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自己破産が認められると、必要最低限以外の資産以外は失ってしまいます。具体的には、車や持ち家や不動産、保険などの財産が引き上げの対象になります。
しかし、自己破産をしたくても、子どものために学資保険を積み立てていることがネックで困っている方もいるかと思います。
自己破産の手続きでは「何としてでも学資保険は残しておきたい」という要望は通るのでしょうか?
この記事では、自己破産で学資保険を残せる可能性と解約しなくて済むケースを解説いたします。
▼親が自己破産したことによる影響については、以下の記事で詳しく解説しています。
目次 ▼
1章 解約返戻金20万円以上の学資保険は自己破産時に手放さなければならない恐れがある
自己破産時に学資保険を手放さなければならないかは、解約返戻金が20万円以上かどうかによってきまります。 解約返戻金とは、契約を解約された場合などに契約者に支払いするお金のことです。
解約返戻金が20万円以上あれば、解約する必要があります。 20万以上になったお金は、自己破産の手続きの際に没収されるので手元に残ることはありません。
この解約返戻金が20万円以上あれば、解約する必要があります。20万以上になったお金は、自己破産の手続きの際に没収されるので手元に残ることはありません。
20万円が高額財産のボーダーラインになるため、解約返戻金が20万円以下の場合は高額財産と見なされず残しておけるケースもあります。
まずは、現時点で解約したらいくらになるのかをチェックしましょう。
1-1 学資保険は名義が子どもでも親の財産の扱いになる
「そもそも学資保険は子どものものだし、子どもの財産になるのでは?」「学資保険の名義が子どもの名前になっているので自己破産の処分対象ではないはず」と思っている方も多いでしょう。
原則としては、保険は契約者の財産と見なされます。しかし、学資保険に関しては、子が未成年であり親がお金を積み立てているという特殊性から、例外的に親の財産扱いになるので注意が必要です。
そして、自己破産時点における解約返戻金が20万円以上であれば、残念ながら自己破産の対象になってしまいます。
2章 学資保険を解約しないで自己破産をする2つの方法
もし解約返戻金が20万円以上だった場合でも、没収されてしまうとガッカリするのはまだ早いです。
中には、学資保険を解約しなくても自己破産ができるケースもあるのです。
ただし「どうしても残しておきたい場合の例外措置」になるため、実際に認められる可能性は低いです。しかし、絶対に例外なく没収されるというわけではないのでご安心ください。
ここからは、学資保険を解約しないで自己破産をする2つの方法を解説いたします。
2-1 契約者貸付を利用する
1つ目は「契約者貸付」を利用する方法です。契約者貸付とは、解約返戻金を担保にして保険会社からお金を借りる制度です。
学資保険の契約者貸付では審査がないことが特徴です。将来的に受け取れる解約返戻金を原資としていることから、学生保険を前借りしていることになります。
前借りをするということは、借金と同じ扱いになります。
自己破産を申し立てる直前の利用になるため、契約者貸付制度を利用する理由を裁判所に説明する義務があります。「どうしても残しておきたい理由」がある場合は事前に司法書士や弁護士に相談しましょう。
2-2 自由財産拡張の申立てをする
2つ目は「自由財産拡張」の申立てをする方法です。
自己破産で手元に残しておける自由財産は以下の通りです。
- 99万円以下の現金
- 破産手続き開始決定後に取得した財産
- 差押えが禁止されている財産
- 容易に換価処分できない財産
- 自由財産拡張が認められた財産
自由財産拡張の申立てをすれば、この自由財産にプラスして更に財産を残すことができる可能性があります。
自由財産の拡張は、破産者側から裁判所に対して自由財産拡張の申立てをして手続きを行います。自由財産拡張を認めるかどうかは、基本的に破産管財人や裁判所が判断をすることになります。
また、現状の積み立てたお金ではなく保険そのものを残しておきたい場合は、破産管財人に解約返戻金と相当額の現金を納めることによって認めてもらうパターンもあります。
自由財産拡張がどれくらいの確率で認められるかの目安ですが、比較的に認められるケースが多いのは高齢者の保険、持病持ちの保険です。また、介護用の車なども生活必需品と見なし認められやすいです。
学資保険は前述の保険と比較すると認められる可能性が低くなりますが、交渉次第で通る可能性もあります。
認めてもらう確率を少しでも上げるために、司法書士や弁護士などの専門家と一緒に進めるのをおすすめします。
自己破産後に手元に残しておけるお金については、以下の記事で詳しく解説しています。
3章 自己破産前の名義変更は財産隠しと見なされる可能性あり
子どもの名義だとしても、親の財産と見なされてしまうことが分かりました。
何としてでも没収されないために、自己破産前に配偶者の名義に変更しようと考えている方もいると思います。
元々自己破産者の配偶者の名義の場合は解約しなくて済みますが、自己破産の手続き中に名義変更を行うのは絶対におすすめしません。
