ギャンブルによる借金でも個人再生は可能!認められる要件を徹底解説

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

個人再生
ギャンブルによる借金でも個人再生は可能!

この記事は約 11 分で読めます。

ギャンブルや浪費によって借金を増やしてしまい、返済できないときの方法として考えられるのが「個人再生」です。

借金を整理する方法として「自己破産」を選択した場合、借金をつくった原因がギャンブルでは、破産手続が複雑になったり、改善が見られない場合は免責が認められないこともありえます。

一方、個人再生ならギャンブルでつくった借金でも大幅に減額できる可能性が大きいといえます。

ただし個人再生にも手続を認めてもらうためのルールもあるため、

  • 個人再生ならギャンブルや浪費による借金でも認められる理由
  • 個人再生の申立てが通らない5つのケース
  • 自己破産よりも個人再生が適している4つのケース

について詳しく説明していきます。

1章 個人再生ならギャンブルや浪費による借金でも認められる理由

自己破産の場合には、借金をつくった原因がギャンブルや浪費などの場合、「免責不許可事由」に該当するため「免責」は認められないことがあります。

免責とは

免責とは、破産者の借金の返済義務を免除することです。破産手続と並行して行う免責手続によって、裁判所から「免責許可決定」を受ければその効力が発生し、借金はゼロになります。

免責不許可事由とは

免責不許可事由とは、裁判所から借金の返済免除(免責)を認めてもらえない一定の事情のことです。お金を貸した債権者に対し酷な行為を行ったときなど、借金を免除しない免責不許可事由に該当するとされます。

裁判所は破産者に免責不許可事由がなければ免責を許可することになりますが、免責不許可事由があれば免責を許可しません。

この免責不許可事由にはギャンブルや浪費により著しく財産を減少させたことも含まれるため、自己破産しても借金返済義務が免除されない可能性があります。

もっとも、程度問題がありますので、少しでもあれば即ダメというわけではありません。実際、破産手続きのほとんどは最終的に免責を得られています。ただ、管財事件になったり免責までの審査が長引いたりと、手続が複雑になりやすいのです。

ギャンブルと自己破産の関係については、以下の記事に詳しく載せていますので、ぜひ参考にしてください。

個人再生の場合、ギャンブルや浪費でつくった借金でも、手続は可能です。なぜなら、個人再生の場合、借金の原因となった事情は再生計画の不認可事由ではないためです。

なお、「免責不許可事由」について詳しく知りたいなら、下記の記事を参考にしてください。

1-1 個人再生の不認可事由とは

ギャンブルでつくった借金のように、自己破産の免責不許可事由には該当する場合でも、個人再生の再生計画の不認可事由には当てはまらないケースもあります。

個人再生では裁判所に再生計画を認めてもらうことが必要ですが、「民事再生法174条」にある再生計画の不認可事由に該当しなければ、個人再生による手続を検討するとよいでしょう。

民事再生法174条2項

裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。

  1. 再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
  2. 再生計画が遂行される見込みがないとき。
  3. 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
  4. 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。

なお、借金の原因がパチンコや競輪などのギャンブルによるもので不安があるときは、以下の記事に載せてある個人再生するための条件を確認してみてください。

この章の冒頭で述べたことの繰り返しですが、個人再生の場合、基本的に「借金の原因は問わない」のでご安心ください。

個人再生認可後にギャンブルをしても問題はない
個人再生の要件に借金の理由は含まれず、認可前後にギャンブルをすることは問題ありません。
しかし、個人再生が認められるためには再生計画通りに3~5年で借金を完済する必要があります。

そのため、ギャンブルなどで計画通りの返済が難しくなれば認可を取消される恐れがあるのでご注意ください。

2章 個人再生の申立てが通らない5つのケース

個人再生は、借金の返済ができなくなった債務者が裁判所に申立てを行う借金整理の方法です。

認可された再生計画に基づき、原則3年間(特別な事情があるときは5年間)で借金を分割返済していきます。

しかし次の5つのケースに該当すると個人再生の申立てが通らない可能性があります。

ギャンブルの有無にかかわらず、個人再生手続一般に対して言えることです。詳しくは別記事で解説していますので、ここでは簡単に見ていくことにします。

【個人再生の申立てが通らない5つのケース】

  1. 個人再生の3つの条件を満たしていないとき
  2. 申立棄却事由に該当するとき
  3. 再生計画案を認めてもらえないとき
  4. 手続期間中の浪費が多いとき
  5. 隠し持っていた財産があったとき

それぞれ詳しく説明していきます。

2-1 個人再生の3つの条件を満たしていないとき

個人再生は借金が個人名義のものであることに加え、次の3つを満たさなければ申立をしても棄却される可能性があります。

  • 継続または反復した収入を得る見込みがあること
  • 借金総額が5000万円以下であること(住宅ローン以外)
  • 3~5年を超えない期間で弁済できること

この3つの条件を満たすことができない場合には、自己破産など他の借金整理の方法を検討する必要があるでしょう。

2-2 申立棄却事由に該当する場合

「申立棄却事由」とは個人再生の申立てができない原因のことです。民事再生法第25条に定められています。

これに該当する場合、裁判所は再生手続開始の申立てを棄却しなければならないとしています。

民事再生法第25条

次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない

  • 再生手続の費用の予納がないとき。
  • 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
  • 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
  • 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

