自己破産申請後は裁判所に行く必要がある?回数とタイミングを解説

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産
自己破産すると裁判所に何回行くことになる?その回数と出向くタイミングとは

この記事は約 12 分で読めます。

自己破産する場合、基本的には破産者自身が裁判所に出向く必要はありません。しかし例外的に、手続を進めるにあたり裁判所に行かなければならないケースがあります。

ただ、何回行くことになるのか、どのような服装で行くべきなのか気になることはいろいろあります。

そこで、

  1. 自己破産で裁判所に行くタイミングと回数
  2. 裁判所に行くときの服装と2つの心構え
  3. 同時廃止と管財事件に共通する「免責審尋」の質問内容とかかる時間
  4. 破産管財人との面接での質問内容とかかる時間
  5. 管財事件の「債権者集会」とは

の5つを章ごとに説明していきます。4番目の破産管財人との面談は裁判所で行われるものではありませんが、手続の一環で行われますのでまとめて解説します。

自己破産で裁判所に出向くことに不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
自己破産については、下記の記事で解説しています。

1章 自己破産で裁判所に行くタイミングと回数

免責審尋債権者集会管財人面談
同時廃止0~1回なし​なし
管財合わせて1回合わせて1回2~3回
自己破産で裁判所に行くタイミングと回数

自己破産の申立ては、破産者となる申立人の所在地(住んでいる場所) を管轄する裁判所で行います。

専門家に自己破産手続を依頼した場合、申立ては専門家が代理で行うため、裁判所に行かなければならないことを気にする必要はありません。

しかし自己破産手続を進めていく上で、裁判所に足を運ばなければならないタイミングがあります。

こうなると、手続を専門家に依頼した場合でも本人が出向くことが必要となりますが、自己破産が「同時廃止」か「管財事件」か、どちらで進むかによって行くタイミングや回数は異なります。

そこで、

  1. 同時廃止の場合(0~1回程度)
  2. 管財事件の場合(1~2回程度)

の2つのケースで裁判所に行かなければならないタイミングと回数について説明していきます。

なお、同時廃止と管財事件の違いについて詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

1-1 同時廃止の場合

同時廃止で本人が裁判所に行かなければならないのは、裁判官との面接が行われる「免責審尋」 のタイミングの1回だけです。

免責審尋とは
「免責」とは、通常であれば負うべき責任を負わなくて良いと許すことであり、自己破産では借金をゼロにすることを意味します。
その免責を認めるか決めるため、裁判所が破産者と面談を行い、様々な質問をしていくことを「免責審尋」といいます。通常は集団面接の形式で行われます。

同時廃止は、大雑把に言えば所有する財産が個別で20万円未満(総額100万円未満)のときが対象となるため、基本的には財産の調査や換価は必要ありません。また債権者に対する配当も行われないため手続にかかる期間が短く簡便な手続で済むことが特徴です。

自己破産の申立て後に同時廃止で行うことが決まり、申立書に不備や問題がなければ「破産手続開始・同時廃止決定」が出されます(これを略して同廃決定などと呼ぶことがあります)。

その後、書面審査だけで十分に審査ができないと判断された場合には免責審尋が行われます。そして、免責審尋の結果で特に問題ないと裁判所が判断すれば「免責決定」が出され手続は終了します。

破産手続開始決定と破産手続廃止決定が同時に行われるため、同時廃止で本人が裁判所に行くことになるのは基本的にこの免責審尋期日の1回だけです。また、免責審尋が行われるのは書面審査だけでは不十分とされる案件であり、だいたい10~20件に1件程度の割合です(およそ5~10%程度の確率)

1-2 管財事件の場合

管財事件で本人が裁判所に行かなければならないのは、「免責審尋」と「債権者集会」が行われるときであり、複雑なケースでは回数が増えることもあります。

管財事件の場合、裁判所が破産管財人を選任し、債権者に対する配当の手続も必要です。

破産管財人とは
破産管財人とは、破産者の所有する財産を管理・換価し、債権者に配るなどの役割を担う人で、裁判所が選任します。

そのため、管財の破産手続開始決定後には、選任された「破産管財人」との面接が行われ、面接の内容について調査が行われます。調査が一通り終われば、次に「免責審尋」と「債権者集会」に行くことになります。

免責審尋と債権者集会は同時に実施され、

  • 配当がなければ破産手続廃止決定
  • 配当があれば財産調査と換価が再度行われ、配当実施のための債権者集会開催後の免責許可決定で破産手続終了

という流れになります。

なお、申立て直後の破産管財人による面接は、弁護士事務所で月1度のペースで2~3回程度行われることが一般的です。なぜなら、破産管財人は弁護士の中から選ばれるためです。

