる条件として、安定した収入が今後見込めるかどうかです。
少なくとも3年間は分割した借金を払い続けないといけないため、今後も就職の見込みがない場合は個人再生を認めることはできません。
支払える目処が立っていない以上、個人再生を認めたところですぐに頓挫してしまうのは目に見えています。
支払い能力がないと見なされるため、自己破産を視野に入れましょう。
3-7 【利用できない】生活保護を受けている場合
生活保護を受けているため、毎月お金は振り込まれるので個人再生をしたい。
こちらも残念ですが、個人再生を利用することは100%できません。
生活保護の目的は「健康で文化的な最低限度の生活」です。生活保護費を返済に回すことで、最低限度の生活ができなくなってしまいます。
また、生活保護は明日明後日の生活をするのに困っている方が受給するものです。借金の返済のために生活保護が使われるとなると不正受給とみなされ、減額や受給打ち切りに至る可能性もあります。
そもそも、生活保護を受けるということは、国から「支払い能力がない」と見なされている状態です。
そのため、自己破産するしか方法がありません。自己破産の手続きは、生活保護の受給開始前でも開始後でも問題ありません。生活保護が認められた時点で、司法書士や弁護士に相談しましょう。
4章 個人再生中に無職になった場合の対処法
中には、個人再生の手続き中は就職していたが、再生計画中に無職になったという方もいるかと思います。
再生計画中の場合は、例え無職になって収入が0になったとしても継続して毎月支払いが発生します。無職になったからと言って支払いを止めてもらったり、いきなり取り消しになることはありません。
ですが、貯金が底をつき支払いができない状態が続くと、約束を破ったと見なされ債権者は再生計画の取り消しを裁判所に申し立てることができます。
1回程度であれば大目に見てくれる債権者も多いですが、1回払えない状態になったのであれば、無職である以上は今後も支払うのが難しいので取り消しは時間の問題でしょう。
再生計画が取り消されると、再生計画に定められていた債務カットや分割払いの効果がなくなってしまいます。そのため、債務者は一括して債務を支払わなければならないため注意が必要です。
そうならないためにも、無職になってしまい今後の支払いが不透明になった時点で、以下の2つの対処法を取りましょう。
①再生計画を変更する
再生計画中に無職になったり、収入が大幅に減ったりと再生計画を守ることが難しくなった場合は債務者の申し立てにより再生計画を変更することができます。
再生計画の変更が認められると最大2年間の範囲で、支払い期限の延長が可能になります。
ただし、借金を更に減額することはできないので注意が必要です。あくまで分割払いの回数を増やし、毎月の負担を減らして完済していきます。
再生計画を認めてもらうには、延長してもらっている間に就職することや、アルバイトをして収入を作ることなど完済の意思があることを必ず伝えるようにしましょう。
②ハードシップ免責を利用する
再生計画が守れず、今後も収入の見込みがないとなると本来であれば自己破産をするしかなくなります。
しかし、個人再生のみに認められている「ハードシップ免責」を利用することで、自己破産をしなくても残りの借金を免除してもらえる可能性があります。
ハードシップ免責は、
- やむを得ない事情により再生計画に基づいた返済が極めて困難となった
- 各債権につき4分の3以上の額の弁済を終えている
- 免責の決定をすることが債権者の一般の利益に反するものでない
- 再生計画の変更をすることが極めて困難である
の4つの条件を満たした場合により、認められる可能性があります。
例えば「あと少しで完済できたのに、病気や障がいを持ってしまいやむを得ず退職することになった」「あと少しで完済できたのに、台風や地震などの自然災害に遭ってしまい生活を立て直すのが困難になった」など、本人の力では対応することができないケースが挙げられます。
今まで真面目に返済していたのに、どうしようもない理由で水の泡になってしまうのでは債務者が報われません。そのための救済措置としてハードシップ免責があります。
ただ単に再生計画中に無職になっただけでは認められないので、条件に当てはまるかしっかりと専門家に相談のうえチェックしましょう。
5章 無職の場合は自己破産も視野に
無職の状態で債務整理をするのであれば、自己破産も視野に入れましょう。
自己破産では、支払い能力がないと見なされた場合、全ての借金が免除になる手続きを行います。
よって、現状収入がない無職で今後も収入が見込めないと裁判官に認められた場合は、自己破産をすることができます。
ただし、自己破産の条件は支払い能力がないことのほかに「免責不許可事由に当てはまらない借金であること」や「非免責債権ではない借金であること」も条件になります。
免責不許可事由の借金とは、ギャンブルや投資、浪費で作った借金のことです。ただし、事情を正直に話して真摯に対応することで免責不許可事由だとしても裁量免責になるケースがほとんどです。
非免責債権の借金とは、損害賠償金、慰謝料、交通違反の罰金や税金などの公的な支払いのことです。こちらは「支払いの義務がある」ため個人再生や自己破産をしても免除されることはありません。
もちろん、どんなに反省していることをアピールしたとしても裁量免責にならないです。時間をかけてでも必ず支払いましょう。
無職で自己破産をする方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
6章 無職で個人再生をしたい場合はまずはご相談を!
無職の場合、原則は個人再生をすることは難しいです。
しかし、ケースによっては認められる場合もあります。
「無職だけれど失いたくない財産があるから個人再生をしたい」「再生計画中だけれど無職になってしまったので、取り消しにならないようにしたい」と考えている方は、グリーン司法書士法人へご相談ください。
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個人再生の相談から完済までの流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
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