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- 自己破産手続きの基準は、借金の金額ではなく支払不能であるか
- 支払不能かどうかの目安になる状況
- 支払不能の要件
- 自己破産できない場合の対処法
自己破産は「借金に悩む人が生活の立て直しを図るための制度」です。しかし、借金を抱える人であれば、誰でも手続きができるというわけではありません。
そこで、「いくらからいくらまでの借金なら自己破産ができるのか」ということが気になる人もいるのではないでしょうか。
今回は、「自己破産はいくらからいくらまでの借金をなくせるのか」という疑問や、支払不能の判断基準、破産後にどのくらい財産を残せるのかなどについて解説します。
自己破産を検討している方や手続きできる金額が気になっている方はぜひ、参考にしてください。
目次 ▼
1章 自己破産はいくらからいくらまでの借金をなくせる?
借金が増え自己破産が頭に浮かんだとき、実際にどのくらいの借金額であれば自己破産できるのか、「支払不能」とはどのような状況であるのかを理解している人は、決して多くありません。
この章では、自己破産の金額に関する誤解を整理しながら、「支払不能」という基準をどのように判断するのか、その目安をわかりやすく解説します。
1-1 「自己破産はいくらからできるのか?」という誤解
自己破産に関する多くの疑問の一つに、「借金がいくらになったら自己破産できるのか?」というものがあります。
しかし、特に「〇〇円以上の借金がある場合に自己破産できる」などと、法律で定められているわけではありません。自己破産ができるかどうかは、借金の金額ではなく「支払不能の状態にあるか」が基準となります。
たとえば、借金額が100万円でも、収入も貯蓄もなく返済の目処が立たない人は、自己破産が認められる可能性があります。一方で、借金額が500万円であっても、安定した収入があり返済できるとみなされれば、破産の必要はないと判断される可能性があります。
1-2 自己破産ができるのは「支払不能」である場合
自己破産ができるかどうかは、客観的に見て支払不能かどうかが基準になります。「このくらいの借金額だと自己破産できる」という金額が、決められているわけではありません。
債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
また、「支払不能」とは「継続的に借金を返す見込みが立たない状態」をいうと、破産法で定められています。一時的に支払いが遅れているという状態は、支払不能とはいえません。
この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(省略)をいう。
1-3 支払不能かどうかの目安
このように、支払不能の基準は総合的に判断しなければならず、自分が支払不能状態であるのかを一人で見極めることは難しいでしょう。
ただし、次のような状況が続く場合は、すでに支払不能状態である可能性が考えられます。
- 給料より返済額のほうが多い
- 返済するために新たな借金をしている
- 延滞や督促が続いている
- 数か月先まで返済の見通しが立たない
自分が当てはまると思われる場合は、そのまま放置するのではなく、司法書士や弁護士などの専門家に相談してみましょう。
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2章 自己破産で支払不能と認められる要件
支払不能は、本人が「支払えない」と感じているだけではなく、裁判所から「返済能力を欠いている」と認められる必要があります。
この章では、破産法で定められた支払不能の要件を、4つのポイントに分けて解説します。
2-1 支払能力を欠いている
収入や資産の状況から見て、借金を返済する余力がない状態を指します。
たとえば、すべての債権者への返済合計額が毎月5万円だとします。月の手取りが20万円で、生活費が18万円かかる場合、残りの2万円では複数社への返済は困難です。このような状態である場合は「支払能力を欠いている」と判断され、自己破産が認められる可能性があります。
2-2 弁済期に債務を弁済できない
弁済期(返済期限)を過ぎても、支払いができない状態です。あくまでも返済期限を過ぎている場合であり、明らかに返済が無理な状況でもまだ返済期限が来ていない場合には、支払不能とは認められません。
たとえば、数か月にわたって延滞や督促状が届いている場合などは、「支払不能」とみなされる可能性が高くなります。
2-3 一般的かつ継続的に債務を弁済することができない
「支払不能」は、単に一時的に返済資金が足りない状態ではなく、「今後も返済の見込みがない状態」を指します。
たとえば、これから1〜2か月間は収入がなく返済ができないけれど、その翌月からは収入を得る予定があり返済ができるという場合は、支払不能とはいえません。
2-4 支払不能に当てはまる状態である
自己破産が認められるためには、「支払不能」に当てはまる状態であることが客観的に確認できる必要があります。