そのため管財事件で裁判所に行かなければならないのは免責審尋と債権者集会が開催されるときで、2つが同日に行われるときには1度のみで済むものの、複雑なケースでは債権者集会が複数行われるため回数が増えます。

2章 裁判所に行くときの服装と2つの心構え

裁判所に行くときの服装に、特に決まった指定などはありません。

ただし裁判所という場所に似つかわしくないといえる派手な服装や、あまりにも簡素な服装は好ましくありません。

裁判所にいくときには相手によい印象を与えることができるように、次の2つを心構えとして念頭に置くようにしましょう。

  1. 社会人として常識的な服装
  2. 反省の意志をあらわす清潔感のある服装

それぞれの心構えについて説明していきます。

2-1 社会人として常識的な服装

裁判所に行くときには、社会人としての常識に逸脱しない服装を心掛けるようにしてください。

たとえば男性はスーツ 、女性はスーツまたはシンプルなワンピースなどを選ぶとよいでしょう。

必ずしもスーツがよいというわけではなく、たとえば冬ならセーター、夏ならポロシャツなど季節に合った服装でも問題ありません。

2-2 反省の意志をあらわす清潔感のある服装

本来であれば返さなければならない借金を返せなくなったことに対し、「反省」している意思をあらわすことのできる清潔感のある服装を心掛けるべきです。

同時廃止と管財事件のどちらの場合でも、裁判所に行く主な目的は免責を認めてもらうことです。そのことを踏まえて、それにふさわしい服装をしていきましょう。

黒などで統一する必要はありませんが、誰が見ても派手と感じる服装や、肌を露出しすぎるような格好は不向きといえます。

3章 同時廃止と管財事件に共通する「免責審尋」の質問内容とかかる時間

先にも述べたとおり、「免責審尋」とは借金の返済義務を免除するか判断するため、債務者から自己破産に関する事情を「ヒアリング」するための手続です。

自己破産を行う目的は借金をゼロにすることのため、免責審尋は大変重要といえます。

裁判所によって免責審尋の運用は異なり、同時廃止の場合には免責審尋のないケースもあります。

また、免責許可には至っていないものの破産手続開始決定を受けたという方たちを複数集め、裁判官が説明した後にそれぞれに質問していく「集団免責審尋」が行われることもあります。

気になるのは免責審尋で裁判官からどのような質問がされるのか、どのくらいの時間がかかるのかでしょう。

そこで、

  1. 免責尋問の質問内容
  2. 免責尋問でかかる時間

の2つについて説明していきます。

3-1 免責尋問の質問内容

免責審尋で裁判官から質問される主な内容は、なぜ自己破産に至ったかという事情です。

  • 支払不能状態に陥ることとなった原因
  • 破産に至ったこと自体をどう考えているか
  • 今後の生活についての展望

などを聴取されます。

自己破産の申立てを行ったときには詳細を申立書類に書いているはずなので、その内容を確認していくことになります。

なお、集団免責審尋が行われる場合には、免責制度に関する理解をしているか質問されるだけで、プライバシー配慮のため個別の自己破産の事情までは質問されることはありません。

いずれの場合でも、免責審尋で虚偽の発言は禁物ですので、質問には「正直」にこたえるようにしてください。

3-2 免責尋問でかかる時間

免責審尋は基本的に申立書の内容を確認するだけというケースがほとんどのため、数分程度で終了することが多く、長くても15分程度が目安です。

面接形式は集団面接となります。個々の時間は短いですが、遅刻はしないよう、時間に余裕をもって行くことを心がけましょう。

4章 破産管財人との面接での質問内容とかかる時間

管財事件では、破産開始決定前の自己破産申立て直後に破産管財人が選任され、破産開始決定後すぐに破産管財人による「面接」が行われます。

申立代理人となっている弁護士などが同席の下で、破産管財人と3者で行われることが多いようです。

そこで、

  1. 破産管財人との面接での質問内容
  2. 破産管財人との面接でかかる時間

の2つについて説明していきます。

4-1 破産管財人との面接での質問内容

破産管財人との面接で質問される内容は、主に以下のとおりです。

  • 借金の内容
  • 借金をした時期
  • 借金の理由・原因
  • 現在の収支
  • 免責不許可事由と反省の有無
  • 財産の内容

一定の破産債権者を害する行為や破産法上の義務に違反する行為などがあれば、免責不許可事由に該当すると判断され、原則として免責は認めてもらえなくなります。

このような免責不許可事由に該当する事情があるか否か、ある場合でも裁量免責を認めることのできる事情の有無などを質問されることになります。

裁量免責とは
裁量免責とは、自己破産に至るまでの経緯や事情などを考慮し、裁判所の裁量で免責を許めることです。

質問による回答をもとに、管財人は調査結果の報告や免責を認めてよいか裁判所に意見書を出します。この意見書は裁判官が免責を認めてもよいか決める重要な材料とされます。

4-2 破産管財人との面接でかかる時間

破産管財人との面接にかかる時間は、初回は1時間半程度かかることが多いです。その後は、案件にもよりますが1時間以内に終わることが多いです。

質問にスムーズに回答できるように、先に述べた質問される内容の答えを準備しておくとよいでしょう。とはいえ、全てを事前に準備することは不可能です。やはり、聞かれたことには素直に、かつ正直に答えるのが一番重要です。

