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強制競売とは、抵当権を持たない債権者が行う競売を指します。
通常、不動産の場合、一般的に住宅ローンを組む際に、不動産自体に抵当権が設定されます。(いわゆる担保にするということです)
そのため、住宅ローンを滞納すると、住宅ローンの債権者である金融機関は抵当権を実行して不動産を競売にかけます。この場合の競売は、「担保不動産競売」です。
一方で、抵当権を持たない債権者、例えば消費者金融やクレジットカード会社などが、債権回収を目的に不動産を競売にかけることを「強制競売」と言います。
この記事では強制競売とはなにか、強制競売の流れについて解説します。
目次 ▼
1章 強制競売とは?担保不動産競売との違い
競売には、主に「強制競売」と「担保不動産競売」の2種類があります。
まずは、この2つの違いについて解説しながら強制競売について解説します。
1−1 強制競売と担保不動産競売の違い
強制競売とは、不動産に対して行う強制執行のひとつで、抵当権を持たない債権者が行う競売を指します。 強制競売では不動産を裁判所が競売にかけるので強制競売と呼ばれます。 強制競売では債権者に抵当権がないため、確定判決や支払督促、公正証書、和解調書といった「債務名義」を用いて競売を行います。
一方で、担保不動産競売とは、住宅ローン滞納時に債権者である金融機関は抵当権を実行して不動産を競売にかけることです。
担保不動産競売については、以下の記事にて詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
1−2 強制競売が行われるケース
強制競売が行われるのは、主に、消費者金融からの借金やクレジットカードの利用分など、住宅ローン以外の借金を滞納し、裁判に負けたときなどです。(ただし、住宅ローン以外でも、不動産を担保としている借金を滞納した場合には担保不動産競売となります)
とはいえ、住宅ローンが残っている場合には抵当権の方が優先されるため、競売の売却金で住宅ローンが完済され、自分にも配当が回ってくる見込みがなければ、他の債権者が強制競売をすることはできません。その場合、債権者は強制執行にて給与や預貯金などの財産を差し押さえます。
そのため、強制競売となるのは住宅ローンを完済しているケースや、相続した不動産を有しているケースです。
なお、強制競売ができない場合でも、別の財産を対象に強制執行はできるので、給与や預貯金などの財産が差し押さえられる可能性はあります。
2章 強制競売の流れ
強制競売の大まかな流れは以下のとおりです。
- 督促・催告を受ける
- 債務名義を取られる
- 競売開始決定通知が届く
- 執行官・不動産鑑定士による不動産の現況調査
- 配当要求終期の公告・入札、落札者の決定
- 売却許可決定
- 引き渡し・立ち退き
それぞれ詳しく解説します。
2−1 督促・催告を受ける
最初は、債権者から支払いを求める督促・催告を受けます。
督促・催告の方法は、内容証明による書面での通知や電話やメールなどです。
もちろん、この時点で請求に応じれば、競売手続きが進められることはありませんが、督促・催告による請求は一括請求であることがほとんどですので、返済を滞納している状況では支払えないことがほとんどでしょう。
2−2 債務名義を取られる
強制競売をするためには債務名義が必要です。債務名義とは、具体的に以下のようなものです。
- 確定判決
- 仮執行宣言付判決
- 仮執行宣言付支払督促
- 執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)
- 確定判決と同一の効力を有するもの
債務名義を取得するためには、裁判にて確定判決を得るほか、支払督促などの手続きで得ることも可能です。
そのため、債権者は債務者に対して訴訟や支払督促など法的措置を取ります。
2−3 競売開始決定通知が届く
債権者は、裁判で取得した債務名義を用いて、裁判所に強制競売の申立てを行い、それが受理されると債務者に対して「競売開始決定通知」が届きます。
「競売開始決定通知」は、あくまで「裁判所が競売の手続を開始した」という通知ですので、この時点で入札が行われたわけではありません。
なお、競売開始決定通知の到着から実際に競売として入札が始まるまでには、半年程度の猶予があります。
競売を取り下げてもらいたいのであれば、この段階から動き始めなければ手遅れになってしまいます。
競売の開始決定を取り下げられるのは申し立てた債権者のみです。そのため、取り下げてもらうためには、債権者と交渉する必要があります。
2−4 執行官・不動産鑑定士による不動産の現況調査
競売の開始決定後、数週間〜2か月程度経過すると、裁判所の執行官や不動産鑑定士による不動産の現況調査が行われます。
調査日の数週間前には、債務者のもとに現況調査に関する書面が届きますので必ず確認してください。
現況調査とは、不動産の状況を見て、競売での最低落札額(売却基準価格)を算出するための調査で、債務者の立会いが必要です。事前に通知された調査日は在宅しておくようにしましょう。
なお、原則として現況調査の日程は変更することができません。もし、当日不在の場合には、執行官が鍵屋の業者に依頼し、鍵を開けて強制的に調査を進めます。
2−5 配当要求終期の公告・入札、落札者の決定
現況調査が完了から1か月程度経過すると、配当要求終期の公告が行われます。配当要求終期の公告とは、債務者の不動産が競売にかけられることを他の債権者に知らせる手続きです。
申立て債権者以外は、この通知を見て申し立てることで、競売後の売却益の残金を分配してもらえる可能性があります。
配当要求終期の公告が行われると、入札期間に入ります。なお、債務者には裁判所から、入札期間や売却基準価格(最低落札額)などが記載されている「期間入札の通知」が届きます。
入札期間・開札期間はあらかじめ決定されており、入札期間は1週間程度。開札日になると、落札者が決定します。
落札者は、最も高額な入札額を提示した人です。
2−5−1 任意売却の最終ラインはここ!
