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借金が払えずに自己破産を検討しているものの、不動産を所有していると競売にかけられてしまうため踏み出せないという人もいるのではないでしょうか。
しかし、競売しても建物の状態などによっては売れ残ってしまうこともあります。どうしても売れなかった不動産は、最終的に手元へ戻ることになるのです。
しかし自己破産を選ぶほど切羽詰まった状況では、不動産が手元に戻ってきてもかえって不利になることもあります。できれば競売になる前に任意売却で手放すのがベターでしょう。
この記事では、自己破産で競売しても売れなかった不動産がどうなるのかを解説するとともに、競売せずに自己破産を進める方法について紹介します。
目次 ▼
1章 自己破産で競売にかけられても売れなかった場合どうなるか
借金の返済が困難になって債務整理のうち自己破産を選ぶと、借金は全額免除になります。しかし、不動産や車などの財産を所有していると、裁判所から任命された破産管財人によって売却されて残債の支払いに充てられます。
特に不動産の売却には、競売にかけられるのが一般的です。
しかし、建物の状態が悪かったり、収益が見込めない土地だったりなどの理由で、競売で落札されずに売れ残る場合もあります。
もし競売された持ち家が売れ残ってしまった場合、そのまま住み続けられるのでしょうか?この章では競売で売れなかった不動産はどうなるのかについて解説します。
1−1 管財人によって競売以外の売却方法を検討される
自己破産手続きで仮に競売によって不動産が売却できなくても、管財人は他の方法でなんとか換価処分しようとします。例えば親族や他の共同所有者、隣地の所有者などへ購入を持ちかけたり、管財人の馴染みの不動産会社に相談したりしてなんとか手を尽くし売却を目指すでしょう。
1−2 財団から外され破産者の手元に戻る
管財人がなんとか売却を試みても無理だった場合、その不動産は破産財団から外されて放棄されることになります。
つまり、破産した人の手元へ戻ることになり、持ち家の場合はそのまま住み続けることが可能です。しかし、放棄されると破産財団が減ってしまうため、その代わりに破産者が任意で金銭を支払って財団に組み入れることもあります。さらに、不動産が放棄されると、代わりに車など他の財産が差し押さえられます。
財団から放棄されて所有権が戻るということは、固定資産税の支払い義務がそのまま継続するということでもあります。たとえ自己破産しても税金の支払いに関しては免除されないため、不動産が手元に戻ったとしても今度は固定資産税の支払いに悩まなければならないかもしれません。
2章 競売の流れ
持ち家など不動産を所有した状況で自己破産した場合、管財事件として扱われるケースが多いです。自己破産が決定すると、裁判所で破産管財人が選ばれて管財人が不動産を競売にかけます。
また、債権者が抵当権を持っている場合、債務者が借金を延滞した時点で競売に踏み切ることもあります。
競売は、次のような流れで行われます。
- 期間入札
- 特別入札
- 価格の見直し
もしも入札されなかったとしても、価格を見直して3回この流れを繰り返します。それでも決まらなかった場合、競売が取り消しになるのです。
この章では、競売が取り消しになるまでの流れについて詳しく説明していきます。
ステップ1 期間入札
一般的な不動産売買での競売は、「期間入札」で行います。期間入札とは、競売する不動産の情報などを公示する入札公示日から入札日までの一定期間をおいた後に、入札を受ける方法です。
最も高額で入札した人が落札者となり、不動産の所有権を受けとることになります。しかし、あまりにも物件が古い、土地に使い途がないなどで入札者が一人も出てこない事態もありえないことではありません。
もしも落札されなければ、次に特別入札へ移ります。
期間入札で売却するまでの流れを知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
ステップ2 特別入札
特別入札では、入札価格に関わらず一番早く入札した人へ売却されます。ただし、入札価格には裁判所からはじめに示された「売却基準価額」を上回っていなければなりません。
もしも同時に複数の入札者が出た場合は、くじ引きになります。
ステップ3 価格の見直し
特別入札でも売却できなかった場合は、裁判所が売却基準価額を2〜3割引き下げて再び期間入札を行います。
買い手の付きにくい不動産であっても、価格を調整することで売却される可能性は高まるのです。
その後、期間入札で決まらなかった場合は再び特別入札に移行します。
ステップ4 3回繰り返して売れない場合は取り消し
期間入札→特別入札→価格見直しの流れは最大3回まで繰り返されます。それでも買い手がつかない場合は、「売れる見込みのない物件」と裁判所から判断され、競売は取り消しとなります。
3章 競売で売れない不動産の特徴
競売では、本来の不動産価格の5〜6割の額から入札が始まり、入札が決まらなければさらに2〜3割価格を引き下げて見直しを行います。しかし、農地や山などの特殊な事情がある不動産や元旅館などの買取需要が高くない物件の場合、値段を下げても売れないのはよくあることです。
その他、競売しても売れにくい不動産の特徴には、次のような点が挙げられます。
- 建物の劣化がひどい
- 建物が耐震基準を満たしていない
- 心理的瑕疵がある
- 権利関係が複雑
- 立地環境が悪い
- 市街化調整区域にあり、収益化が難しい など
古い家の場合は、劣化がひどかったり、現在の耐震基準を満たしていなかったりすると入札者はつきにくくなります。また、交通の便が悪いなどの立地環境の悪さも売れない理由になるでしょう。
また、市街化調整区域とは、新しく家を建てたり建て替えたりすることが制限されている区域です。土地の利用が難しいため、競売では敬遠されがちです。
4章 自己破産で競売される前に任意売却するメリット4つ
不動産を所有したまま自己破産になると、ほぼ例外なく競売にかけられることになります。
