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- 手続開始決定後に取得する給料などは受け取れる
- 手続開始決定前に払われた・確定していた給料などは処分される
- 「自由財産の拡張申立て」により、給料の処分を防げる可能性がある
自己破産の手続きでは、財産が処分される場合があり、給料やボーナスも例外ではありません。しかし、せっかく借金を整理するために自己破産を決断しても、生活費が手元に残らないのでは意味がありません。
自己破産手続開始決定後に受け取る給料やボーナスは、原則として処分されずにそのまま生活費として使うことができます。一方で、破産手続きが開始する前にすでに受け取っていた給料やボーナス、破産時点で受け取りが確定しているものについては、破産財団に入れられ処分対象となる可能性があります。
今回は、自己破産手続きと給料・ボーナスの関係や、給料の処分を防ぐ方法も解説します。「給料やボーナスが処分されるなら、自己破産はしたくない」と考えている方は、ぜひご一読いただき参考にしてください。
目次 ▼
1章 自己破産後に払われた給料・ボーナスは受け取れる
自己破産とは、借金の返済が困難な場合に裁判所へ申立てをし、支払義務の免除を求める法的手続きです。破産手続きが開始されると、債務者の財産は「破産財団」として扱われ、債権者への公平な弁済に充てられます。
- ◆破産財団とは
- 破産財団とは、破産手続きにおいて債権者の配当にあてることができる、破産者の財産のことです。
「財団」と聞くと組織や団体をイメージしますが、そうではありません。
破産法では、破産者の「破産手続開始決定時点」で有していた財産は破産財団に入れられ、債権者に分配されると定めています。そのため、開始決定以降に新たに発生した収入は処分対象にならず、受け取って生活費に充てることが可能です。
つまり、自己破産手続きが開始した後に発生した給料・ボーナスは、原則として処分されません。
給料やボーナスが処分されるか否かは、次の破産手続きの流れの中の、②「破産手続開始決定日」を基準に判断されます。
↓
②「破産手続開始決定日」が出される
↓
③「免責許可決定」が出される↓④債権者の不服申立てがなければ、「免責許可決定」が確定する
基準となるのは、「破産申立て日」ではなく「破産手続開始決定日」であることを理解しておきましょう。
実際に給料やボーナスが処分されないのは、次のようなケースです。
- 破産開始決定後に働いて得た給料
- 破産開始決定後に発生したボーナス
- 破産開始決定後の副収入(アルバイト・副業収入)など
これらは新得財産(新たに発生した財産)として扱われるため、処分されることなく自由に使うことができます。
中には、「持っている財産も働いて得た給料も、とにかくすべて処分される」と誤解している人もいますが、そうではなく、自己破産後の生活を考慮し、没収されない財産の枠組みがしっかりと決められています。
2章 破産手続開始時点で受取済み・予定の給料・ボーナスは処分される
自己破産では、破産開始時点で既に持っている財産や、権利が発生している財産が破産財団に組み込まれます。この中には、「すでに受け取った給料」や「受取予定の給料・ボーナス」などが含まれることがあります。
2-1 破産手続開始時点で受取済みの給料・ボーナスは預貯金・現金として処分される
破産開始決定前に受け取った給料やボーナスは、破産手続きの中では「給与」ではなく「預貯金・現金」として扱われ、処分の対象になります。
ただし、生活費・家賃・医療費など、すでに使ってしまってた分については対象外です。つまり、破産申立ての直前に受け取った給料が全額処分されるというわけではなく、手元に残っている分のみが処分の対象となります。
「直近で受けとった給料があるけれど、すでに生活費として使ってしまった」というような場合、その分の返還を求められることはありません。
2-2 破産手続開始時点で受取予定の給料・ボーナスは処分の対象となる
破産開始時点で「まだ振り込まれていないが、破産開始決定日までに発生している給料やボーナス」も、処分対象となります。ただし、処分の対象となるのは手取り額の4分の1で、残りの4分の3は受け取ることができます。また、手取り額の4分の1が20万円未満である場合は処分対象とならないことがほとんどです。
なお、個人事業主の収入は売掛金や報酬であって、給与所得にはあたりません。そのため、破産手続開始決定時に有している売掛金・報酬については、すべてが処分の対象となります。
自営業者の自己破産手続きについては、下記の記事でも解説しています。
では、破産開始前と後の給料について、次のケース(給与の支払い:毎月月末締め、翌月25日払い)で考えてみましょう。
給料日:2月25日(1月末締めの2月分給与)
*2月分の給与は処分の対象になる可能性があります。
給料日:3月25日(2月末締めの3月分給与)
*3月分の給与は処分の対象になりません。
2月25日に支払われる給料は、支払日は破産手続き開始決定後ですが、給料の支払い自体は開始決定前の1月末に確定しているため、処分の対象になります。