任意売却の最終ラインは、配当要求終期の公告が行われたときです。この期間は、公告を見た不動産業者から任意売却を提案する営業がかかることがあります。
「競売にかけられるくらいなら、任意売却のほうがいい」と考えるのは当然です。実際、任意売却のほうが相場相当で売却できますし、引き渡しの日程なども融通が利きます。
しかし、公告を見て営業をかけてくる業者の中には、切羽詰まっている人に付け込んで高額な着手金を要求する悪質な業者も存在します。
可能であれば、自身で不動産業者を見極めて任意売却の話を進めたほうが良いでしょう。
なお、グリーン司法書士法人にはグループ会社に不動産業者を有しています。任意売却のご相談も受け付けていますので、安心してご相談ください。
2−6 売却許可決定
落札者が決定しても、売却自体が確定したわけではありません。
裁判所が落札者の審査を行い、売却許可決定を出し、落札者が代金を納付することで、売却が確定します。
2−7 引き渡し・立ち退き
落札者は売却許可決定から1ヶ月以内に裁判所へ代金を納付します。納付されると、不動産の所有権は落札者に移転しますので、債務者は不動産を引き渡さなければいけません。
もし、引き渡しを拒否した場合、落札者は裁判所に引渡命令の申立てをし、強制退去が命じられます。強制退去では、家具家財なども強制的に運び出されてしまいます。
3章 強制競売を受けないための対処法
強制競売となると、不動産は相場よりも安い金額で売却される可能性がありますし、引き渡しの日程も融通が利きません。
そのため、なるべく強制競売とならないよう、早い段階で対処をすることをおすすめします。
3−1 債務整理
強制競売となるのは、消費者金融などからの借金を返済できないときです。
そのため、借金を整理することさえできれば、強制競売に至ることはありません。
債務整理には「自己破産」「個人再生」「任意整理」の3種類があります。
ただし、強制競売を受ける可能性があるということは、所有している不動産に価値があるということです。持ち家に価値がある場合にいは売却して返済すればよいですので、「返済不能」として認められず自己破産ができない可能性があります。
個人再生の場合も、手続き後に返済するべき「弁済額」を算出する際に、不動産の価値が加味されて、個人再生の効果がない可能性が高いでしょう。
ここでは、債務整理の種類について解説しますが、どの債務整理が適用できるか、適切かは専門家に相談し、判断してもらうことをおすすめします。
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3−1−1 自己破産
自己破産とは、資産が収入が足りずに借金お返済が難しくなった方が、裁判所に申し立てることで、借金の返済義務を免除してもらう手続きです。
借金は免除されますが、その代わり、一定以上の財産は処分され、債権者へと分配されます。
そのため、持ち家を残せる可能性はほとんどありません。
収入がない方(少ない方)や、借金が高額な方には、自己破産が適しています。
3−1−2 個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てることで、借金額を5分の1〜10分の1程度に減額し、原則3年で返済する再生計画を立てる手続きです。
借金の返済を続けていかなければいけませんが、住宅ローン特則を利用することで住宅ローン以外の借金を手続きすることができます。
また、自己破産のように財産が処分されることはありませんので、車などの財産を残したまま手続きできる可能性があります。
ただし、手続き後も借金の返済を続けなければいけませんので、安定した収入が必要です。
お仕事をされている方で、家など残したい財産があるという方には個人再生をおすすめしています。
3−1−3 任意整理
任意整理とは、債権者と交渉することで将来発生する利息や遅延損害金をカットしてもらう手続きです。
元金は減らないものの、利息・遅延損害金がなくなることで、返済の総額と月々の返済額を減らせる可能性があります。
任意整理は、債務整理の中でも最も手軽で、リスクの少ない手続き。消費者金融やクレジットカード会社1~3社程度であれば、任意整理で解決できる可能性が高いでしょう。
3−2 不動産を自ら売却する
借金等の返済ができないのであれば、強制競売をかけられる前に自ら不動産を売却することも検討しましょう。
