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- 定年後に住宅ローンが払えない理由
- 定年後に住宅ローンを払えないと起こること
- 定年後に住宅ローンを払えない場合の対処法
- 定年後に住宅ローンが払えない事態を防ぐ方法
- 住宅ローン以外の借金がある場合の解決法
定年後に再就職したとしても、収入が減少するため住宅ローンを払えないことに不安を感じる方は少なくありません。
住宅ローンを定年後に払えない場合、持ち家を失うだけでなく、経済的にも厳しい老後の生活になると予想されます。
そこで、定年後に住宅ローンが払えないときはどうすればよいのか、不安を感じた段階で早めに対処するべきこと9つを紹介します。
目次 ▼
1章 定年後に住宅ローンが払えなくなる理由
住宅ローンの契約当初は、長期に渡る支払いを無理なく続けることができる「返済計画」を立てていたはずです。
しかし定年後は、65歳から開始される年金受給までの間、受け取った退職金を切り崩すなど、経済的に余裕はなくなります。
他にも以下の「理由」により、定年後に住宅ローンの支払いが厳しくなると考えられます。
- 完済年齢を高くして住宅ローンを組んでしまった
- 定年退職後に収入が激減してしまった
- 退職金が予想より少なかった
- 老後の生活費の見積もりが甘かった
- 突発的な支出が発生してしまった
それぞれの理由を説明します。
1-1 完済年齢を高くして住宅ローンを組んでしまった
定年後に住宅ローンが払えない理由として、契約当初に「完済年齢」を高く設定してしまうことが挙げられます。
住宅ローンの代表格といえる「フラット35」では、最長35年の返済期間で契約ができますが、完済年齢の上限は80歳です。
高齢での完済計画で住宅ローンの契約も可能であるものの、退職後に十分な収入がなければ返済できなくなる恐れが高まります。
1-2 定年退職後に収入が激減してしまった
定年後に住宅ローンが払えない理由として、定年退職後に収入が「激減」してしまうことが挙げられます。
再雇用で引き続き同じ勤務先で働く場合でも、パート勤務で勤めることが多く、正社員雇用の収入より2~3割減ることが多いといえます。
年金が主な収入になった場合、さらに手元のお金は少なくなり、住宅ローンの返済が厳しくなってしまいます。
1-3 退職金が予想より少なかった
定年後に住宅ローンが払えない理由として、定年時に勤務先から受け取る「退職金」が予想より少ないことが挙げられます。
勤務先が経営不振などの事情で十分な退職金を支払えず、減額されるケースも少なくありません。
退職金をあてにして住宅ローンを契約したのに、受取額で住宅ローンの残債を完済できなければ、定年後の収入激減で返済できなくなる恐れが高くなります。
1-4 老後の生活費の見積もりが甘かった
定年後に住宅ローンが払えない理由として、老後で必要となる「生活費」の見積もりが甘いことが挙げられます。
老後の生活費を明確に想定しなければ、想定外の出費で返済に充てるお金が足らなくなる恐れがあります。
健康リスクが高くなることも視野に入れて生活費を見積もった上で、住宅ローンを契約しましょう。
1-5 突発的な支出が発生してしまった
定年後に住宅ローンが払えない理由として、予想外の「突発的」な支出が発生してしまうことが挙げられます。
予定していなかった、子の大学入学費用や学費、本人や家族の医療費などが突発的な支出の例といえます。
民間の生命保険に加入して備えていた場合でも、支出が大きければ補填しきれず、住宅ローンの返済もできなくなる恐れがあります。
2章 定年後に住宅ローンを払えなくなると起きること
定年後に住宅ローンの支払いができなくなった場合、滞納している期間によって以下のことが起こります。
滞納期間 | 起こる内容 |
---|---|
1か月前後 | ・督促状が届く |
2~3か月 | ・督促状や催告書が届く ・電話で催促される |
5か月程度 | ・最終督促が届く ・期限の利益が失われる ・保証会社から代位弁済の予告通知が届く |
6か月程度 | ・分割返済の権利を失い一括請求される ・保証会社が代位弁済する ・保証会社から代位弁済通知書が届く ・信用情報に金融事故情報が掲載される ・競売に向けた手続が始まる |
8~9か月程度 | ・保証会社が競売の申立てを行う ・差押え通知書が届く ・競売開始決定通知書が届く |
10~11か月程度 | ・裁判所の執行官が現況調査を行う |
