管財事件とは?少額管財や同時廃止との違いや管財事件になるケース

司法書士市川有美

監修者:グリーン司法書士法人   市川有美
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第9784号 【保有資格】司法書士

借金返済の知識
管財事件とは?少額管財や同時廃止との違いや管財事件になるケース

この記事は約 9 分で読めます。

 この記事を読んでわかること
  • 自己破産における「管財」とは何か
  • 管財人が担う役割
  • 少額管財と通常管財の違い
  • 同時廃止と管財事件の違い
  • 自己破産が管財事件になりやすいケース

借金の返済が難しくなり、自己破産を考え始めると、「管財事件」「少額管財」「同時廃止」といった、聞き慣れない言葉を目にすることがあるかもしれません。

特に「管財事件になると大変なのでは?」「管財人って厳しくて怖そう⋯⋯」と不安を感じる方も多いでしょう。

しかし、管財事件について内容を理解して適切に対応すれば、過度に恐れる必要はありません。

この記事では、自己破産における管財事件の意味や、少額管財・同時廃止との違い、管財事件になりやすいケースについて解説します。

1章 管財とは?

「管財」という言葉は、普段の生活ではあまり聞き慣れないかもしれません。一般的には、「財産を管理すること」を指し、企業の倒産手続きや相続、信託など、さまざまな場面で使われます。

そして、自己破産における「管財」も、基本的には財産を調査・管理することを指します。

この章では、自己破産における管財事件の基本的な考え方について確認しましょう。

1-1 自己破産における管財人とは

自己破産における「管財人」とは、裁判所から選任される第三者的な立場の弁護士のことです。

正式には「破産管財人」と呼ばれ、破産する人(破産者)の財産状況を調査し、債権者へ適切に配当できるかなどを確認します。

管財人は必ず選任されるわけではなく、破産者に一定の財産がある場合や、免責不許可事由がある場合、破産者が法人や個人事業主である場合などに選任されます。

破産管財人の主な役割は、次のとおりです。

1.債権者と債権額の確定破産者の借金はどこから、いくら借りているのかを確認・確定する
2.財産の調査・管理・換価預金、不動産、保険、退職金などを確認・管理し、債権者の配当に充てるため、換金できるものは換金する
3.借金の経緯・原因の調査借り入れの経緯や原因などを調査し、免責不許可事由の有無を確認する
4.裁判所や債権者に対する報告債権者集会で、財産の状況や配当の見込みなどを報告する
5.債権者への配当換価した財産があれば、債権者に平等に分配する

「調査」と聞くと厳しい取り調べのような印象を持つかもしれませんが、実際には必要書類を提出し、質問に正直に答えていく形が一般的です。

もちろん、財産隠しや虚偽説明などがあれば問題になりますが、誠実に対応していれば過度に心配する必要はありません。

なお、破産管財人は債権者側の立場でも、破産者側の立場でもありません。裁判所から選任された中立的な立場として、公平に破産手続きを進める役割を担っています。

2章 自己破産における管財事件とは

自己破産の手続きには、大きく分けて「同時廃止」と「管財事件」の2種類があります。

管財事件とは、裁判所が「破産管財人」を選任し、財産の内容や借金の経緯などについて詳しく調査を行う手続きです。

一方で、処分する財産がほとんどなく、特に詳しい調査の必要もない場合には、破産管財人を選任せずに手続きを進める「同時廃止」となることがあります。

また、管財事件はさらに「少額管財」と「通常管財」に分けられます。

この章では、管財事件の基本的な内容をはじめ、少額管財・通常管財・同時廃止の違いについて、わかりやすく解説していきます。

2-1 少額管財と通常の管財事件の違い

管財事件には、「通常管財」と「少額管財」があります。これらの大きな違いは、手続きの簡略化と費用です。

少額管財通常管財
主な対象個人の自己破産法人破産や複雑な案件
手続き比較的簡略化されている詳細な調査が行われる
費用比較的低額高額になりやすい
予納金の目安約20万円程度50万円以上になることが多い
手続きにかかる期間3~4か月程度6か月~1年程度

少額管財は、一定の条件を満たす場合に利用できる運用で、通常管財よりも負担が小さくなります。少額管財を利用するには、弁護士に代理人を依頼することが必須条件です。

ただし、財産状況が複雑であったり、調査事項が多かったりする場合には、通常管財になる可能性があります。

2-2 同時廃止と管財事件の違い

「同時廃止」とは、破産管財人を選任することなく、破産手続きの開始と同時に破産事件を廃止する(終了する)手続きです。

破産者に特に問題がなく、破産管財人による調査の必要性が低いと判断された場合に、同時廃止が選択されます。同時廃止は基本的に書類審査だけで終了するため、管財事件に比べ費用も手間もかかりません。