競売にかけられるよりも、自身で不動産業者を通して売却したほうが相場に近い金額で売却できる可能性が高いからです。
また、立ち退きの日程などもある程度融通を利かせることができます。
賃貸物件への住み替えは必要となりますが、住宅ローン完済物件の任意売却なら、借金を完済した上で、まとまった手持ち現金も手にして、今後の資金不足を解消できる可能性が高いでしょう。
3−3 リースバックを利用する
リースバックとは、持ち家を売却し、売却した家を借りなおして住むという資金調達方法です。
今まで住んでいた家を賃貸として借りるので、借金を返済し、手持ち現金を確保しながら、今までと変わらない生活を送ることができるでしょう。
ただし、所有権自体は失ってしまうことや、売却価格が市場価格より安くなってしまうことなど、デメリットもあるので、ほかの方法との比較検討が必要です。
3−4 不動産担保ローンで返済資金調達をする。
住宅ローンを完済しているならば、不動産担保ローンでの借り換えで解決する可能性があります。
不動産担保ローンのメリットとしては、借金が完済されて強制競売を止められるということのほかに、次のようなものがあります。
- 住み続けられる
- 普通の消費者金融よりも金利が安いことが多い。
ただし、デメリットもあります。
まず、競売にかけられているということは、信用情報に金融事故として記録されているはずなので、ローンの審査が通りにくいでしょう。
そして、不動産担保ローン返済の負担もデメリットです。競売をかけられているということは、返済金に困っていたということですので、不動産担保ローンによって競売を受ける可能性もあります。
4章 強制競売の通知を受けたときにできること
ここでは、強制競売の通知を受けたときにできることについて解説します。
4−1 親戚から借りるなどしてお金を工面する
強制競売を止めるには、正直なところ、お金を用意するしかありません。
強制競売の通知が来ている場合、すでに信用情報機関に事故情報が登録(いわゆるブラックリスト)されていて、金融機関や消費者金融から借金をすることはできないでしょう。頼れるのは、親戚や知人だけかと思います。(知人からの借金はトラブルの原因となるためあまりおすすめはできません)
親戚などからお金を貸してもらい、原因となっている借金を返済すれば、当然強制競売はストップします。
借金が返済できない状況で、自身で滞納分をすべて用意するのは現実的ではありません。家を失うのは大きなリスクになりますので、頼れる人がいるのであれば、相談してみてください。
4−2 早めに専門家に相談する
自身の状況で、どのような対策をすべきか分からないという方は司法書士などの専門家に相談してみましょう。
専門家に状況を説明することで、状況に適した解決策を提案してくれるはずです。
借金トラブルなどについては、初回相談を無料としているところも多いので、まずは気軽な気持ちで相談してみてください。
きっとあなたの力になってくれるでしょう。
4−3 引っ越しの準備をする
強制競売を止めることができないのであれば、早急に引っ越しに向けた準備に取り掛かりましょう。
強制競売では、引渡日などを自身で調整できません。入札が始まり、落札者が決定したらトントン拍子で進み、あっという間に退去命令が出てしまいます。
そのため、強制競売の通知が来たら迅速に引越し先を探し、いつでも退去できるようにしておきましょう。
5章 まとめ
強制競売とは、抵当権を持たない債権者が債権回収をするために行う競売です。
消費者金融からの借金だからと油断はできません。他の財産の差押えで回収ができないと判断されると、強制競売を受けて家を失うリスクがあります。
そうならないためにも、早い段階で対処しなければいけません。
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よくあるご質問
- 強制競売とは?
- 強制競売とは、抵当権を持たない債権者が行う競売を指します。
- 裁判所による強制競売の流れは?
- 裁判所による強制競売の流れは、下記の通りです。
・督促・催告を受ける
・債務名義を取られる
・競売開始決定通知が届く
・執行官・不動産鑑定士による不動産の現況調査
・配当要求終期の公告・入札、落札者の決定
・売却許可決定
・引き渡し・立ち退き