任意売却と競売の違いとは?メリット・デメリットについて解説

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
任意売却と競売の違いとは?メリット・デメリットについて解説

この記事は約 12 分で読めます。

任意売却と競売は、どちらも不動産を「売る」ことは共通していても、大きく異なる部分があります。

まず「任意売却」は、ローン返済などできなくなった状態のとき、債権者の承諾を得て家を売却することです。

対する「競売」は、土地や建物を担保として差し入れて借りたローンが返済できなくなったとき、債権者が裁判所に申立てを行って購入者を募る売却方法といえます。

そのため任意売却は、債務者の「意思」に沿って任意で手続を進めるのに対し、競売は債務者の意思にかかわらず「強制的」に手続が進みます。

他にも任意売却と競売の違いや、メリット・デメリットについて次の4つの章に分けて解説していきます。

  1. 任意売却とは
  2. 競売とは
  3. 任意売却と競売の違い
  4. 任意売却の相談先

競売で家を売却されることに不安を感じており、任意売却を検討したいと悩んでいる方は、相談先なども紹介しているこの記事をぜひ参考にされてください。

1章 任意売却とは

「任意売却」とは、住宅ローンなどの返済できなくなったときに、当該住宅を担保にしている債権者全員の「合意」を得て一定条件のもと、不動産を売却することです。

競売では市場価格よりも2~3割ほど低い額で売却されることが多いのに対し、任意売却なら「市場価格」で売ることができます。

そのため債権者は2~3割多く返済を受けことができ、債務者は売却後の残債務を大きく減らせます。

ただし債権者との「交渉」が必要になり、手続に時間がかかるといったデメリットもあります。

1-1 メリット

任意売却の「メリット」は、主に次の6つです。

  1. プライバシーが守られる
  2. 市場価格で売却できる
  3. 物件引き渡しの時期など相談できる
  4. 売却費用の持ち出しがない
  5. 引っ越し費用が出ることもある
  6. 残債の返済条件を交渉できる

それぞれ説明していきます。

①プライバシーが守られる

任意売却は、「通常」の販売方法による売り出しのため、物件所有者の経済事情などを周囲に知られることはなく「プライバシー」も守られます。

②市場価格で売却できる

任意売却は、「市場価格」による売却となるため、納得した上で物件を手放せます

③物件引き渡しの時期など相談できる

任意売却は、契約日や「物件引き渡し」の時期について、買主に希望を伝えるなど相談することもできます。

④売却費用の持ち出しがない

任意売却は、売却にかかる諸費用を売却代金から支払うため、新たな「持ち出し金」が発生することはありません。

⑤引っ越し費用が出ることもある

任意売却は、金融機関と話し合うことで「引っ越し費用」の一部を金融機関に負担してもらえる場合もあり、金銭的負担を「軽減」できます。

⑥残債の返済条件を交渉できる

任意売却は、不動産を手放した後の「残債」について金融機関と「返済条件」を交渉し、収入などに合った金額や期間などで完済を目指すことができます。

1-2 デメリット

任意売却の「デメリット」として挙げられるのは、主に次の3つです。

  1. 債権者と交渉する必要がある
  2. 抵当権者全員に納得してもらう必要がある
  3. 連帯保証人などの合意も必要になる

それぞれ説明していきます。

①債権者と交渉する必要がある

任意売却は、すべての債権者の了承を得るための「交渉」が必要です。

不動産を売りたくても、担保として差し入れている状態を示す「抵当権」が設定されていたままでは、買い手は見つかりません

そのため、債権者が設定している抵当権を外してもらうことが必要となるため、すべての債権者から「合意」を得ることが必要となります。

②抵当権者全員に納得してもらう必要がある

任意売却を行う際には、「抵当権者全員」に同意してもらう必要があります。

手続を進めるためには、抵当権者全員の合意を得る必要がありますが、快く応じてくれる保証はなく、交渉に慣れた専門家に依頼しなければ手続が進まない場合もあると留意しておきましょう。

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③連帯保証人などの合意も必要になる

任意売却では、債権者だけでなく「連帯保証人」や連帯債務者など債務の返済義務を連動して負う人やもともと競売では配当を受けることができなかった後順位抵当権者の同意も必要です
とはいえ、後順位抵当権者が配当を受け取れないことに変わりはないのであれば、協力するメリットはほとんどないといえるでしょう。

たとえば連帯保証人になってくれた方と連絡が取れない場合や、了承してもらえない場合には、任意売却はできません
ただし、ほとんどのケースでは連帯保証人が弁済しても抵当権に代位できない特約がつけられている場合が多いです。
そのため、任意売却時に連帯保証人の同意が必要になるケースは少ないといえるでしょう。