一方、管財事件では、破産管財人による調査や財産管理が必要になります。主な違いを整理すると、次のようになります。

同時廃止管財事件
管財人の選任なしあり
財産調査簡易的詳細に行われる
費用負担比較的小さい比較的大きい
手続きにかかる期間3~4か月程度6か月以上
財産の処分基本的に少ない換価・配当が行われる場合がある

自己破産を考えている方の中には、「できれば同時廃止にしたい」と考える方も多いでしょう。

どの手続きになるかは、財産状況や借金の経緯などを踏まえて裁判所が判断します。そのため、自己判断せず、事前に状況を整理しておくことが大切です。

3章 自己破産が管財事件になるケース

自己破産を申し立てれば、必ず同時廃止になるわけではありません。財産が一定以上ある場合や、借金の原因・経緯に問題がある場合などには、管財事件として扱われる可能性があります。

また、個人事業主や法人の破産では、財産関係が複雑になりやすいため、管財事件になるケースが一般的です。

この章では、管財事件になりやすい代表的なケースについて解説します。

3-1 33万円以上の現金または20万円以上の財産がある

現金が33万円以上ある場合、または個別財産が20万円以上ある場合には管財事件になります。20万円以上の財産とは、売却して20万円以上になる資産です。

財産には、現金・預貯金、不動産、保険返戻金、退職金、自動車などがあります。それぞれの項目で20万円を超えるかどうか(退職金の場合は8分の1の額)が目安です。

これらの財産がある場合には、換価して債権者へ配当できる可能性があるため、破産管財人による調査や管理が必要になることがあります。

なお、実際の運用基準は裁判所によって異なるため、金額だけで単純に決まるわけではありません。

また、「家族名義に変えておけば大丈夫」などと考える方もいますが、財産隠しと判断されるおそれがあるため絶対に止めましょう。

3-2 免責不許可事由に該当している

借金の原因や行動に問題がある場合には、管財事件になる可能性があります。

代表的なものが「免責不許可事由」です。免責不許可事由とは「借金の返済義務を免除できない」と判断される要件です。

免責不許可事由の主な要件は、次のとおりです。

  • 借金を返さないためにわざと財産を隠したり、財産価値を下げる行為
  • 特定の債権者だけに偏って返済する行為(偏波弁済)
  • クレジットカード決済で商品を購入し、それを売るなどして換金する行為
  • ギャンブルや、投資、不要なショッピングなどによる浪費行為
  • 帳簿や財産書類を隠したり改ざんしたりする行為
  • 自己破産をする前提で新たに借金をする行為
  • 裁判所に嘘の債権者一覧や借金額など虚偽の報告をする行為
  • 過去7年以内に自己破産をしている

たとえば、ギャンブルによる借金や、クレジットカードの現金化などがある場合には、管財事件になるケースがあります。

もっとも、免責不許可事由があるからといって、必ず免責されないわけではありません。実際には、反省状況や現在の生活状況などを踏まえ、「裁量免責」が認められることも多くあります。そのため、重要なのは隠さず正直に説明することです。

3-3 個人事業主や法人の破産である

個人事業主や法人が破産する場合には、管財事件となるケースが一般的です。

個人事業主の場合も、個人の財産だけでなく、事業に関する財産や事業所の管理・処分も必要になります。さらに、従業員への給与や取引先との関係など、確認すべき事項が多岐にわたるため、財産管理や調査が複雑になりやすいといえます。

そのため、個人事業主も法人と同様に、破産管財人による調査や管理が必要となり、管財事件として進められることになります。破産管財人は、主に次のような事項を確認します。

  • 売掛金の有無
  • 在庫や設備の状況
  • 従業員への未払い給与
  • 税金の滞納状況
  • 帳簿や通帳の内容
  • 取引先との関係

また、法人破産では、会社財産を整理して債権者へ公平に配当する必要があります。そのため、破産管財人による詳細な調査が必要となり、通常管財として進むことも少なくありません。

4章 管財事件を適切に進めるためには早めの相談が重要

「管財」と聞くと厳しいイメージを持つかもしれませんが、必要以上に恐れる必要はありません。大切なのは、財産や借入状況を正確に整理し、誠実に対応することです。

また、自己破産が同時廃止になるか、少額管財になるかは、財産状況だけでなく、申立ての準備や手続きの進め方によっても変わる場合があります。そのため、自己判断で進めるのではなく、できるだけ早い段階で専門家へ相談することが重要です。

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