奨学金の利息はどのくらい? 将来の返済額は?無理なく返済するために

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識

この記事は約 15 分で読めます。

悩む女性
悩む女性
娘の大学の進学にあたり、奨学金の利用を考えています。しかし、奨学金が払えずに破産してしまう人も多いと耳にするので心配です。奨学金の利息は高く、支払いが難しいのでしょうか?
司法書士
司法書士
奨学金の返済ができずに破産してしまう方は確かに少なくありません。しかし、それは奨学金の利息が原因ではないのです。実際、奨学金の利息は消費者金融からの借り入れに比べると圧倒的に低く設定されています。
悩む女性
悩む女性
では、何が原因なのでしょう?
司法書士
司法書士
そもそも、奨学金が高額であることが挙げられます。社会人になりたての人が300万円程度と高額な借金を負い、その返済額は15,000円程度です。親世代の方なら「そのくらい払える」と思われるかもしれませんが、大卒の初任給の手取り平均は約18万円。そこから家賃や生活費を支払うとなると、15,000円は大きな負担になるでしょう。

奨学金の利息は、金融機関からの借り入れに比べてかなり低く設定されています。

消費者金融からの借り入れに対する利息が15〜20%であるのに対して、奨学金に対する利息は1%未満。240万円を金利1%で借入して、13年で返還した場合でも利息の総額は約16万円です。

それでも奨学金の返還ができなくなってしまう人がいるのは、新卒の給料では月数万円の返還が大きな負担になるからです。

そのため、奨学金を利用する場合には将来のことを見据えたうえで、なるべく貸与額を抑えることが大切です。

この記事では奨学金の利息や無理なく返還するためのことについて解説します。

1章    奨学金の種類

奨学金とは、進学のために必要なお金を借りられる制度で、原則卒業後に返還を開始します。

奨学金を提供している機関で最もメジャーなのが日本学生支援機構(JASSO)です。

日本学生支援機構(JASSO)が提供している奨学金は大きく分けて2つです。

  • 給付型奨学金
  • 貸与型奨学金

また、貸与型奨学金の中にも利子の有無によって2つに分けられます。

ここでは奨学金の種類について解説します。

1−1    給付型奨学金

給付型奨学金とは、返還の必要がない奨学金で、実質「学費等に必要なお金を“もらえる”」制度です。

お金がもらえる分、学力や収入などに厳しい条件が設けられています。

特に学力における必要水準が非常に厳しく、日本学生支援機構(JASSO)は以下のような学力基準を設けています。

・高等学校等における全履修科目の認定平均値が、5段階評価で3.5以上であること(※1)
・将来、社会で自立し、及び活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること(※2)

※1専修学校の高等課程の生徒等は、これに準ずる学修成績となります。
※2学修意欲等の確認は、高等学校等において面談の実施又はレポートの提出等により行います。

(参照)日本学生支援機構 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/kyufu/gakuryoku/yoyaku.html

成績が優良な方でなければ難しいでしょう。

1−2    貸与型奨学金

貸与型奨学金は、卒業後に返還が必要となる奨学金です。貸付における利子の有無などで以下の3種類に分類されます。

  • 第一種奨学金・・・無利子の奨学金
  • 第二種奨学金・・・有利子の奨学金
  • 入学時特別増額・・・入学時に一時金が借りられる奨学金

奨学金利用者のうちのおよそ9割が貸与型の奨学金を利用しています。

なお、貸与型奨学金についても以下のような条件があります。給付型奨学金ほどは厳しくなく、学力が基準に満たないとしても収入要件を満たしていれば貸与が可能な場合が多いです。

1−2−1    第一種奨学金の要件

次の(1)または(2)のいずれかひとつに該当すること。
(1)高等学校等における申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること。
※ただし、上記の基準を満たさない場合であっても、次のア~ウのいずれかに該当し、かつ、将来社会で自立し、及び活躍する目標をもって進学しようとする大学等における学修意欲(※1)がある者として学校から推薦されれば、第一種奨学金の学力基準を満たす者として取り扱うことができます。

ア.生計維持者(原則父母)の貸与額算定基準額(※2)が0円である。
イ.生計維持者(原則父母)が生活保護を受給している。
ウ.「社会的養護を必要とする人」(児童養護施設等入所者、里親による養育を受けている者等)である。