申立棄却事由に該当するときには、個人再生以外の借金整理を検討したほうがよいでしょう。

2-3 再生計画案を認めてもらえないとき

再生計画案には、個人再生で手続した後の借金返済計画などが記載されますが、計画内容に難点があれば裁判所は認可してくれません。

たとえば借金返済計画が返済能力に見合っていない場合などが認められないケースとして挙げられます。認可をもらうためには、妥当な(履行可能性のある)再生計画案を作成することが大切です。

収入・最低弁済額・返済期間など考慮した上で無理のない再生計画案を作成するようにしましょう。

最低弁済額とは

個人再生では、借金を5分の1から10分の1程度に減額した後、残りを3〜5年で返済する計画を立てることが必要です。減額後に返済しなければいけない金額が「最低弁済額」です。

詳しくはこちらの記事で解説しています。

2-4 手続期間中の浪費が多いとき

個人再生では、申立て前の収支状況を裁判所に説明することが必要です。このとき、過剰に浪費していると再生開始決定を受けることができなくなる可能性があるため、手続期間中に無駄な浪費はしないようにしてください。

すなわち、専門家に依頼した後(個人再生の手続き中)もギャンブル等を続けていると、この条件に引っ掛かってしまうおそれがあります。少なくとも、依頼後はギャンブルを一切やめましょう。

個人再生では裁判所に通帳を提出しなければならない
個人再生の申して手をする際には、所有する預金口座の通帳の写しを提出します。
個人再生手続きで通帳を提出する理由は3つあります。
  • 預金の最終記帳が清算価値として計上されるため
  • 家計簿の数字と照合するため
  • 債権者に漏れがないか確認するため
ギャンブルを含め、浪費に関することが通帳から判明してしまいます。

2-5 隠し持っていた財産があったとき

個人再生では、最低弁済額以上に財産を処分することになるため、財産を隠し持っていた場合には再生計画の廃止または取消しになる可能性があります。

財産がどれくらいあるかは返済額を決める上でも非常に重要な情報のため、隠さず全てを申告するようにしましょう。

3章 自己破産よりも個人再生が適している3つのケース

借金の返済が厳しくなったとき、自己破産すれば借金が免除され、その後の支払いに悩むことはなくなります。しかし自己破産ではなく、個人再生のほうが適しているという場合もあるため、自分に合った借金解決方法を選ぶべきといえます。

自己破産よりも個人再生が適しているケースは次の3つです。

  • ギャンブルなど浪費による借金が多いとき
  • 住宅ローンの残っている自宅を手放したくないとき
  • 自己破産で職業制限を受ける仕事をしているとき

それぞれ説明していきます。

3-1 ギャンブルなど浪費による借金が多いとき

ギャンブルで増えた借金は、自己破産よりも個人再生のほうが時間や費用をかけず、問題解決しやすいです。

なぜなら自己破産したくても、借金をつくった原因がギャンブルや浪費であるときには、「免責不許可事由」に該当し「免責」を認めてもらえないことがあるからです。

個人再生では借金をつくった原因は問われることがないため、ギャンブルや浪費による借金なら自己破産ではなく個人再生による手続を選んだほうがよいといえるでしょう。

また、ギャンブルや浪費などに限らず、他の免責不許可事由に該当する事情がある場合も同様です。

3-2 住宅ローンの残っている自宅を手放したくないとき

借金問題は解決させたいけれど、自宅を手放したくないという場合にこそ、個人再生はオススメです。

自己破産すると、破産者の保有する財産は処分により換価され、債権者へ分配されることになります。自宅を手放したくない場合でも、土地や建物などの財産も処分しなければなりません。

しかし個人再生では、「住宅資金特別条項」の利用によって住宅ローン以外の借金を減額できるため、自宅を手放すことなく借金を整理できます。

住宅資金特別条項とは

住宅資金特別条項は住宅ローン特則と呼ばれることもあり、住宅ローンは支払いを続けながら、他の借金を圧縮できるという個人再生の特則のことです。

3-3 自己破産で職業制限を受ける仕事をしているとき

生命保険外交員・警備員・宅地建物取引士などの職業は、自己破産したときに一時的に資格制限を受けます。

資格制限に対象となる職業に就いている方が自己破産すると、免責許可が決定するまでの間は資格制限を受けるため、収入がなくなる可能性も出てきます。

しかし個人再生では自己破産のような職業の制限はありません。

自己破産で資格制限をうける職業の例として、

  • 宅地建物取引士や社会保険労務士などの士業
  • 生命保険募集人
  • 警備員

などが挙げられます。

これらの職業の方は、自己破産ではなく個人再生による借金問題解決のほうがよいといえるでしょう。

まとめ

個人再生の場合、ギャンブルや浪費による借金でも手続きは可能で、最終的な認可ももらえます。

しかし個人再生にも多くの複雑なルールがあるため、手続を進めるためには独自で解決しようとせず、借金問題に詳しい専門家に相談したほうがスムーズです。

もしギャンブルや浪費を原因とした借金返済で悩んでいるときや、その他、自己破産では借金免除がスムーズに認められない可能性がある場合には、まずはグリーン司法書士法人グループに相談してみることをオススメします。

個人再生に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

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よくあるご質問

個人再生ではどこまで調べられる?
個人再生をすると、借金の金額や本人の収入、財産状況を調査されます。
なお、調査結果によっては個人再生以外の債務整理を選択しなければならない場合もあります。
個人再生について詳しくはコチラ
個人再生は家計簿をいつまでつける?
個人再生の申立て時に直近2ヶ月分程度の家計簿を提出し、手続き終了時まで家計簿をつけ続けるように言われます。
そのため、6〜8ヶ月間は家計簿をつけ続ける必要があります。
個人再生時の家計簿提出について詳しくはコチラ
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