正直に答えることが、面接の時間を短縮する一番効果的な方法だと言えるでしょう。

特に、免責不許可事由があるときには、反省の意思や誠意が伝わるような言葉も考えておいたほうがよいでしょう。

5章 管財事件の「債権者集会」とは

管財事件の場合、破産手続開始決定から2~3か月後に債権者集会が最低1回は開催されます。

5-1 債権者集会の目的

管財事件では、破産管財人が債務者(申立人)の財産状況を詳しく調べたうえで、一定以上の財産を現金に換え、それを各債権者へ分配することになります。

この手続を「配当」と言いますが、配当の進捗状況や結果報告をするのが債権者集会です。

5-2 債権者集会で報告・確認される内容

債権者集会では、管財人から配当手続きの状況について報告がなされます。

1回目の債権者集会の日までに配当が全て完了しているのであれば、どの債権者にいくら支払ったのかの結果報告で終わります。

配当が完了していなければ、現在どこまで進んでいるか、今後の進め方、残っている業務などの報告がなされます。

なお、債権者といっても実際の事案において貸金業者が出席することはほぼありません。出席した場合は、何らかの質問を受けることがありますが、それに対しては破産管財人が回答します。

5-3 債権者集会が開催される時期・回数

開催されるのは破産決定から3か月後個人の破産では数分程度で終了することが多く、特に大きな騒ぎやトラブルになることはほとんどありません。

また、債権者集会は多くの場合1回で終わります。

大型の管財事件における債権者集会
ここまで説明してきた管財事件は、個人の破産手続を念頭に置いています。単純な個人事業主の場合は債権者も比較的少なく、債権者集会もすぐに終わることが多いです。

一方、管財事件の中には、たとえば株式会社の破産や大会社の倒産といった大型の事件もあります。こういった事件は最初から弁護士が申立てをすることになりますが、取引先や株主など、数百人単位の債権者が存在する事件になりやすいです。

こういった大型の管財事件では、債権者集会に出席する債権者も多く、配当にも時間がかかりますので、開催回数や時間は増える傾向にあります。

ここまで説明してきた管財事件は、個人の破産手続を念頭に置いています。単純な個人事業主の場合は債権者も比較的少なく、債権者集会もすぐに終わることが多いです。

一方、管財事件の中には、たとえば株式会社の破産や大会社の倒産といった大型の事件もあります。こういった事件は最初から弁護士が申立てをすることになりますが、取引先や株主など、数百人単位の債権者が存在する事件になりやすいです。

こういった大型の管財事件では、債権者集会に出席する債権者も多く、配当にも時間がかかりますので、開催回数や時間は増える傾向にあります。

まとめ

自己破産をすると、裁判所に行かなければならないことに不安や苦痛を感じる方もいるでしょう。しかし実際に足を運ぶのは同時廃止と管財事件のどちらの場合でも1度であることがほとんどです。

裁判所に行くタイミングは、同時廃止と管財事件のどちらで手続が進むかによって異なりますが、いずれの場合でも複雑なケースでなければ1度のみで済みます。

また、裁判所に行くときの服装にも決まりはないため、常識的で清潔感を感じられ、反省の意思を伝えることができる服を選ぶようにしてください。

もしも自己破産で裁判所に行かなければならないことに不安を感じているときや、実際に面談でどのような質問がされるか心配という方は、グリーン司法書士法人グループにまずはご相談ください。

休日や夜間にも相談を承っており、外出が難しい場合にはオンラインでの相談も可能ですので、お気軽にご相談いただければと思います。

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よくあるご質問

自己破産をすると裁判所に何回行く必要がある?
自己破産手続き中に破産者が裁判所に行く回数は同時廃止の場合0~1回程度、管財事件の場合は1~2回程度です。
自己破産時に裁判所に行く回数について詳しくはコチラ
自己破産手続き時の裁判所で聞かれることは?
自己破産手続き時に裁判所に行った際には、以下の内容を聞かれる場合が多いです。
支払不能状態に陥ることとなった原因
破産に至ったこと自体をどう考えているか
今後の生活についての展望
自己破産時の裁判所で聞かれる内容について詳しくはコチラ
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