13~16か月程度 | ・競売の期間入札通知書が届く ・競売完了後に立ち退きを要求される |
3章 定年後に住宅ローンを払えないときにすべき9つのこと
定年後に住宅ローンを払えない状況に陥ると、住む場所を失う可能性もあります。
晩婚化や賃金が上がらないなどの背景も関係するとはいえ、人生で最も高価な買い物といえる家の購入においては、住宅ローンを返済し続けられるか慎重な判断が必要です。
ただ、当初は問題なく完済できる計画を立てていたはずが、様々な事情で定年後の支払いが厳しくならないとも限りません。
この場合、以下の9つを検討しましょう。
- 再雇用・再就職で収入を少しでも増やす
- 生命保険を解約する
- 手持ち資産を売却する
- 生活費を見直し支出を減らす
- 金融機関に相談する
- 住宅ローンの借り換えを検討する
- リースバックを活用する
- リバースモーゲージを活用する
- 自宅を売却する
それぞれ説明します。
3-1 再雇用・再就職で収入を少しでも増やす
定年後に住宅ローンを払えないときは、再雇用や再就職で働き、収入を少しでも増やしましょう。
退職金や貯蓄、年金のみで返済資金を賄えないのなら、再雇用や再就職で収入を増やせば返済を続けられる可能性はあります。
定年前の勤務先に再雇用制度がある場合、利用すれば引き続き仕事ができるものの、収入は現役時代の7割程度となると留意しておきましょう。
3-2 生命保険を解約する
定年後に住宅ローンを払えないときは、貯蓄タイプの生命保険を解約しましょう。
保険料が掛け捨てではない積立型の生命保険は、解約すれば返戻金が払い戻されるため、住宅ローンの返済資金に充てることができます。
また、貯蓄タイプの生命保険の契約がない場合でも、不要な保険を解約したり契約の見直しをすることで、保険料負担を抑えることができ、住宅ローンの返済資金を捻出できる可能性があります。
3-3 手持ち資産を売却する
定年後に住宅ローンを払えないときは、所有している資産を売ってお金に換えましょう。
たとえば株や債券などの有価証券などがあれば、売って換金すれば住宅ローンの返済資金に充てることができます。
3-4 生活費を見直し支出を減らす
定年後に住宅ローンを払えないときは、生活費を見直して支払いを減らす努力をしましょう。
たとえば酒や煙草などの嗜好品をやめることや、スマートフォンのプランの見直しなどで、無駄な支出を洗い出すことができます。
削減できる金額はそれぞれ少額でも、合わせれば大きなコスト削減につながる場合もあります。
3-5 金融機関に相談する
定年後に住宅ローンを払えないときは、以下の内容を踏まえて借入先の金融機関に相談しましょう。
- 返済期間の延長
- 毎月の返済の減額
- ボーナス払いの減額・中止
- 一定期間における元金返済の停止
たとえば返済期間の延長などに応じてもらえれば、返済総額は増えるものの毎月の返済額を抑えることができます。
返せないまま放置すると、最終的に家を差し押さえられてしまうため、支払いが厳しい旨を金融機関に伝えて解決策を検討することが必要です。
3-6 住宅ローンの借り換えを検討する
定年後に住宅ローンを払えないときは、借り換えを検討しましょう。
10年以上継続してローンを返済している場合、契約当初の金利が今よりも2~3%高い金融機関が多かったため、借り換えで毎月の返済額を減らすことができる可能性があります。
ただし借り換える場合、再度、住宅ローンの審査を受けることが必要であることと、借り換え契約においては諸費用などが発生します。
支払いが滞っていると審査に通らない場合もあるため、まずは相談するとよいでしょう。
3-7 リースバックを活用する
定年後に住宅ローンを払えないときは、家を売っても引き続き住み続けることができる「リースバック」を活用しましょう。
「リースバック」とは、自宅を第三者に売却し、家賃を払って引き続き同じ家に住み続ける方法です。
自宅を売ったお金で住宅ローンの返済に充てることができます。
ただし売却価格は通常より安く設定されやすいことと、定期借家契約が一般的であるため、途中で立ち退かなければならない恐れがあることは留意が必要です。
3-8 リバースモーゲージを活用する
定年後に住宅ローンを払えないときは、「リバースモーゲージ」を活用しましょう。
リバースモーゲージであれば、自宅を担保に金融機関からお金を借入れて、引き続き同じ家に住むことができます。