競売になると相場より安く入札される可能性が高く、諸経費や家を明け渡すための引っ越し代は自己負担です。また、売り手になんらかの事情があって期日までの明け渡しが難しくても、ほぼ配慮してもらえません。
しかし、競売で入札される前に任意売却することでこれらの事態は避けられます。競売しながら同時に任意売却を進められるものの、高く売却したければ売れるまで時間がかかるので、できるだけ早く任意売却に踏み切ることが大切です。
この章では、任意売却のメリットについて解説します。
任意売却と競売の違いについて知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
4-1 管財事件ではなく同時廃止事件で扱われる可能性が高くなる
不動産を所有している状況で自己破産になると、基本的に管財事件として扱われることになります。管財事件とは、2種類ある自己破産手続きの中でも裁判所から破産管財人に専任された弁護士が破産者の財産を売却して、債権者に分配する手続きです。
管財事件になると、裁判所に支払う費用が50万円ほど必要になるだけでなく、財産の処分方法を破産者自身で決められず、手続きが完了するまでに4か月以上かかります。
一方で同時廃止事件とは、管財人がつかない破産手続きです。処分するべき資産がない場合、同時廃止事件として扱われることがほとんどです。かかる費用は管財事件の10分の1程度であり、かかる期間は3〜4か月程度ですみます。
管財事件になるか同時廃止事件になるかは不動産の有無だけで決まるものではありませんが、任意売却で早く不動産を手放しておけば同時廃止事件として扱われる可能性は高まります。
4-2 任意売却して売却金額が高ければ生活費や引っ越し代に充てられる
競売で不動産を売却する場合、入札額がはじめに裁判所が提示する売却基準価格より上回っていなければ認められないため、二束三文で買い叩かれるわけではありません。
それでも、競売では市場価格の5〜6割の価格で売却されることがほとんどです。その点任意売却では市場価格よりはやや安くなるものの、ほぼ8〜9割で売却できます。もしも売却金額が残債を支払っても残るほどであれば、残りの代金を生活費や引っ越し代に充てられるのです。
ただし、残った代金を特定の債権者に渡したり、最低限の生活に必要ないものを購入したりすると、後で自己破産が認められなくなる場合があります。
4-3 プライバシーを守れる
競売になれば、不動産や物件の概要が競売情報に掲載されます。競売情報は裁判所で見られる他、インターネットでも閲覧できるため、自宅の住所といった個人情報になる情報でも流出してしまいます。
また、競売入札支援業者が近隣に対して競売情報のチラシを配って入札をすすめるため、近所の人に隠していても簡単にばれてしまうのです。
一方で任意売却の場合は、不動産会社を通して物件や不動産を売買するため、外からは任意売却か通常売却かの違いは分からずプライバシーは守られます。
5章 任意売却する時の注意点
競売よりも任意売却するほうがメリットは格段に多くなるため、早めに決断することをおすすめします。しかし、任意売却するときに注意しなければならない点がいくつかあることも知っておきましょう。
- 任意売却には抵当権者の許可が必要
- 自己破産決定後は破産者の意思で任意売却できない
- 債務者から債権者へ任意売却を持ちかけるのは簡単ではない
債務者が任意売却を希望していても、抵当権が債権者にある場合は許可がいります。債権者から許可が出たとしても、売却価格をあまりに安くしてしまえば債権者の同意は得られません。逆に高くしてしまうと売却までに時間がかかるため、待てなくなった債権者から競売にかけられてしまうこともあります。入札期間中にも任意売却は可能ですが、落札して購入者が代金を支払うと覆すことはできません。
自己破産が決定した後、管財人の判断で任意売却される場合もありますが、破産者の希望する不動産会社ではなく管財人が指定する不動産会社での取引になります。
さらに、債権者によっては任意売却に難色を示す場合もあるため、任意売却を希望する場合は専門家に依頼して交渉してもらうのがおすすめです。
グリーン司法書士法人事務所では、任意売却に関するご相談も今まで数多く承っております。相談は無料で受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
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まとめ
持ち家などの不動産を所有したまま自己破産が認められると、管財事件として扱われ競売にかけられる場合がほとんどです。しかし、競売しても入札者が現れず売れなかった場合は、管財人が他の方法で売却を試みることになります。それでも買い手がつかなければ、不動産は破産財団から外されて破産者の手元に戻るというわけです。
持ち家が競売されても売れ残れば住み続けられますが、固定資産税の支払い義務が残ります。せっかく自己破産で借金が免除されても税金を支払う負担が続いてしまうため、不動産は自己破産手続きする前に任意売却するのをおすすめします。
任意売却には債権者の許可・同意が必要になるため、個人で行うには難しい売却方法です。専門知識をもった司法書士に相談して手続きを依頼すれば、その後の自己破産手続きへつなげるのもスムーズに進められます。
グリーン司法書士法人事務所では、これまで任意売却や自己破産のご相談を多く承っておりますので、お客様の事情に応じた手続きをご提案いたします。
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よくあるご質問
- 自己破産したら土地はどうなるの?
- 自己破産の際に土地などの不動産を所有していると、破産管財人によって競売にかけられてしまいます。
- 破産手続きで売れない土地はどうなるのか?
- 自己破産をしたものの競売で売れない土地は、最終的には破産財団から外されて放棄されることになります。
そのため、破産者の手元に残すことができます。