一方、3月25日支払いの給料については、破産手続き開始決定後に給料の支払いが確定しているため、処分の対象にはなりません。
次の記事でも、自己破産後の給料や退職金についてわかりやすく解説しています。ぜひ、参考にしてください。
3章 自己破産による給料の処分を防ぐ方法
給料やボーナスで生活費を賄っている以上、できる限り処分を回避したいと考えるのは当然でしょう。自己破産を検討する際には、次のような方法で財産を守れる可能性があります。
3-1 自由財産の拡張を申し立てる
自己破産をしても、生活に必要な財産まで手放すことにはなりません。「自由財産」とは、自己破産をしても処分されない財産をいい、主に次のようなものが該当します。
◆主な自由財産
- 99万円以下の現金
- 破産手続開始決定後に取得した財産(新得財産)
- 差し押さえが禁止されている財産(生活に欠かせない家財道具や、給料・年金などの一部)
- 「自由財産の拡張」が認められた財産
- 「破産財団」から放棄された財産
破産者の生活を保障するため、自由財産の範囲を広げることが必要不可欠であると裁判所から認められれば、「自由財産の拡張」が可能です。
- ◆「自由財産の拡張」とは
- 破産者の生活を保障するため、裁判所が自由財産の範囲を広げること
自由財産の拡張が認められると、本来決められている財産より多く手元に残すことが可能になります。実際にどこまで認められるかは、裁判所や事案の状況によって異なるため、司法書士・弁護士に相談することが大切です。
「自由財産の拡張」については、下記の記事でも詳しく解説しています。
3-2 任意整理をする
任意整理では財産を処分する必要がなく、給料やボーナスもそのまま受け取れます。借金総額が比較的小さく、利息のカットや返済計画の調整で解決できる場合は、任意整理で問題が解決する場合もあります。
自己破産のように借金の返済がなくなるわけではありませんが、裁判所を通さず債権者と債務者が直接交渉するため、比較的容易に進められる点もメリットといえるでしょう。ただし、返済原資が確保できないほど借金が大きい場合には利用できません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 安定した収入がある個人 |
| メリット | 将来利息のカット、毎月の返済額軽減 |
| デメリット | 信用情報への登録(ブラックリスト) |
3-3 個人再生をする
個人再生も、財産の処分は原則必要なく、給料やボーナスも生活費に充てることができます。住宅ローンを守りながら借金を減額したい場合には「個人再生」が選択肢になります。
任意整理同様、手続き後の借金返済は続きますが、借金額を大幅に減額することができ、自己破産に比べて財産や給料への影響も少ない手続きといえるでしょう。
また、個人再生は手続きを行うことで、給料の差し押さえをストップすることができます(手続開始決定が出た時点)。滞納による給料差押えが心配な場合には、有効な手続きです。
ただし、安定した収入などの前提条件や考慮すべき点がいくつもあり、債務整理の中では手間も費用もかかるため、専門家に相談して方針を決めることが大切です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 安定した収入がある個人 |
| メリット | 大幅な債務の減額が可能、住宅の維持が可能 |
| デメリット | 官報公告掲載、信用情報への登録(ブラックリスト)、手続きが複雑 |
4章 グリーン司法書士法人では債務整理について相談をお受けしています
自己破産をしても、手続開始決定以降に働いた分の給料やボーナスは受け取ることができます。その一方で、破産開始時点で既に受け取っていた給料や発生が確定していたものは、処分対象となる可能性があります。
とはいえ、自由財産の拡張や差押禁止財産などの仕組みによって、最低限の生活は守られるようしっかりと配慮されています。そのため、給料やボーナスの処分が嫌で自己破産をためらっているのだとしたら、自ら借金問題解決への道を遠ざけている可能性があります。
借金問題は、相談者それぞれが抱える状況や問題点が異なります。そのため、自己破産以外の任意整理や個人再生などの選択肢も含めて、専門家と一緒に検討することが大切です。不安を一人で抱え込むことなく、まずは司法書士や弁護士に相談し最適な解決策を見つけましょう。
グリーン司法書士法人では、これまで10,000件以上の債務整理相談を受任・解決してきた実績があり、安心してご相談・ご依頼いただけます。
初回のご相談は無料で、面談についても夜間や土日祝日など柔軟に対応できるよう整えております。借金問題は、ご相談が早ければ早いほど、解決のための選択肢が多く選びやすいといえます。お一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談ください。
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