2章 競売とは

「競売」とは、売却価格を確定しない状態で売りに出した不動産などに対し、「最高額」を提示した購入希望者を決める手続です。

債権者が裁判所に申立て、対象となる物件の評価が決まった後、入札に参加した買受申出人から最高額を提示した「落札者」を決定します。

住宅ローンなどを滞納したとき、債務者はローンを分割返済する「期限の利益」を失います。

「期限の利益」を失ったことで、債権者はローン全額を「一括返済」することを求めてきます

しかし一括返済できない場合、担保の不動産は強制的に競売にかけられ、その「売却代金」が返済に充てられるという流れです。

物件所有者の同意なしで「強制的」に手続が進むため、債権者に取り下げてもらうことができなければ、いずれ家に住む権利を失います

任意売却よりもデメリットの大きな手続といえ、メリットはほぼないといえます。

2-1 メリット

競売にメリットはほぼないと考えられますが、挙げるとすれば次の2つです。

  1. 任意売却より長く住み続けることができる
  2. 手続が自動的に進む

それぞれ説明していきます。

①任意売却より長く住み続けることができる

競売は、任意売却よりも「長く」住み続けることができる可能性はあります。

任意売却では、開札期日の前日までに残金決済や物件の引き渡しが必要であり、「スピーディ」な対応が求められます。

それに対し競売では、落札者決定と競売物件の処分までに、半年から1年程度かかることがほとんどです。

入札がなかった場合は、さらに手続が「長期化」するため、家に住み続けることのできる時間も長くなるでしょう。

②手続が自動的に進む

競売では、不動産を売却する手続をすべて裁判所と債権者が行います。

そのため債務者は何かしなければならないわけではなく、「自動的」に手続が進みます。

2-2 デメリット

競売は任意売却よりも「デメリット」が大きい手続といえますが、主に次の3つに注意が必要です。

  1. 安値で売却される
  2. 強制的に追い出される
  3. プライバシーが害される

それぞれ説明していきます。

①安値で売却される

競売では、市場相場の価格よりも6~8割程度で売却されることがほとんどです。

さらに「競売費用」も差し引かれるため、「残債」も多くなります。

安値で売却されることで、最終的に「自己破産」するしかなくなる可能性は否定できません。

②強制的に追い出される

競売では、物件の落札者が新たな「所有者」となります。

そのため落札者が決定すると1~2ヶ月程度の間に家を出ていく必要があり、居座り続けても「強制的」に追い出されます。

引っ越し代も自身で「工面」する必要があるなど、待ったなしの状況に追い込まれることになるでしょう。

③プライバシーが害される

競売では、物件情報がインターネット上で「公開」されるため、情報を閲覧した方などに競売物件であることを知られる可能性があります。

また、裁判所の執行官が物件調査に訪問することや、入札を検討している方や業者が確認に訪れるなど、「プライバシー」が害されます。

3章 任意売却と競売の違い

任意売却と競売の「違い」は、以下のとおりです。

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項目競売任意売却
1.強制力強制任意
2.販売期間8日間(目安)最大1年間(稀に1年以上)
3.売却価格市場価格の7割程度市場価格に近い価格
4.残債額任意売却より多め競売より少なめ
5.残債の返済方法一括返済分割返済の交渉可能
6.プライバシー情報公開により周囲に知られる守られる
7.退去日自由に選択できない(不法占拠になる)協議により自由に設定可能
8.引っ越し費用の負担立退料等受領の可能性は低い交渉により受領できる可能性あり
9.居住を継続できる可能性なし親族を頼れる可能性あり

それぞれの違いについて詳しく説明していきます。

3-1 強制力

任意売却と競売は、「強制力」に違いがあります。

競売は強制執行による「強制的」な手続であるため、物件所有者の意思は尊重されません

対する任意売却は、競売を取り下げてもらうために行うなど、物件所有者の意思による「任意」の売却活動です。

3-2 販売期間

任意売却と競売は、「販売期間」の長さが異なります。

競売は、「8日程度」の期間で入札を受け付け、開札期日に最も高い金額を提示した方が落札者に決定します。

任意売却の販売期間の決定権は債権者にあるものの、通常の売却期間である3~6か月よりも「長め」に期間が設定され、売却開始から「最大1年間」を期限とするケースも多く見られます。