本人が「返せない」と思っていても、貯蓄や一定の収入がある場合には、裁判所から支払不能の状態にはないと判断されることがあります。一方で、本人が「なんとか返せる」と考えていたとしても、客観的に見て返済が不可能な状態であれば、支払不能と評価されることになります。
このように、支払不能かどうかの判断は主観ではなく、収入・支出・資産・負債の全体状況を総合的に見て決められます。専門家の判断を仰ぐことで、自分の状況が「支払不能」に当たるかどうかを具体的に確認することができます。
支払不能について、次の記事でも詳しく解説しています。
3章 支払不能と認められず自己破産できない場合の対処法
自己破産を検討していても、実際には「支払不能ではない」と判断され、破産が認められない可能性もあります。
しかし、その場合でも借金の負担を減らす方法はあります。それが、「任意整理」と「個人再生」です。どちらの方法も、支払不能に至る前の段階で検討したい選択肢です。
この章では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。
3-1 任意整理
「任意整理」とは、裁判所を通さずに債権者と交渉し、借金の返済条件の見直しを交渉する手続きです。自己破産とは異なり、元金を返済する一方で、将来利息をカットして返済負担を軽くします。裁判所を介さず、比較的気軽にできる手続きです。
また、任意整理は、整理の対象に含める債権者を選ぶことができるため、自動車ローンや保証人付きの債務を除外したい場合にも柔軟に対応できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 安定した収入がある個人 |
| メリット | 将来利息のカット、毎月の返済額軽減、裁判所を通さずに短期間で完了 |
| デメリット | 元金は減らない、信用情報への登録(ブラックリスト) |
3-2 個人再生
「個人再生」とは、大幅に減額してもらった借金を3〜5年かけて完済するよう再生計画案を作成し、裁判所に認可をもらう手続きです。
自己破産と大きく異なるのは、「住宅ローン特則」を利用すれば自宅を手放さずに済む点です。
自己破産の要件に該当しないけれど、借金額が大きくて完済できそうにない人には、個人再生が有力な選択肢になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 安定した収入がある個人 |
| メリット | 大幅な債務の減額が可能、住宅・車の維持が可能、財産を失わない |
| デメリット | 官報公告掲載、信用情報への登録(ブラックリスト)、手続きが複雑 |
4章 自己破産をするといくらまで財産を残せる?
自己破産をすると家財も預金も全て処分されると思っている人もいますが、これは誤解です。債務者の今後の生活のため、必要な範囲の財産は「自由財産」として手元に残せることになっています。
自由財産には、主に次のようなものがあります。
◆主な自由財産
- 99万円以下の現金
- 破産手続開始決定後に取得した財産(新得財産)
- 差し押さえが禁止されている財産(生活に欠かせない家財道具や、給料・年金などの一部)
- 「自由財産の拡張」が認められた財産
- 「破産財団」から放棄された財産
ただし、自己破産の申立時に一定額以上の現金を持っていると、破産手続きが「同時廃止」ではなく「管財事件」となってしまう可能性があります。申し立てる裁判所の運用によっても変わってくるため、詳細は相談時に専門家に確認しましょう。
4-1 「自由財産の拡張」で残せる財産を増やせる場合も
このように、自由財産の範囲はあらかじめ法律で定められていますが、特別な事情を有する場合など、裁判所から自由財産の範囲を広げてもらい、手元に残せる財産を増やせる可能性があります。これを「自由財産の拡張」(破産法34条4項)といいます。
たとえば、地方で車がなければ通勤できない場合や、家族の医療費・学費など特別な出費がある場合などが該当します。
自由財産の拡張を裁判所が認めてくれるかどうかは、手続きを行う裁判所の運用や、生活状況などによっても変わってきます。いくらまでなら残せるのかについては、司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ:自己破産できるかどうかは「金額」ではなく「支払能力」
自己破産は、「いくらまでの借金なら手続きできる」といった「金額」ではなく、「支払能力」がポイントになります。借金が多くても、返済見込みがあるなら破産はできず、逆に少額でも返済が不可能なら破産が認められることもあります。
また、破産をしても「自由財産」は手元に残すことができ、「自由財産の拡張」を利用できる可能性もあるため、生活を立て直すことは十分可能です。
ただし、自己破産が本当に最適な選択かどうかについては、ぜひ専門家に相談されることをおすすめします。収入・支出・資産・家族構成などを総合的に見て、任意整理や個人再生の方が向いている可能性もあります。
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