※1学修意欲の確認は、高等学校等において、面談の実施又はレポートの提出等により行います。
※2貸与額算定基準額については下記ページをご確認ください。

(2)高等学校卒業程度認定試験合格者であること。

【参考】日本学生支援機構|進学前(予約採用)の第一種奨学金の学力基準

1−2−2    第二種奨学金の要件

以下の(1)~(4)のいずれかに該当すること。
(1)高等学校または専修学校(高等課程)における学業成績が平均水準以上と認められる者
(2)特定の分野において特に優れた資質能力を有すると認められる者
(3)進学先の学校における学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる者
(4)高等学校卒業程度認定試験合格者であること。

【参照】日本学生支援機構|進学前(予約採用)の第二種奨学金の学力基準

2章    奨学金の利息

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金のうち、利息が付くのは第二種奨学金のみです。

日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金では、利息を以下の2つの方式から選択することができます。

  • 利率固定方式・・・貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用される
  • 利率見直し方式・・・貸与終了時に決定した利率を5年毎に見直し、市場金利の変動に伴い利率も変動する

具体的な利息は以下のとおりです。

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【令和5年度】基本月額    ※平成19年4月以降に採用された方 ※年利%
4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月
利率固定方式0.7370.6370.5370.6370.9050.9371.1051.0050.9051.005
利率見直し方式0.0200.168 0.0500.0900.3000.3000.4000.3000.3000.300
【令和5年度】増額部分    ※平成19年4月以降に採用された方 ※年利%
4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月
利率固定方式0.9370.8370.7370.837
1.1051.1371.3051.2051.1051.205
利率見直し方式0.4000.3680.2500.2900.5000.5000.6000.6000.5000.500

上記を見て分かるように、奨学金の金利は高くても1.3%程度。消費者金融の金利が15〜20%であることから考えると、かなり低く設定されています。

2−1    具体的な奨学金の返還シミュレーション

2−1−1    第一種奨学金(無利子)(4年制・貸与月数48ヶ月)

【国公立】

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通学形態貸与月額貸与月額貸与総額返還月額返還回数
自宅45,000円48ヶ月2,160,000円12,857円168回(14年)
自宅外51,000円48ヶ月2,448,000円13,600円180回(15年)

第一種奨学金(無利子)(4年制・貸与月数48ヶ月)【国公立】

【私立】

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通学形態貸与月額貸与月額貸与総額返還月額返還回数
自宅54,000円48ヶ月2,592,000円14,400円180回(15年)
自宅外64,000円48ヶ月3,072,000円14,222円216回(18年)

第一種奨学金(無利子)(4年制・貸与月数48ヶ月)【私立】

【国公立・私立】

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通学形態貸与月額貸与月額貸与総額返還月額返還回数
自宅/自宅外30,000円48ヶ月1,440,000円9,320円156回(13年)

第一種奨学金(無利子)(4年制・貸与月数48ヶ月)【国公立・私立】

2−1−2    第二種奨学金(有利子)(4年制・貸与月数48ヶ月)

【貸与月額30,000円 /貸与総額1,440,000円/返還回数156回(13年)】

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年利返還総額返還月額
0.5%1,491,061円9,557円
1%1,543,214円9,892円
2%1,650,545円10,580円
3%1,761,917円11,293円

【貸与月額50,000円 /貸与総額2,400,000円/返還回数180回(15年)】

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年利返還総額返還月額
0.5%2,497,419円13,874円
1%2,597,188円14,428円
2%2,803,404円15,574円
3%3,018,568円16,769円

【貸与月額100,000円 /貸与総額4,800,000円/返還回数240回(20年)】

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年利返還総額返還月額
0.5%5,056,654円21,069円
1%5,321,420円22,172円
2%5,874,754円24,478円
3%6,459,510円26,914円

【貸与月額120,000円 /貸与総額5,760,000円/返還回数240回(20年)】

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年利返還総額返還月額
0.5%6,068,011円25,282円
1%6,385,730円26,606円
2%7,049,746円29,373円
3%7,751,445円32,297円

(参照:日本学生支援機構 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/houhou/henkan_hoshiki/kappu/sample/daigaku.html )

2−2    奨学金の返還を怠った場合の利息(延滞金)

JASSOの場合、奨学金の返還を延滞すると、利息を除いた延滞している割賦金の額に対し、年3%の割合で、返還期日の翌日から延滞している日数に応じて延滞金が上乗せされます。

奨学金が500万円の場合、1日あたりの延滞金は【500万円×3%÷365日】となるので、約410円です。

一般的な消費者金融の遅延損害金が年20%であることを考えると、とても良心的な設定となっています。

3章   奨学金は利息が低いのに払えない人が多いのはなぜ?

