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借金の請求書が来ない状態が続くと、すでに時効を迎えて返済しなくてもよいのではないかと考えてしまいがちです。
しかし請求書が来ないのは、時効で借金が消滅しているのではなく、郵便事故や発送漏れなども考えられるため返済義務がなくなっていると安易に考えないほうがよいといえるでしょう。
では、請求書が来ないままの状態が続いた場合、いつ時効は成立するのでしょうか。
支払いを回避することはできるのか、届かない請求書とその返済義務について次の3つの章に分けて詳しく解説していきます。
- 債権は5年で時効
- 債権の時効が成立しないケース
- 請求書が届かないまま放置するリスク
請求書が来ない状態で放置していると、思いもよらないリスクを抱えることもあるため、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次 ▼
1章 請求書などの債権は5年で時効
請求書が来ない状態が続いた場合、支払期日の翌日から5年間が経過すると消滅時効により支払う義務がなくなると考えられます。
また、2020年4月に行われた民法改正で下記のように消滅時効の期間が変更されています。
- 2020年3月以前…時効2年
- 2020年4月以降…時効5年
民法が改正されるまでは、日常的な取引の権利関係について早い時期に確定させるため、以下の債権については時効成立までの期間を「2年間」としていました。
- 生産者・卸売商人・小売商人が売却した商品などの売買代金に関する請求権
- クリーニング店・理美容院・和裁・洋裁などの債権
- 学校・塾・家庭教師などの生徒に対する授業料や教材費
しかしこの「短期消時効」は民法改正により廃止」され、業種別で時効成立期間が異なるといった問題も改められ、一律で支払期日翌日から「5年間」とされています。
改正内容についての詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
2章 債権の時効が成立しないケース
請求書が来ないままの状態が続き、5年を経過していても自動的に時効が成立するわけではなく、次の3つのケースでは時効が成立しないと考えられます。
- 時効の援用をしていない
- 時効が更新された
- 債務の承認があった
それぞれ説明していきます。
2-1 時効の援用をしていない
時効が成立しないケースとして、「時効の援用」をしていない場合が挙げられます。
時効の援用とは、債権者に対し時効を迎えたことについての権利を行使することです。
時効の成立を主張するために「時効の援用」は欠かせないため、仮に期間経過の点は満たしていてもこの手続ができていなければ成立せず、借金の返済義務もなくなりません。
2-2 時効が更新された
時効が成立しないケースとして、時効期間経過中に時効が「更新」された場合が挙げられます。
新たに時効期間がスタートすることになるため、当初の予定で時効は成立しません。
「時効の更新」は、時効までの請求書の有効期限を引き延ばすために行われますが、次の3つで更新されます。
- 裁判所を通した申立て
- 差し押さえなど強制執行
- 債務の承認があった
それぞれ説明していきます。
①裁判所を通した申立て
時効の更新は、裁判所を通した「申立て」により可能とされています。
裁判所を通した法的手続として、次の3つが挙げられます。
訴訟の提起 | 訴えを起こして債権を請求する |
---|---|
支払督促 | 裁判所の書記官から支払いを命じてもらう |
民事調停 | 裁判官と調停委員に仲介してもらい和解を目指す |
このうち、訴訟を提起した場合の「時効の更新」のタイミングは、次のいずれかです。
- 裁判で判決が確定したとき
- 判決前に和解が成立したとき
確定せず和解もなく訴訟が終了すると時効は更新されませんが、終了から「6か月間」は時効の成立が「猶予」されることになります。
②差し押さえなど強制執行
時効の更新は、差し押さえなど「強制執行」により可能とされています。
訴訟や支払督促で、裁判所から債権者に対し強制執行の「許可」が出されれば、債務者の財産を「差し押さえる」ことが可能になります。
そして時効の更新により債権の有効期限も引き延ばされるため、時効は成立しなくなってしまいます。
③債務の承認があった
時効の更新は、債務者から「債務の承認」があった場合でも対象となります。
「債務の承認」とは債務の存在を認めることであり、支払いに関する「交渉」を行うことや、たとえ1円でも「返済」することで承認したとみなされ、時効は更新されます。
3章 請求書が届かないまま放置するリスク
請求書が届かないまま放置するリスクとして、知らない間に裁判所に訴えを起こされている可能性もあることが挙げられます。
仮に請求書が債務者の「住所不明」などで届かなかった場合でも返済義務はなくならないため、債権者が裁判所に訴えを提起することはできます。
住所不明で相手に通知が届かないため、「公示送達」という方法によって裁判所に、2週間に渡り裁判を起こした事実が掲示されます。
この公示送達によって、債務者に通知が届いたこととみなされるため、裁判は次の段階へと進んでしまいます。
債務者に何の通知も届かないまま判決が出ることになり、債務者は敗訴・債権者は勝訴とされ、時効成立に向けて時効の援用ができないという状態になってしまうでしょう。
時効までの「遅延損害金」も加算されつづけることになり、返済金額も大きく膨れ上がります。
まとめ
請求書が来ないままでも、自動的に時効により返済義務が消滅するわけではありません。
引っ越しで住む場所を変更したことで、請求書が届かないといったケースも考えられ、時効成立前に裁判を起こされている可能性もゼロではないといえます。
そのため請求書が来ない状態が続いているときにも、時効まで待つのではなく、借金問題をどのように解決するべきか考えることが必要です。
もしも借金問題で悩みを抱えているときや、どのように対処すればよいかわからないときには、グリーン司法書士法人グループへ気軽にご相談ください。
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