ただし債権者が任意売却での売却が見込めないと判断した場合、競売手続へと着手されることになる点には注意が必要です。

3-3 売却価格

任意売却と競売は、「売却価格」が異なります。

競売は市場価格の7割程度で売却されます。

対する任意売却では、通常の不動産売却と同じ市場価格に近い価格で売ることができるため、より多く債務を返済できます。

3-4 残債額

任意売却と競売では、「残債額」が変わってきます。

競売は、任意売却よりも安く買い取られるのに加え、いろいろな「諸経費」が発生します。

売却代金からかかった諸経費分を差し引かれることで、任意売却よりも残債額は多くなります。

3-5 残債の返済方法

任意売却と競売では、「残債の返済」の方法などが大きく変わってきます。

競売後に債務が残ると、債権者から「一括返済」を迫られます

そのため競売は、最終的に自己破産してしまう方も少なくありません。

これに対し任意売却では、残った債務について債権者と協議のもと、無理ない範囲での「分割返済」が可能です。

現在の収入や生活状況などを考慮した上で、現実的な返済方法を話し合い決めることができます

3-6 プライバシー

任意売却と競売は、「プライバシー」の保持に違いがあります。

競売の場合、物件の情報が裁判所のホームページなどで公開されます。

裁判所の執行官が現況調査に訪れ、外観や内観の状態を確認したり写真撮影したりします。

近所や職場の方、知人などが情報を閲覧すれば、自宅が競売物件として売りに出されていることを知られてしまうでしょう。

入札を検討している方が物件を確認に訪れることもあるため、いつもと異なる雰囲気であると周囲に勘繰られる可能性もあります。

しかし任意売却なら、通常の不動産売却と同じ「一般市場」での販売活動となるため、周囲に競売物件であることなど知られることはありません。

3-7 退去日

任意売却と競売では、自由に「退去日」を選べるかが異なります。

競売の場合、落札者に不動産の所有権が移転されれば、もとの所有者は引き続き住む権利を失います。

居座り続けたとしても「不法占拠」として扱われるため、引っ越し準備の有無や意向などは関係なく、強制的に「立ち退き」を迫られます

任意売却では、通常の不動産売却と同じく、購入者を選ぶことも引っ越し日について買主と「協議」することもできます

3-8 引っ越し費用の負担

任意売却と競売では、「引っ越し費用」の負担に違いがあります。

競売では、不動産の売却代金から引っ越し費用が融通されることはありません

物件を退去する際に、立退料が支払われるケースもほとんどないといえます。

しかし任意売却では、債権者との交渉次第で、「最高30万円」までの引っ越し費用を売却代金から受け取ることができます

引っ越し費用として認められる金額は、金融機関や状況などによって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

3-9 居住を継続できる可能性

任意売却と競売は、居住を「継続」できる可能性に違いがあります。

競売では、落札者に所有権が移転後も居座り続ければ、不法占拠」として扱われるため居住の継続は不可能です。

しかし任意売却では、たとえば親族などに物件を購入してもらい、家賃を支払いながら住み続ける交渉をすることで居住を継続できる可能性もあります。

4章 任意売却の相談先

任意売却は、手続の「期限」が存在することに注意してください。

競売と同時並行で債権者と交渉を進める場合、落札者が決定する「開札期日」の前日までに手続を完了させる必要があります。

すべての債権者の「了承」を得ることが必要であるため、複数の債権者が存在する場合において、納得してくれない債権者がいれば任意売却はできなくなってしまいます。

さらに任意売却は通常の不動産手続と異なり、「法律」の知識や経験などが求められます

手続の流れや進め方がわからないことを理由に迷っていると、せっかくの機会を逃してしまうでしょう。

そのため任意売却の「知識」や実績の豊富な専門家に相談することが必要です。

任意売却は不動産会社、登記や法律の知識は司法書士と分けて考えてしまいがちですが、どちらにも対応できる「司法書士」なら複数の専門家を渡り歩く必要はないのでおすすめです。

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まとめ

任意売却と競売は、どちらも不動産を「売る」ことは共通していても、大きく異なる手続です。

それぞれのメリット・デメリットを並べて比較しても、競売は任意売却よりも「不利」な条件で不動産を売ることになるため、残った債務を払いきれず自己破産しなければならないリスクも高めるだけです。

「任意売却」なら通常の不動産売却のように「一般市場」で売ることができ、残った債務も債権者と相談して決めた返済条件で返していくことができます。

すべての債権者から合意を得ることは必要となるものの、仮に裁判所から競売開始決定通知が届いていても、開札前日までに手続を終わらせることができれば間に合います。

ただし任意売却は「法律」が大きくかかわる手続であるため、専門的な知識が必要です。

グリーン司法書士法人なら、任意売却と法的手続のどちらに関する知識や実績も高く、遠方の方でも気軽に「オンライン」で相談いただけます。

住宅ローンの返済や任意売却などについて詳しく知りたい方や、借金問題で不安を抱えている方は、お気軽にグリーン司法書士法人の無料相談をぜひご利用ください。

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