借入れた方が亡くなったとき、相続人が住宅を売却して住宅ローンを一括返済します。
住宅ローンから借り換えもできるため、定年退職後に残債があるときにも選択できます。
ただし50~60歳からなどの利用年齢が制限されている商品のため、すべての方が利用できるわけではない点に注意してください。
3-9 自宅を売却する
定年後に住宅ローンを払えないときは、家を売却することも必要となります。
家に引き続き住むことはできないものの、差押えで競売にかけられれば安い売却価格となりやすいのに対し、市場価格に近い売却価格で高く売ることができます。
住宅ローンの残高が少なければ、完済したうえでまとまった老後資金を得ることが可能です。
4章 定年後に住宅ローンが払えなくなることを防止する方法
定年後、経済的にも豊かで余裕のある老後の生活を送ることが理想といえます。
そのため住宅ローンの支払いに苦しむことのないように、以下の3つを準備しておくとよいでしょう。
- 定年前に住宅ローンを完済する
- 定年後の返済資金を用意しておく
- 資金に余裕があるときに繰り上げ返済を行っておく
それぞれ説明します。
4-1 定年前に住宅ローンを完済する
定年後に住宅ローンが払えない状況を回避するには、「定年前」に完済できる計画でローンを契約しましょう。
現役で働いている頃と違って、定年後は収入が大きく減少する可能性が高いといえます。
そのため契約当初から定年前に完済できる計画を立てておけば、定年退職後に住宅ローンの返済資金で悩むことはなくなります。
4-2 定年後の返済資金を用意しておく
定年後に住宅ローンが払えない状況を回避するには、定年後の「返済資金」を用意しておくことも必要です。
退職金の予定がない場合でも、定年後に年金代わりに受け取りできる民間の生命保険を活用するなど、老後に返済を滞らせない方法を検討しましょう。
4-3 資金に余裕があるときに繰り上げ返済を行っておく
定年後に住宅ローンが払えない状況を回避するために、「繰り上げ返済」を検討しましょう。
「繰り上げ返済」とは、賞与や臨時収入などで資金面に余裕ができたタイミングで、毎月の返済額とは別にまとまった額を返済する方法です。
元金返済の前倒しとなり、返済したお金はすべて元本のみに充てられるため、その分の利息が消えて総支払額を効率的に減らすことができます。
5章 住宅ローン以外の借金もあるなら個人再生を検討しよう
住宅ローン以外の借金があるために返済が厳しくなっているのなら、「個人再生」を検討することも方法の1つといえます。
「個人再生」とは、裁判所に借金返済が困難であることを認めてもらい、借入金を5分の1程度に大幅減額してもらう手続です。
減額した借金は、原則、3年での完済を目指し返済します。
住宅ローンは「住宅資金特別条項」を利用することで、自宅を手放すことなく借金を整理できます。
そのため住宅ローン以外にも借金があり、住宅ローン返済が厳しくなっている場合におすすめの手続です。
ただし個人再生の手続を行う場合、以下の要件を満たすことが必要です。
- 将来的に継続・反復した収入があり再生計画に沿った弁済ができること
- 住宅ローン以外の借金総額が5,000万円以下であること
また、住宅資金特別条項の利用においても以下の要件を満たすことが必要とされています。
- 個人再生の要件を満たしていること
- 住宅ローンの借入れであること
- 個人再生する本人所有・本人居住の建物であること
- 建物床面積の2分の1以上が居住用であること
- 不動産に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと
- 保証会社の代位弁済から6か月以上経過していないこと
ただし、個人再生は債務整理の中でも難易度が高い方法のため、独自で手続することは容易ではありません。
司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
住宅ローンの返済が定年後に難しくなり、払えない状況に陥るケースはけっしてめずらしいことではありません。
ただし払えないことを理由に、金融機関から督促状が届いても無視することは間違った対処法です。
住宅ローンが払えないときは、収入を増やすか、借金の返済を含む支出を減らすかの方法で解決できます。
早めの対応で選択肢も広がり、最終的手段といえる自宅の売却を選ばずに済む可能性もあります。
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