自己破産前の名義変更は、元々破産者が持っていた財産を隠す行為と見なされ禁止行為になるからです。
自己破産を行うと、破産者が持っていた財産をお金に換えて債権者へ分配します。
財産隠しをすることによって、本来なら持っている財産は債権者に分配されるはずなのに、受け取れる額が少なくなってしまうため公平な手続きではなくなります。
もし、自己破産の手続き中に財産隠しがバレてしまったら、自己破産ができなくなってしまいます。
それだけでなく、財産隠しは「詐欺破産罪」に該当する可能性もあります。
詐欺破産罪が成立した場合、
- 10年以下の懲役
- 1000万円以下の罰金
- 10年以下の懲役と1000万円以下の罰金の両方
が課せられてしまいます。
自己破産を認めてもらうためにも、疑われるような行為は避けましょう。
4章 自己破産前に保険解約する場合は必ず事前相談しよう
逆に、自己破産をする前に学資保険を解約する場合、解約返戻金の扱いは注意が必要です。
破産手続きに関して定めた「破産法」では、以下の行為が禁止となっています。
- 当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害することとなる処分(以下「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
- 破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
- 相手方が、当該行為の当時、破産者が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
引用:破産法 第百六十一条
簡単に言うと、解約返戻金で「解約返戻金を隠す」「特定の破産者の借金を返済する」行為をするのは禁止ということです。
1つ目の解約返戻金を隠す行為は3章でも解説した通り、財産隠しになります。
2つ目の解約返戻金で特定の破産者の借金を返済する行為は「偏頗弁済」と呼び、債権者が不平等になるため禁止されています。
この2つの行為は破産手続き上の不誠実な行為と見なされ、厳しく処罰されます。破産手続きの前に保険解約をする行為は間違いなく疑われるでしょう。
「破産手続きの費用が足りない」「破産手続きまで生活できない」などやむを得ない理由があって、学資保険を解約する場合は必ず報告するようにしましょう。
5章 学資保険を解約したくないのであれば別の債務整理も検討
学資保険を解約したくない場合、契約者貸付の利用や自由財産拡張だけでなく、別の債務整理に切り替えるという方法があります。
債務整理では、自己破産だけでなく「個人再生」と「任意整理」もあります。
どちらも借金を減額する債務整理なので、自己破産とは異なり「借金を引き続き返済していく必要がある」ため注意が必要です。
ただし、どちらも学資保険を解約する必要がない債務整理になるため、少しでも支払い能力が残っている場合はこちらも検討するのをおすすめします。
5-1 個人再生と任意整理であれば継続が可能
個人再生と任意整理は財産を強制的に没収される心配がありません。
このことから、減額された借金の総額が決まったら、今ある財産を売って返済のお金に充てることも可能です。
返済が途中で止まってしまったら、個人再生や任意整理に失敗し途中で打ち切られてしまう可能性もあります。ですので、万が一の場合は解約して返済金に充てることができるのもメリットと言えるでしょう。
その他のメリットとしては、他の財産も残しておけることです。
学資保険以外にも車や持ち家なども没収されることがないため、財産を残したまま借金を減額することができるのは嬉しいですね。
個人再生が失敗してしまうケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。
6章 自己破産の相談はグリーン司法書士法人におまかせ!
財産扱いと見なされる学資保険ですが、方法によっては残しておける可能性があります。
まずは、解約払戻金が20万円以下かどうかをチェックしましょう。
もし自己破産を考えていて、学資保険が没収の対象になっていた場合は、当メディアを運営しているグリーン司法書士法人にご相談ください。
自己破産を始めとする債務整理は国が認める救済措置です。人生の再スタートを成功させるためにも、債務整理のプロが1人1人に合った最適な提案をいたします。
自己破産に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。
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よくあるご質問
- 自己破産をすると子供の学資保険はどうなる?
- 親が加入している学資保険の解約返戻金が20万円以上あれば、解約する必要があります。
自己破産と学資保険について詳しくはコチラ
- 親が自己破産すると子供にどんな影響がある?
- 親が自己破産した場合、下記のケースでは子供に影響があります。
・親の持ち家で同居している場合
・親の連帯保証人になった借金がある場合
・親が主会員の家族カードを保有している場合
・親名義で加入している学資保険がある場合
・親が奨学金の保証人になっている場合
・自己破産前に親から譲り受けた財産がある場合
親が自己破産したときの子供について詳しくはコチラ