奨学金は、経済的に学費が支払えない人を支援するための制度ですので、金利はかなり低く設定されています。15年、20年と長期間借りても利息としてつくのは微々たるものです。

では、なぜ奨学金が支払えなくなる人が多いのでしょうか。それは、そもそも奨学金を返済する基盤を築けないからです。

3−1    初任給に対して奨学金の返済の負担は大きい

大卒の初任給の平均は、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」(※)によると約22万円とされています。

(※)参照|厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/09.pdf

そこから社会保険などを引くと、手取りは約18万円です。一人暮らしをしているのであればそこから家賃や生活費を捻出しなければいけません。さらに1万円、2万円を奨学金の返還に充てるのは大きな負担になるでしょう。

3−2    就職していなくても返済しなければいけない

学校を卒業すると、例え就職が決まっていなくても返還しなければいけません。

新卒で就職が難しく、第二新卒での就職を目指す人も少なくないでしょう。就活をしながらバイトをして返還するのは大きな負担になります。

また、新卒で就職ができたとしても、その後失業する可能性も否めません。そのような場合に返還が難しくなってしまうのです。

4章    奨学金を無理なく返済するためには貸与額を抑えよう

奨学金の返済は、新卒の社会人には大きな負担になります。そのため、奨学金を利用するためにはなるべく貸与額を抑えるようにしましょう。

例えば、以下のようにするだけでも大きく貸与額を軽減できます

  • 奨学金を利用するのは学費分だけにして、生活費はバイトや仕送りでまかなう
  • 留年はせず、4年で卒業する
  • 実家から通える学校を目指す
  • 国公立を目指す

「希望の大学に行きたい」という気持ちは大いにわかります。しかし、奨学金は若いうちに大きな借金を負うということです。

せっかく希望の大学に入学できても、卒業後に返還の負担が大きく生活が厳しくなってしまえば本末転倒です。

将来の返還額も考慮したうえで、進学先を慎重に検討するようにしましょう。

4−1    奨学金が支払えないと自己破産や個人再生を余儀なくされる

奨学金の返還を怠ると、多額の奨学金を一括で請求されてしまいます。何百万円も一括で支払うことは困難なので、その場合には「自己破産」や「個人再生」といった法的な債務整理をしなければならない可能性があります。

また、奨学金の返還を怠ると、保証人に一括請求される可能性が高いです。奨学金の場合、保証人には親や親戚の方が設定されているでしょう。

多くの場合は分割で支払う交渉ができますが、失敗すると保証人が一括で支払えない場合、自身も保証人も自己破産や個人再生で解決せざるをえなくなってしまいます。

奨学金の滞納や、自己破産・個人再生をすると信用情報機関に事故情報が登録され、数年間はクレジットカードの利用や住宅ローンを組むこともできません。
ライフステージが上がる時期にそのような影響が出てしまうのは大きなリスクとなるでしょう。

また、本記事の2章で解説したように、奨学金を延滞すると利息を除いた延滞している割賦金の額に対し、年3%の割合で、返還期日の翌日から延滞している日数に応じて延滞金がかかります。
消費者金融などの借金日してかかる延滞金よりも利率は低いといえど積み重なると、延滞金の金額も増えてしまうのでご注意ください。

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4−2    どうしても支払えないときは救済措置を利用する

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、以下のような救済措置が設けられています。

制度概要
減額返還制度返還期間を延長し、月々の返還額を減額する
返還期限猶予制度返還期間の猶予期間を設ける
返還免除死亡または精神・身体障害によって返還できない場合に、返還額の一部または全部が免除される

この救済制度を利用することで、致命的な滞納は免れることがほとんどです。どうしても返還が難しい場合には早い段階で日本学生支援機構に相談し、救済措置を受けられないか相談してみましょう。

間違っても踏み倒そうなどと考えてはいけません。

5章    まとめ

奨学金の利息は、金融機関からの借り入れに比べて利息がかなり低く設定されています。

それでも奨学金の返還ができずに破綻してしまう人が多いのは、卒業直後から数万円の返還をしなければいけないことが大きな負担になってしまうからです。

また、奨学金の返還中に失業してしまった場合にはより大きな負担になるでしょう。

将来、無理なく奨学金の返還をするためにはできる限り貸与額を抑えるようにすることが大切です。

経済的なことで進学先を選択しなければいけないのは辛いと感じるかもしれませんが、将来のことも考える必要があります。

もし、奨学金の返還が難しくなってしまったら、日本学生支援機構に救済措置を受けられないか相談してみましょう。

それでも返還が難しい場合には自己破産や個人再生も検討しなければいけません。

奨学金を利用する際には、将来のことを見据えたうえで慎重に検討しましょう。

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